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固有値分解によるノイズ除去の検討

3.4 シミュレーションによる検証

3.4.4 固有値分解によるノイズ除去の検討

動質量推定において,加速度のスペクトル行列の逆行列を計算する際に固有値分解を用 いてノイズを除去する方法を提案した(3.2.4節).この方法は,逆行列法において特異値分 解を用い,採用特異値数を減らすことで入力同定精度を向上させる手法と同様の観点に基 づいている.そして逆行列法においては,伝達経路数と応答計測点数が同じ場合について のみ同定精度が顕著に改善されるという結果が得られた.そこで本項においても,(1)全体 系のm13からm16で加速度計測を行ない伝達経路数と応答計測点数が同じ場合(m = n),(2) m9からm16で加速度計測を行ない伝達経路数よりも応答計測点数が多い場合(m < n)につ いて検討する.採用固有値数は,累積寄与率が95%,99%以上となるような固有値数とする.

また,この方法では動質量計測におけるノイズのみが結果に影響するため,動質量推定 における計測データのみにノイズを与え,実稼動加速度にはノイズを与えない.そして動 質量推定用の計測データに与える誤差は,元信号パワーの1%と3%の2通りとする.

(1) 伝達経路数と応答計測点数が等しい場合(m = n)

初めに,誤差1%とした場合の各Pathにおける同定誤差の周波数平均値(周波数平均誤差)

と累積寄与率との関係を図3.14に示し,数値を表3.2に示す.累積寄与率:0%は採用固有 値数を減らさずに逆行列を求めていることを意味する.次に,誤差を3%とした場合の周波 数平均誤差を図3.15と表3.3に示す.

いずれの場合においても,採用固有値数を減らさない場合が最も同定精度が高い.これ については以下の様に考察される.応答計測点数が 4 点であるため,主成分は全部で第 4 主成分まで得られる.これに対して,受動系に作用する独立な信号成分数は 4 点であるた め,有意な信号成分とノイズ成分を4つの主成分に分離することは不可能である.よって,

採用固有値数を減らすことによって,同定精度が低下している.

このときの採用固有値数を図3.16から図3.19に示す.逆行列法における採用特異値数の 場合と同様に,周波数が高くなるにつれてモード減衰比が大きくなり,他モード間の連成 の影響で有意な信号成分の大きさが大きくなり,採用固有値数が増えている.

図3.14 周波数平均誤差と累積寄与率(m = n)

誤差1%

周波数平均誤差 [N2 /Hz]

累積寄与率 [%]

累積寄与率

0% 99% 95%

Path1 2.34 x 10-2 2.76 x 10-2 9.04 x 10-2 Path2 2.08 x 10-2 2.57 x 10-2 2.13 x 10-1 Path3 2.39 x 10-2 2.88 x 10-2 7.67 x 10-2 Path4 5.24 x 10-2 5.88 x 10-2 2.94 x 10-1

表3.2 各Pathにおける 周波数平均誤差[N2/Hz]

0% 99%

95%

Path1 Path2

Path3 Path4

0.0E+00 5.0E-02 1.0E-01 1.5E-01 2.0E-01 2.5E-01 0E-01 3.

図3.15 周波数平均誤差と累積寄与率(m = n)

誤差3%

周波数平均誤差 [N2 /Hz]

累積寄与率 [%]

累積寄与率

0% 99% 95%

Path1 3.72 x 10-2 3.78 x 10-2 9.19 x 10-2 Path2 3.78 x 10-2 3.89 x 10-2 1.98 x 10-1 Path3 3.87 x 10-2 3.98 x 10-2 8.27 x 10-2 Path4 1.11 x 10-1 1.12 x 10-1 3.01 x 10-1

表3.3 各Pathにおける 周波数平均誤差[N2/Hz]

0% 99%

95%

Path1 Path2

Path3 Path4

0.0E+00 5.0E-02 1.0E-01 1.5E-01 2.0E-01 2.5E-01 3.0E-01 3.5E-01

図3.16 採用固有値数

(m = n)誤差1%,累積寄与率95%

図3.17 採用固有値数

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 1 2 3 4 5

Num. of accepted sing. [-]

