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シミュレーションによる検証

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4.7 シミュレーションによる検証

本節では,動質量法による同定加振力の分散推定手法の妥当性を,シミュレーションに 基づいて検証する.そして最後に信頼係数を示し,妥当性を確認する.

対象とする系は 2.6節で示した解析モデルとし,2分系の結合点である m13から m16の 4 点の応答計測に基づいて入力同定を行なうものとする.また,動質量推定のための加振試 験では,m13

#pからm16

#pに同時無相関ランダム加振を行なう.動質量推定に使用する加振力 スペクトルと加速度スペクトルに対して,元波形の1%の分散をもつ正規分布に従ったホワ イトノイズを混入する.

動質量の推定誤差に起因した同定加振力の分散を評価するため,50 回の平均化によって 得られる動質量推定を100回繰り返す.そして得られる 100 通りの動質量を用いて標本分 散を算出し,これを真値として推定値との比較を行なう.

実稼動試験においては,全体系におけるmaを100回ランダム加振し,得られる実稼動加 速度データに対して,元波形の1%の分散をもつ正規分布に従ったホワイトノイズを混入す る.ただし,このモデルでは,実稼動状態において系に作用する独立な外力は 1 点のみで あるため,実稼動応答の主成分は第1主成分だけが顕著であることは予め予想できる.

なお,動質量推定における加振力信号・加速度信号に混入する誤差と,実稼動加速度に 混入する誤差はそれぞれ微小量を仮定している.本論文では元信号パワーに対して1%の分 散をもつホワイトノイズを混入するが,この分散が微小の仮定を満足することは以下のよ うに示される.

式(4.1)においてf = G = a = 1とし,dG = da = 0.01とする.このときのfの変動の真値は 0.0201で,これに対して式(4.2)で推定されるfの変動は0.0200となり,fの変動量の推定値 は10-4となり,Gやaの変動量の1%であるため,dGやdaを元信号の1%とすることは微 小の仮定を満たしていると言える.

4.7.1 動質量の分散推定結果

同定加振力の誤差評価は,同定加振力の分散を評価することで行なうが,そのためには 動質量の分散を推定する必要がある.そこで初めに本項では,動質量の分散推定精度を検 証する.今回のケースでは 4入力 4応答による入力同定を行なうため,動質量行列の成分 は16となる.これら全ての分散・共分散の推定結果を示すことは現実的ではないため,こ

るのに対して共分散は複素数であり位相を有する.図4.2では共分散の絶対値のみを示して いるが,位相も同様に標本値と推定値との一致を確認している.

図4.1 m13

#pにおける駆動点動質量の分散

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

10-6 10-4 10-2 100 102 104

Frequency [Hz]

Variance [(N/(m/s2 ))2 ]

Sample variance Estimated

図4.2 m13

#pにおける駆動点動質量と,m13#p加振m14

#p応答の動質量との共分散

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

10-8 10-6 10-4 10-2 100 102 104

Frequency [Hz]

Co-variance [(N/(m/s2 ))2 ]

Sample variance Estimated

4.7.2 実稼動応答の分散推定結果

初めに,式(4.27)で表される実稼動応答のスペクトル行列の固有値λiを図 4.3 に示す.ス ペクトル行列は,100回の実稼動計測に基づいて算出されている.実稼動時には maにのみ 加振力が作用するため,第 1固有値のみが卓越している.そのため,第 2 固有値以降をノ イズ成分とみなして実稼動応答の分散・共分散を推定する.

図 4.4には,m13における実稼動加速度の分散推定結果と真値との比較を示す.ここで分 散真値は,実稼動加速度の元信号に対して混入しているノイズから直接算出している.推 定値は真値に対して概ね一致しているものの,過小評価される傾向にある.この原因は,

振動応答の成分にノイズ成分が含められることで第 1 主成分が形成されているためである と考えられる.特にノイズ成分が第 1 主成分に含まれる傾向にあるのは,各計測点におけ る加速度が顕著に異なる場合である.この場合には計測誤差も計測点間における差異が顕 著となり,ノイズによって振動成分が歪められた上で第 1 主成分が形成され易くなる.本 シミュレーションにおいて,23Hzは計測点1以外は反共振点であるのに対し,計測点1の加 速度が顕著に大きくなっている.そのため,ノイズ成分が第 1 主成分に含まれ,分散推定 結果が過小評価されている.

