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発電所組織

ドキュメント内 自律性マネジメントの研究 (ページ 44-49)

第三章 自律性マネジメントの仕組みと機能⑴ ケース・スタディ:AES Corporation

⒉ 発電所組織

ニットに完全に分権化されている。このように本社へのスタッフ機能の集中化を抑えた結 果,本社従業員数は 40〜70 人程度になっていたという。戦略計画グループ(Strategic Planning Group)とは長期的なグローバル戦略計画のサポートを役割とする部署で,

SVP のロジャー・ネイル(Roger Naill)以下五人の小規模スタッフで運営され,全社的 な視点から競合他社の状況,各国法制度の変化,技術革新などを調査し,コア・ビジョ ン・チームやグループ,発電所組織,プロジェクト組織に対して戦略計画策定上の情報提 供を行うことが役割であり,戦略計画という字義通りの役割ではない108。なお,2001 年 の財務危機以降はコスト削減部署(Cost Cutting Office)と事業再編部署(Turnaround Office)を急遽設置し,その後も人事管理,資材購買,事業開発,リスク管理といった機 能を本社に集中させる形で設置するなど漸次的に組織改編が進められており,ライン組織 と同様にいくらか中央集権化を強めている109

れは同社の高効率の発電所稼働というミッションを達成するためには,AES 自らが運営 責任を持たねばならない,という会社の考えに基づいている112。AES の主力事業である IPPs の発電所はそれぞれに近接する公益系電力会社と電力販売契約を結び,顧客が自社 で発電した場合のコストから購入した場合のコストを引いた場合の節減額が収入として支 払われる。このため,より高い収益を上げるには,低コストで効率的,高稼働率を維持し た運営を行うことが必須となる113

世界中に展開する発電所組織は,発電所の運営に関連する権限と責任を委譲された,自 律性の強い事業単位となっている。各発電所組織は日常的な電力供給オペレーションの実 行に責任を負うのみでなく,その裁量範囲は発電所の年次戦略,予算計画,資材購買,設 備改良,取引先の選定,安全,保守,環境対策,採用・評価・育成などの人事管理,地域 社会への対応,さらには前述の植樹活動や学校建設への寄付などの社会貢献活動などにま で及ぶ。上部組織の機能が大幅に縮小されている一方で,発電所組織は財務,技術,人事 管理,地域社会をはじめとするステークホルダーへの対応などで大幅な裁量権限・責任が 委譲され,上部組織からの直接的な指揮や介入をほとんど受けずにオペレーションを遂行 する,自律化された事業ユニットになっている114

AES における自律性マネジメントの取り組みは,発電所組織への裁量権限の委譲に止 まらず,発電所組織内で働く現場従業員,つまり組織の最下層レベルまで徹底されている。

発電所組織は運営責任者である発電所マネジャー以下,チーム・リーダーを中心に各チー

ム 15〜20人のメンバーで構成するチーム制組織に編成され,各チームが発電所業務を構

成する水処理,コントロール室,ボイラー,タービンなどの作業領域を担当する。各メン バーは一意対応的な職務にのみ責任を負う単純化・硬直化された働き方はせず,チーム内 のあらゆる課業に責任を持ち,メンバー間の柔軟な協働を通じて働く,つまりチームワー クを発揮した働き方が求められる。作業監督者(operations superintendent)とシフト 監督者(shift supervisor)の職制層は1987年の作業組織改編以降(後述する「蜂の巣シ ステム」の導入開始年に当たる)は廃止され,管理監督責任はチームに委譲されている。

このため,チームに所属する現場従業員と発電所マネジャーの間には,発電所マネジャー への報告義務を持つチーム・リーダーがいるのみであり,発電所トップと現場の距離は非 常に近い。加えて,発電所トップと CEOの間には一つのライン階層(グループ・マネジ ャー)しかないため,現場のチームから CEO までの距離も三階層を挟むのみである。

1990 年代後半からは設備メンテナンス業務も現場の作業チームに包含するよう再編され,

現場作業者と専門職間の壁を取り除く処置を取っている。また,諸事業の規模に応じて異

を所有している施設はおよそ7割に達していた。AES Corporation 2001 Annual Report Form 10-K, op.

cit., pp. 13-16.

