x dxr
3.6 留数
3.6.1 特異点
一般に点aの近く(0<|z−a|< R)でf(z)が1価正則であってもaで正則ではないならばaをf(z)の孤 立特異点(isolated singularity)という。前節の展開式について
f(z) =
∑∞ n=0
an(z−a)n+
∑∞ n=1
a−n
(z−a)n (0<|z−a|< R)
と表すと第1項は|z−a|< Rで収束するから、特異性は第2項に起因する。そこでこの第2項をf(z)の特 異部(singular part)という。(主要部ともいう)
主要部がない場合は正則であるということもできる。正則であって次の条件が成り立てばz=∞をk位の 零点(zero point)という。
∑∞ n=0
bnz−n=bkz−k+bk+1z−(k+1)+· · ·=gk(z)
zk (k≥1, bk=g(∞)̸= 0) (3.40)
例えばa−n = 0とできて主要部を消すことができる場合はaを除去可能な特異点(removable singularity) という。
この場合、
f(z) =
∑∞ n=0
an(z−a)n (0<|z−a|< R)
とおける。この時は改めてf(a) =a0と定義すればf(z)はaで正則になる。例えば g(z) =sinz
z
はz= 0が一見すると特異点にみえるが展開すればg(0) = 1とおくことで除去可能な特異点である。
次に主要部が有限項の和となる場合、aを極(pole)という。
この時、ある整数kに対してa−k ̸= 0,a−n = 0(n=k+ 1, k+ 2,· · ·)であるとき f(z) =
∑∞ n=0
an(z−a)n+
∑k n=1
a−n
(z−a)n = gk(z)
(z−a)k, gk(a) =a−k ̸= 0 をk位の極(pole)という。この時、
gk(z)≡∑∞
n=0
an−k(z−a)n は|z−a|< Rで正則な関数である。
最後に主要部が有限では表すことができず無限級数になる場合を真性特異点(essental singularity)という。
この時は特異点でaでの関数f(a)の値が決まらないことになる。それはaに近づく、点列{zn}の取り方で関 数列{f(zn)}の極限値が変わる。例えば関数
f(z) = exp(1/zn) =
∑∞ n=0
1 n!zn
はz=a= 0に真正特異点を持つ。例えば、点列{zn= 1/(α+ 2nπi)}をとると exp(1/zn) = exp(α+ 2nπi) = exp(α) =Const となり、最初のαの値で収束先の定数Constが異なるおとになる。
領域Dで真性特異点を持たない1価正則な関数を有理型(meromorphic)である。有理型の商で新しい関数 を作ってもやはり複素平面全体で有理型になる。
境界が見えるか見えないかが除去可能な特異点がどうかの決めてになる。(0<|z−a|< R)においてaの近 くで除去可能な特異点は先の定義から
f(z) =a0+a1(z−a) +a2(z−a)2+· · · と表されていればz→aの時f(z)→a0となり、有界である。
逆にこの時、|z−a|=rとおいて a−n= 1 2πi
I
r
f(ζ)
(ζ−a)−n+1dζ (0< r < R, n= 1,2,· · ·) は|f(z)| ≤M とすると変数変換はrが一定であることが利用できて
ζ−a=reiθ, dζ=ireiθdθ として
|a−n|=
1 2πi
I
|ζ−a|=r
f(ζ) (ζ−a)−n+1dζ
≤ 1
2π
∫ 2π 0
|f(a+reiθ)rndθ| ≤M rn となるのでr→0とすれば主要部を0とすることができる。
これから重要な次のリーマンの定理がいえることになる。
(0<|z−a|< R)において1価正則なf(z)が有界であればaはf(z)の正則点である。
注意すべきは有理型の関数が0<|z−a|< Rで有理型でも|z−a|< Rで有理型ではない時、z=aは真性特 異点である。これは逆にaが真性特異点であれば、ある点列{zn}をとれば
f(zn)→λ(n→ ∞)
なる任意のλが存在できることになる。つまり、f(z)はどんな値にも近づくことができる。これは例えば λ=∞であってもいい、もし、このような点列が存在しなかったら、あるR1>0をとると、0<|z−a|< R1 でf(z)が有界になってしまい、除去可能となる。
3.6.2 ピカールの定理
これから次の重要なピカールの定理(Picard theory)がいえる。
