第 4 章 ペルソナ法を利用した FIT-PCA の不公 平感低減を目的とする説明方法の提案平感低減を目的とする説明方法の提案
4.6 説明方法の提案
4.6.2 不公平感を低減する説明方法
今回の説明は文書形式で行った。まず、説明の前半には、不公平感を持つ人の意見 に譲歩した内容を含めた。この理由は、説明の冒頭から、不公平感を低減しようとし た内容にすると、不公平感を持つ人に心理的リアクタンス[45]を生起させることが考え られるからである。よって、説明には、心理的リアクタンスが生じぬよう、不公平感を 持つ人の意見に譲歩することが適切であると判断して、全ての説明の前半部分に、そ れぞれの不公平感を持つペルソナの気持ちを汲む文章を記述した。
そして、説明の後半では、改案のFIT-PCAにおいて、どのように排出許容枠の分配 方法を考案したのかを各ペルソナの3つの不公平感のタイプを考慮に入れながら記述 した。
以下に、各不公平感に対する説明を述べる。まず、アノミー的不公平感を持つペル ソナ、人間主義的不公平感持つペルソナ、過少評価的不公平感を持つペルソナそれぞれ に対する説明方法の概要について記述する。次に、前節で抽出された計17個の不公平 感を、改めて3つのタイプごとにとりまとめ、それを示した上で、それぞれの不公平 感に対する説明方法の詳細について記述する。
4.6.2.1 アノミー的不公平感を持つペルソナの不公平感を低減する説明方法の概要 先述のように、アノミー的不公平感を持つペルソナは自分の不満を不公平と捉える 傾向にある。また、低い自己評価と自己効力感を抱いている傾向もある。これらの傾
向をFIT-PCAにおける不公平感に換言すると、他の人は、自分に配布される排出許容
枠の枠内に二酸化炭素排出量を収めることができると思うが、自分にはできないから 不満であるということだと考えられる。
よって、このような考えを持つペルソナに対する説明としては、ペルソナ自身だけ でなく、ペルソナの周りの人にとっても厳しい条件であることを教授することと、そ のようなペルソナにとっても、利益であることや手軽に利益にできることを教授する といった2つの内容が考えられる。つまり、前者の説明内容においては、周りの人も自 分と同じく厳しい条件であるということを教えることによって、そのようなペルソナ は自分だけが厳しいというわけではないと知るようになり、不満が低減し、不公平感 も低減するという効果が期待できる。一方、後者の説明内容においては、「これだけ簡 単なことであれば、自分にもできるかもしれない」と思うようになり、不満が低減し、
不公平感も低減するという効果が期待できる。また、アノミー的不公平感を持つペル ソナの学歴は高くない傾向にある。よって、説明の際にはできるだけ数字を用いない よう心掛けた。
なお、このような視点に加え、例えば、ある一つのアノミー的な不公平感を感じて いるペルソナが一人のみ、もしくは二人のみといった少数の場合には、このペルソナ が持つ不公平に感じた具体的な理由に着目し、それにもとづいた説明を加えた。一方 で、ある一つのアノミー的な不公平感を全てのペルソナが感じている、もしくはそれ に近い数が感じている場合は、各ペルソナの具体的な理由には着目せずに、先述のア ノミー的不公平感に対する説明のみにした。なぜならば、各ペルソナが感じている不 公平感は同じであっても、それを不公平に思った理由はそのペルソナの数だけ異なっ ているからである。よって、この場合に、各ペルソナの不公平に感じた具体的な理由 にもとづいた説明を考えてしまうと、冗長な説明になり、説明の要点が定まらなくな ることから、不公平感を低減する効果が低くなると考えられる。
しかし、だからといって設定したペルソナだけを対象とした説明にはしなかった。こ の理由は、FIT-PCAが全日本在住者を対象としたものであるため、本研究が想定した ペルソナと異なる属性の制度対象者が、ペルソナのために作られた説明を読む可能性 が十分にあるためである。そのため、ペルソナの具体的な理由にもとづいた説明は、一 般的な説明に加える形にした。
