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D.5 支持剛性の推定

重心のPSD行列の固有値プロットを図D.5に示す.図中には,上から順に第一固有値か ら第六固有値までプロットしてある.最大固有値のピーク(図中の矢印↓)に着目し,それ ぞれのピーク近傍においてSDOF PSDを推定し,これに対してカーブフィットを行ない,

固有振動数とモード減衰比を同定した.モード特性同定結果を表D.1に示し,固有モード形 状を図D.6に示す.図D.6では,初期位置におけるかごを点線で,モード形状を実線で示し ている.

D.4.2.4 考察

同定された固有モードを用いて,Z並進運動を除く重心5自由度における計測加速度から モード座標を計算する.得られるモード座標のPSD波形を図D.7に示す.モード座標に変 換された重心X並進運動のPSD波形には,約1.63Hzにピークがあり,Y軸回転運動のPSD 波形には,約2.69Hzにピークがあり,そしてZ軸回転運動のPSD波形には,約2.13Hzに ピークがある.FDD によって同定された固有モードを用いてモード座標に変換された計測 データには,各固有振動数付近においてPSD のピークが形成されており,同定された固有 モードの妥当性を確認できる.

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

10-6 10-4

PSD [(m/s2 )/s] 1st mode

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

10-6 10-4

PSD [(rad/s2 )/s] 2nd mode

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

10-6 10-4

Frequency [Hz]

PSD [(rad/s2 )/s] 3rd mode

図D.7 モード座標におけるPSD

する2枚でレールを挟圧するため,初期値においてX方向の剛性値はY方向の剛性値の2 倍とする.本節では,固有振動数と固有モードに着目し,力学モデルのこれらのモード特 性を実験で同定された特性に一致させることを考える.なお本節では,質量,慣性モーメ ントと重心位置は設計値から算出し既知とする.また,減衰については比例粘性減衰を仮 定することにより実モードで近似する.これにより振動モード形状としては減衰を無視し た不減衰モデルと等しくなる.このことを利用し,本節では質量と剛性のみを考慮した力 学モデルの振動モードがFDDによる同定結果と一致するようにかごの支持剛性を決定する ものとした.

図D.8 エレベータ乗りかごの力学モデル

D.5.2 剛性値推定の手法

同定された固有振動数,固有ベクトルと,力学モデルにおけるそれらがなるべく一致す る よ う な 剛 性 値 を 探 索 す る こ と に よ っ て 剛 性 値 を 推 定 す る . 最 適 化 手 法 と し て Gauss-Newton 法を用い,同定値と解析値の差である固有振動数誤差と固有ベクトル誤差か ら成る誤差ベクトル{ ε },固有振動数と固有ベクトルの設計変数(支持剛性)に関する偏微 分係数である感度からなるヤコビアン行列[ J ]および剛性値変更量ベクトル{ δk}の間の関 係式は次式になる.

{ } ε

[ ]

J

{ } δ

k (D.10) 式(D.10)を最小自乗法で解いて初期値からの剛性値変更量を算出し,反復計算を行なうこ

2

kxu kxd1

2

kxd

1

kyu 2

kyu

1

kyd

Z

X Y

1

kxu

2

kyd

モードベクトルは複素ベクトルとして同定される.一方,力学モデルにおいては実ベクト ルとして得られる.本節では,複素固有ベクトルの最大成分が 1 となるように正規化し,

虚部を無視することにより,複素ベクトルを実ベクトルに近似してこれらの比較を可能に した.

D.5.3 推定結果

Y方向のばねは左右(X-Z平面)に関してほぼ対称な位置関係にあるので,これらのばね がかごに与える影響は等しいと考え,左右の剛性値は等しいものとした.設計値からの変 動として妥当と考えられる,初期値比±20%までの変動制約を設計変数に与えて剛性値の推 定を行なった.

推定された剛性値と目的関数の初期値比を表D.2の上部に示す.下部には,固有振動数の 誤差ノルム,固有ベクトルの誤差ノルム,そして両者を含めた全誤差ノルムについて初期 値比で示す.表D.3においてFDDで同定された固有振動数と,力学モデルから予測される 固有振動数を比較する.また表D.4において,FDD で同定された固有ベクトルと力学モデ ルから予測される固有ベクトルとのModal Assurance Criterion (MAC) 値を,初期条件と推定 後の値について示す.推定後のMAC値はすべて0.8以上になっており,良い一致を示して いるが,表D.3の固有振動数については同定値と予測値との更なる一致が望まれる.これは 供試体としたエレベータ乗りかごの慣性特性の不確定性やFDDによるモード解析の精度に 起因するものと考えられる.

表D.2 剛性推定結果(%) Stiffness (proportion of the initial value ) kxu2 80.0 kxu1 80.0 kxd2 85.2 kxd1 88.6 kyu2 111.2 kyu1 111.2 kyd2 84.5 kyd1 84.5 Objective function (proportion of the initial

value )

Norm of natural freq. error vector 46.3 Norm of eigenvector error vector 95.5 Norm of total error vector 70.0

表D.3 推定後の固有振動数 (Hz) Analytical Order Identified

by FDD Initial Estimated 1st 1.58 1.89 1.74

2nd 2.13 2.19 2.00 3rd 2.66 3.05 2.77

表D.4 MAC値(同定結果と解析値) Order Initial Estimated

1st 0.770 0.800 2nd 0.870 0.853

3rd 0.934 0.958