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第 5 章 「パ」国における電力セクター市場動向

5.2 発電案件における入札制度及びその活用実態

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表5.2 誘致的案件の入札手順と日数

No 作業名 所要日数

(a) 特定プロジェクトの事前認証 - PPIB は、アジア開発銀行と世界銀行 が通常発表する新聞や他のすべてのチャンネルを通じ事前認証文書を収 集し、出資者を登録する

60

(b) PPIBへ事前認証文書を提出 60

(c ) PPIBは事前認証文書の評価し、事前認証応札者へ通知 60

(d) PPIBは事前認証応札者へ入札を案内し、事前認証書類を収集 40

(e ) 応札手数料の支払いと応札書をPPIBへ提出 120

(f) PPIBはNEPRAが決定した電力価格を含む入札書を評価し、

落札者を通知 90

(g) 出資者は効率保証金(500 USD /MW)をPPIBに振込 30 (h) PPIBは落札証明書LOS(Letter of Support)を発行 30

出典:Policy for Power Generation Projects Year 2002

b. 計画外案件の場合

事前検証(FS Feasibility Study)が終わっていないプロジェクトであり、国営民営を問 わずFSを行わないと国際入札をすることができない。

また、民営の場合は FS 後に銀行保証書を PPIB に提出した後に PPIB は基本合意書 LOI(Letter of Interest)を発行することができる。

50MW 以上の計画外案件への入札手順と日数を表 5.3に示す。また、公告から契約まで のフロー図を図5.1に示す。

表5.3 計画外案件の入札手順と日数

No 作業名 所要日数

(a) 出資者が計画外案件提案書を提出 ―――

(b) 提案書のレビュー MoWP委員会、PPIB・WAPDA/KE責任 者、計画開発局、州政府・特別自治区、シンド石炭開発局(Sindh 州石炭の場合)

60

(c ) 出資者がPPIBに補償金USD1,000/MW送金 30

(d) PPIBがLOI発行 30

(e ) FSとLOI約定の実施(注) 12-24ヶ月案件による

(f) 出資者と電力購入者間の電力料金交渉 90

(g) NEPRAが承認電力料金を提示 180

(h) PPIBへ承認された電力料金を提出 15 (i) 出資者は効率保証金(USD500/MW)をPPIBに振込 30 (j) PPIBは落札証明書LOS(Letter of Support)を発行 30

(注)出資者が希望した場合は、追加補償金USD1,000/MW支払いと委員会承認により最長180FS 期間を延長できる。

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図5.1 公告から契約までのフロー図 出典:Power Generation Policy 2015

詳細な調達手順と評価方法については、各州に PPRAの出先機関が州政府の直属として 組織され、各州の調達基準が制定された。

例えばSindh州ではSPPRA(Sindh Public Procurement Authority)がPROCUREMENT REGULATIONS (WORKS) を2010年に制定している。

(2) CPEC以降の火力発電所特例

2013年National Power Policyはナワズ・シャリフ首相が就任した1か月後に水利・電 力省から制定された。制定の趣旨は「パ」国の現在と将来のエネルギー需要を支える野心的 な電力政策の策定とし、急速な経済成長と社会開発の促進のために電力部門のビジョンの 明確化、主要課題の抽出、主要目標の設定、政策原則のまとめ、目標達成するための戦略を 記載しているが、具体的な施策については触れていない。

2013 年 5 月の CPEC(中国‐パキスタン経済回廊)合意後の 2015 年に水利・電力省

(MoWP)から提案されたPower Generation Policy 2015が閣議承認され、その中の第6

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項Thermal Power Plantにより、火力発電設備の調達における落札者決定に以下の特例が

認められ、国際競争入札を除外できるようになった。

 誘致的プロジェクト

1)NEPRA(電力規制省)が算出した予定または推定電力料金を下回る最低価格が

提示された場合

2)NEPRAからの予定電力価格要請を承諾した出資者からの提案の場合

州政府、特別自治区からの決定・推薦プロジェクト

地方政府の法に基づき PPIB(独立電力局)に決定または推薦を通知され、

PPIBの政策のもとで推進が可能な場合

 代替モード

連邦政府の国際的な約束、または特定の燃料、立地または資金調達が関与しプロ ジェクトを迅速に実施する必要があると認められる場合、プロジェクトは以下のよ うな代替モードで処理され、入札なしで発注することができる。

1)発注対象の地方政府がPPIBへ承認・推薦したプロジェクトの場合

2)専用ガス田プロジェクト:低発熱量ガスを開発企業は、連邦政府の承認により IPP設立の決定権を有する場合

3)NEPRAからの予定電力価格要請を承諾した出資者からの提案の場合

4)民間電力セクターの官民パートナーシップ(PPP)よるプロジェクトで、既に パートナー企業が選択/確定された場合

5)連邦政府と外国政府の二国間協定の対象となるプロジェクトの場合

6)融資先が確定、または国内資源を使用し、予定電力価格が NEPRA、州規制機 関または連邦/州の電力購入機関によって決定されたプロジェクトの場合 7)電力購入者の同意とNEPRAの予定電力料金が承認された既設IPP増設の場合 8)連邦政府/州政府またはその団体によって認可された特定の制度に基づくメガパ

ークパークの場合

(3) 特例の適用

Power Generation Policy 2015 により国際競争入札(ICB :International Competitive

Bidding)の適用除外が可能になり、CPEC案件や州政府案件に適用され始めた。

これは我が国の「パ」国向けインフラ輸出が急激に減少した時期と一致する。

ICB省略の特例の適用はSahiwalが初号機で、その後Gwadar、タール炭田地区の石炭 火力発電所にも適用されている。

96 (4) ライフサイクルコスト評価

a 入札評価方法

価格評価は IPP プロジェクトの電力購入協定(PPA)の契約期間を通したライフサイク ルコストにより評価される。

すなわち運開後(COD)から30年間の電力価格の平均(Levelized Tariff) を算出して 評価される。

これは、発電所ごとに適切な建設単価・燃料費等を想定してモデル計算を実施し、発電コ ストを評価する均等化発電原価(Levelized Cost of Electricity : LCOE)の評価手法として も世界的に広く用いられている。14その特徴は下記である。

