第 3 章 タール炭田開発状況
4.3 タール炭における乾燥技術適応可能性、経済性の分析
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表4.9 低品位炭の一般的特徴
低品位炭の利用 低品位炭の特性 メリット、デメリット
メリット
資源量が豊富(長期採掘可能) 長期的安定供給可能 産炭国の地理的偏在が少ない 供給地・ソースの多角化 露天採掘での低コスト開発可能 安価な石炭価格
高揮発分、低灰融点 燃焼性良、ガス化適
デメリット
高水分、低灰融点 熱損失大、ボイラ能力低下、CO2 排出量 の増大
輸送効率の低下 細孔容量が大きく、酸素官能基が多い 自然発火しやすい
輸送時、貯炭時の保安確保 利用にあたり、乾燥、改質、
ブリケット等二次的処理必要
エネルギー消費が大きくなり、設備費高 騰招く
出典:JOGMEC高度化調査報告書「低品位炭の活用」資料改変
低品位炭は、多い揮発分、少ない固定炭素で、小さい燃料比(固定炭素/揮発分)より、
一般に燃焼性は高く、水分が多いため水蒸気による排ガスが増える。
採掘後の低品位炭は、ある程度の水分が容易に抜け、その抜けた後の空隙に酸素が入り込 むことにより、自然発熱・自然発火の危険性が高まる。
また石炭化度の低く酸素含有率が高いほど自然発火しやすく、C/O(炭素/酸素)、3~6あ るいは炭素分(C)70%が最も自然発熱しやすいとされる。
低品位炭の灰の溶融点は一般的に低くスラッギング、ファウリングのリスクを高める。こ れまれで経験的に、スラッギングの要因は、硫黄分、またファウリングの要因は、ナトリウ ム分が影響されるとなっている。燃焼する低品位炭について、灰の溶融点が低く、かつ硫黄 分、ナトリウム分の高い場合は、燃焼設備の対策を必要とする。
褐炭は産地により様々な性状的特徴を有しており、適切に特徴を把握した上で有効利用 を検討する必要がある。特に考慮すべき性状として低発熱量、灰分、硫黄分、高ナトリウム である。
それぞれ利用時考えられる一般的な影響は下記の通りまとめられる。
(1)低発熱量(高水分。高揮発分)
ボイラ設備(燃料消費量の増加)
選炭設備、微粉炭機(ミル)、給炭機等の燃料系統
空気量・排ガス量の増加による空気予熱器、通風機
集塵機、脱硫・脱硝設備
ハンドリング性・粉塵発生
自然発熱・自然発火
粉塵発生
輸送効率の低下(単位発熱量当たりの輸送費用の増大)
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その他(トン当たりに生じる「石炭税」、「手数料」等、余剰コストの発生)
(2)高灰分
発熱量の低下
設備劣化(灰による磨耗等)
灰処理先の確保(セメント原料、埋め立て、石炭灰輸出等)
(3)高硫黄分
石炭燃焼により生じる硫化酸化物(SOX)の脱硫能力
脱硫にかかるユーティリティー
脱硫生成物(石膏)の処理
(4)高ナトリウム分
表4.10に示すように、石炭灰中のNa2Oがシリカと結び付くと、灰の溶融点が下がり、
ファーリング性(石炭灰が火炉出口後段部伝熱面等に付着し伝熱阻害、或いは空気予熱器の 閉塞が起こり易くなる現象)が高まる。
表4.10 ナトリウム成分による灰融点温度への影響
出典: "Combustion Fossil Power Systems/Combustion Engineering", USA
さらに使用する国の環境規制値を遵守することが必要である(硫化酸化物、窒素酸化物、
煤塵、微量元素)。
Element Oxide Chemical Compound
oF oC Property oF oC
Si SiO2 3,120 1,716 Acidic Na2SiO3 1610 877
Al Al2O3 3,710 2,043 Acidic K2SiO3 1790 977
Ti TiO2 3,340 1,838 Acidic Al2O3・Na2O・6SiO2 2010 1,099 Fe Fe2O3 2,850 1,566 Basic Al2O3・K2O・6SiO2 2100 1,149
Ca CaO 4,570 2,521 Basic FeSiO3 2090 1,143
Mg MgO 5,070 2,799 Basic CaO・Fe2O3 2280 1,249
Na Na2O Sublimes at 2,330 1,277 Basic Cao・MgO・2SiO2 2535 1,391 K K2O Decompses at 660 349 Basic CaSiO2 2804 1,540
Melting Temp. Melting Temp.
