第 3 章 タール炭田開発状況
3.4 タール炭田地域における石炭火力発電所及び関連設備(工業用水・送電線等)開
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3.4 タール炭田地域における石炭火力発電所及び関連設備(工業用水・送電線等)開
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図3.26 調査時点の発電所工事進捗率(約60%) 出典:SECMC
56 (2) 工業用水
タール炭田が砂漠地帯にあり、地域住民は地下水以外に飲料、農業用、牧畜用の水はなく、
タール炭田の炭坑および山元発電所用の工業用水は Sindh 州がインダス川流域での排水を
排水路(Left Bank Outfall Drain)を通し海に流している一部をくみ上げて貯水池に供給す
る。
貯水池は相互に約 120 km 離れた二段方式で、一段目は Nabiser Reservoir、二段目は
Vajbigar Reservoirと呼ばれる。両者は、直径1m程度のパイプラインで結ばれている。
一段目(Nabiser Reservoir)は排水路から数 10km の箇所に設置され、RO(Reverse
Osmosis)で排水を脱塩処理したのち二段目の貯水池に送出する。
二段目の貯水池から発電所までの供給設備(ポンプステーション、配管工事)は発電所側 の費用負担となる。ただし、これらの設備費と水利用料は売電契約(PPA)の電力料金(Tariff) に加味され回収される。図3.27に工業用水ルートを示す。
図3.27 工業用水ルート
出典:330MW Coal-Fired Power Plant in Energy Park, BlockⅡ, Environmental and Social Impact Assessment
調査チームは二段目の貯水池を視察した。長辺560m×短辺280m×2槽:二つを隔てる 部分が約10m で、コンクリート製の板で覆い、両方ともシールライニングが終了している。
この貯水池から炭鉱の各 Block に発電所冷却水として送水するが、現在の容量では Block IとIIへの供給が限界で、さらに同じ貯水池を設置するか、今後建設する発電所は空気冷却 にして使用量を抑えるかSindh州で検討中である。
一段目貯水池
二段目貯水池
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送水設備費と工業用水使用料回収のための電気料金と、空気冷却による発電所効率の低 下による電気料金との経済性比較が必要である。
二段目貯水池近傍の状況を写真3.6、写真3.7及び写真3.8に示す。
写真3.6 二段目貯水池
写真3.7 工業用水受け入れ配管
写真3.8 一段目と二段目貯水池の間のパイプライン 撮影:IAE (2016.7.19)
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図3.28に調査チームの現地への道程と、図3.29に現地調査移動道程路示す。
図3.28 調査チームのタール炭出までの道程(カラチより片道366㎞、約6時間)
出典:Google Map
図3.29 調査チームのタール炭田内道程(全行程122km)
出典:Google Earthデータを改編
カラチ タールロッジ
Block II発電所
Block II炭鉱
Block V地下ガス化プラント
貯水池
タールロッジ
59 (3) 送電
図3.30に2014年のCPEC計画前の「パ」国電力送電網を示す。カラチとダドウまでは
500kV2系列のみで非常に脆弱な送電網であった。北部についてもイスラマバードとラホー
ルの間は迂回網があるものの500kV2系列で脆弱であることに変わりはなかった、
図3.30 CPEC前の電力送電網(2014年)
出典:NTDC2015年
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図3.31にタール炭田山元発電所やカラチ港近隣の輸入炭火力およびラホール近隣のサヒ ワル他水力、太陽光発電を考慮した2030年の電力送電網計画9を示す。これには南部のか ら北部のラホールまで±660kV高圧直流送電8系統が示されている。そのうち4系統はイ スラマバード方面用である。
図3.31 2030年までの電力網計画 出典:NTDC2015年
9 NTDC PAKISTAN POWER SECTOR BACK-GROUND, PRESENT SITUATION & FUTURE PLANS
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図3.32に2019年―2020年の電力送電網計画を示すが、±660kV高圧直流送電は2系 列がラホール向け、2系列がイスラマバード方面となっている。
南部のカラチ地区はタール炭田山元発電所ばかりでなく、カラチ港近郊の輸入炭火力発 電所の建設進捗から500kVラインを系統予定している。
調査チームによる NEPRAへのヒアリングで、CPEC の発電所建設が順調であり、電力 需給がバランスしてきており、電力送電網計画を見直すとの発言があった。
また、地元紙によると、高圧送電網の用地買収が遅れから、CPECの主要プロジェクトで ある送電系統工事Port Qasim ライン 500kV、Gharo ライン 220kV、さらに Rahim Yar
Khan-Moro ライン 500kV が適切に進められておらず、工事予定の遅れが新時代の送電見
通しを危うくしているとの情報もある。10
さらに、調査チームのタール炭田現地調査で写真3.9に示すように発電所までの送電線建 設は進んでおらず、写真3.10の送電設備資材置き場にも資材はわずかで、炭鉱工事、発電 所建設工事の進捗に対して送電網の遅れが見られた。
写真3.9 Block II発電所全景(入門所から見る)
出典:調査チーム撮影
写真3.10 送電設備資材置き場(後方にケーブルロールが見える)
出典:調査チーム撮影
10 DAWN紙2017年7月8日 https://www.dawn.com/news/1343890
