第 5 章 「パ」国における電力セクター市場動向
5.3 中国企業の動向と主なプレーヤー
「パ」国におけるエネルギー・電力セクターでの中国企業の動向は、中国・パキスタン経 済回廊(CPEC)による計画、建設状況を調査することにより概況を知ることができる。
中国政府は2015年、新疆ウイグル自治区のカシュガルとパキスタン・バルチスタン州の グワダル港を結ぶ「中国・パキスタン経済回廊(CPEC)」構想を発表した。図5.2にCPEC 計画の概要を示す。
図5.2 CPECの計画概要 出典:Wall Street Journal 2015.6.25
101 (1) 習近平中国国家主席訪問時のMOU15
中国の習近平(Xi Jinping)国家主席が2015年4月20日、「パ」国を公式訪問し、ナワ ズ・シャリフ(Nawaz Sharif)前首相と会談(写真5.1)。中国が推進する「一帯一路(陸 と海のシルクロード経済圏)」構想の実現に向けて、総額460億ドル(約5兆5,000億円)
を「パ」国に投資する計画を発表した。その後投資予定額は 620 億ドルまで増加した。ま た、CPECの最終的な期限は2030年としている。
中国・パキスタン経済回廊(China-Pakistan Economic Corridor、CPEC)「一帯一路」
構想の旗艦プロジェクトで、「パ」国における道路や鉄道、パイプラインなどのインフラ整 備を進め、中東からの原油輸送ルートを大幅に短縮することを目指している。CPEC を通 じて「パ」国を地域経済のハブ(中心拠点)とし、新疆ウイグル自治区の発展につなげたい のが中国の考えである。一方、「パ」国はアッサン・イクバール(Ahsan Iqbal)前計画・開 発相が中心となり、中国資金援助によりインフラ整備に110億ドル(約1兆3,000億円)、
エネルギー関連の開発に350億ドル(4兆2,000億円)を投資し、資金難で停滞していた経 済発展を目論んでいる。
写真5.1
パキスタン・ラワルピンディの空軍基地に到着し、出迎え たナワズ・シャリフ前首相(右)と握手する中国の習近平国 家主席(左、2015年4月20日撮影、提供)。(c)AFP/PRESS
中パ両国の MOU による石炭火力発電設備を含む支援プロジェクトと支援金額を表 5.6 に示す。
石炭火力関連では合計出力9,540 MW、合計支援金額15,790 Mil US$に及ぶ。
石炭火力以外でも水力発電、太陽光発電、風力発電および送電ラインへの支援が合意され ている。表5.6の各分野別には表5.6の下記番号を参照のこと。
石炭火力発電:1,3,4,6,10,13,15,17 水力発電 :2,5,11,16,20,21 太陽光発電 :7 風力発電 :8,9,12,18,19 送電ライン :14(Matiari to Lahore Line)
15 List of Agreements/MoUs Signed during visit of Chinese President
102
表5.6 CPEC エネルギーセクター支援プロジェクトと予想金額(*は石炭火力関係)
CPEC-Energy Priority Projects
# Project Name MW Estimated
Cost(US$ M)
*1 2×660MW Coal-fired Power Plants at Port Qasim Karachi 1,320 1,980 2 Suki Kinari Hydropower Station, Naran,Khyber
Pukhtunkhwa 870 1,802
*3 Sahiwal 2x660MW Coal-fired Power Plant, Punjab 1,320 1,600
*4.1
Engro Thar Block II 2×330MW Coal fired Power Plant 660
2,000 TEL 1×330MW Mine Mouth Lignite Fired Power Project at
Thar Block-II, Sindh, Pakistan 330
ThalNova 1×330MW Mine Mouth Lignite Fired Power
Project at Thar Block-II, Sindh, Pakistan 330
*4.2 Surface mine in block II of Thar Coal field, 6.5 million
tons/year - 1,470
5 Hydro China Dawood 50MW Wind Farm(Gharo, Thatta) 50 125
*6 300MW Imported Coal Based Power Project at Gwadar,
Pakistan 300 600
7 Azam 1000MW Solar Park (Bahawalpur) Quaid-e-Azam
300
1,302 600
100
8 UEP 100MW Wind Farm (Jhimpir, Thatta) 100 250
9 Sachal 50MW Wind Farm (Jhimpir, Thatta) 50 134
*10 SSRL Thar Coal Block-I 7.8mtpa &SEC Mine Mouth Power
Plant(2×660MW) 1,320 3,300
11 Karot Hydropower Station 720 1,420
12 Three Gorges Second Wind Power Project 50 Three Gorges Third Wind Power Project 50 150
*13 CPHGC 1,320MW Coal-fired Power Plant, Hub,Balochistan 1,320 1,940
14
Matiari to Lahore ±660kV HVDC Transmission Line Project - 1,500 Matiari (Port Qasim) —Faisalabad Transmission Line
Project - 1,500
*15 Thar Mine Mouth Oracle Power Plant ( 1320MW) & surface
mine 1,320 1,300
Subtotal 11,110 22,373
103 CPEC-Energy Actively Promoted Projects
# Project Name MW Estimated
Cost(US$ M)
