第 4 章 ペルソナ法を利用した FIT-PCA の不公 平感低減を目的とする説明方法の提案平感低減を目的とする説明方法の提案
4.3 本研究におけるペルソナ法の利用方法
そこで、本研究におけるペルソナ法の手順を考案した。その手順は、図4.1に示すよ うに、第一に、FIT-PCAに対し、不公平に思いやすい人の属性を抽出することから始 める。第二に、抽出した属性から、各ペルソナの特性を考察し、ペルソナを作成して いく。第三に、作成したペルソナを、その属性や特性を参考に、類似した不公平感を持 つと思われるペルソナ同士に分類する。第四に、各ペルソナに対し、改案のFIT-PCA に対する不公平感についてのインタビューを行った場合、どのような回答をするのか を検討し、各ペルソナの具体的な不公平感を抽出する。最後に、各インタビューの内 容から、不公平感が低減するような説明内容を検討する。
以下では、各手順の具体的な方法について記述する。
図 4.1: 本研究でのペルソナ法の実施手順
4.3.1 ペルソナの属性調査方法
まず、FIT-PCAに対し、不公平に思いやすい人の属性を見出すことにした。そこで、
既存研究のインターネットアンケート調査で是正要求の多かった地域間の寒暖差、公 共交通機関の発達差、世帯人員数の差を不公平であると回答した人の属性を抽出すべ く、統計解析を行った。このデータを使用したのは、2章で触れた、各回答者の外的要 因や内的要因がわかっていることに加え、一定数以上の回答者がいることから、ペル
ソナの作成に都合が良く、ペルソナの網羅性を確保できるためである。
解析手法としては数量化II類を用いることにした。これにより、各外的要因や内的 要因が、どの程度不公平感に影響を与えているのかを明らかにしていく。数量化II類 の際には、表4.1に示した外的基準と説明変数を用いた。この解析の際、相関比が0.5 以上、もしくは全体の判別的中率が75%以上のものを精度が高いとみなし、サンプル スコアとレンジ、カテゴリースコアの大きさを考慮に入れ、各外的要因と内的要因を 2∼5項目ずつ抽出していくことにした。
表 4.1: 数量化II類に用いた外的基準と説明変数一覧
外的基準 説明変数
不公平是正要求 外的要因 内的要因
地域間の寒暖差に対する不公平感 性別 家計簿をつけるのが好き 公共交通機関の発達差に対する不公平感 年齢 地球環境問題への関心がある
世帯人員の差に対する不公平感 世帯人員数 将来に関心がある 住まいの地域イメージ 快適な生活を目指している
世帯年収 新しいものが好き 世帯の車台数 政治への関心が高い
車の必要性 節約家だと思う ソーラーパネルを設置している 人に認めてもらうと嬉しい
ペアガラスを設置している 所有物にこだわりがある 家庭用燃料電池を設置している 物を大切に長く使う
太陽熱温水器を設置している
しかしながら、上述を踏まえ、既存研究のインターネットアンケート調査の全サン プルを対象に数量化II類を用いて統計分析したところ、相関比、全体の判別的中率と もに精度の悪い結果となった。そこで、サンプル数を減らし、解析の精度を上げるこ とを目的に、3章で用いた気候区分の3つごとにサンプルを分け、それぞれで数量化II 類を用いて統計分析することにした。サンプル数を分けるために「各気候区分」を用 いたのは、各気候区分が、既存研究において最も多くの人が不公平に感じた地域間の 寒暖差に、最も影響を与えている要因と考えられるからである。以上により、北海道・
北東北と北陸山陰・南東北在住者の不公平に思いやすい属性を抽出することができた。
しかし、「その他の地域」に関しては依然としてサンプル数が多く、数量化II類の分 析結果の精度が悪かった。そこで、この気候区分を、田舎、田園住宅地、住宅地、商 業集積地、都市中心部といった「住まい地域のイメージ」の5つにサンプルを分け、そ
れぞれで数量化II類を使用することにした。このように、改めてサンプル数を分ける ために「住まい地域のイメージ」を用いたのは、それが、既存研究において、2番目に 多くの人が不公平に感じた公共交通機関の発達差に最も影響を与えている要因と考え られるからである。公共交通機関が発達している地域在住者と発達していない地域在 住者とでは、不公平に思う人の属性が異なっていると考え、「その他の地域」において は、先述の5つの区分によってサンプル数を分け、数量化II類を用いて統計分析した。
これにより、その他の地域在住者の不公平に思いやすい属性を抽出することができた。
ただし、「その他の地域」における住宅地在住者のサンプル数は依然として多く、数 量化II類の分析結果の精度も悪かった。ここで、これまでの解析方法であれば、住宅 地在住者のサンプル数を絞るべく、何か別の指標を用いてサンプルを分類するのであ るが、この段階では、サンプルをこれ以上分類するのではなく、「その他の地域」にお ける住宅地在住者に所属する全員の属性から、典型的な属性を抽出し、1体のペルソナ を作成することにした。