112 AES Corporation 1997 Annual Report Form 10-K, op. cit., p. 9.

113 AES Corporation Annual Report 1996 Form 10-K, op. cit., p. 3; Paine, L. S., op. cit., 1994a, pp. 2-4.

114 Bakke, D., op. cit., pp. 85-108; Paine, L. S., op. cit., 1994a, pp. 4-10.

同はあるものの,原則的に発電所組織の従業員数は上限300人とすることが定められてい る。これにより組織を小規模に抑えることで個々の従業員が担う裁量権限・責任を拡大し,

個々人の職場に対する当事者意識やタテヨコでの相互作用が発揮されやすい組織規模を保 っている115

現場作業組織の自律化に対する AES の最も積極的な取り組みは,同社で「蜂の巣シス テム(Honeycomb System)」と呼ばれる発電所組織構造および課業遂行システムに現れ ている。この「蜂の巣システム」は,発電所組織の運営に必要な直接作業やスタッフ業務,

管理業務を作業チーム,タスク・フォース,コミッティーなどの小組織単位で担うよう編 成し,従業員がそれぞれの組織単位に柔軟に参加することで,全ての発電所従業員が発電 所組織内のあらゆる業務に関与する責任を持つ,全員で組織を自己管理する仕組みになっ ている。各作業チームは課業の達成に責任を負うと共に,チーム予算,作業量,安全,作 業スケジューリング,メンバーの働きぶりの評価,資本支出,購買,新規メンバーの採用,

品質管理,メンテナンス業務,取引先の選定など,一般的な作業組織では職制や専門職が 管理する業務にまで裁量権限・責任を持つ116。チームによる働き方と裁量権限・責任の

115 Bakke, D., op. cit., pp. 85-108; O’Reilly, C., and Pfefffer, J., op. cit., pp. 151-174; Pfeffer, J., op.

cit., 1996, p. 77; Pfeffer, J., op. cit., 1997, pp. 6-27; Wetlaufer, S., op. cit., pp. 110-123; Paine, L. S., op. cit., 1994a, pp. 1-13; Waterman, Jr., op. cit., 1994(邦訳150-192頁);Waterman, Jr., R. H.,

Adhocracy: The Power to Change, 1990(平野勇男訳『アドホクラシー:変革への挑戦』TBSブリタ

ニカ,1990年,169-209頁); Smith, K. A., and Sims, Jr., H. P., op. cit., pp. 171-195; Grant, R.

H., op. cit., pp. 354-378; Smith, K. A., “(More) Dennis Bakke of AES Corporation,” in Manz, C.

C., and Sims, H. P., The New Super Leadership, BK Publishers, 2000, pp. 206-213; AES Corporation 1996 Annual Report Form 10-K, op. cit., p. 3; AES Corporation 1997 Annual Report Form 10-K, op. cit., pp.

12-13; AES Corporation 1998 Annual Report Form 10-K, op. cit., p. 10; AES Corporation 1999 Annual Report Form 10-K, op. cit., p. 10; AES Corporation 2000 Annual Report Form 10-K, op. cit., p. 6.

116 既存研究では,このように現場の作業チームに広範な裁量権限・責任を移譲し,チーム・リー ダーを中心にしてメンバー自らが課業と職場を自己管理する作業システムは,「自己管理型チーム

(self-managed teams)」や「自己統制型チーム(self-directed teams)」などと呼称されている。

自己管理型チームの先駆的な研究者であるManz & Simsは,AESの「蜂の巣システム」を自己管 理型チームの模範的取り組みとして取り上げている。詳しくは以下の文献を参照。Smith, K. A., and Sims, Jr., H. P., op. cit., pp. 171-195. また,自己管理型チームについては以下の代表的な研究 がある。Beyerlein, M., and Johnson, D. A., (eds.) Advances in Interdisciplinary Studies of Work Teams:

Theories of Self-Managing Teams, JAI Press, 1994; Cohen, S. G., and Bailey, D. E., “What makes Teams Work: Group Effectiveness from the Shop Floor to the Executive Suite,” Journal of Management, Vol.23, No.3, 1997, pp. 239-290; Fisher, K., Leading Self-directed Work Teams, McGraw-Hill, 2000; Gittleman, M., Horrigan, M., and Joyce, M., “Flexible Workplace Practices: Evidence from a Nationally Representative Survey,” Industrial and Labor Relations Review, Vol.52, No.1, 1998, pp. 99-115; Ichniowski, C., Shaw, K., and Premushi, G., “The Effects of Human Resources Management Practices on Productivity: A Study of Steel Finishing Lines,” American Economic Review, Vol.87, No.3, 1997, pp. 291-313; Lawler, E. E., Mohrman, S. A., and Benson, G.,

