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第 6 章
結 論 と ま と め
高齢者のコミュニティ活動が、長く活発に行われている事例を分析した。分析結果から、
活性化の要因にモチベーションと自己実現に向けた能力取得の手段(知識、活動やサービス 提供に必要な技能)を個人とグループでスパイラルさせて自己実現の場を築いていることを 明らかにし、活性化モデルを構築した。また、この活性化する活動の成果発表がグループの 外に向けたサービス提供を行い、提供者と受容者双方の満足につながっていることに着目し、
サービス価値共創モデルを構築した。その後、事例分析で得られた活性化モデルにしたがっ てアクションを試み、高齢者のサロン活動において、有用性を検証した。
この章では本研究で得られた結論を述べる。
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を新たに持つ者である。良い演奏を多くの聴衆に提供し、良い評価や多くの拍手・ブラボー という満足感を得るサービス提供は、提供者、受容者に価値共創をもたらすものである。
3 章で明らかにした J 管弦楽団の活動事例から得られたモチベーションとスキルのスパイ ラルは、高齢者活動を活性化させる仕組み作りの大きなヒントになり、毎年、生の演奏を多 くに提供し、双方が大きな満足を得るために、さらに自らのスキルを磨く姿勢は、高齢者の サービス提供に着目する機会となった。
これは、4 章で述べた高齢者の活性化したコミュニティ活動でも同じ仕組みが適用できて いた。提供する相手や規模はそれぞれ異なる。また、アマチュアオーケストラの「スキル」
にあたるものは、高齢者個人が活動の中で自己実現を行うために、それに向けた「能力取得 の手段」であった。活性化した活動を長く行っているコミュニティでは、個人とグループの モチベーション、個人とグループの能力取得が、循環することにより活性化するスパイラル が回っている。さらに、その成果を「グループのサービス力」として、コミュニティ活動の 外に向けてサービス提供を行っていた。
では、地域の結びつきが弱く、継続するコミュニティ形成が難しいと思われる地域におい て、活性化モデルを用いれば、高齢者のコミュニティ活動が活性化するのか、また、サービ ス価値共創が起こるのか、それを確かめたのが 5章のアクションリサーチである。このアク ションリサーチの検証からは、高齢者が活動に参加する理由は、コミュニケーション目的だ けではなく、健康上の不安(声が出なくなる、嗄声)と、懐かしい曲に親しむことも、きっ かけとなり、活動に参加することが得られた。また、「聞こえない」ことは、予想以上に自 己実現に向けた能力向上を目的とする活動にとり阻害要因になっていることもわかった。ア クションを用いて、この改善を行い、活性化モデルが適用できるようにした。さらに、追加 のアクション 2 を行ったことで、グループ共創が強まり、コミュニティ活動の場が、地域に 広く発展するという発見も得られた。
活性化モデルは、モチベーションと自己実現に向けた能力(スキル)取得のために、個人・
グループが良い環境の中でスパイラルアップさせ、自己実現(生きがい)の場を形成し、活 動の活性化につなげるモデルである。サービス価値共創モデルは、活性化によってグループ の築いた力を、サービス提供し、受容者・提供者ともに満足感を得て、さらなるサービス力 向上の活動につなげるものである。現役時代では活性化スパイラルは、どのような形になる のか。また、ボランティア活動・慰問も、無償でサービス提供を行うものである。現役世代 と高齢者の活動の違いについて、5事例で比較する。表6-1に示す。
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表6-1 現役世代と高齢世代の活動の違い
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インタビューや自由記述からは、貴重な意見が得られている。
活性化の視点では、表3-11、J管弦楽団の自由記述に若手団員からも回答が得られており、
モチベーションは、趣味の音楽活動や演奏会よりも、仕事やプライベートに左右される、と ある。高齢者は活性化した活動の場に出かけるために、他の用事と重なって欠席をしないよ うに予定を調整し、早くから会場で楽しみに待つ。そして、自らが活動に参加し続けるため に健康でいようとする。
サービス視点では、現役世代では「義理・義務」の参加も少なからずある。地域の行事な どでも現役世代は当番制であることが多い。高齢者の場合、皆で助け合いながら、慰問やコ ンサートに出向く。楽器や楽譜などの荷物があると、東京都内であっても、まず交通手段の 確保からである。本職とはいかないが、能力を磨き、聴衆の喜ぶ顔を見るために努力する。
地域では、思わぬ評価や、はりあいも得られる。
また、I町と、歌声サロンのインタビュー・自由記述ではサービス提供に、「地域への恩返 し」「地域へのお礼」「感謝の気持ち」という意見が複数得られた。この意識は、若年・現 役世代ではまだ築かれていない。高齢世代が、地域へサービス提供する場合、「お礼」「恩 返し」と感じ、提供して得られた反響・満足感によって、自己実現(生きがい)の場を形成 している。地域社会へのサービス提供においては、地域で育てられた恩を、高齢期に還元す るということも、高齢者のサービス提供を行う、1つの要因となることがわかった。
以下に、現役世代と異なる高齢期のコミュニティ活動特性についてまとめる。
・現役世代では、自己実現に向けた能力向上に対するモチベーションの対象として、コミュ ニティ活動の他に、優先順位が高いものがある。仕事をリタイアした高齢者は、社会との接 点の 1 つとして、コミュニティ活動がある。自己実現に向けた能力向上、モチベーションの 循環が、コミュニティ活動の中で活性化した自己実現(生きがい)の場を形成すること。
・現役世代は、成果などがなくても、一旦所属すると組織コミットメントが高いことから、
なかなか辞める状況にない。一方、高齢者は自分自身で活動に参加するが、強制ではないこ とで、本来、組織コミットメントは低い。しかし、一旦、活性化した活動になり、組織作り ができると、その組織コミットメントは非常に高くなること。
・現役世代には趣味の活動を行う「場」や、指導者、成果や報酬を得る仕組みは用意されて いる。高齢者には、それがなく、自主的に集まる活動の場もリーダー・メディエーターの確 保も自力であること。身体的な苦労もあり、サービス提供の交通手段にも工夫が伴うこと。
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・地域社会へ向けたサービス提供の中には、現役時代に地域に世話になったという経験から、
「地域への御礼」「地域への恩返し」という、高齢期特有の意識が含まれることがある。
高齢者が目的を持ち、健康に社会活動に参加することは、孤立防止、介護予防にもなる。
高齢者の生き生きとした活動に、現役時代と同じような組織作り、サービス価値共創の仕組 みを用いたコミュニティ活動が効果的であったことが、本研究による発見である。