( ) W xyy yyW
4.5 実稼動加速度の変動に起因する分散推定方法
4.5.1 導入
変動する要因は,以下の 2 つが挙げられる.そしてこれらの変動要因は
) 実稼動時における加振力自体が有する変動
これらのうち入力同定の精度に影響を与えるのは,実稼動計測において混入されるラン ダ
(4.25) 実稼動状態において作用する外力が確定的な特性をもつ信号であれば,計測される実稼 動
実稼動応答のスペクトル行列に対して主成分分析を適用することで 上
.5.2 主成分分析
てそれぞれ互いに何らかの相関性が考えられるとき, 組のデー タ
実稼動加速度が
互いに無相関であると仮定する.
(a
(b) 実稼動加速度の計測誤差による変動
ムな誤差(b)である.そこで本研究では,実稼動加速度の計測誤差に起因した同定加振力 の分散を推定する手法について述べる.実稼動加速度の変動に起因した同定加振力の分散 は次式で推定される.
( )a2 iT i*
fi
= g C
ag
σ
応答の標本分散・標本共分散を計算することで式(4.25)のCaは推定可能である.しかし実 際には実稼動時における外力は変動するものであるため,何らかの方法で上記(a)と(b)を分 離する必要がある.
そこで本研究では,
記(a)と(b)を分離する.そこで次項では,主成分分析について述べる.
4
あるp個の変量に対し N
(本研究の場合は,同時測定された多点の応答)の中には変量が互いに関連して生ずる 何らかの主要な変動が内蔵されている.この変動を上記のデータから見つけ出し,これに より測定した系の特徴を捉えることができれば統計解析上,非常に有効な手段であり,こ のようにデータを主要な変動に縮約して特長を把握する統計的手法を主成分分析(Principal Component Analysis)と呼ぶ.
(4.26) ( )
( ) ( )
⎪
⎭
⎪ ⎬
⎫
⎪ ⎩
⎪ ⎨
⎧
=
i n
i i
x x M
1
x
ただし,式(4.26)においてi = 1, 2, … N である.このとき,x1からxnの応答信号は互いに相 関性を有している.ここで,これらの計測データから,互いに無相関な信号を作成するこ とを考える.
ここで,xの線形結合を用いて新しい値を作ることを考える.
( )
⎣ ⎦
( ) ( )
⎪
⎭
⎪ ⎬
⎫
⎪ ⎩
⎪ ⎨
⎧
=
=
i n
i
n i
x x u u
z L M
1 1
T
x
u
(4.27)このzを主成分といい,以下の条件のもとに係数uを決定する.
(1) 第1主成分z1の分散が最大
(2) 第a主成分zaは,z1, … za-1と無相関で分散が最大
主成分の中で値が最大のものが第 1主成分 z1であり,最大主成分と無相関で次に値が大き いものを第2主成分という.式(4.27)の後ろから複素共役転置を乗じると,
(4.28)
* H T
*
= u x x u
z z
ここで,i回の計測において変動するのはzとxのみであるため,式(4.28)の両辺の期待値を とることで左辺は主成分の分散となる.
( ) z2 u
TE [ x x
H] u
*
E =
(4.29)(4.30)
* 2 T
u C u
xz
= σ
ここで,CxはN回の平均化を行なった応答のスペクトル行列を表す.
ラグランジュの未定乗数法を用いることで,|| u || = 1の条件下でz1の分散を最大化させる uは,Cxの最大固有値に対応する固有ベクトルとなる.よって,第 1 主成分の分散(パワ ースペクトル)はCxの最大固有値に等しい.そして第2主成分以降も,Cxの第2固有値以 降を順次求めることで得られる.
そもそも統計学の多変量解析における主成分分析とは,互いに相関をもつ変量(例えば 数学と英語の成績など)から互いに無相関な情報を抽出し,さらに情報を圧縮するための
分析方法である.これを本研究では実稼動応答データに適用することで,有意な信号成分
(加速度信号)とノイズ成分(計測誤差)とに分離する.そして互いに無相関な(直交す る)信号に分離されたこれらの主成分は,最もパワーが大きい主成分から順に求められる ため,十分に値が小さい主成分をノイズ成分と見なすことができる.
また,著者らがエレベータ乗りかごのモード特性同定に用いた実稼動モード解析の手法 であるFDD法(Frequency Domain Decomposition)は主成分分析の考え方に基づいている.
FDD では,多点で計測される振動応答から振動パワーの大きい順に主成分を求める.そし て最大主成分がピークを成す周波数を固有振動数とみなす方法である.詳細は付録 D に記 す.
4.5.3 主成分分析を用いた実稼動応答の分散・共分散推定
初めに,実稼動応答のスペクトル行列Waaを次式で得る.
( ) ( )
∑
==
Nsj
j j
N
s 1T
1
*a a
W
aa (4.31)ここで a(j) は平均化j 回目の実稼動応答を,Nsはスペクトル平均化回数を示す.式(4.31) で計算される Waaは対角項が応答のパワースペクトル,非対角項が応答のクロススペクト ルであり,一般的な FFT アナライザで得られる平均化されたスペクトルを用いて構成でき る.そして主成分分析の考え方に基づいてスペクトル行列を各周波数において以下のよう に固有値分解する[66][51].
(4.32)
{ }{ } { }{ }
(
n)
n n n
λ λ
φ φ λ φ
φ λ
≥
≥
+ +
=
Φ Λ Φ
=
L
L
1
H H
1 1 1
]
H][
][
aa
[ W
ここに,
[ ]
Φ =[ { } φ
1 L{ } φ
n] [ ]
, Λ =diag( λ
1 Lλ
n)
(4.33) ここで,スペクトル行列の最大固有値に対応する式(4.32)の右辺第一項がスペクトル行列一般的に,振動成分を表す主成分数 k-1 は系に作用する独立な入力点数を表す.これは,
線形な系については独立な入力点数と独立な応答点数が等しくなるためで,本研究ではこ の方法でkを決定する.一方で,実車を用いた実稼動計測など独立な加振力成分数を特定で きない場合には,閾値を設定することで最大主成分に対して十分小さい主成分を計測誤差 とみなすことができる.このようにして,実稼動応答の変動要因(a)と(b)とを分離すること ができる.