Frequency [Hz]

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 1 2 3 4 5

Num. of accepted sing. [-]

Frequency [Hz]

(m = n)誤差1%,累積寄与率99%

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 1 2 3 4 5

Num. of accepted sing. [-]

Frequency [Hz]

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

1 2 3 4 5

Num. of accepted sing. [-]

Frequency [Hz]

図3.18 採用固有値数 図3.19 採用固有値数

(m = n)誤差3%,累積寄与率99%

(m = n)誤差3%,累積寄与率95%

(2) 応答計測点数の方が多い場合(m < n)

最後に,応答計測点数の方が伝達経路数よりも多い場合について検討を行なう.初めに,

誤差1%とした場合の各Pathにおける同定誤差の周波数平均値(周波数平均誤差)と累積寄

与率との関係を図3.20に示し,数値を表3.4に示す.そして,誤差を3%とした場合の周波 数平均誤差を図3.21と表3.5に示す.

1%の誤差を与えている場合には,採用固有値数を減らさない方が同定精度が高い.この 場合は加速度信号は8 個の主成分に分解され,独立な入力点数が 4 点なので有意な信号と ノイズ成分とに分離はできると考えられる.しかしそもそも信号に含まれる誤差が比較的 小さいため,99%の累積寄与率としてもノイズ成分を抽出できていないものと考えられる.

図3.24と図3.25に示す.

以上の結果から,応答計測点数が伝達経路数よりも多く,計測データに誤差が比較的多 く混入している場合には,採用固有値数を減らすことによって同定精度の改善を図ること が可能である.

なお本論文では以降の動質量推定において,採用固有値数を減らさないで Wyy*の逆行列 を得るものとする.

図3.20 周波数平均誤差と累積寄与率(m < n)

誤差1%

周波数平均誤差 [N2 /Hz]

図3.21 周波数平均誤差と累積寄与率(m < n)

誤差3%

周波数平均誤差 [N2 /Hz]

累積寄与率 [%]

累積寄与率

0% 99% 95%

Path1 1.67 x 10-2 1.69 x 10-2 4.58 x 10-2 Path2 2.40 x 10-2 3.18 x 10-2 1.90 x 10-1 Path3 4.45 x 10-2 2.99 x 10-2 5.39 x 10-2 Path4 5.57 x 10-2 7.66 x 10-2 2.70 x 10-1

表3.5 各Pathにおける 周波数平均誤差[N2/Hz]

0% 99%

95%

Path1 Path2

Path3 Path4

0.0E+00 5.0E-02 1.0E-01 1.5E-01 2.0E-01 2.5E-01 3.0E-01

累積寄与率 [%]

累積寄与率

0% 99% 95%

Path1 9.53 x 10-3 1.13 x 10-2 4.10 x 10-2 Path2 1.88 x 10-2 1.68 x 10-2 1.96 x 10-1 Path3 1.93 x 10-2 1.37 x 10-2 5.10 x 10-2 Path4 2.68 x 10-2 3.17 x 10-2 2.68 x 10-1

表3.4 各Pathにおける 周波数平均誤差[N2/Hz]

0% 99%

95%

Path1 Path2

Path3 Path4

0.0E+00 5.0E-02 1.0E-01 1.5E-01 2.0E-01 2.5E-01 3.0E-01

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0

1 2 3 4 5 6 7 8

Num. of accepted sing. [-]

Frequency [Hz]

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 1 2 3 4 5 6 7 8

Num. of accepted sing. [-]

Frequency [Hz]

図3.22 採用固有値数 図3.23 採用固有値数

(m < n)誤差1%,累積寄与率99%

(m < n)誤差1%,累積寄与率95%

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 1 2 3 4 5 6 7 8

Num. of accepted sing. [-]

Frequency [Hz]

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 1 2 3 4 5 6 7 8

Num. of accepted sing. [-]

Frequency [Hz]

図3.24 採用固有値数 図3.25 採用固有値数

(m < n)誤差3%,累積寄与率99%

(m < n)誤差3%,累積寄与率95%