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動質量法における誤差伝播

3.2 動質量法(Apparent-Mass Method)

3.2.6 動質量法における誤差伝播

第 2 章で逆行列法における誤差伝播とアクセレランス行列の条件数との関係を導いた.

本項では,同様の展開を動質量法に適用し,誤差伝播と動質量行列の条件数との関係を導 出する.

式(3.17)による入力同定について考える.なお,Gは正方行列であり,入出力間の相反性 から対称行列であると仮定する.すなわちGは半正定値行列となりすべての固有値は0以 上である.このとき,計測誤差などの要因により

[

G δG

] {

a δa

}

δf

f + = + + (3.18)

の解を求めたことになったとする.ここに,

δa : 応答加速度スペクトルaに含まれる計測誤差 δG : 動質量行列Gに含まれる計測誤差

δf : 加振力スペクトルfに含まれる誤差

δGとδaとが解fの誤差δfへどのように伝播するかを調べる.はじめに,Gの条件数は最大 固有値λ1と最小固有値λmを用いて

( ) λ λ

m

κ G =

1 (3.19)

で表されるが,スペクトルノルムを用いて再表現する.G の最大固有値はスペクトルノル ムを用いて

1 = G 2

λ

(3.20)

と表され,Gの最小特異値の逆数は,Gの逆行列G-1の最大特異値に等しいため

2 1

1

= m G

λ

(3.21)

よって,式(3.20), (3.21)を用いて式(3.19)を以下のように書き換えられる.

( ) G = G G

1

κ

(3.22)

(a) δaの影響を調べる.式(3.17)の右辺について以下の式が成り立つ.

a a

G

a

λ

1

λ

m ≤ ≤ (3.23)

証明: 以下の式は自明である.

a G G a

a G

a ≤ ⇔ 1

−1

(3.25)

よって式(3.21)を考慮して次式が成立する.

a G a

λ

m (3.26)

次に次式を考える.

a G a

G ≤ (3.27)

ここで式(3.20)を用いて次式を得る.

a a

G

λ

1 (3.28)

よって式(3.26)と式(3.28)から式(3.23)が成立する. (証明終了)

また,式(3.23)において実稼動加速度aのみに誤差を仮定すると次式が成り立つ.

a a

G

a

μ

1

μ

m ≤ ≤ (3.29)

ここで式(3.17)においてafに誤差を仮定すると次式になる.

δa G

δf =

(3.30)

よって式(3.17)と式(3.30)を式(3.23)と式(3.29)に代入すると次式を得る.

a f

a a f

a

m

m

λ λ λ

λ

1 1 1

1

1 ⇔ ≤ ≤

≤ (3.31)

δa δf

δa

λ

1

λ

m ≤ ≤ (3.32)

式(3.31)と式(3.32)を組み合わせて,次式を得る.

a δa f

δf a

δa

m m

λ λ λ

λ

1

1

(3.33)

ここで式(3.19)を式(3.33)に代入する.

( ) ( )

a G δa f

δf a δa

G κ

κ

1

(3.34)

このように,実稼動加速度の計測誤差から同定加振力への誤差伝播は条件数を用いて上 限が示され,条件数の逆数は誤差伝播の下限値を示すことがわかる.

(b) δGの影響を調べる.このとき式(3.18)は以下のようになる.

[

G δG

]

a δf δGa

δf

f + = + ⇔ = (3.35)

式(3.35)において,両辺をノルムで評価する.

δG a δf a

δG

δf ≤ ⇔ ≥

(3.36)

そして次式は自明である.

(3.37)

a f GG G

1 1

=

式(3.37)をノルムで評価すると,

a f G G

G

1 1

(3.38)

式(3.36)と式(3.38)を用いて次式を得る.

( )

1

1

1

⇔ ≤

G δG G

f f δf G G δG G

δf κ

(3.39)

ここで式(3.22)より

( )

G G−1 =

κ

G

(3.40) 式(3.39)と式(3.40)より次式が得られる.

(3.34)や式(3.41)のように条件数を用いて表されるが,動質量行列が正方行列の場合に限られ ている.また逆行列法と同様に条件数は誤差の拡大係数を表すものであり,誤差そのもの を評価してはいない.そのため,条件数だけを用いて同定誤差を評価することはできない と考えられる.そこで本研究では動質量法による同定誤差の評価方法として別の方法を第4 章で提案する.