第 6 章 石炭火力発電所新増設プロジェクトにおける我が国企業の課題
6.1 我が国企業の競争優位と競争劣位、及び我が国の関心
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「パ」国電力セクターは、CPEC事業に大きく影響されており、このような状況下での 現地日本企業やサプライヤーの動向や意見を現地ヒアリングにより把握し、日本の技術で 解決できるプロジェクトモデルの立案を行った。
アンケートの集約を表6.1に示す。
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表6.1 我が国企業へのアンケート調査集約 Q1:「パ」国にお
いて注力する事業 分野
Q2:「パ」国での事業 拡大への障壁、課題 と、必要とする条件
Q3:「パ」国内炭の使 用で、優位と考える事 業内容
Q4: JCOAL調査事業で調査して欲しい情報、制度等の要望
国内メーカ
・石炭焚 超々臨界 圧発電プラント。
・大型GTCC(J形 及びF形ガスター ビ ン ) 、 中 小 型 GT。
・ 新 設 石 炭 火 力 発 電所。
・ファイナンス組成
・CPEC にて占拠す る中国企業との差 別化。
・工事履行時の治安 維持。
・日本の資金及び日 本製機器を使った 発電所建設のスキ ーム。
・イスラム圏ゆえの 商習慣・イスラム法 への対応。
・褐炭焚 USC タワーボ イラ。
・ 超 々 臨 界 石 炭 火 力 発 電。
・弊社独国子会社を活用 しての新規石炭焚き火 力発電所のコンサルタ ント業務。
・ガス化技術については 中国企業が席巻する市 場環境、環境負荷重視 でない状況を鑑みると
「パ」国への当該技術 の適用は尚早と認識し ている。
・政府の最新の方針(設備容量、電力需給量、今後の電源計画、石炭焚発電のシェア、
発電用燃料調達)。
・CPEC状況(中国330MW×2の事業スキーム、プロジェクトコスト詳細、送電線系 統の容量)。
・Merit Orderにて各発電所の稼働率を決る基準。
・最新鋭、最高効率GTCCが優先的に稼働する中、タール炭焚USC BTGの取扱い
・「パ」国市場でのタール炭と輸入炭の価格動向。
・輸入炭からタール炭への変更例(Lucky Power等)の経緯および実態。
・欧州ボイラメーカー採用はタリフ引上げが NEPRA より容認されている。日本ボイ ラメーカーにも同様の優遇の可能性ないか。
・発電機器へのインド製採用実態、障壁有無調査。
・石炭火力に関する環境規制(含む規制値)、今後の動向予測。
・タール炭田の開発状況(インフラ整備状況・開発スケジュール等)。
・既設石炭火力発電所で使用されている燃料炭に関する情報および現状の燃料炭での 運転状況(不具合等があれば)。
Q1:「パ」国において注力する事業分野 Q2:「パ」国での事業拡大への障壁、課題と、必要 とする条件
Q3:「パ」国内炭の使用で、優位 と考える事業内容
Q4 :JCOAL調査事 業で調査して欲しい 情報、制度等の要望
商社
・電力、鉄道、プラント、自動車、化学品
・「パ」国向け輸入炭供給。
・露天掘り専用の特殊建機のタール炭田へ の供給、及び今後建設される。
・石炭火力発電所建機供給。
・食料及び農業関連分野。
・国内エネルギー需給バランスの変化に対 応する関連事業分野。
・繊維産業関連分野。
・インフラ整備向け素材関連分野。
・消費財分野。
・CPECに沿った案件が中国資金で推進/建設されて おり、円借款案件に影響を及ぼしている。
・中国勢と競合する案件は取り上げない。
・円借款/JBICバイクレ活用案件に取り組む。
・交換書簡に至るまでのスピード。
・円借/JBIC案件増額。
・投資優遇制度を高め、「パ」国側が守る事。
・国内インフラ整備。
・治安、安全の確保。
・中央省庁と州政府の連携。
・複雑な手続き、税務手続きの煩雑さ。
・国内メーカはタール炭レベルの燃 焼技術及び実績を有しており、
USC の実績も含めれば他国との 差別化可能。
・石炭国内販売事業、輸入高品位炭 とのブレンド事業。