(0<|z−a|< R)において有理型の関数w=f(z)がaを真性特異点にもつならばaの近くでf(z)は たかだか1つの(∞を含めれば2つ)の値を除き、他の全ての値を無限回とる。
この定理の応用例としてz=a= 0で真性特異点とする関数 w=f(z) =e1/z を考える。任意の値をw0として
w0=reiθ とすると
e1/z=reiθ =elogr+iθ だから
zn = 1
logr+i(θ+ 2nπ) (n= 0,±1,±2,· · ·)
とすると、これは確かにf(zn) =w0である。しかもn→ ∞でzn →0となる。よってa= 0の近くでf(z) は値w0を無限回とることになる。またw0→0(r→0)またはw0→ ∞(r→ ∞)に対してzn→0となるから 0<|z|<∞でw0= 0とw0=∞はf(z)の2つが除外値である。
ところが
w=f(z) = 1 z+e1/z
とするとz =a = 0が真性特異点であるから除外点ではない。よってこの場合はw =∞のみが除外点で ある。
図3.9: 左がf(z) =e1/z,中がf(z) =1z+e1/z ,右がf(z) =1z−e1/z ,のグラフ
3.6.3 留数
複素関数の展開は実関数に比べて多くの条件が成立している。その1つが留数の存在で積分計算を簡単に対 数和に置き換えることができてしまう。
有限領域環0<|z−a|< Rで1価正則な関数f(z)に対して次のRes(a)をaにおける留数(residue)という。
Res(a) = 1 2πi
I
|z−a|=r
f(z)dz (3.41)
これは先のローラン展開を用いれば
f(z) =
∑∞ n=−∞
an(z−a)n, r <|z−a|< R ただし、
an = 1 2πi
I
|ζ−a|=ρ
f(ζ)
(ζ−a)n+1dζ (3.42)
からn=−1の時の係数は
a−1= 1 2πi
I
|ζ−a|=ρ
f(ζ)dζ となるからこの係数が留数そのものである。
n=−1という選択が式3.42の分母を変数に関係なく1にしてしまう特別な役割を果たすことがわかる。ま た無限遠での留数は原点について正の向きの周回路が正の無限遠に対してRをどんなに大きくとっても原点側 と周回路の外側に無限点があるので無限点から見れば回転が反対になる。
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図 3.10: 無限遠での留数は原点の正の向きの周回と反対向きになる。いいかえるとどんな経路の外側に無限点
はとることができる。
Res(∞) =− 1 2πi
I
|z|=R
f(z)dz (3.43)
となるが式3.40から
Res(∞) =−b1 (3.44)
である。これはローラン展開の正則部分∑∞
n=0bn/znの項b1/zの係数に−1をかけたものであるのに対し
Res(a) =a−1 (3.45)
は主要部の係数になる。つまり有限で正則ならばRes(a)は必ず0になるがRes(∞)は0になるとは限らな い。つまり有限から連続的に無限までの変化をとることができない。例えば0<|z−a|<∞で正則な関数
f(z) =
∑∞ n=−∞
cn(z−a)n (3.46)
とすると
Res(a) = 1 2πi
I
|z−a|=r
f(z)dz
= 1
2πic−1
∫ 2π 0
idθ
= c−1
となるが
Res(∞) = − 1 2πi
I
|z−a|=R→∞
f(z)dz
はn=−1よりnが小さいと分母が大きいので0になり、nが大きいと0<|z−a|<∞で正則な関数なの で0になる。従って積分に効くのは有限の場合と同様にdz=iReiθdθのRを打ち消すn=−1の場合のみで あるから符号に注意し、
Res(∞) =− 1 2πic−1
∫ 2π 0
idθ=−ci である。
3.6.4 偏角の定理
以上から極の数をp、零点の数をNとして次の偏角の原理が成り立つ。
1 2πi
I
C
f′(z)
f(z)dz = 1 2πi
I
C
dargf(z)
= 1
2πi I
C
dlogf(z)
= N−P (3.47)
これは次のように示すことができる。
もしzがf(z)のk位の零点であるとすればaの近傍で0にならない正則な関数g(z)が存在できて f(z) = (z−a)kg(z)
とおけるので
f′(z) =k(z−a)k−1g(z) + (z−a)kg′(z) f′(z)
f(z) = k
z−a+g′(z) g(z) 第2項はaの近傍で正則である。よってaはf′(z)
f(z) の1位の極であり、零点kに等しい。よって 1
2πi I
C
f′(z) f(z)dz=N
