• 検索結果がありません。

アマチュアオーケストラ活動の「モチベーションとスキル共創モデル」提示

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 71-74)

3.5 仮説モデルの構築

3.5.2 アマチュアオーケストラ活動の「モチベーションとスキル共創モデル」提示

時代などに習得したスキルを活用し、(A)「昔とった杵柄」で再び自分で楽器を持ち、音楽活 動へ参加しようとするモチベーションを持つ。(B)団体に所属する責任感・緊張感から、意欲 的に日々の練習を行い、個人の音楽技術、スキルを向上させる。個人の持ったモチベーショ ンが、(C)音楽スキルの向上を通して「生きがい」の形成となる仕組みを、図3-19に示す。

図3-19 個人のモチベーションとスキル

個人のスキル向上は、管弦楽団というグループの中で(D)他の団員への良い刺激、切磋琢磨 となり、その結果、団体としてのスキルも向上していく。団体のスキル向上は、組織の実力 を高め、演奏の調和を通した暗黙知は、団員の一体感として共有される。(F)1 年間練習して きた成果の集大成として定期演奏会があり、そこで良い演奏を聴衆に提供できることは、個 人と団体(グループ)の満足に結びつく。演奏会の成功には、個人のスキルだけでなく、(D)

56

「グループとしてのスキル向上も多く望む」ことが、アンケートの自由記述よりわかった。

満足感はグループを団結させ、環境の充実、居心地の良さも生む。(D)具体化した充実は、さ らにグループの団結力を強め、グループモチベーションを高める。グループのモチベーショ ンは、(A)再び個人の高揚感・充実感へとつながる。グループのスキルとモチベーションが、

「生きがい」の形成となる仕組みを、図3-20に示す。

図3-20 グループのモチベーションとスキル

個人の技術・モチベーション維持には、グループの人間関係をまとめ、良い環境の場を整 えることと、良い指導によって、望む技術と知識を得られることが重要である。

個人・グループの音楽スキルを支えているのは、(E)指導を行うリーダーとしての指揮者で あり、良い指導は「スキルを高める場」の環境、人間関係にも影響する。

個人・グループのモチベーションを支えるのは、(E)自らも参加者の立場でありながらグル ープの人間関係に配慮し、「環境としての場」を良好に保つまとめ役・メディエーターとし ての団長である。

グループを団結させ、活性化する活動に導くのは、(F)1 年間継続してきた練習・努力の集 大成として、定期演奏会も重要な要素である。演奏会の成功には良い演奏を行える個人・グ ループのスキル向上があり、(F)その演奏を聴きに訪れ、拍手や評価により会場を盛り上げる 聴衆の存在もあった。

アマチュアオーケストラ活動を持続し、活性化することで形成される(C)「生きがいの場」

は個人のQOLを向上させ、(A)再び個人のモチベーションに寄与していた。

アマチュアオーケストラ活動の分析から得られた個人とグループの関係を、

「モチベーションとスキルの活性化モデル」として、図3-21に示す。

57

図3-21 J管弦楽団:モチベーションとスキルに着目した活性化モデル 藤井・小坂(2016)

J 管弦楽団の団員は、リーダーである指揮者とまとめ役である団長に支えられながら、演 奏会という共通目標を持つ仲間と共に音楽活動を行う。活動を行う中で、個人とグループの モチベーションとスキルを循環させて生きがいの場を築いている。音楽技術の向上は自己実 現・達成感も得られることから、更なるスキル向上を目指して努力を続けるモチベーション を維持させている。

オーケストラのメンバーは若年期・現役時代から音楽に携わり、大学オケなどを通して既 に社会活動を行っていたことで将来の「技術的・社会的備え」ができている。この自らの能 力の活用を高齢期に発揮し、グループ内では団員どうしの協力・コミュニケーションだけで なく、各楽器の音色を合わせるという価値共創も行っている。反省会の場では、指揮者・団 長が毎回出席することで、練習の場以外でも音楽知識についても学び、コミュニケーション も深めてグループの場を良好な環境に導く。団員どうしも日頃の練習を通して学び合い、仕

58

事仲間とは異なる、居住地域を越えた活動の場所で「地縁」を築いている。演奏会の場は、

単に自己完結的な学習ではなく「成果披露の場」でもあり、大勢の聴衆に成果を提供できる 演奏会は、「学習成果の社会還元」となる。毎回、無料で演奏会を必ず開催することにより、

地域内外の高齢者も多く訪れ、偶然に訪れた一見の聴衆にも、新たな楽しみを見出すきっか けを提供する。これはクラシック音楽界全体の敷居も低くし、新たなクラシック音楽愛好者 をプロ演奏家の有料コンサートや CD 購入へとつなげ、文化・芸術としての学びと生きがい を循環させる「社会貢献」ともなっている。

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 71-74)