2.6 シミュレーションに基づく入力同定
2.6.4 特異値分解によるノイズ除去の適用
アクセレランス行列に含まれるノイズの除去に,特異値分解を利用する方法をシミュレ ーションへ適用する.本手法はアクセレランス行列に含まれるノイズを除去することが目 的であるため,本項におけるシミュレーションでは実稼動加速度には誤差を混入しない.
そして,採用特異値数の決定方法として累積寄与率を用いて,周波数ごとに異なる採用特 異値数を用いてアクセレランス行列の擬似逆行列を算出する.実稼動応答の計測点数は,
全体系のm9からm16の8点とする場合と,m13からm16の4点とする場合の2通りについて 検討する.
図2.22 Path1における同定誤差
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
100 101 102 103 104
Frequency [Hz]
Condition Num. [-]
beta=0.0001 beta=0.0005
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
10-8 10-6 10-4 10-2 100 102
Frequency [Hz]
Ident. error [N2 ]
beta=0.0001 beta=0.0005
図2.23 アクセレランス行列の条件数
(1) 応答計測点数:8点の場合
図2.24に累積寄与率を90%としたときの採用特異値数を,図2.25には累積寄与率を98%
としたときの採用特異値数を周波数ごとに示している.累積寄与率を増やすことによって,
採用特異値数が増加している.また,周波数が高くなるにつれて,採用特異値数が増加し ている.これは,周波数が高いほどモード減衰比が高くなり,これによって他モード間の 連成が強まって,共振点近傍において有意な信号成分が増加していることに起因する.図 2.26には,各Pathにおける同定誤差の周波数平均値を,累積寄与率ごとに記している.累 積寄与率:0%は特異値分解を用いない通常の逆行列法を意味する.累積寄与率を高く設定 する(採用特異値数を増やす)ことで入力同定精度が改善されるが,累積寄与率を 98%と しても,通常の逆行列法の方が同定精度が高い.これは,特異値分解を用いるよりも,応 答計測点数の方が伝達経路数よりも多い(m < n)優決定系であることの方が同定精度に大 きく寄与しているためと考えられる.
図2.24 採用特異値数(累積寄与率:90%)
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 1 2 3 4 5
Num. of accepted sing. [-]
Frequency [Hz]
図2.25 採用特異値数(累積寄与率:98%)
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
1 2 3 4 5
Num. of accepted sing. [-]
Frequency [Hz]
0% 98% 90%
Path1 Path2
Path3 Path4
0.00E+00 2.00E-02 4.00E-02 6.00E-02 8.00E-02 1.00E-01 1.20E-01 1.40E-01 1.60E-01 1.80E-01
図2.26 累積寄与率と同定誤差 累積寄与率
周波数平均誤差[N2 /Hz]
(2) 応答計測点数:4点の場合
図2.27に累積寄与率を90%としたときの採用特異値数を,図2.28には累積寄与率を98%
としたときの採用特異値数を周波数ごとに示している.応答計測点数:8点の場合と同様に,
累積寄与率を増やすことによって,採用特異値数が増加している.また,周波数が高くな るにつれて,採用特異値数が増加している.図2.29には,各Pathにおける同定誤差の周波 数平均値を,累積寄与率ごとに記している.累積寄与率を高く設定する(採用特異値数を 増やす)ことで入力同定精度が改善されるが,累積寄与率を 90%とした場合には,通常の 逆行列法の方が同定精度が高い.累積寄与率を 98%とすることによって,通常の逆行列法 に対して同定精度が改善される.
累積寄与率を 98%とした場合の同定加振力と,通常の逆行列法による同定結果との比較 を図2.30に示す.特異値分解を用いることによって概ねノイズ成分による影響が除去され
ているが,過小評価する傾向にある.これは,特異値分解によって有意な信号成分とノイ ズ成分とが分離できていないためであり,有意な信号成分も除去したことによる.
このように,特異値分解を用いることでノイズ除去が可能であるが,有意な信号成分も 除去する可能性があり,累積寄与率の設定方法と共に課題が残されていると言える.
図2.27 採用特異値数(累積寄与率:90%)
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 1 2 3 4 5
Num. of accepted sing. [-]
Frequency [Hz]
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
1 2 3 4 5
Num. of accepted sing. [-]
Frequency [Hz]
図2.28 採用特異値数(累積寄与率:98%)
0% 98% 90%
Path1 Path2
Path3 Path4
0.00E+00 2.00E-02 4.00E-02 6.00E-02 8.00E-02 1.00E-01 1.20E-01 1.40E-01 1.60E-01 1.80E-01
図2.29 累積寄与率と同定誤差 累積寄与率
周波数平均誤差[N2 /Hz]
図2.30 Path1における同定結果
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
10-6 10-4 10-2 100 102
Frequency [Hz]
Force (Power Spectrum) [N2 ]
MEASURED
MATRIX INVERSION USING SVD