Organizing for High Performance, Jossey-Bass, 2001; Manz, C. C., and Sims, H. P., Business Without Bosses, John Wiley & Sons, 1993; Marchington, M., “Teamworking and Employee Involvement:

Terminology, Evaluation and Context,” in Procter, S., and Mueller, F., (eds.) Teamworking, Mackmillan, 2000, pp. 60-80; Yeatts, D. E., and Hyten, C., High-Performing Self-Managed Work Teams, Sage Publishing, 1997; Appelbaum, E., and Batt, R., New American Work Place, ILR Press, 1994.

広範さが組み合わさることで,メンバーは自己管理しながら柔軟かつ多様な業務に参加す ることになる。「蜂の巣システム」ではメンバーに頻繁なジョブ・ローテーションが奨励 されており,チーム内,さらには他チームとの間でもメンバーの交換を行い,新規業務を 学習する。未経験のチームに異動する際には試験の合格が条件とされており,また技能が 未熟な新規メンバーにはメンターを付けてサポートをする体制をとることで,メンバー異 動による現場の混乱を抑えている117

117 Bakke, D., op. cit., pp. 85-108; O’Reilly, C., and Pfefffer, J., op. cit., pp. 151-174; Pfeffer, J., op.

cit., 1996, p. 77; Pfeffer, J., op. cit., 1997, pp. 6-27; Wetlaufer, S., op. cit., pp. 110-123; Paine, L. S., op. cit., 1994a, pp. 1-13; Waterman, Jr., op. cit., 1994(邦訳150-192頁);Waterman, Jr., R. H., op. cit., 1990(邦訳169-209頁); Smith, K. A., and Sims, Jr., H. P., op. cit., pp. 171-195; Grant, R. H., op. cit., pp. 354-378; Smith, K. A., op. cit., pp. 206-213; AES Corporation 1996 Annual Report Form 10-K, op. cit., p. 3; AES Corporation 1997 Annual Report Form 10-K, op. cit., pp. 12-13; AES Corporation 1998 Annual Report Form K, op. cit., p. 10; AES Corporation 1999 Annual Report Form 10-K, op. cit., p. 10; AES Corporation 2000 Annual Report Form 10-10-K, op. cit., p. 6.

図3-2 AESの「蜂の巣システム」のイメージ図

出所:Bakke, D., op. cit., pp. 85-108ほか,複数の資料を参考に筆者作成118 注:図中の各矢印はメンバーの異動を表している。

さらに,「蜂の巣システム」によって発揮されるメンバーの仕事上の多様性と自由裁量 は,各作業領域に責任を負うよう公式化された作業チームを超えた範囲にまで拡大されて いる。前述の通り発電所組織には人事管理や予算計画,購買などのスタッフ機能が委譲さ れているが,これら機能は発電所組織内で専門部署化せず(本社と同様に会計部署のみ設 置している),チーム・メンバーが必要に応じて構成するタスク・フォースやコミッティ ーが対処することになっている119。このようなオフライン業務への参加は,同社で「80

118 具体的には,以下の資料を参考にしている。Bakke, D., op. cit., pp. 85-108; O’Reilly, C., and Pfefffer, J., op. cit., pp. 151-174; Pfeffer, J., op. cit., 1996, p. 77; Pfeffer, J., op. cit., 1997, pp. 6-27;

Wetlaufer, S., op. cit., pp. 110-123; Paine, L. S., op. cit., 1994a, pp. 1-13; Waterman, Jr., op. cit., 1994(邦訳150-192頁);Waterman, Jr., R. H., op. cit., 1990(邦訳169-209頁); Smith, K. A., and Sims, Jr., H. P., op. cit., pp. 171-195; Grant, R. H., op. cit., pp. 354-378; Smith, K. A., op. cit., pp. 206-213; AES Corporation 1996 Annual Report Form 10-K, op. cit., p. 3; AES Corporation 1997 Annual Report Form 10-K, op. cit., pp. 12-13; AES Corporation 1998 Annual Report Form 10-K, op. cit., p. 10;

AES Corporation 1999 Annual Report Form 10-K, op. cit., p. 10; AES Corporation 2000 Annual Report Form 10-K, op. cit., p. 6.

119 このように組織内の課題に対して小規模なプロジェクト・チーム,タスク・フォース,委員会

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