・あくまでも「想定」に基づく試算であり、将来にわたって発電を行う場合のコストを評 価することが多い。

・技術そのもののパフォーマンスを評価するためには最適である。

「パ」国におけるLevelized Tariff について表5.4に電力価格算出の内訳を示す。

運転開始(COD)後の約10年ごと(または各年)の電力価格を稼働率85%として算出す る。稼動年数30年として平均電力価格をLevelized Tariffとして評価する。

表5.4 Levelized Tariff計算書例

出典:NEPRA

「パ」国では特にDebt Service(債務返済金、金利)が1-10yearに大きな負担となる。

14 日本エネルギー研究所;発電コスト評価の方法とその検討課題-OECD専門家会合の観点から-

Price Components 1-10Years

after COD 11-21Years

after COD 22-30Years after COD

i. Energy Purchase Price

a. Fuel Cost Component b. Variable O&M Local c. Variable O&M Foreign

d. Cost of Lime Stone - -

-e. Cost of Ash Disposal

ii. Capacity Purchase Price

a. Fixed O&M (Local) b. Fixed O&M (Foreign) c. Insurance Cost

d. Cost of Working Capital e. Return on equity

f. Debt Service (Principal Repayment and Interest Charges)

Levelized Tariff

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Levelized Tariffの評価基準はPolicy 1994によると表5.5に示されるが、認可事例とし て示すタール炭田のBlock IIのNEPRA認可値のように個別に判断されている。

表5.5 Levelized Tariffの評価基準 Policy 1994

Acceptable Tariff Block IIの認可値 i) Average 1-10 Years <6.5 Cent/kWh 11.6Cent/kWh ii) 1st Year <8.33 Cent/kWh 9.7Cent/kWh subsequent Year <6.66 Cent/kWh <8.7Cent/kWh iii) Levelized Tariff <5.91 Cent/kWh 8.5Cent/kWh

出典:Policy 2014およびNEPRA資料

また、ライフサイクルコスト以外にも受注者資格認定が応札時に行われる。

受注者資格認定項目は事業主体者により決定されるが、Sindh 州調達規定による入札資 格認定項目を下記に示す。

 直近5年以内の主業務に類似した1-3事業の経験

 PEC(Pakistan Engineering Committee)の認定または同等の人材、同等の 業務2以上、5-10年の経験者

 発注者が求める能力を持つ設備を所有または賃貸し、不具合なく実行する 能力

 直近2-3年の良好な財務状況と銀行保証または監査報告

 政府機関との訴訟、係争の有無

 その他 除外リストなど

b 「パ」国の電力取引額(Tariff)

「パ」国の国営、民営含めたすべての発電電力は NEPRA の規定する予定電力料金

(Upfront Tariff)と NTDC の購入電力料金(Tariff) により承認された金額で購入され る。

NEPRAの承認する予定電力料金は、発電所基本合意書(Letter of Interest)発効後のFS または入札を通して検討された後、下記の発電所建設費、保守運転費、予備費を建設事業者

がNEPRAに申請して決定、承認される。

98 (5) Tariffの歴史

1994年Power Policyは、水力発電低下の季節の電力不足を補うためIPP奨励を目的に

制定され、下記のようにIPP投資家に非常に有利な価格設定がされていた。

(1) 最初の10年間 US Cents 6.5/kWh (「パ」国ルピー払い) ただし、1997 年まで運開する 100MW以上の発電所にはUS Cents 0.25/kWhのプレミ アムを認める。

(2) その後の運転期間 US Cents 5.9/kWh ただし、年間債務により変動が可 能。

c Tariffの内訳

Capacity Price(容量価格): 月単位で支払われ、債務返済費、運用固定費および維持管理

費、保険費用および資本利益率に対して支払う。投資家の利益を守るため電力購入がなくて も支払われる。

Energy Price(エネルギー価格):送配電会社に売却された実際の電力量に基づいて、kWh

単位のルピーで支払われ、消費者へのコスト転嫁としての燃料価格の要素がある。

投資家からの下記の条件を満たすTariffの申請は承認される。

(1) 運開後10年の平均TariffがUS Cents 6.5/kWhを超えない場合

(2) 初年度US Cents 8.33/kWh、次年度US Cents 6.66/kWhを超えない場合 (3) 全運転期間を通してUS Cents 5.91/kWhを超えない場合

(4) 為替変動、燃料価格変動は調整される

d 国からの融資

投資家の出資比率が20%以上の民間投資に対しては世界銀行、USAID等の国際融資を受 けた国営融資基金Private Sector Energy Development Fund(PSEDF)から年利14%、8年 据え置き23年満期の融資を受けられる。

免税特権:発電設備投資には、法人所得税、輸入関税、販売税、その他救済税と印税およ び、配当所得税が免除される。

2002 年 Power Policy は産業振興のために電力市場の自由化を施行する目的で、従来の

電力セクターの役割分担を見直し電力料金への補助金、助成金を削減するために制定され た。

このPolicy により従来88%の電力発電供給を行ってきた WAPDAから3つの発電会社

(GENCO)と送配電会社(NTDC)が分離された。また、カラチ電力会社(KESC)が民

営化された。さらに電力セクターの公正な競争による企業・消費者保護の目的で国家電力規

制局(NEPRA)が設立され、現在の電力セクター運用の礎となった。