・コスト競争力のある褐炭が長期安 定して確保される場合には、国内 市場及び輸出を視野に入れた石炭 ガス化による化学品事業の可能性
・IPP事業案件。
・国内石炭生産状況、
石炭品質、今後建設 される石炭火力発電 の設計品位。
・国内炭生産コスト構 造(CAPEX, OPEX)補助金など の優遇政策の有無・
内容。
・環境規制。
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(2) 我が国企業の競争優位と競争劣位、及び我が国の関心のまとめ
第5章の「パ」国のニーズの優先順位として下記をあげた。
a 高効率省エネ技術による電力料金の削減が必要 b 空気汚染,水汚染など環境への配慮が必要
c 一次エネルギー(石炭、LNG)の輸入増加を抑える必要がある
我が国企業のアンケート、ヒアリングにおいて各企業は上記のニーズを十分承知してい ており、各社は高効率発電設備、石炭特に褐炭を使用したボイラ設備や、輸入炭と国内炭を 利用したビジネス(化学肥料会社への投資、輸入ガス処理、輸入石炭の運搬設備、タール炭 田炭坑設備)の構築などに商機を見出そうとしている。
しかし、CPEC 資金を背景にした中国勢の攻勢の中で、発電設備の基幹部分への参入は JBIC、JICA等の日本レンダー(金融機関)の案件か、ガスタービンによるGTCCの案件 など石炭火力以外の発電設備に注力している。
また、石炭火力等のEPC事業については EPC価格に競争力がない、邦人駐在者への安 全懸念などから参入を控えている。
特にCPEC案件で納入されつつある、中国製の亜臨界圧、超臨界圧石炭発電プラントに ついては、中国メーカとの価格競争をさけている。一方、超々臨界圧石炭火力については、
低品位炭では中国メーカにまだ、実績のないことをアピールして応札を検討した事例もあ る。(亜瀝青炭を使用するジャムショロ発電所増設計画)残念ながらアピールはオーナ側の コンサルタントに認められず本案件の入札を辞退している。
タール炭はさらに低品位の褐炭であり、タール炭田での超々臨界圧石炭火力では我が国 メーカは欧州での実績を訴えて商機が期待できるが、建設費の増大から電力価格の上昇は 避けられず、金融機関やコンサルタントとの連携が必要である。
一方、環境負荷対策技術については中国プラントへの環境影響を懸念する「パ」国内の関 心が環境優先に向かいつつあり、我が国の一体型環境設備に期待ができる。すでにJICA支 援で我が国の環境モニタリングシステムが「パ」国内の基準環境値計測に使用されておりを、
我が国環境設備への信頼性を背景にした優位性があると考えられる。
石炭輸入を抑制し、国内炭で代替する技術としては、まだ「パ」国内での導入実績はなく、
我が国の豪州、日本等での褐炭乾燥設備の実績は即対応可能な技術として優位性があると ともに第4章4.3で考察したように経済的にも可能性があると考えられる。
以上の技術の他に、我が国が保有する石炭ガス化、石炭灰処理、水処理等についても参考 として「パ」国への優位性を評価し表6.2に示す。
評価は本事業との関係性と我が国技術の優位性から、○本事業のプロジェクトモデルと して適用可能、△本事業の主眼ではないが参考技術として「パ」国に適用が可能、または、
将来適用が可能、×「パ」国における競争上適用できないものに区別した。
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表6.2 我が国企業が持つ技術等の競争優位と競争劣位
項 目 技術名 優 位 劣 位 企業の関心動向 評
価 石 炭 火 力
EPC
EPC エ ン ジ ニ ア リ ン グ
(コンサルタ ント)
技術力、技術評価の公 平性。プロジェクト管 理能力。仕様作成能 力。
価格。
レンダー(金融 機関)が日本以 外 の 場 合 に は
EPC エンジニ
ア リ ン グ へ の 参入は難しい。
日本ファイナンス案件の育成。 ×
EPC工事 品質・プロジェクト管 理能力。
価格。現地長期 滞 在 邦 人 の 治 安リスク。
現地EPCメーカとの協業。 ×
高 効 率 発 電設備