次にbがf(z)がk位の極であるとすればbの近傍で0にならない正則な関数h(z)が存在できて f(z) =h(z)/(z−b)k
とおけるので
f′(z) =−k(z−a)−k−1h(z) + (z−a)−kh′(z) f′(z)
f(z) = −k
z−b+h′(z) h(z)
第2項はbの近傍で正則である。よってbは ff(z)′(z)の1位の極であり、位数kにマイナスをかけたものに等 しい。よって
1 2πi
I
C
f′(z)
f(z)dz=−P であることから結局
1 2πi
I
C
f′(z)
f(z)dz=N−P (3.48)
が成り立つ。またlog|f(z)|がC上で1価の関数だから
f(z) =|f(z)|exp[iargf(z)]
の両辺の対数をとり積分すると下の第2式の第1項は積分すると0だから I f′(z)
f(z)dz =H
dlogf(z)
= I
dlog|f(z)|+i I
argf(z)
結局
1 2πi
I
C
f′(z)
f(z)dz= 1 2πi
I
C
dlogf(z) である。またこれから
1 2π
I
dargf(z)
は回転数を表すのでω平面上においてω =f(z)によって次の関数がω = 0の周りの閉曲線Γの回転数で ある。
N = 1 2π
I
Γ
dargω= 1 2πi
I
Γ
dω
ω (3.49)
ここまでみたように無限級数の結果を逆に用いることがよく使われる。さに以下のように部分分数分解がよ く利用される。
また、単純閉曲線Cの内部をDとし、D¯∩Cでf(z), g(z)は正則とする。C上で、|f(z)|>|g(z)|が成り立 てば、Cの内部でf(z), f(z) +g(z)は同じ個数の0点を持つ。
これをルーシェ(Rouxhe’)の定理という。
これは次のように簡単に示すことができる。
|f(z) +g(z)| ≥ ||f(z)| − |g(z)||>0 だから
f(z)̸= 0 ∧f(z) +g(z)̸= 0
であり、f(z), f(z) +g(z)共にD¯ で正則であるから極を持たない。従ってf(z) +g(z)とf(z)とのC内部の零 点の個数の差は、偏角の定理より
1 2π
I
C
darg(f(z) +g(z))− 1 2π
I
C
dargf(z) = 1 2π
I
C
darg (
1 + g(z) f(z)
)
(3.50) となる。C上では|g(z)/f(z)|<1だからw= 1 +g(z)/f(z)のCの像は原点を含まない円板
|w−1|<1 に図のように含まれる。
図 3.11: w= 1 +g(z)/f(z)は原点回りを周回しない よってzがCを1周する間にwは0を回ることはないので式3.50は0になる。
原点以外で順序つけられた点列
zn(n= 1,2,· · ·:|zn|<|zn+1|) (3.51) における極を考える。各点zk(k= 0,1,2· · ·)の周りのローラン展開を考え、その主要部をpk(z)とする。
ここでもし、原点が正則点であればp0(z)≡0とおく。原点を囲む単一閉曲線をCnとして
Rn:|zn|< Rn<|zn+1| (3.52) となる半径の円を考えると順序つけられているのでCnの内部に含まれる極がz0· · ·znのみになる。
そこで次の関数
f(ζ)1−(z/ζ)n
ζ−z =f(ζ)
n∑−1 j=0
zj ζj+1
のζ=zkのまわりのローラン展開の(ζ−zk)−1の係数をhk(z)とすると次が成り立つ。
f(z) =
∑n k=0
(pk(z)−hk(z)) + zn 2πi
I
Cn
f(ζ)
ζn(ζ−z)dζ (3.53)
これも次のように証明できる。右辺第2項から R(z) = 1
2πi I
Cn
f(ζ) ζn(ζ−z)dζ の積分路Cn内に持つ極は
z, z0, z1· · ·zn
の高々n+ 2個である。ζ=zでの留数はf(z)になる。またζ=zkの近傍で部分分数展開をして
znf(ζ)
ζn(ζ−z)dζ = f(ζ)
1 ζ−z−
n∑−1 j=0
zj ζj+1
= f(ζ)
−
∑∞ m=0
(ζ−zk)m+1 (ζ−zk)(z−zk)m+1 −
n∑−1 j=0
zj ζj+1
= f(ζ)
−
∑∞ m=0
(ζ−zk)m (z−zk)m+1 −
n∑−1 j=0
zj ζj+1
となる。主要部を
pk(ζ) =
∑∞ i=1
a−i
(ζ−zk)i (3.54)
と置けば、ζ=zkにおける留数が−pk(z) +hk(z)に等しい。
よって
R(z) =f(z) +
∑n k=0
(−pk(z) +hk(z)) (3.55)
が成り立ち、式3.53がいえた。