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核音に現れる子音音素 /n/

ドキュメント内 博士学位論文(東京外国語大学) (ページ 66-70)

2.2 音節

2.2.5 核音に現れる子音音素 /n/

単独で現れる/n/、あるいは語頭音節に現れ他の子音に先行する/n/は、核音(N)である。すなわ ち/n/を音節を成す子音音素(成節鼻音)と分析する。ただし、例が多いわけではない。/n/を核音のス ロットを占める鼻音と分析する理由は、次の2つである。

• 波照間方言の語で、語頭にCCVという連続があった場合、初頭のC/n/に限られる。

話者が語頭の/n/を一つのパート(音節/モーラ)として認識している。

/n/の独立性に対する話者の直観を補足すると、例えば、/nsahan/「重い」をゆっくり発音してもら うと、3つのパート、/n//sa//han/に分けて発音される。上記2つの理由から、語頭の/n/は核音 と分析し、語中では、基本的に初頭子音または末子音として分析する。なお、上昇型のアクセントを持つ 語(例えば/min/「目」など)は、語末の/n/も語頭の/n/と同様に分けて発音されることがある。しか し、常に分けられるわけではないため本論文では語末の/n/は成節的としない。

(2-96)に、これまでに見つかっている成節子音を含む語例をすべて挙げる。

(2-96) /n.busu/ [mbushu] 蒸す N.CNCN

/n.ta/ [nt5] N.CN

/n.di/ [ndýi] 出る N.CN

/n.gu/ [Ngu] 行く N.CN

/n.ci/ [ntCi] 満ちる N.CN

/n.sa.han/ [ns5h5N] 重い N.CN.CNCo

/n.man/ [m:5N]23 N.CNCo

(2-97)に挙げる例では、核音が連続する24。/nn/を成節子音の連続すなわち核音の連続として分析す

る。感嘆詞と数詞「6」に関する語である(2.1.1.4)。

(2-97) /nn/ [n:] うん(感嘆詞) NN

/hnn.cï/ [n

˚nţ1] 6 CNN.CN

/hnn.sïn/ [n

˚ns1N] 6 CNN.CNCo

2.2.6 末音に現れる子音音素 /n/

音節構造の末子音には、多くの場合/n/が現れる。これまで見つかっている(C)Nnの組み合わせを表 2.6に挙げる。空欄は該当する(C)Nnが見つかっていないことを示す。(C)Nnが単一形態素内に現れる ことが確認されている例は少ない。多くは動詞の活用や、累加助詞=n12.3.1)が現れる際に実現する。

23/n/の音声実現に関しては、2.1.1.4を参照されたい。非音節末位置の/n/は後続する子音の調音点に同化し実現する(逆行 同化の音声プロセス)

24 [n

˚n]を核音/NN/と解釈する他に、音素として無声鼻音/n

˚/を認定するという記述方法も考えられる。無声鼻音が現れる環 境が1つに限られていることから、本論文では音素を増やさない前者の解釈を選択した。

表2.6: (C)Nnの組み合わせ一覧

an in un en on ïn

なし an in un en on ïn

p pan pin pun pïn

b ban bin bun

t tan tin tun ten

d dan din dun

c can cin cun cïn

z zan zin zïn

k kan kin kun ken kon

g gan gin gun

f fan fun

s san sin sun son sïn

h han hin hun hen hon

m man min mun

n nan nin nun nen

r ran rin run rïn

w

j jan jun jon

(2-99)から(2-103)に、/n/が末子音に現れる語例を挙げる。

(2-98) (C)anを含む語

/an/ [5N]

/pan/ [ph5N] 足

/e.ban/ [eb5N] だけど

/ja.gu.tan/ [j5guth5N] 焼いた(cf. /jag/「焼く」)

/daan/ [d5:N] あなたも

/ac.can/ [5tţ5N] 明日も

/i.zan.da/ [iz5nda] ちゃんと

/kan/ [kh5N]

/gan/ [g5N] そうね(感嘆詞)

/fan.ta/ [fh5nth5] 降らなかった(cf. /f/「降る」)

/san.ta/ [sh5nth5] しなかった(cf. /s/「する」

/han.ta/ [h5nth5] 食べなかった(cf. /h/「食べる」)

