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浮体動揺制御(FVC)適用時の課題

第 7 章 ブレードピッチ角度の運転特性モデルに基づくフィードフォワードを利用したブレー

7.3 浮体動揺制御(FVC)適用時の課題

一般的に,風力発電システムは発電効率を最大化するために,風速に応じてロータ回転角速度 を調整する機能を備えている.理想的には風速の上昇に伴ってロータ回転角速度を上昇させるこ とで発電効率を最大化して運転できる.ただし,ロータ回転角速度の上昇に伴ってブレードやド ライブトレインに加わる荷重が増大し,破壊に至る懸念がある.このことから,システム保護の 観点でロータ回転角速度に上限値が設けられている.このロータ回転角速度の制限(調整)には,

風に対するブレードの迎え角であるブレードピッチ角度を調整する.上述の通り,可変速制御

(Variable speed control,VSC)がこの役割を担う.

ブレードピッチ角度の調整により風力発電システムを安全に運転できるが,浮体式洋上風力発 電システムに適用すると,上述のブレードピッチ角度調整が浮体構造物の前後振動(浮体前後動 揺)を増幅する現象が発生する可能性があることは前述の通りである.表7-1に示す浮体式洋上 風力発電システムにおいても上記の浮体前後動揺が発生することが懸念されたため,前章までに 述べた浮体動揺制御(Floating Platform Vibration Control,FVC)を適用した.この手段は浮体構 造物(またはナセル)の前後振動角度をフィードバックしてブレードピッチ角度を調整し,ロー タに加わるスラスト力を制御する.図 7-2 に,FVC を適用したブレードピッチ角度制御の概要 を示すブロック線図を示す.なお,図7-2は発電電力が定格電力に保持される定格条件でのブレ ードピッチ角度制御を示しており,定格条件未満で有効化される,発電機トルクに基づくブレー ドピッチ角度制御(Blade pitch angle control based on generator torque,BPCT)は省略している.

図7-3および図7-4に,FVC適用前後のシミュレーション結果を示す.シミュレーション条件 は平均風速が18m/s,乱流強度がInternational Electorotechnical Committee(IEC) 61400-3 Class C,

Normal Turbulence Model(NTM),海象は設置地域の条件(有義波高2.76m,波周期7.25,Normal

Sea State(NSS)),初期ヨーエラーを0degとした.図7-3は運転時の時系列データを示し,横

軸が時刻を,縦軸が図上方より,ハブ高の風速,ロータ回転角速度,発電電力,ブレードピッチ 角度(3本のブレードの平均),およびナセルピッチ角度をそれぞれ示す.図7-4は図7-3の時 系列データのパワースペクトル密度であり,横軸が周波数を,縦軸は図7-3と同様の配列とする.

また,図中において赤色点線がFVC未適用時(陸上風力発電システムと同様)を,黒色実線が

FVC適用時の結果を示す.

まず,図 7-3 の最下段に示すナセルピッチ角度に注目すると,FVC 未適用時では,周期的な 動揺(浮体前後動揺)が発生していることが確認できる.図7-4の最下段に注目すると,上記浮 体前後動揺の周波数(固有周波数)は約0.04Hzであることが確認できる.FVC未適用時に対し

(a) 概要図 (b) 外観

図7-1. 経済産業省実証にて建設された5MW浮体式洋上風力発電システムの概観

表7-1. 浮体式洋上風力発システムの仕様

定格出力 [kW] 5000

ロータ位置 ダウンウィンド ロータ直径 [m] 126

浮体構造物 アドバンストスパー型 係留 カテナリー,6本 ハブ高さ [m] 86.4 定格風速 [m/s] 13

図7-2. 浮体式洋上風力発電システムに実装されるブレードピッチ角度制御の概要

Wind turbine

Floater Upper deck

(Hexagonal) Lower deck (Hexagonal)

Tower Blade

Nacelle

Target generator speed

Blade pitch angle demand

Feedback

Variable speed control (VSC)

Floating platform vibration control

(FVC) +

+ + Generator

speed

Nacelle pitch angle

て,FVC 適用時の結果に注目すると,図 7-3 の最下段から明らかなように,ナセルピッチ角度 の動揺を抑制できていることが確認できる.図7-4の最下段を再度確認すると,浮体前後動揺の 固有周波数成分のピークが低下していることが確認できる.ただし,ロータ回転角速度,発電電 力,およびブレードピッチ角度に目を向けると,周波数が0.3Hz近傍にFVC未適用時には無か ったピークが存在している.2 つのシミュレーションの違いはFVCの有無のみのため,これは FVC が励起した周波数帯域と考える.このような周波数成分を含むと,ブレードピッチ角度を 調整するピッチアクチュエータの動作量が増加し,負荷が増大する.

本章では,動作負荷を示す 1 つの指標として,下式に示すブレードピッチ角度の累積移動量

(Cumulative moving distance,𝐿𝐿𝑒𝑒𝑀𝑀𝑠𝑠𝑟𝑟𝑀𝑀𝑡𝑡𝑐𝑐ℎ)を導入し,FVC適用前後で比較した.

図7-3. ハブ高平均風速8m/sでのシミュレーション結果

10 20 30

Wind speed [m/s]Electrical power [MW]

Mean blade pitch angle [deg.]

0 100 200 300 400 500 600

0 2 4

Nacellepitchangle [deg.]

Time [s]

4.2 4.6 5.0

without FVC with FVC 10.5

11 11.5 12

Fine Feather Rotor speed [rpm]

𝐿𝐿𝑑𝑑𝑖𝑖𝑠𝑠𝑟𝑟𝑀𝑀𝑡𝑡𝑐𝑐ℎ=� �𝑑𝑑𝛽𝛽 𝑑𝑑𝑡𝑡 � 𝑑𝑑𝑡𝑡

𝑇𝑇 0

…式(7-1)

ここで,𝛽𝛽はブレードピッチ角度(3本のブレードの平均値),𝑡𝑡は時刻,𝑇𝑇は積分時間を示す.

図7-5に結果を示す.積分時間は600sとした.図7-5より,FVCの適用でブレードピッチ角 度の累積移動量が約60%増加したこと確認できる.この結果より,FVCは浮体式洋上風力発電 システムに特有の浮体前後動揺を抑制できるが,ブレードピッチ角度の負荷を増加させる課題が あることを確認した.