16 Kohala Hydel Project, AJK 1,100 2,397
*17 Rahimyar khan imported fuel Power Plant 1320 MW 1,320 1,600
18 Cacho 50MW Wind Power Project 50
19 Western Energy (Pvt.) Ltd. 50MW Wind Power
Project 50
Subtotal 2,520 3,997
CPEC-Potential Energy Projects
# Project Name MW Estimated
Cost(US$ M)
20 Phandar Hydropower Station 80
21 Gilgit KIU Hydropower 100
Subtotal 180 0
Grand Total 13,810 26,370
Coal-Fired Thermal Power (incl'd Mine) 9,540 15,790
出典:http://cpec.gov.pk/energy
なお、融資ドナーはCDB(China Development Bank Corporation:中国国家開発銀行)と ICBC(Commercial Bank of China Limited:中国工商銀行)である。
(2) CPEC初号機発電所の進捗状況
a. Sahiwal発電所
660MW×2台, 超臨界(SC)タービン入口主蒸気圧力24.0 MPa、蒸気温度580℃/580℃ CPECプロジェクトとして最も進んでいるのはSahiwal 1、2号機である。
このプロジェクトは2013年にPunjab州政府と中国西部電力公司とMOUを締結した。
1号機は2017年5月に併入し2号機も2017年6月に完成し、2017年7月3日に商業運 転を開始した。
発電所は、「パ」国の最初の超臨界石炭発電所(蒸気温度580℃)で、発電端効率は42.11%
である。
発電所は、株式の51%を所有する山東如意科技グループと49%を保有する華能山東省の 共同コンソーシアムによって建てられた。「パ」国政府は、コンソーシアムから電気を8.3601
104
セント/ kWhで購入し、30年間運転した後、プラントの所有権はパンジャブ州政府に移管 される。
プロジェクトサイトは、パンジャブ州政府が無償で提供した合計690ヘクタール(1,700 エーカー)に及び、発電所専用の鉄道建設が含まれている。
プラントには灰分と硫黄分の排出量を低減するための大気モニタリングシステム(煙道 ガス脱硫)と静電集塵装置が含まれており、下部バーリドゥーブ運河からの水を毎日 6 万 立方メートル使用する。
発電所に使用される石炭は、インドネシア、南アフリカから輸入され、カラチ港とカシム 港から鉄道で年間480万トンが輸送される。
タール炭は、硫黄分と灰分が多く含まれていることから、プロジェクトにとって品質に問 題があり、石炭の供給も採掘開始前で不透明であると考えられた。そのため、タール炭と輸 入炭との混焼は効率の低下とボイラの信頼性を損なう可能性があるため不適切とされた。
このプロジェクトは合計で18億ドル(US$1,360/kWh)の建設費用が予想され、80%が 中国工商銀行からの融資、残り20%を中国コンソーシアムが負担した。
b. Port Qasim発電所
660MW×2台, 超臨界(SC)タービン入口主蒸気圧力24.0MPa、蒸気温度566℃/566℃ シンド州におけるCPEC初号機はPort Qasim1号機である。
Power China Bin Qasim案件のEPC ContractorはSEPCO III(山東電力建設第三工程 公司)であり、SEPCO IIIはPower Chinaの子会社でPower Chinaは中国水電公司の子 会社である。1号機は2017年11月27日に運開し、式典にはアバシ首相も出席した。
調査チームは12月21日に現地調査を行ったので以下に示す。
<プラント概要説明>
Sahiwal、HABCOと同じくCPECの初号機として注目されている。(外観美観、設備仕
様とも十分にPR効果がある)
超臨界2台を2015年5月から建設開始し、2017年11月に1号機運開、2018年3月に 3か月前倒しで運開予定。(2台同時信頼性試験を要求されている)電力はカラチ電力(KE)
の500kVラインで送電。ボイラはハルピン、タービンは東方、EPCを山東電建が担当する。
燃料はインドネシア、南ア、オーストラリアの輸入亜瀝青炭を100%使用する。タール炭 は当初採炭スケジュールが未定であり、品質上機器の安全に不適切として使用しないこと で認められている。
効率は発電端で41%、送電端で38%と超臨界の割に高くないのは、復水器冷却をクーリ ングタワーで行うためタービン排気圧が10.2 kPaと悪いためと思われる(沿岸にもかかわ らずクーリングタワーを使用するのはマングローブ保護のため海水温度をあげないためと いう)。
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建設費は2台合計21億ドル(US$1,590/kWh)で、Qatar's Al-Mirqab CapitalとChina's Power Construction Corporationが出資し、両者のJVであるPort Qasim Energy Holding がBOO(建設・所有・運営)を行い、Port Qasim Energyがメンテを含めて運用する。「パ」
国の基準建設費は660 MWで1台約8億ドルであるが、それより高いのは超臨界、クーリ ングタワーのほか、1,600 トン/H ブリッジ型アンローダ2 台の石炭積おろし桟橋(Jetty) と浚渫、埋設地のためのパイル工事のためと考えられる。
写真5.2 Port Qasim全景
(左が2号ボイラ、左側は石膏サイロ) (ベルトコンベヤーは、カバー或は密閉型。右手に見えるフェン スは貯炭場のWind Wall)
<環境機器と排出物処理>
環境基準はWorld Bank基準、環境装置は、ESP、FGD(湿式石灰石石膏法)でSCRは スペースのみ確保。煙突は200m。(通常270m、航空障害のため)
ライムストーンはパウダーで現地調達。石炭灰、石膏はLucky Cementに販売する予定。
FGDは中国運達(CBIH)製で再加熱なし、60℃で煙突に排出。
殆ど中国からの輸入(関税要)で、現調品は素材と役務程度。
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