3.2.1 J
管弦楽団の活動の概要
1978年にアンサンブルとして発足したJ管弦楽団は、シュトラウス・ファミリーをはじめ とする「ウイーン音楽」のみを演奏する、アマチュアオーケストラである。プロのオーケス トラでは取り上げない日本初演曲や、あまり演奏されない曲を積極的に演奏発表する方針の もと、これまでに日本初演曲70曲以上を含む300曲を越える曲目を演奏してきた。1979年 7月14日第1回コンサート開催以来、年に1回の定期演奏会を、毎年無料で実施している。
2014年6月時点で団員は40名、内訳は男性20-30代1名、40-50代3名、60 代以上24
名、女性20-30代3名、40-50代4名、60代以上が5名である。コンサートマスターの男性
2 名は 70 代、80 歳以上の男女も含まれており、アマチュアオーケストラの中でも高齢者の 割合が非常に多い楽団である。メンバーの経歴としては、大学オーケストラ OB などのグル ープに参加していた経験や、ブランクはあるが音楽経験を持ち、企業の定年後に、このオー ケストラに参加しているケースが多い。音楽指導も兼ねる常任指揮者は、元プロオーケスト ラの指揮出身であり、78歳(2014 年時点)で、現在は他のアマチュアオーケストラも 4団 体受け持っている。
団の運営は会員の会費(年会費24,000円)のみで運営されている。活動場所は、音の出せ る東京都内の賃貸ビル1室を使い、月に2回日曜日の午後、指揮者と共に全員で練習を4時 間行う。プロ奏者のいない管弦楽団のため、パート練習は行わない。第33 回(2011年)の 演奏会からは現在の指揮者が常任となり、指導も行っている。練習後に懇親会を毎回行うの が、団員の楽しみとなっている。
3.2.2 J
管弦楽団の定期演奏会活動の参与観察
定期演奏会の会場は毎年、区立の大ホールを使い行われる。演奏会の広報活動は、会場の ある自治体へのチラシが主だが、同じ会場で定期演奏会を行い、翌年の開催を告知すること でリピーターも増えており、開場前には既に長い列ができている。観客数の推移を見ると、
記録のある2006年からは、図3-1のようになっている。リピーターなどにより年々、観客数 は増加傾向にあり、一度に600名を超える多くの観客へ、無料で演奏の提供を行っているこ とがわかる。
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図3-1 観客動員数の推移(2006-2017年)※ホームページの動員数記録をもとに作成
2014年5月および2016年5月、総合文化センター大ホールで行われた定期演奏会(第36 回・第38回)に同行し、参与観察を行った。特に第36回は観客数約720名と史上最高を動 員しており、開場の1時間以上前に並ぶ人も多く、開場時には既に100名を超える長い列が できていた。来場していた大半は一見して60代後半以上、 男女比で見るとやや男性が多か った。
2014年からは、「聴衆との一体感」を目指し開演前の30分間を使い「ロビーコンサート」
を実施している。担当の弦楽四重奏は、全て70歳代の演奏者だった。入口ソファなどを利用 して多くの聴衆が演奏を楽しんだ。その様子を図 3-2 に示す。終了後「コンサート前に演奏 を聴けて自分たちは楽しめたが、本番前の演奏は疲れないか?」と演奏者を心配して聴衆か ら声をかける姿もみられた。演奏中に居眠りしている聴衆も見当たらず、暗い中でも様々に 工夫し、プログラムに記載された演奏曲目の解説を真剣に読む高齢者の聴衆が目立った。毎 回演奏する曲に合わせ、駅員の帽子や警笛、仮面などで趣向を凝らす。終盤では「ブラボー」
の声も多くかかり、アンコールも常に3曲、ラデッキー行進曲で締めくくり、盛況であった。
この様子を図3-3に示す。平成30年には第40 回記念となる演奏会として、オペレッタの全 幕演奏を予定している。
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図3-2 ロビーコンサートの様子
図3-3 定期演奏会の様子 指揮者も仮面着用
3.2.3 反省会の場
J 管弦楽団では月に 2 回行われる練習の後に毎回、指揮者と共に近隣の決まった飲食店に 移動し「反省会」という懇親の場を設けている。これは、指揮者自らが提案した「1 練習に つき 1 反省会」という方針に基づき行われているもので、特別な用事が生じた団員以外は、
ほぼ参加する。この反省会には 2014年に 1 回同行し、参与観察と聞き取りを行った。反省 会では、その日の練習のふり返りも含めた音楽談義が主な内容であり、個人的な音楽指導も
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含めて、プロである指揮者の広い音楽知識の共有も行えることが団員の楽しみとなっている。
毎回行う反省会の場所は決まっており、楽器を置ける広い個室を借り切ることで、メンバ ーが参加しやすい。また、指揮者との「音楽談義」がより深められることを団員は期待して いる。その日の練習や演奏についてだけではなく、現在練習している曲についての解釈や、
プロオーケストラの奏法などで盛り上がる。会場の予約や費用の交渉、継続して使えるよう にスケジュールをあらかじめ店に伝えておくなど、反省会の場作りには全て団長があたって いる。
3.2.4 ウイーン公演への参加とその影響
J管弦楽団は2016年6月26日、管弦楽団の創立 40周年を迎える記念行事のひとつとし てウイーン公演を行った。団員の大半にあたる 34 名が参加し、観客数は大使やシュトラウ ス・ファミリーの来賓含め約300名であった。当日は充実した演奏会であったことが、後日 アンケート調査から明らかになった。図3-4に示す。
図3-4 ウイーン公演の様子
3.2.5 定期演奏会・反省会の場からJ
管弦楽団の活動を考える
定期演奏会の熱気からは、団員が同じ目標のもと団結し、指揮者を厚く信頼していること がわかった。J 楽団で常任指揮者が携わり始めた最初は、休憩時間に席を立ち、そのまま帰 ってしまう人がいたそうである。無料のコンサート提供には、音楽ファン以外の、色々な観 客が訪れる。しかし2014年・2016年の演奏会では、客席の減少は全く見られなくなった。
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常に同じ公共の会場を利用しているため、会場の管理側からも「帰るお客さんが、いなくな りましたね。」と、感想があったという。リピーターが少しずつ増えていることからも、団 体として安定していることがわかる。
また、毎回の練習を指揮者と行い、終了後も団員皆が、反省会の場で音楽談義などを交わ すことにより、指導を行う指揮者から得られる演奏技術と音楽知識といったスキルの向上を 自らのモチベーションにし、活動を通して生きがいやQOL向上へとつなげているとわかった。
集団がまとまるためには、環境を整える「世話役」として団長の存在も大きい。団長自身 は弦楽器の奏者として練習に参加しながら、管弦楽団への問い合わせへの対応、練習場の準 備、会計や曲目、全団員の楽譜手配、自治体の広報や会場との交渉、反省会に使用する会場 のセッティングなど、活動の場を整える重要な役目である。