座長 岡山県保健福祉部長の宮嵜でございます。
まずは土居弘幸先生をご紹介させていただきます。
土居先生は昭和60年に岡山大学医学部を卒業され たあと,JICAの専門家でインドネシアなどでい ろいろ活動され,平成2年に当時の厚生省に入ら れました。保健医療局,大臣官房国際課などでさ まざまな職を歴任されましたあと,平成6年から はジュネーブのWHOに3年間行かれております。
その後,平成9年からは厚生省健康政策局(今は 厚生労働省医政局ですが)の指導課課長補佐とし て救急災害医療,危機管理,医療計画,病院評価 など幅広く,3年9カ月にわたってご担当されま した。この時期は和歌山の砒素カレー事件,東海 村の原子力事故,あるいは医療機関ではコンピ ュータの2000年問題というものもあったかと思 います。また,この時期に沖縄サミットで,実際 に健康危機管理の対応とか体制づくりにご尽力さ れていると承知しております。また,政策的には ドクターヘリの投入にご活躍され,救命救急セン ターの評価にも着手されました。
平成13年からは静岡県に赴任され,健康福祉部 技監としてご活躍されたあと,平成14年4月から は理事ということで,幅広い観点から静岡県の行 政のなかでご活躍されています。今日は「東海地 震を想定した自治体の取り組み―静岡県の場合」
ということで,静岡県の例はもちろん,これまで のご経験も踏まえていろいろなことをご示唆いた だけると大変期待しております。土居先生,よろ
しくお願いいたします。
土居 静岡県理事の土居でございます。先ほど の奥寺先生のご講演(編集部註:次号掲載予定), 今まで私がやってきたことを思い返し,ああすれ ばよかった,こうすればよかったといろいろ思い ながら聞いていました。今回,東海地震への取り 組みということで自治体の取り組みの一端を説明 したいと思います。
静岡県に赴任して3年10カ月があっという間に 経ってしまいました。この間,いろいろやったの ですが,県は人事異動が多いですから,私がいち ばんの古株になってしまい,人事のローテーショ ンも1サイクルし,また半分ゼロからのようなと ころを,問題をかかえつつ,今取り組んでおります。
東海地震に備えての事前準備
(スライド1)さて,東海地震に備えるための事 前の準備にはいろいろあります。1つには法律,
救 急 医 療 防 災 セ ミ ナ ー
東 海 地 震 を 想 定 し た 自 治 体 の 取 り 組 み
〜 静 岡 県 の 場 合
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条令,補助金といったことがあります。今般,台 風22号で静岡県は大きなダメージを受けました。
当初は伊東の被害はわずかだと報告されていて,
災害救助法の適用にならないだろうと思われてい ました。そうした場合には県の単独での助成はど うだろうかといった議論をしていたのですが,実 際に蓋を開けてみると大変な災害だったわけです。
大事なのは条令なのですが,今,我々が検討し ているのは復興に関する条令です。これは東京都 がいち早く着手していると聞いていますが,阪 神・淡路大震災を思うときに,確か神戸市の助役 の方が自殺されたと耳にしております。そうした ことを考えつつも何らかの復旧,復興への条令な どの整備が必要ではないかと思います。
それから各種計画,マニュアルなどの策定。こ れは国の中央防災会議の東海地震を想定した行動 計画からいろいろなものができています。実際,
行政はマニュアルをつくってしまえば大体ものご とは足れり,という状況ですが,いずれにしても そういう計画がしっかりしていないと予算づけも ないし,いざ本当に準備しようと思うと何もでき ないのが日常ですので,計画だからといって侮る ことはできません。しっかりした計画を立てる。
しかも,それはプロの目による確実な評価,ある いは助言を十分に取り入れての計画,マニュアル をつくらなければいけない。それから実践に即し たマニュアルをつくらなければいけません。すな わち1つのマニュアル,あるいは計画では駄目だ ということです。大枠の計画,そしてその行動計 画,実践ベースのマニュアル,そういったドキュ メンテーションが必要です。
全部はできていませんが,こういったもののお おむね8割方は整備できました。そして,実際に それが機能する体制をつくろうということです。
さらに具体的には,特に減災。防災というのは ある面でできることとできないことがありますが,
減災は割合にもよりますが必ずできることがあり ます。東海地震を想定すれば,それは耐震化工事 です。ところがこれもなかなか進みません。特に 県内の病院の耐震化率は5割ちょっとです。です
から4割の病院は東海地震がくると壊滅,あるい は診療機能が麻痺するとみられているのですが,
そういった病院には,中途半端な補助金ではどう にも対応ができません。というのは,日常診療を 継続しながらの耐震化工事というのは非常にまれ なケースです。診療活動を休止して耐震化工事を やると,病院経営が本当に破綻してしまう。した がっていったいどうしたらいいのかという,我々 以上に病院の経営者の方には大きなジレンマにあ りますが,これも解決手段がないのが現状です。
