6.3.2 WDXによる組成分析結果
作製された試料内の組成を測定するため、図 6.4で示した等温測定用試料に対 し組成分析を行った。測定は図 6.6に示すように上端を0 mmとし、下端にかけて 1.5 mmごとに行った。その測定結果を表 6.1に示す。これらはWDXより得られ たモル分率から、クラスレートのカゴ状構造を形成するAuおよびSiが46個のサイ トすべてを占有していると仮定し、組成比にしたものである。また図6.7に各測定 点におけるAu組成量を示した。
この結果では上端のAu組成が4.72であり、下部にかけてAu組成は徐々に増加 し、下端では5.27であった。このことから本実験で作製された試料は成長方向上 部から下部にかけてAu濃度が増加していることがわかる。
図 6.6 組成分析点
表 6.1 組成分析結果
6.3.3 ゼーベック係数測定結果
層状に切り出した試料No.1からNo.12に対し温度差を与え、そのゼーベック係 数の温度依存性を測定した結果を、No.1からNo.8を図 6.8に、No.9からNo.12を 図 6.9に示す。ゼーベック係数の値において負の値はn型半導体の特性であり、正 の値はp型半導体であることを示す。このことから本実験において作製された試料 たちはNo.1からNo.8がn型半導体、No.9からNo.12はp型半導体であるとわかっ た。
またゼーベック係数の絶対値はほとんどの試料において温度の上昇とともに増 加しているが、いずれの試料もある温度から減少へと転じており、図 6.10に各試 料のピーク温度を示す。これは前述したように試料が真性領域に達したことによ る挙動であるが、n型半導体部は2章でも示されたように試料が下部になるほど、
つまりAu組成が真性半導体に近くなるほど真性領域に達する温度が減少している 傾向が確認された。またNo.5, 6, 8の試料では室温からゼーベック係数の値が減 少しており、既に真性領域に達していると考えられる。さらにp型半導体側におい ては最も上部となるNo.9は室温からゼーベック係数が減少しており、さらに試料 が下部になるにつれて真性領域に達する温度が上昇していることが確認できる。
この結果からp型半導体においてはAu組成が上昇するほど、すなわちAu組成が真 性半導体組成から離れるほどバンドギャップが大きくなっていると考えられる。
図 6.8 No.1からNo.8におけるゼーベック係数測定結果
図 6.9 No.9からNo.12におけるゼーベック係数測定結果
図 6.10 各試料におけるゼーベック係数のピーク温度
6.3.4 n型半導体部のみによる等温下での起電力測定結果
これまでの結果から作製された試料は単結晶内でAu組成が上昇している組成傾 斜材料となっており、かつそのバンドギャップはAu組成が真性半導体組成に近づ くほど小さくなっていることが確認された。そこでn型半導体部のみを切り出すた めに図 6.11に示すように、図 6.4で示した等温測定用試料を層状サンプルのNo.6 とNo.7の間に対応する位置で切断した。
またこの切り出されたn型組成傾斜試料を3.2.2で示した等温起電力測定装置に より、温度差を与えることなく加熱し起電力を測定した。その結果を図 6.12に示 す。この結果から組成の傾斜したBa8AuxSi46-xクラスレートであればn型半導体の みにおいても等温下で熱―電力変換が可能であることが示された。
図 6.11 n型組成傾斜試料切断図
図 6.12 n型組成傾斜試料における等温起電力測定結果