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動質量の物理的特性

(3.34)や式(3.41)のように条件数を用いて表されるが,動質量行列が正方行列の場合に限られ ている.また逆行列法と同様に条件数は誤差の拡大係数を表すものであり,誤差そのもの を評価してはいない.そのため,条件数だけを用いて同定誤差を評価することはできない と考えられる.そこで本研究では動質量法による同定誤差の評価方法として別の方法を第4 章で提案する.

図3.2 1自由度系のアクセレランス

-180180-90900

Phase [deg.]

0 10 20 30 40 50

10-6 10-4 10-2 100 102

Frequency [Hz]

Gain [(m/s2)/N]

-180180-90900

Phase [deg.]

0 10 20 30 40 50

10-2 100 102 104

Frequency [Hz]

Gain [N/(m/s2)]

図3.3 1自由度系の動質量

アクセレランスは加速度/力の次元をもつため単位は[(m/s2)/N]であり,動質量は力/加 速度の次元をもつため単位は[N/(m/s2)]である.そのため,アクセレランスはm に単位加振 力を与えたときに生じる加速度であり,動質量はm に単位加速度を発生させるために必要 な加振力として理解できる.アクセレランスHと動質量Gの間には次式が成り立つ.

( ) ( ) ω

G

ω

=1

H (3.42)

そのため,アクセレランスの極大値と動質量の極小値は周波数が一致している.また,周 波数が無限大になるとき,動質量の絶対値は質量m に漸近する.これは以下の様にして証 明できる.

まず1自由度系の動質量は次式で表される.

2 2

2

ω ω ω

ω

ω jc k

k m c j

G m = − −

+ +

= −

(3.43)

よって

m G =

ω

lim

(3.44)

となる.一方,アクセレランスの極限値は質量の逆数となる.

3.3.2 3 自由度系

次に多自由度系における動質量について述べる.ここでは図3.4に示す3自由度系を用い

k1 k2 k3

c1 c2 c3

m1 m2 m3

図3.4 3自由度系

まず初めに,3x3の動質量行列について考える.系の運動方程式から動剛性行列Dは次式 で表される.

(3.45)

K C M

D = − ω

2

+ j ω +

よって動質量行列は次式となる.

ω

2

= − D

G

(3.46)

このようにして得られる動質量行列の1,1成分と,アクセレランス行列の1,1成分とを比較 する.アクセレランスH1,1を図3.5に,動質量G1,1を図3.6に示す.

-180180-90900

Phase [deg.]

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

10-6 10-4 10-2 100 102

Frequency [Hz]

Gain [(m/s2)/N]

-180180-90900

Phase [deg.]

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

10-2 100 102 104 106

Frequency [Hz]

Gain [N/(m/s2)]

図3.5 3x3アクセレランス行列の1,1成分 図3.6 3x3動質量行列の1,1成分

多自由度系の場合には1自由度系の場合とは異なり,H1,1の極大値とG1,1の極小値の周波 数は一致していない.これは,H G = Iが成立するもののH1,1 G1,1≠1であることに起因する.

またこのことは,多自由度系の場合には固有振動数において動質量がピークを示さないこ とも意味する.

そして G1,3は全周波数において値が 0 であり,G は対称行列であるためG3,1も同様に 0 である.一方でアクセレランス行列の場合にはH1,3,H3,1ともに値は0とはならない.この 理由を考察するために,アクセレランス行列と動質量行列の各要素がもつ意味について考 える.アクセレランスH1,3は,m1に単位加振力を作用させたときにm3に生じる加速度を意 味する.m1に加振力が作用すれば,m1, m2に加速度が生じることによって最終的にm3にも 加速度が生じるため,H1,3は0とはならない.そして動質量G1,3は,m1, m2には加速度が生

じないという条件下において,m3に単位加速度を生じさせるのに必要なm1への加振力を意 味する.ここで,m2には加速度が生じないという条件を与えているため,m1にいくら加振 力を与えてもm3には加速度が生じることは無い.よってG1,3は値が0となっている.

多自由度系の場合には動質量は式(3.46)の代わりに次式で得られる.

2 2

2

ω ω ω

ω

ω C K

K M C

G M = − −

+ +

= − j j

(3.47) よって

M G =

ω

lim

(3.48)

となる.そのため,G1,1m1に,G2,2m2に,そしてG3,3m3に収束する.また,Mは 対角行列であるため,非対角要素については0に収束する.

最後に動質量行列が 2x3の長方行列となる場合として,m1,m2に関する長方行列を考え る.式(3.47)の部分行列として得られる長方行列と,アクセレランス行列における3x2の部 分行列の擬似逆行列として得られる長方行列とでは,行列の成分が異なる.前者の部分行 列は,3点の質点に加振力が作用したときの3箇所の加速度を用いて,元の力を再現する.

後者の擬似逆行列は,m3には加振力が作用しない場合にのみ,3箇所の加速度を用いて元の 力を再現できる.

図3.7と図3.8に,正方動質量行列の部分行列として得られる2x3の長方動質量行列と,

アクセレランス行列の擬似逆行列として得られる長方動質量行列を比較する.G1,1について は,部分行列と擬似逆行列で値が一致している.一方,G2,2では部分行列と擬似逆行列とで 値が異なる.

図3.7 2x3動質量行列の1,1成分

図3.8 2x3動質量行列の2,2成分 -180180-90900

Phase [deg.]

0 20 40 60 80 100

10-2 100 102 104 106

Gain [N/(m/s2 )]

Frequency [Hz]

Submatrix Pseudo-inverse

-180180-90900

Phase [deg.]

0 20 40 60 80 100

10-2 100 102 104 106

Gain [N/(m/s2 )]

Frequency [Hz]

Submatrix Pseudo-inverse