亜臨界・超臨 界プラント
品質・稼働率。 価格、納期。 中国では標準化しており価格 競争では競合をしない方針。
×
USC(超々臨 界)プラント
効率・品質・稼働率、
運転実績
褐炭焚きボイラ注)
価格、納期。
資金調達力。
効率と実績で中国を凌駕して おり市場参入したい。
○
IGCC 商用化段階
日本国内実証、商用で コスト低減に期待
( 中 国 は 開 発 段階)
将来輸入ガス火力の代替とし てプレゼンスを確保したい。
△
環 境 負 荷 低減設備
一体型環境設 備(AQCS)
総合効率・品質・稼働 率、運転実績
信頼性
価格 環境負荷増加に伴い総量規制 から厳しい規制値が排出元に 要求されニーズが生じる。
○
石 炭 乾 燥 設備
STD 日本、豪州の実績。品 質、信頼性。
価格。 ライセンス供与等による提供 が可能。
○
石 炭 改 質 設備
ガス化(化学 プラント)
商用段階 商用段階 代替エネルギーとの経済性が 合えば参入したい。特にアンモ ニア合成など。ただし、「パ」
国の市場には時期尚早と考え ている。
△
IGCC( 電 力 プラント)
技術は確立しており 商用段階
中 国 は 実 証 段 階
副生物・排 出 物 再 利 用設備
石炭灰再利用 実績、環境改善と社会 貢献
環境重視政策とインフラが整 備されれば参入したい。
△ 石膏再利用
水処理
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注)タール炭田山元発電のボイラは中国設計が認められていない。16
(参照資料からの抜粋)
タール炭田の資格審査において、2014年4月14日にドイツのRWE Powerがコンサル タントとしてベンダー監査報告書を提出した。それによると高水分褐炭の長期的な経験と ノウハウは、欧州ベンダーがプロセス、製造技術ともにプロジェクトに適した選択肢とした。
NEPRA はタール石炭発電に欧州ボイラ技術を組み込むという RWE の示唆/勧告を受け入
れ、MWあたり0.1百万米ドルの建設費増加を承認した。
(3) 石炭火力EPCの競争力
我が国企業が最近関与したプロジェクトの状況から我が国企業の石炭火力EPCも競争力 を考察した。
「パ」国におけるCPEC案件以外の石炭火力新増設計画は下記の2件がある。
調査チームは両発電所を訪問し、計画の概要を調査した。また、関係各方面の面談により その課題を分析した。
a. ラクラ発電所新設計画
ラクラ新発電所の建設に日本国際協力機構(JICA)は既に超臨界石炭火力発電所の設置 のための実現可能性調査が完了している。
一方、「パ」国政府は計画に対して下記を勘案して見直すとの現地新聞報道があった。17
「パ」国鉄道は既にCPEC プロジェクトに占有されており、さらなる電力プロジェ クトへの貨車のゆとりがなく石炭供給が困難。
アジア開発銀行(ADB)によるジャムショロ石炭火力発電所との電力価格の比較
ラクラ、ジャムショロ両発電所間が40 km未満と至近
国営電力で輸入炭を使用する新設石炭火力発電所
2018年に電力需給のアンバランスが解消の見込み
b. ジャムショロ発電所増設計画
ジャムショロ発電所の増設計画は調査チームの訪問した12 月20日現在ほぼ計画通りに 進んでいた。ただし、我が国企業は入札を断念した。現在の計画仕様は下記である。
出力・形式:660MW×2台, USC-主蒸気圧力24.1MPa/主蒸気温度590℃/再熱蒸気 温度590℃
16 出典:NEPRA TRF-TCUT/2014/7834-7836 Determination of the Authority in the Matter of Thar Coal Upfront Tariff July 9, 2014
17出典:The Express Tribune > Business 2017年7月30日
https://tribune.com.pk/story/1152123/new-lakhra-power-plant-pakistan-likely-turn-japans-financing-offer/