そして「資源・資金の確保」ですが,この点は 静岡県は数10億円から100億円規模の災害基金が あります。すぐリリースするということを目的に 基金を持っているのですが,使途の優先順位はま だ決まっていません。おそらく声の大きい人間,
計画がしっかりしたところは優先的にもらえるの ではないかというようなことで,いざとなったら でかい声を出そう,人の命だ,と。それからしっ かりした使いみちの計画があるということを,す ぐ提出すればもらえるのではないかという考えで す。あとは訓練,研修。静岡県の場合,年に3回 大きな訓練をやることにしています。イベント型 の訓練中心なのですが,1つは9月1日の防災の 日の訓練。それから1月17日,阪神・淡路大震災 の日を契機とした大きな訓練。さらに各部局ごと に年1回適切な時期に,ということで健康福祉部 は6月に全県規模の訓練をしています。
以上が,まだまだ漏れていることもありますけ れども全体の枠組みです。
健康福祉分野での取り組み
こういった事前の準備に加え,特に今度は健康 福祉分野における取り組みをさらにブレイクダウ ンしたものをつくっています。今回は,スライド 2に示した事項を説明したいと思います。国との 連関はあとで申しますが,市町村,関係機関との 連携強化。それから災害拠点病院の機能強化。
preventable deathsをいかに減らすかということ で広域患者搬送。災害弱者への支援。それから情 報システムの整備。訓練・研修。その他のなかに
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東 海 地 震 を 想 定 し た 自 治 体 の 取 り 組 み
〜 静 岡 県 の 場 合
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は災害時の地域医療というものも含まれています。
実は私が赴任して最初に取り組んだのはpre-ventable deathsの減少ということでした。ある 意味で非常に分かりやすいのと,とにかくpre-ventable deathsというのは救急災害においては 大きなキーワードで,非常にオペレーショナルな 活動です。多くの資源を短期間に投入する。ここ までやるのか,というような側面もあります。そ ういうことを参考にいろいろ広域患者搬送への体 制を整えることによって,もっと災害に強い体制 づくりに向けて普遍化しようという意図があり,
この広域患者搬送に力を入れました。
ところがこれに力を入れれば入れるほど,災害 対策というのは広域患者搬送なのか,という変な 誤解も県内に生まれましたが,それはとんでもな い話で,広域患者搬送というのはほんの一部の活 動にすぎません。でもここからのヒント,あるい はこれを契機に体制を強化する視点,ものの考え 方というのは大きく変わるということを,昨今力 説しているのですが,先ほどのマスギャザリング,
これが地域の救急医療の大きな財産になるという ものに共通するかと思います。
次に災害弱者への支援ですが,実はこれにも非 常に濃淡があります。これもあとで説明しますが,
私が知る限りでは,行政の担当者が多いセクショ ンは充実して,少ないセクションはあまり充実し ない。災害弱者への支援を考えたときに何がプラ イオリティなのか,非常に疑問に思う昨今です。
次は情報システムの整備。これについては,私
が厚生省にいたときから非常にでたらめなシステ ムだと思っていました。でたらめなシステムとい うのは,中身がでたらめ,貧弱なシステムという ことではありません。中身はそれほど高度な情報 システムである必要はなく,非常にシンプルなシ ステムなのですが,これが補助金制度によって各 県が全部バラバラに導入している。各県でそれぞ れ関わった人たちが,その各県の熱心な人の意見 によって非常に特色のあるカスタマイズがなされ て膨大な経費が投入されている。しかしながら実 態としてはあまり使われていない。静岡県の場合 も本当にそうでした。このシステムの維持に実に 5年間で4億円,毎年8,000万円もかかっている のですが,非常に大きな問題点を感じております。
それから「訓練・研修」も計画を持って,すな わち具体的な対策ベースの訓練をやろうと努めて います。
市町村,関係機関との連携強化
(スライド3)まず市町村との連携強化なので すが,最初に一所懸命,健康福祉部関連の担当者 を集めてやっていました。ところが市町村でそれ が全然広まりません。当たり前ですね。市町村で きちんとやるには,防災の担当課の計画のなかに 我々の健康福祉関係の計画もしっかり位置づけら れないといけない。もともと県のなかにおいても プロフェッショナルスタッフ,専門的な知識のあ る人は少ない。市町村においてはもっと少ないわ けです。ですから,その市町村の防災担当課長会 議をやらないと,いくら健康福祉分野のことを市
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東 海 地 震 を 想 定 し た 自 治 体 の 取 り 組 み
〜 静 岡 県 の 場 合
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