• 検索結果がありません。

第 8 章 分析結果・考察

8.2. 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによって生成された概念

8.2.9. 知識の再構成を促進するマネジメント

本カテゴリーは、主にマネジャーが主体となって、A研究チーム・メンバーの知識の再構成を促 進させるために行われているマネジメントに関する概念である。先に示した知識の再構成の6つの 要素との関係を検討するために、データに密着した以下の 11 つの概念を生成した。1) 異なる視 点の統合促進(タグ数:4)、2) 技術評価(タグ数:13)、3) 抽象的な方向付け(タグ数:19)、4) ロ ードマップ策定(タグ数:9)、5) 異質な情報の共有(タグ数:28)、6) シンボル化(タグ数:10)、7) 混乱を誘う(タグ数:13)、8) 強みを引き出す(タグ数:4)、9) 組織・連携体制づくり(タグ数:24)、

10) 視野を拡げる(タグ数:15)、11) キャリア・パス策定(タグ数:5)。

1 つ目の“異なる視点の統合促進”は、異質な概念や考え方を結びつけることにより、知識の再 構成を促進させるマネジメントを表す概念である。以下のような意味まとまりが該当する。

「[Nマネジャー]は事業セグメント、技術軸のマトリクスを書きかけていると思う。」

―Oリーダー(2006322日付インタビュー)

Copyright © 2007 Takashi Yoshinaga All rights reserved 103 / 142

2 つ目の“技術評価”は、未知の技術概念やその体系の良し悪しの評価や、その研究開発に 取り組むタイミングについて判断をするマネジメントを表す概念である。以下のような意味まとまりが 該当する。

「[研究委託元の事業組織マネジャー]さんって、まず全体の計画をちゃんと立てろ、であったり、やらなき ゃいけないことをちゃんとあげろ、それで、それぞれの重要度をちゃんと評価して効果があるところから優 先的に計画的に手をつけなさい、っていう言い方ですね。」

―P研究員(200697日付インタビュー)

3 つ目の“抽象的な方向付け”であるが、曖昧な、漠然とした方向性を示して、行動するきっか けを与えるとともに、自律的な行動をメンバーに促すマネジメント概念である。以下のような意味ま とまりが該当する。

「(P研究員、Q研究員、S研究員)3人に対しては、こういう分担だよねというのを示しました。そこに対して、

例えば依頼元(M 社グループ内事業組織)なり、どんなツール・技法なりというのは、確かに何も言ってな いし、きっと言わない。議論には参加したいとか、アドバイス、僕はこう思うけどね、っていうのは、言うでし ょうし。」

―Oリーダー(200644日付インタビュー)

4つ目の“ロードマップ策定”は、戦略設定についてのマネジメント概念である。あるべき姿に向 かって具体的な道筋をつけていく作業であり、マネジャーが自ら行う場合もあれば、メンバーにそ の重要性を促すこともある。以下のような意味まとまりが該当する。

「[MD 研究所]として、[A 研究チーム]としてではなくて、[M社]としての技術長(期)計(画)を作れと。今ま で、[研究本部から予算が付いた]の各テーマに関して技術長(期)計(画)なるものを作れ、と言われたの はこれが始めて。」

―Oリーダー(2006929日付インタビュー)

5つ目の“異質な情報の共有”は、異なる立場にある他組織に所属する個人と積極的な交流を 行い、コンセンサスをはかっていくマネジメント概念である。以下のような意味まとまりが該当する。

「(M社グループ内他組織との3者間、4者間との打ち合わせの局面では)結局真ん中に自分がいるので、

自分がインタープリターになればいい。(技術概念を)抽象化したときに、それぞれに対して、できれば三 人がわかる同じ言葉に置き換えてあげると一番いいが、それができなければ、自分としては概念は共通 のままで、多少(人によって)言い方を変えてあげる。ただ、それは矛盾していない、ということを気をつけ

Copyright © 2007 Takashi Yoshinaga All rights reserved 104 / 142

ないといけないが、あまり抽象化してしまうと、非常にあいまいな表現になってしまうが。」

―Nマネジャー(20041227日付インタビュー)

6つ目の“シンボル化”は、研究チームがM社グループ内外に注目されるための旗振り役を担 うマネジメント概念であり、それによって新たな流れや動きを引き起こすことができる。以下のような 意味まとまりが該当する。