/man.zjon/ [m5ndýoN] パパイヤ

/mi.nan/ [min5N]

/mi.ran.ta/ [mir5nth5] 見なかった(cf. /mi(r)/「見る」)

/i.jan/ [ij5N] 父も

(2-99) (C)inを含む語

/i.bin/ [ibiN] いつも

/pin/ [phiN] 屁(〜/pïn/

/u.tin/ [utCiN] 落ちる

/n.din/ [ndziN] 出る

/i.na.cin/ [in5tCiN] 海へも)

/u.zin/ [uýiN] 腕も

/tok.kin/ [tok:hiN] グアバ

/ba.gin/ [b5giN] 〜までも(/bagi/接続助詞)

/siin/ [Chi:N] 手も

/hin.ta/ [çint5] 家のあたり

/min/ [miN]

/nin/ [niN]

/ku.rin/ [khu

˚R

˚iN] これも

(2-100) (C)ïnを含む語

/ïn/ [1:n] 飯も

/pïn.gi/ [ph1Ngi] 逃げて

/fu.cïn/ [fhu

˚ţ1N] 口も

/zïn/ [dz1N]

/sïn/ [sh1n]

/sï.pu.rïn/ [sh1

˚pur@n] 冬瓜

(2-101) (C)unを含む語

/un.ga.ra/ [uNg5r5] だから(その=理由)

/a.sï.pun/ [5sh1

˚phuN] 遊ぶ(cf. /asïp/「遊ぶ」

/bun/ [buN] 居る(cf. /buu//bu(r)/「いる」

/tun/ [thuN]

/ka.dun/ [kh5

˚duN] 角も

/ma.cun/ [m5ţuN] 待つ

/sï.kun/ [sh1

˚khuN] 聞く

/ja.gun/ [j5guN] 焼く

/fun/ [fhuN] 降る

/sun/ [shuN] する

/hun.ta/ [fhu

˚nt5] あげなかった(cf. /hi(r)/「あげる」)

/mun/ [muN] 思う

/nun/ [nuN] ノミ

(2-102) (C)enを含む語

/en.ta/ [enth5] 言った(cf. /en/「言う」)

/ten/ [then] 〜という(接続助詞)

/sï.ken/ [sh1

˚kheN]

/ta.ka.hen.ta/ [th5

˚kh5henth5] 高くなかった(cf. /takaha/「高い))

/juu.nen/ [ju:neN] 夕方

(2-103) (C)onを含む語

/on/ [oN] うちわ

/kon/ [khoN] 買う(cf. /k/「買う」

/son.dan/ [shondaN] 相談

/hon/ [hoN] 食べる(cf. /h/「食べる」)

/jon.ga.ra/ [joNg5r5] 〜のようだから

2.2.7 末音に現れる /n/ 以外の子音音素

末子音に/n/以外の子音音素が現れる場合、その子音音素の後ろの音節境界には必ず同じ子音の連続、

すなわちCi.Ci が現れる。従って、子音音素/c/が重子音で現れる場合、音声的には [t^ţ]が実現する が、/tc/ではなく、同じ音素の連続/cc/と解釈する。Ci には、/t, k, c, s/が見つかっている。子音連続 に/n/のような同化のプロセス(2.1.1.4)は考えない。その理由は、現れうる子音/t, k, c, s/はすべて 音素として認定しているからである。/n/の場合は/nC/の環境で[m][n][N]といった異音が現れる。

このうち[N]という音素は認定していないため、音声プロセスを想定する必要がある。これまでの調査で 見つかっているすべての語を(2-104)に挙げる。

(2-104) /ot.ta/ [ot:h5] カエル

/mut.tu/ [mut:hu] 本当に

/tok.kin/ [tok:hiN] グァバ

/gok.ka/ [gok:h5] ニワトリ

/gak.kja/ [g5kj:5]

/rak.kjon/ [R5kj:oN] らっきょう

/ac.ca/ [5tţ5] 明日

/guc.cee/ [gutţe:] 雄牛

/kis.sa/ [khi

˚s:h5] とっくに

/was.sa.ha/ [w5s:h5h5] 悪い

/bas.si/ [b5C:hi] 忘れる

ドキュメント内 博士学位論文(東京外国語大学) (ページ 66-70)