3.4.1 I-V測定
I-V測定では試料温度を500 ℃まで加熱した後、しばらく保持し温度を安定させ た状態で電圧を加え測定を行った。その結果を図 3.20に示す。
この測定から500 ℃において直線的な電流―電圧特性が観測され、84 mAとい う短絡電流が得られた。またこの直線の傾きより比抵抗値を算出したところ 1.37 mΩcmという値が得られたが、これは一般的なBa8AuxSi46-xクラスレートの 数mΩcmと同程度の値であり4、得られた電流値は信用できるものであると考え られる。
この結果から本実験で作製された試料は電流も得ることができる材料であるこ とが示され、また温度差を必要としない熱―電力変換効果が実用性のある効果で あることが示された。
図 3.20 I-V測定結果
3.4.2 n型半導体およびp型半導体単体における等温起電力測定
本実験で作製された試料より、n型半導体部およびp型半導体部の一部を切り出 し、温度差を必要としない熱―電力変換効果を持つ材料の測定と同じように、材 料中の温度を一定にしながら加熱し、起電力を測定した。n型半導体部の測定結 果を図 3.21に、p型半導体部の測定結果を図 3.22に示す。
これらの測定によりいずれの部位においても等温下での加熱では起電力の発生 は確認されなかった。この結果からこれまで観測されてきた温度差を与えない状 態での起電力の発生はBa8AuxSi46-xクラスレートの特性によるのではないことが考 えられる。またこの結果から測定において温度差が材料に生じていないことも確 認されたほか、生じていた電圧は測定装置が発したものではないことがわかっ た。この結果より均一温度環境下で発生した電圧は組成の傾斜したBa8AuxSi46-xク ラスレートによるものであることが示された。
図 3.22 p型半導体単体での等温測定結果 図 3.21 n型半導体単体での等温測定結果
3.4.3 温度差変動実験
本実験で作製された試料から観測された起電力が従来効果であるゼーベック効 果によるものではないことを確認するために、材料に意図的に温度差を与え、か つ温度差の向きを逆転させた状態での起電力測定を行った。図 3.9に示されるよ うに本実験では試料の右側の温度(TR)を450 ℃に設定し、試料の左側の温度(TL)を 440 ℃から460 ℃、つまりTRよりも低い温度から高い温度へと変化させ、その際 の起電力を測定した。
この実験をゼーベック効果素子に対して行った実験結果を図 3.23に示す。この 試料は本実験で作製された試料のn型半導体部のみを切り出して使用した。この結 果ではTLが440 ℃、つまり右側よりも10 ℃低い温度のとき約0.7 mVを示してい る。3.3.3で測定されたn型半導体部のみのゼーベック係数の値は450 ℃において 70 μV/Kであったことから、生じている起電力の値は10 ℃の温度差において発 生したゼーベック効果による起電力であると考えられる。またTLが上昇するにつ れて温度差が減少するため、起電力の値もまた減少し、TLがTRを越えた時点で起 電力の符号は反転している。これはゼーベック効果では電極の符号は温度差の方 向によって依存することから、TLが上昇したことで温度差の方向が逆転し、電極 が変わったためであると考えられる。そしてTLが460 ℃のとき再び10 ℃の温度差 が、温度差方向が逆方向で生じているため、約-70 mVを示していると考えられ る。
また本実験で作製された温度差を必要としない熱―電力変換効果素子を同様の 測定にかけた結果を図 3.24に示す。この結果では起電力量が減少しているものの 符号は変化していない。これは温度差が生じたことにより素子に等温下での熱―
電力変換効果による起電力とは別に、ゼーベック効果による起電力が生じたこと によって起電力量が変化したと考えられる。また図 3.24とは異なり起電力の符号 が変化しなかった点はゼーベック効果による発電では説明できない現象であり、
この等温下での加熱によって発生している起電力がゼーベック効果によるもので はないことを示している。
図 3.24 等温発電用試料における追い越し実験結果