そして図4.5にはm13m14の加速度スペクトルの共分散を示す.共分散についても,真 値と推定値は概ね一致しているものの,推定精度の低い周波数も存在する.共分散の場合 は位相の影響もあるため,必ずしも推定値が過小評価されてはいない.

図4.3 実稼動応答のスペクトル行列の固有値

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

10-8 10-6 10-4 10-2 100 102 104

Frequency [Hz]

Eigenvalue [(m/s2 )2 ]

1st 2nd 3rd 4th

図4.4 m13における加速度スペクトルの分散

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

10-10 10-8 10-6 10-4 10-2 100

Frequency [Hz]

Variance [(N/(m/s2 ))2 ]

Analytical Estimated

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

10-10 10-8 10-6 10-4 10-2 100

Frequency [Hz]

Co-variance [(N/(m/s2 ))2 ]

Analytical Estimated

図4.5 m13m14の加速度スペクトルの共分散

4.7.3 同定加振力の分散推定結果

初めに動質量の推定誤差に起因した,同定加振力の分散推定結果を図4.6に示す.標本分 散は 100 回の動質量推定に基づいて得られ,推定値と良い一致を示している.次に実稼動 加速度の計測誤差に起因した,同定加振力の分散推定結果を図4.7に示す.前項で示したよ うに,主成分分析による実稼動応答の分散・共分散推定においては,推定値が過小評価さ れる傾向にあるため,ここでも推定値が過小評価されている部分もあるが,概ね推定値と 標本分散は一致している.

なお,動質量法では加振力信号の予測誤差を最小化するが,加速度信号の誤差は考慮し

ておらず,これは本章の分散推定においても同様である.本節のシミュレーションにおい ては加速度信号にも誤差を混入しているが,図4.6に示すように動質量の推定誤差に起因す る同定加振力の分散推定精度は高いと言える.このように加速度信号の誤差の影響は小さ いと言えるが,加速度信号に与える誤差を大きくするほど,分散の推定精度は低下する.

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

10-6 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 100

Frequency [Hz]

Variance [N2 ]

SAMPLE VARIANCE ESTIMATED

図4.6 Path1における同定加振力の分散(動質量の推定誤差に起因)

図4.7 Path1における同定加振力の分散(実稼動応答の計測誤差に起因)

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

10-8 10-6 10-4 10-2 100 102

Frequency [Hz]

Variance [N2 ]

SAMPLE VARIANCE ESTIMATED

4.7.4 信頼係数の推定結果

最後に,推定された同定加振力の分散を用いて得られる信頼係数を図4.8に示す.そして

図4.9にはPath1における同定加振力と真値との相対誤差を示し,信頼係数が同定誤差を表

しているかどうかを確認する.相対誤差は次式で得られる.

2 2 0 2

.

f

f f

rel

= −

ε

(4.37)

ここでfは同定された加振力のフーリエスペクトルを,f0は加振力の真値を表す.絶対誤差 ではなく,誤差を同定値で除した相対誤差を用いている理由は,信頼係数が同定加振力で 基準化された値であることによる.信頼係数が低下している周波数では,同定加振力の誤 差も大きくなっており,信頼係数を用いた誤差評価の妥当性を示している.なお,40Hz 付 近において信頼係数が低下しているのに対して,相対誤差は比較的小さな値となっている.

これは,40Hz付近で内力が極小値を示すためであり,実際には同定誤差が大きくはないも のの,信頼係数は同定加振力で正規化されているため,他の周波数と比べて極めて小さな 加振力の影響で信頼係数が低下している.

図4.8 Path1における信頼係数

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

Frequency [Hz]

Reliability Coefficient [-]

図4.9 Path1における同定加振力の相対誤差

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

10-4 10-2 100 102 104

Frequency [Hz]

Ident. error [-]