第二章 過渡期における現代的株式会社形態と国有企業の齟齬
第四節 国の保護下にある国有独資会社の存在
現代企業法制を構築するといいつつ、中国会社法の規定によると、国有独資会社という 独特の形態がある。国有独資会社は有限責任会社の範疇であるが、一般の有限責任会社と は区分されている105。国有独資会社は株式有限会社および有限責任会社と比べ、国有投資主 体が出資設立したという特徴以外にも出資構造、組織結合および株主の権益の方面におい ても特徴を有する106。
◎ 国有独資会社の特設
①1993 年法における国有独資会社の特徴
◎組織機構および経営管理が特殊性を有する。第一に、投資主体(国が授権した機構また は国が授権した部門)が単一であり、国が唯一の社員である。社員は、国のみであるため、
社員総会を設置する必要はなく、国が取締役会に授権して社員総会の部分的職権を行使さ せ、会社の重大な事項を決定する。第二に、取締役会は 3~6 人で構成され、任期は 3 年と し、任期に基づいて投資主体は取締役会を委任・更迭する。取締役は、国が授権した機構 または部門が選任する。その選・解任をもつ目的は、国有資産の安全および価値の増加を 保証しようとすることにある。第三に、取締役長1人を置き、取締役長は会社の法定代表 者となる。副取締役長を若干設置することもできるが、投資主体が取締役会の構成員の中 で指名する。第四に、会社は経理を設置し、取締役会が選任または解任し、投資主体の同 意を経て、取締役会の構成員は経理を兼ねることができる。第五に、法により従業員代表
105 王保樹、崔勤之『中国会社法原理』第三版(中国社会科学文献出版社、2006年
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月)124 頁以下。範健、王建文、『会社法』(法律出版社、2006年2
月)108頁以下。106 徐暁松、「国有独資会社の運営および国有資産所有権行使方式の変革」、『現代法学』1995年 第
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期。大会およびその他の形式で民主的管理を実行することができる。
◎設立手続きが特殊である。国有独資会社の設立は国の関連部門の審査・認可を経なけれ ばならない。旧会社法 65 条には、「国有独資会社の定款は、国が授権した機構または部門 が法により制定するか、または取締役会が制定し、国が授権した機構または部門に届けて 認可を得ることになり、その後、認可を得た書類、会社定款などをもって会社の登記機関 にて登記を行う」と規定してある。
◎出資者は特殊的な権利を有する。国が授権した投資機構または国が授権した部門は会社 の合併、分割、解散、資本の増減および社債の発行を決定できるのみならず、会社の資産 の譲渡を決定し、審査・認可を経て財産移転手続きを行うこともできる。
1993 年法は、国有企業改革のための会社法という特殊な位置づけであったため、このよ うに会社法において、国有企業改革のみではなく国有独資会社に関する規定を設けていた。
しかし、完全な市場化・現代化を目指しているといわれた、新会社法は依然として国有独 資会社規定を置いている。その経緯をみると、中国の会社法はまだ完全に国有の殻から抜 出すことができないと思う。しかし、2005 年の新会社法は、転換期から確定期へと移行し ている段階における社会主義市場経済法制の特徴を示している。
②国有独資会社制度存廃争点107
新会社法草案の審議段階において、会社法における国有独資会社に関する存廃の議論も あった。会社法の改正において、一部の全国人民代表、政治協議委員会の委員、専門家は 国有企業に関する特殊規定を減少させようと主張して、「国有独資会社」の節を完全に削除 することを提案した。これに対し、多数の全国人民代表、全国政治協議委員会および国有 資産管理監督委員会、工商総局は「国有独資会社」に関する規定を保留しようと主張した。
そこで、これらの国有独資会社制度存廃論に関する主張に対し、国務院法制局は検討を経 て、国有独資会社に関する問題は経済体制改革の全体に関わる重要な問題であると指摘し た。また、会社法における国有独資会社に関する規定は、国有企業改革を積極的に推進す る役割を果たしたと評価されている。つまり、今回の改正において国有独資会社に関する 規定を留め置いた最大の理由は、引き続き改革を深化させるために、制度面での支持をす るという意味でもあるということである。そこで、2005 年の新会社法においては、若干の 修正は加えているが、65 条から 71 条108にかけて、依然として国有独資会社形態に関する法