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以上から±660kV 高圧直流送電をはじめとする南北間の送電網計画スケジュールを見直 ししているものと思われる。
尚、「State of Industry Report 2016」(NEPRA/National Electric Power Regulatory Authority)に寄ると、タール炭鉱地区(1,320MW Thar Coal Mine Power Plant)~Matiari まで250kmの500kV 2系統が2020年8月までに、またタール炭鉱地区(1,320MW Oracle Power Plant)~ラホールまでの500kV 2系統(1,320MW)の送電が2021年3月までに完成 予定である(図3.32)。
図3.32 2019-2020年の電力送電計画 出典:NTDC(2016年)
63 (4) 輸送(鉄道)
「パ」国における輸入炭の輸送は国営のPakistan Railwayが行っている。
Pakistan Railwayは連邦政府の鉄道省(Ministry of Railway)に属しており、全路線超 11,881km(日本はJR,民鉄合計27,655km)である。
図3.33に「パ」国の現在の鉄道網を示す。
2017年に運開したCEPCのSahiwal発電所660MW2台は輸入炭が使われており、年間 約8百万トンを1,100km離れたカラチ港から鉄道輸送しなければならない。
現在の同路線の設計輸送能力は 1日 90 往復であるが、老朽化と劣化のために実働は40 往復である。年間800 万トンの石炭輸送には約 7-8往復の石炭列車が必要で、鉄道省は補 強工事を行っている。
図3.33 「パ」国の現在の鉄道網
出典:Pakistan National Railways
さらに今後の発電所計画ではジャムショロ発電所増設、ラクラ発電所新設などがあり輸 送能力の不足が危惧されている。こうした状況を改善するため「パ」国はCPEC融資額か
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ら 84 億ドルを使って鉄道の高速化と能力拡大を、2021 年までに完成するように目指して いる。
図3.34にCPECの鉄道強化計画を示す。
図3.34 CPECによる鉄道計画 出典: www.CPECvela.com
鉄道輸送能力が解決されても輸送費が US$10/トンと見積もられておりカラチ港渡し約 US$100/トンの輸入炭が発電所渡しで高額になる問題が解決されていない。
現在の NEPRA の承認電力料金には輸送費増加分を含んでおらず、実績金額が提示され
た段階で大きな問題になる可能性がある。
65 (5) ガスパイプライン
図3.35に現在の「パ」国ガスパイプラインの幹線系統図を示す。
タール炭田地区から幹線までは約160km離れている。
また、将来LNGの輸入制限を意図し、タール炭をガス化してパイプラインへ供給するに は、合流後の発熱量の調整が必要になる。発熱量の調整が難しい場合、山元発電による消費 か化学肥料工場へのローリー輸送が必要になる。
図3.35 「パ」国のガスパイプライン系統図
出典:INTER STATE GAS SYSTEMS (PVT) LTD.
タール炭田 Sui Southern Gas Company Sui Northern Gas Pipelines Limited
66 (6) 石炭地下ガス化(UCG)Block Vプラント
2017年11月28日の現地調査時にタール炭田Block Vにおいて実施されている石炭地下 ガス化(UCG)実証プラントを視察調査した。
視察内容;
・ 8MWのパイロット試験を実施した。100MWの実証設備を計画中。
・ 8MWのパイロット設備の概要:
UCG ガスを洗浄後水封タンクに貯蔵して発熱量の平準化を図る。その後、500kW のガ スエンジン(16台で計8MW)で発電後に所内で使用する。系統には連携せず、所内用ディ ーゼルを停止する。所員全体で300人。エンジニア36名、テクニシャン80名、残りは地
元のhelper。helperは教育してから他の職場に転職させる。キャンプにエンジニアとテク
ニシャンが10日交替で常駐。連続勤務が終わると自宅に戻る。
UCGは3本のパイプを50m間隔で設置し、一本が空気供給(1~2MPa)、残りがガス回 収。700℃から550℃にてガス化。15時間ごとに切り替える。水平配管との距離を1.5~2m 離す。20mくらいの幅で石炭が燃える。最大700Nm3/hの合成ガスが発生する。オンライ ンアナライザーで組成が一定になるよう監視。平均の発熱量は800kcal/Nm3である。水洗 塔でタール、チャーを落とし、EP塔で残りの固形分を除去し、50℃にクールダウンし、水 封タンクに貯蔵。水封タンクは直径50m、高さ32mの三段式。水封タンクで平準化後、炭 酸ソーダと5酸化バナジウムでH2Sを除去し、脱水塔、チラーによる水分除去ののちガス エンジンへ。500kWのガスエンジン16台を台数制御。12シリンダー、1,000 rpm、5-6kPa で合成ガスを供給。
起動時は5台のディーゼルエンジン発電機に依存。ガスエンジンの動力が動き始めると、
少しずつディーゼルを切り離す。12kVで供給する。
ファンドは「パ」国のDOE、教育訓練関連の部署、Sindh州のエネルギー省の3つ。オ ーストラリアUCGからの融資は中止されている。
次の段階は、100MWのガスタービンで発電することを考えている。発電原価6~7 RP/kW。
効率 35~40%。ガスタービンの燃焼排ガスは熱回収してから、地下に供給する計画。酸素 を入れて合成ガスの発熱量を上げることも考えている。
ただし、調査チームの「パ」国関係者への聞き取りでは本プラントは実証のみで商用化の 計画は未定とのことであった。
写真3.11および写真3.12に現地の様子を示す。
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写真3.11 UCGクリスマスツリーと水封タンク
写真3.12 UCGガスエンジン建屋とガス配管
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