83 (2) タール炭における乾燥技術適応可能性
「パ」国においてタール炭をタール炭田地区の山元発電以外の石炭火力発電所に輸送し、
輸入炭との混焼または専焼を求める政府要請がある。
表4.11に現在山元発電以外でタール炭の使用を求められている石炭火力の一覧を示す。
表4.11 タール炭使用を求められている石炭火力一覧
発電所名 形態 燃料 運開年 出力MW 台数 Huaneng Shandong, Shandong
RuyiSahiwal Power Station (SC) IPP 輸入炭80%
タール炭20% 1号機2017
2号機2018 660 2
Port Qasim Power Station (SC) IPP タール炭
100% 2019,20
建設中 660 2 Hub Power Balochistan Power
Station (Sub-C) IPP 輸入炭80%
タール炭20% 2019
計画中 660 2 GENCO-I Jamshoro Thermal
Power Station 国営 輸入炭80%
タール炭20% 2019
計画中 600 1
しかし、褐炭であるタール炭の特性から輸送方法や受け入れ側発電所への影響から具体 的なタール炭の山元発電所以外への有効利用の方策が示されていない。
そこで本調査事業では、タール炭における乾燥技術の適用可能性について調査した。
乾燥によるメリットを表4.12に示す。
表4.12 タール炭乾燥のメリット
解決する課題 解決できる理由 注意点
低発熱量 水分が約 40%と多いため燃焼熱が蒸 気気化熱に奪われるが事前に乾燥す ることによりボイラでの発熱量が改 善する
受け入れ先ボイラの発熱量許容範 囲内を目標にする。
水分以外の成分比率も上昇する。
(硫黄分、ナトリウム分等)
ハンドリング性 水分を輸入炭レベルにするため輸送、
保管中および選炭設備、微粉炭機(ミ ル)、給炭機等の燃料系統での処理は 輸入炭と同じになる。
揮発成分による自然発火に注意が 必要。
表4.13にタール炭を乾燥した後の予想性状と輸入炭性状を示す。
ただし、タール炭の乾燥は水分を輸入炭と同じ10%まで乾燥するものとした。
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表4.13 タール炭乾燥後と輸入炭の性状比較
水分(%) 灰分
(%) 揮発成分
(%) 硫黄分
(%) 発熱量
(kcal/kg) 乾燥後タール炭予想(10%水分) 10.00 10.14 46.68 1.73 5,500
輸入炭
南アフリカ 8-10 8-10 13-15 < 1 6,500
インドネシア 8-18.5 7.5-19.5 25 0.2-0.75 5,300-5,700
以上からタール炭の乾燥により発熱量が輸入炭同等まで改善されることがわかる。
なお、表4.12に示した乾燥の結果注意すべき点への解決方法には、次の対策をとること ができる。
揮発成分:乾燥後の自然発火を防止するためPVA(Polyvinyl Alcohol)等のバインダーによ り石炭表面からの揮発を防止する。また輸送および受け入れ先設備(クラッシャー、ホッパ ー等)の機械的仕様に合わせるため輸入炭と同等のサイズ硬度をもつようにブリケット化 を行う。
硫黄分:受け入れ先設備の脱硫装置の能力を検討し、必要により能力の増加を行う。
石炭乾燥に使用される我が国メーカのSTD(Steam Tube Dryer)装置を図4.11に示す。
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図4.11 Steam Tube Dryer(STD)の構造 出典:月島機械
以上からタール炭への乾燥技術は適用が可能である。
本体支持 スクリュコンベア
本体駆動
排出ケーシング 乾燥機本体(シェル)
加熱チューブ キャリアガス
蒸気ドレン 乾燥品
排気ガス 蒸気 原料
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86 (3) タール炭における乾燥技術の経済性評価
日本メーカの建設費と「パ」国のタール炭価格および輸入炭価格を使用し、経済性を評価 する。
タール炭乾燥設備の仕様
乾燥炭生産量 160万トン/年(稼働率85%として215トン/h)
原料炭投入量 228万トン/年 乾燥蒸気用石炭 16万トン/年 STD台数 4台
注)乾燥炭年間160万トンは輸入炭焚き660MW 石炭火力の20%混焼2台分に相当
石炭仕様
原料 水分 40% 発熱量3,500kcal/kg 乾燥後 水分 10% 発熱量5,500kcal/kg
建設費 US$120Mil(フルターンキー)
10年償却、IRR18% 10年間平均負債返済額 US$27Mil/年 O&M US$1.5Mil/年
電気 消費量3,200kW/h 単価US15Cents/kWh US3.6Mil/年
タール炭価格
NEPRA 資料 12よりタール炭生産開始(平成 30 年)からのタール炭山元販売価格が表
4.14のように認可されている。
表4.14 タール炭の販売価格
以上から運開後約10年ごとの乾燥炭価格を算出し表4.15に示す。
12 NEPRA TRF-TCUT/2014/7834-7836 Determination of the Authority in the Matter of Thar Coal Upfront Tariff July 9, 2014
Year Variable Price US$/Ton
Fixed Price
US$/Ton Total Price US$/Ton
1-10 14.35 36.33 50.69
11-21 14.22 23.93 38.15
22-30 14.22 21.27 35.49
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表4.15 乾燥炭価格
輸入炭との価格比較
乾燥後のタール炭を輸入炭と切り替えるためには、輸入炭価格よりも廉価でなければな らない。図4.12に「パ」国における輸入炭の価格予想値とタール炭の価格および乾燥後タ ール炭のコストを示す。
図4.12 「パ」国における石炭価格とタール炭乾燥後コストの比較 出典:タール炭:NEPRA、輸入炭:SECMC資料から調査チーム作成
上記にはタール炭田から鉄道路線までの輸送費は含まれていない。
また、受け入れ先発電所の乾燥炭使用による環境負荷増加(特に硫黄分)費用は、含まれ ていないが、タール炭の乾燥技術には経済性があると考えられる。
0 20 40 60 80 100 120
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
石炭価格 US$/トン
)
石炭価格US$/トン
輸入炭
タール炭(乾燥後)コスト タール炭(乾燥前)
タール炭生産後 年
Year
乾燥炭生 産量 百万トン/ 年
石炭購入量 百万トン/年
原料石炭購 入額 US$Mil/年
負債返済 US$Mil/年
O&M US$Mil/
年
電気代 US$Mil/
年
合計コス ト US$Mil/
年
乾燥炭単 価 US$/ト ン
1-10 160 244 12,368 27 1.5 3.6 12,400 77.5
11-21 160 244 9,309 0 1.5 3.6 9,314 58.2
22-30 160 244 8,660 0 1.5 3.6 8,605 53.8
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