107新会社法における国有独資会社の存廃(原語:新《公司法》破题“国有独资公司”去留存疑)
、
经济观察報2004
年8
月1
日報道参照http://finance.sina.com.cn。张晓涛、「中国会社法改正にお ける国有独資会社の行方(原語:《公司法》修改,国有独资公司何去何从?)」、中国経済時報2004 年 10 月 26 日報道参照。108新会社法における国有独資会社に関する規定:
第 65 条 国有独資会社の設立および組織機関については、本節の規定を適用する。本節に規定 のない場合には、本章の第一節および第二節の規定を適用する。②この法律でいう国有独資会社 とは、国が単独で出資し、国務院または地方人民政府が、同級の人民政府の国有資産監督管理機 構が出資者の職責を履行するよう授権した有限会社を指す。
第 66 条 国有独資会社の定款は、国有資産監督管理機構が定め、または取締役会が定めて国有資
規定を置いてある。これらの規定は、近時の国有企業改革および国有資産監督管理体制の 改革の方針および成果、ならびに、≪企業国有資産監督管理暫定条例≫の関連規定に基づ いて改正されたものである109。
③国有独資会社と有限会社制度の相互関係
国有独資会社は有限責任会社の一種として位置づけられている。新会社法においては、
有限責任会社制度の一般規定と国有独資会社制度の規定は一般法と特別法の関係として扱 われる。第二章第四節で国有独資会社に対し特別規定を設けているため、同特別規定を優 先的に適用しなければならない。但し、第二章第四節では国有独資会社に関する規定が整 備されていない場合には、新会社法における有限責任会社に関する一般規定をもって補充 することになる。
国有独資会社もその性質をみると、一人有限責任会社の一種である。新会社法では、第 二章に有限会社規定を設けているが、第四節に国有独資会社、第三節に一人有限責任会社 の節を別々に設けており、並列させた。新会社法 65 条においては、「国有独資会社の設立 および組織機構に対し本節の規定を適用する。本節に定めがない場合には、本章第一節、
第二節の規定を適用する」と規定されている。一人有限会社と国有独資会社との間の一般 性と特殊性については、法ではなんらの規定もない。つまり、新会社法第 64 条の法人格否 認の規定も類推適用されることができなくなっている110。こうすると、法人格否認の法理が 条文化(新会社法 20 条)された状況の下で、例えば国有独資会社の倒産が生じても国は最 終的に責任を免れることができるようにするためのテクニックであろう。
④国有独資会社概念に関する新たな定義
国有独資会社に対して 1993 年会社法は、第 64 条第 1 項において「国が授権した投資機 産監督管理機構が承認108するよう報告する。
第 67 条 国有独資会社は、社員総会を置かず、国有資産監督管理機構が社員総会の職責を行使す る。国有資産監督管理機構は、会社の取締役会が社員総会の一部の職権を行使するよう授権して 会社の重要な事項を決定することができる。ただし、会社の合併、分割、解散、資本の増加・減少お よび社債の発行については、国有資産監督管理機構が決定することを要する。その内、重要な、
国有独資会社の合併、分割、解散、破産申立てについては、国有資産監督管理機構が審査・確認 した後に、同級の人民政府が認可をするよう届け出なければならない。
②前項でいう重要な国有独資会社については、国務院の定めにより確定する。
第 71 条 国有独資会社の監査役会の構成員は五名を下回ってはならず、その内、従業員代表の 割合は三分の一を下回ってはならず、具体的な割合については、定款が規定する。
②監査役会の構成員は、国有資産監督管理機構が任命・派遣する。ただし、監査役会の中の従 業員代表については、会社の従業員代表大会が選挙で選出する。監査役会の主席については、国 有資産監督管理機構が監査役会の構成員の中から指定する。
③監査役会は、この法律の第 54 条第(1)号ないし第(3)号に定めた職権および国務院の定 めるその他の職権を行使する。
109 桂敏傑『新旧条文対照簡明解読』(中国民主法制出版社、2005年
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月)。110 劉俊海『新会社法制度の制度創新―立法争点および解釈難点』(法律出版社、2006年