この理由は2つある。1つ目は、ペルソナの基本概念からである。Cooper[41]による と、基本的に、ペルソナを使用する目的は、設計対象のユーザーの幅を狭めるためで あるので、ペルソナの数が増えすぎるのであれば、そもそもペルソナを作った意味が ないと指摘する。本研究では、すでに「気候区分」と「住まい地域のイメージ」でサ ンプル数を絞っており、その分、ペルソナの数も増えている。これに加え、別の指標 によってもう一段階サンプル数を絞ることは、ペルソナがさらに増加するということ である。よって、これ以上ペルソナを増やすことは、ペルソナを使用する目的から外 れてしまい、ペルソナを作成する意味がなくなってしまうと判断したため、サンプル 数を絞ることを行わないことにした。
2つ目は、数量化II類の精度が悪いということは、不公平に思いやすい属性の特別な 傾向がないと言えるからである。これを換言すると、どのような属性であっても、不公 平感を抱く可能性があるということである。つまり、不公平に思いやすい人の属性を 抽出できないのであれば、その地域と住まいに住む、より多くの人の属性を抽出すれ ばよいということである。そのような人の属性を抽出した後、その属性の人であれば どのような不公平感を感じるのかを考えることによって、「その他の地域」における住 宅地在住者の典型的な不公平感を導くことができると判断したため、「その他の地域」
における住宅地在住者に関しては、ペルソナ1体のみで十分であるとした。
以上の手順でペルソナの属性調査を行った。
4.3.2 ペルソナの属性調査結果
各気候区分ごとに、数量化II類で抽出された寒暖の差と公共交通機関の発達差、世 帯人員数の差を不公平に思いやすい人の外的・内的属性を、レンジの大きかったもの から順に示す。そして、それらの属性から、典型的であると思われる属性同士を組み 合わせたペルソナの候補を示す。
なお、「その他の地域」に関しては、さらに、田舎、田園住宅地、住宅地、商業集積 地、都市中心部といった「住まい地域のイメージ」の5つごとに示していく。また、「そ の他の地域」×「住宅地」に関しては、先述のように典型的な属性を抽出し、その属 性からペルソナの候補を示している。
北海道・北東北地域のペルソナの候補
表4.2 に、FIT-PCAに対し、不公平感を感じやすい北海道・北東北在住者の外的属 性を示す。
表 4.2: 不公平感を感じやすい北海道・北東北在住者の外的属性 外的属性
寒暖の差 ・年収が200万円未満
・都市中心部在住
・40代
・世帯人員数が5人 世帯人員数の差 ・世帯人員数が5人
・都市中心部在住
表4.2 の属性を組み合わせると、以下の2体のペルソナが候補として挙がる。
• ペルソナA:都市中心部在住、世帯年収200万円未満の人
• ペルソナB:都市中心部在住、世帯人員数が5人、40代の人
以下、同様にして各地域、各住まいごとに抽出したペルソナの候補を挙げていく。な お、抽出した外的属性・内的属性は付録に記載した。
北陸山陰・南東北地域のペルソナの候補
• ペルソナC:商業集積地在住、20代、世帯年収200万円未満、
日常生活で車が不要、近所付き合いが嫌いな人
• ペルソナD:世帯人数が5人、車を1台所持、世帯年収1000万円、
環境問題に関心がある、新しいものが好きではない人 その他の地域×田舎のペルソナの候補
• ペルソナE:世帯人員数が3人、50代、車3台所持、
ペアガラスを自宅に設置している人
• ペルソナF:世帯人員数が3人、40代、車1台所持、世帯年収が300万円未満の人 その他の地域×田園住宅地のペルソナの候補
• ペルソナG:60代、車2台所持、世帯年収が100万円未満の人
• ペルソナH:世帯人員数が3人、40代、自動車を4台所持、
世帯年収が1000∼1500万円未満の人 その他の地域×住宅地のペルソナの候補
• ペルソナI:世帯人員数が3人、50代、車を1台所持、主婦、
世帯年収が500万円程度、家計簿をつけるのが好きな人 その他の地域×商業集積地のペルソナの候補
• ペルソナJ:世帯人員数が1人、 30代、世帯年収が200万円未満の人
• ペルソナK:50代、世帯年収が500∼700万円未満の人 その他の地域×都市中心部のペルソナの候補
• ペルソナL:20代、世帯年収が200∼300万円未満、車を所持していない人
• ペルソナM:世帯人員数が4人、30代、車を1台所持、車が必要、
ペアガラスを自宅に設置している人
以上より、ペルソナの候補として13体を抽出した。次節から、各ペルソナを厳密に 定義すべく、各属性の詳細を記述していく。