4.4 S 町地区交流センター-世代間交流とデイサービス活動の事例分析
4.4.3 データによる事例の検証
このS町の事例に、モチベーションと自己実現能力の影響、リーダー・メディエーターの 関わり、サービス提供による満足感、サービス視点での価値共創が成り立っているか、観察 とインタビューをもとに検証した。
【項目A:個人のモチベーションについて】
・個人が健康維持のため、また、このセンターに参加し続けるためにも介護保険を使わない ようにモチベーションを持ち、所属をする。健康指導を守り、感染症にも気をつける。
・既に長く参加している人は何でも上手い。それが刺激となり「より上手に作品を作ろう」
という自己実現に向けた意欲向上のモチベーションにつながる。
【項目B:個人の自己実現に向けた能力取得の手段について】
・見学時の活動では、ちょうど餅つきを企画する時期であり、参加者の中から杵を子どもに 教える担当者・捏ね取りの担当などが決められていた。「捏ね手は、餅がひび割れないよう にする水分などのコツがあり、案外難しい」「子ども達に教えなければいけないから、でき る(腕に自信がある)人を担当にして」「これが本当の“昔取った杵柄”だ」など、季節行事を 通した世代間での交流に対して、より得意な者が、その役目にあたれるよう、真剣に参加者 で討議する姿が見られた。
・作品展では、小学生も作品を目にするため、より良いものを展示することに努めていた。
【項目C:自己実現(生きがい)を形成する場について】
・「あなたにとってS 町地区交流センターはどんな場?という、利用者に行ったアンケート では1位が「生きがいの場」で88.9%であった。(S町センター紹介パンフレットより)
・利用者は皆、雨の日も雪の日も天気に関係なく自転車や徒歩で通い、風邪で休むことも少 ない。うがいや手洗いの徹底と予防接種の呼びかけ、適切な水分補給についての知識、呼吸 法・気功など健康講座実践の効果が表れているということだった。そのため活動内での感染 症が1度も起こっていない。
・昼食時には、当番の小学生が交替で給食を持参し、訪れる。毎回異なるメンバーの小学生 に「今、流行っている遊び」を聞くことや、自分の体験・昔遊びを伝えることも「はりあい」
となっている。
【項目D:コミュ二ティの環境について】
・12年もの継続により、個人の技能は、グループ全体の能力へと影響する。毎回の季節行事 を通し、昔の知識を思い出し共有する。
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・作品作り・鑑賞からは、他者の作品への講評やアドバイスも生じ、それはやがて「全員が 上手くできる」ことになる。
・グループとして「小学生に負けないように頑張る」というグループの団結・モチベーショ ンも生まれる。
・季節に合わせた伝統行事では、知識を伝えるサービス提供者として、高齢者の出番となる。
世代間交流や季節ごとの行事を通し、活動の様子が地域の新聞や広報ページにも掲載される ことで「S 町地区交流センターのおばあちゃん・おじいちゃんチーム」という「顔」になっ ており、活動・グループが広範囲に認知されている。
【項目E:リーダー・メディエーターとの関わりについて】
・指導者は、毎回異なるワークショップの計画を立て、1 人ひとりが楽しんで作成できる配 慮も行うが、通常はバイタルチェックを主に行うまとめ役も、健康講座とトーンチャイムの 指導を担当している。健康講座やトーンチャイム演奏を行う時、指導者は参加者として活動 をともに行い今度は「まとめ役」に回る。
・「手紙」や、健康手帳への「返事」などは、リーダー・メディエーターにとっても価値共 創となっていることがわかる。
【項目F:サービス提供による共創について】
・小学生に「昔の伝統」を教える「知識提供」を行うことは、小学生・保護者・教師にとっ ても、かつての文化を知り、学ぶ機会となっている。
・共に昔遊びをし、今の流行りを教え合った小学生も卒業し成長する。町で会うと挨拶をす る。小学生の保護者も知識提供に感謝をし、高齢者の存在に教えられることも多い。地域に 提供したサービスは、当日のみならず、時間を経ても、提供者への満足感となっている。
参加者は週2 回必ず会う仲間や、指導者・まとめ役とのコミュニケーションを通し、様々 な作品作りや早口言葉の自主練習、ゲームの勝敗においても各自で能力を磨いている。壁新 聞やゲーム表彰などの成果もまた、個人のモチベーションとなっている。
地域の広報など、成果が見える形での評価も、グループ環境を充実させる。
また、このグループの活動には、年間90回、12年という長期間の活動を支え続けている リーダー・メディエーターの存在が、大きい。リーダー・メディエーター自身も工夫を重ね、
デイサービスセンター内に限らず小学校・地域に向けても、充実する活動を通して価値共創 を行っていることがわかる。
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以上をまとめると、 S町の「モチベーションと自己実現の能力取得に着目した活性化モデ ル」は、図4-3に示すことができる。
図4-3 S町地区交流センター:モチベーションと自己実現の能力取得に着目した 高齢者の活性化モデル
日下(2008) は、高齢者の世代間交流の動機には「世代継承意識」「自己充足意識」「地域 貢献意識」「世代理解意識」の 4 次元が存在するとし、世代間のいきいきしたかかわりあい が個人の心理的発達課題の達成に大きな役割を果たす、と述べている。小学生は、卒業して 中学・高校に進学しても、センターのおじいちゃん・おばあちゃんと町で出会うと、挨拶を かわす。地域にとっても理想的な交流が行われている。
参加者は、かつて得た行事の知識や、長年培ってきたスキルを、世代間交流を通じ、小学 生や、その保護者にも伝えるというサービス提供を行う。元気な姿が地域新聞に載ることで、
異世代・同世代に活動が伝わり、「センターの活動者」として認知される満足感は、自らの
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生きがいにつながっている。活動に楽器の練習も加わったことで、最近では聴衆へのサービ ス提供もできつつある。
S 町のセンターで行われる活動をサービス価値共創の視点でとらえると、図 4-4 に示すこ とができる。
図4-4 S町地区交流センター:サービス価値共創モデル
S 町の活動は、色々な地域コミュニティで以前から多く実施されている内容である。しか し、平均年齢 80を越える同じメンバーが継続して年間 90回もの集まりを10年以上継続さ せるほど、組織コミットメントが高い活動を行うためには、居心地の良い環境を維持させる、
優れたまとめ役の存在が不可欠となる。S町では、2人の指導者が交互にまとめ役・メディエ ーターの役目を果たしており、それぞれの役割を分担させながら連携をはかり、楽しく続く 工夫に力を注いでいる。充実した活動は「雨でも雪でも休まずに出かけよう」というモチベ ーションとなる。介護保険を使わないよう、参加者が健康に対する知識を学び、生き生きと 活動している。
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S 町の事例は、高齢者が健康で生きがいを持ち、世代間には先生となって知識を伝えると いうサービス提供を行っている。このサービス提供は、その場だけに限っていない。小学生 の成長後の様子など、サービス提供者にとって時間経過後の満足感も得られている。S 町セ ンターでは、高齢者が地域へのサービス提供活動を自らの自己実現の場として、生きがい、
はりあいとする、サービス価値共創が行われていた。