「例えば組織をつくるにはどうすればいいか、どういうテーマでやらなければならないかということを、まず はこんな感じかな、ということを言いつつ、それだとなかなかうまくいかんということを周りとしていた。このこ ろは最終的にどういう形になるか、ということは全く見当がついていなかった。今もはっきりいうと見当はつ いていないのだが、とりあえず旗を上げないといろいろな情報が集まってこない。」

―Nマネジャー(20041227日付インタビュー)

7 つ目の“混乱を誘う”は、メンバーがそれによって矛盾や葛藤を抱えるようなことをあえて発言 するマネジメント概念である。それによって、彼らに従来のものの見方の限界を示唆すると同時に、

新しいものの見方を促すことができる。方法としては、あえて理屈が通っていないことを言うか、もし くは、その場や状況にはそぐわないことを言う。現実的ではない“絵に描いた餅”である正論をあえ て言うこともある。以下のようなテクストが該当し、タグ数は13個であった。

「[N マネジャーによる]もう生産技術は(取り組まなくてもいいよ)、という発言は、生産技術だけ独立して研 究していては駄目だ、ということを言いたかったのだろうと今では思うが、当時はそうはそのままの意味で 受け取っていた。具体的には、[未知技術概念]を取り入れたもの。」

―Oリーダー(200485日付インタビュー)

8 つ目の“強みを引き出す”は、メンバーの得意なところや長所を最大限に活かすマネジメント 概念であり、ファシリテートやコーチング、さらにはモチベーション・マネジメントとも関連する。理論 的にはアプリシアティブ・インクワイアリー(Cooperrider & Whitney, 1999)の発見フェーズである、

今あるものをアプリエイトする概念に相当する。以下のような意味まとまりが該当する。

「何をしたいのかよくわからないんだけど、何したいの?何が得意だと自分は思う?などという話を(メンバ ーの1人に)してみました」

―Oリーダー(200644日付インタビュー)

「僕は結構好き勝手なことを言っても、ちゃんと(O リーダーは)話を聞いてくれているなぁと。それは[研究 チーム・リーダーとして]、人間として当たり前なんだけど、そういうところがちゃんと聞いてもらえるところが うれしいなぁと。」

―W研究員(2006915日付インタビュー)

Copyright © 2007 Takashi Yoshinaga All rights reserved 105 / 142

9つ目の“組織・連携体制づくり”は、新しいミッションに対応するための新しい組織形成や連携 の流れを創り出すマネジメント概念である。Nonaka & Toyama(2003, 2005)のいう場づくりに相当 するであろう。以下のような意味まとまりが該当する。

「われわれの組織の作り方自体も、もうちょっとダイナミックに変えていかなければ、目的としたところまで はいかないと思っている。議論が社内的にもあって、社内全体の組織をどうするか、ということについては 検討中であり、これから議論をしなくてはならない。」

―Nマネジャー(20041227日付インタビュー)

10 番目の“視野を拡げる”は、メンバーに新しい経験をさせることで、視野を拡げるためのきっ かけづくりのマネジメント概念である。以下のような意味まとまりが該当する。

「自分で限界結構決めちゃう方かもしれないですね、私は。(筆者:結構[Q研究員]さんの仕事受けると大 変なんですか?)やる前は自分の限界超えてるんです。想定では。なんだけど、やってみると、まあ、や ってやれないことはないのかな、っていうぐらいなんで。それもやってる途中は結構ウガーッてなる時ある んですけど、でもまあ、やってみたら、それはそれで、自分で勝手に作ってた、なんかそういう、限界って いうか壁みたいなものを、もっと出来るでしょうって感じで。(筆者:結構出来ちゃうんですよね。実際現実 的に。)やれば出来る。やってやれないことはないんですけど。結構ブレーキが、効きすぎるブレーキを 持ってるんで、私。だからアクセルを異常に踏んでくれるくらいの人の方がいいのはいいんですよね。」

―T研究員(2006323日付インタビュー)

11 番目の“キャリア・パス策定”は、人材育成の観点から、メンバーの今後のキャリア・アップの ためのロードマップ策定を促したり、道筋をつけるための経験をさせたりするマネジメント概念であ る。以下のような意味まとまりが該当する。

「だれそれ君には何年後に論文書かせるためにどうのこうのという(中略)話が、(MC 研究所では)説得力 (が)あるっていうのかな。」

―Oリーダー(200644日付インタビュー)

「(部下に対して)5年後、10 年後の自分についてまず考えてください、それを上長と話をしてください、と いうことになっています。」

―Oリーダー(2006929日付インタビュー)

Copyright © 2007 Takashi Yoshinaga All rights reserved 106 / 142