以上を踏まえ、下記のアノミー的不公平感を持つペルソナの改案のFIT-PCAにおけ る不公平感(1)から(6)に対し、どのような説明を考案したのかを順に述べる。
(1) 自分の該当地域に配布される排出許容枠少ないと思うから、改案のFIT-PCAは不 公平である
(2) 自分が排出許容枠の追加対象者でないから、改案のFIT-PCAは不公平である (3) 自分に追加される排出許容枠の量が少ないと思うから、改案のFIT-PCAは不公平
である
(4) 自分が低燃費かつ低排出ガス認定車に買い替えることができないと思うから、改
案のFIT-PCAは不公平である
(5) 自分の世帯に要介護者がいないから、改案のFIT-PCAは不公平である
(6) 自分の世帯に要介護者はいるが、排出許容枠の追加量が少ないと思うから、改案
のFIT-PCAは不公平である
(1)まず、第一段落では、ペルソナと折り合いを図るべく、ペルソナが持つ不公平感で ある「自分の該当地域に配布される排出枠が少ない」ということを認める記述をした。
次に、第二段落では、各気候区分の一人あたりの二酸化炭素排出量を知らせること で、ペルソナに、自身の該当地域に配布される排出許容枠量が適切であると思わせる ように、2011年度の各気候区分における一人あたりの二酸化炭素排出量と、その量に もとづいた気候区分のグループ分けを示した。
そして、第三段落では、ペルソナに「自分だけが厳しいというわけではない」と思 わせるように、「あなたと同じような生活を送っている人は皆厳しい値となっている」
という内容を記述した。
(2)この不公平感の具体的な内容である「日常的に通勤や子供の送り迎えに自動車を使 用しているにもかかわらず、自分はガソリン・軽油の排出許容枠の対象者でない」こ とを、本研究で作成したペルソナの一人である「斉藤直美」が言っている。よって、説 明の一部に斉藤直美を説得する内容を加えた。
まず、第一段落では、ペルソナと折り合いを図るべく、ペルソナが持つ不公平感で ある「日常的に自動車を使用しているにも関わらず、この制度の排出枠の追加対象者 でない」ということを認める記述をした。
次に、第二段落では、ペルソナ自身にも少しばかりの利益があると思わせるように、
「ペルソナが比較的恵まれている立地条件に住んでいる」という内容を記述した。
第三段落では、追加枠が配布されたとしても厳しい状況であるとペルソナに思わせ るように、「大変燃費のよい自動車を基準に追加枠を算出している」と言う内容を記述 した。
そして、一般的な説明に加え、第四段落では、斉藤直美が持つ具体的な不公平感を低 減すべく、「通勤途中にも子どもの送り迎えが可能であるから、大きな損を被らない」
という内容を記述した。
(3) まず、第一段落では、ペルソナと折り合いを図るべく、ペルソナが持つ不公平感で ある「自分に追加される排出枠の量が少ない」ということを認める記述をした。
次に、第二、第三段落では、ペルソナに自動車の利用を控えることによる二酸化炭 素排出削減量の大きさを知らせることで、FIT-PCAにおいては、自動車に対する排出 許容枠の追加を厳しくすることは適切であると思わせるように、1日の省エネルギー行 動とそれを1年間続けたときの二酸化炭素排出削減量[46]を示した。
そして、第四段落以降では、ペルソナに自分だけが厳しいというわけではないと思 わせるように、「あなたと同じような生活を送っている人は皆、厳しいと思う値に設定 されている」という内容を記述した。
(4) まず、第一段落では、ペルソナと折り合いを図るべく、ペルソナが持つ不公平感で ある「自分がエコカーに買い替えることができないから排出許容枠の追加量が少ない」
ということを認める記述をした。
次に、第二、第三段落では、ペルソナに自動車の利用を控えることによる二酸化炭 素排出削減量の大きさを知らせることで、低燃費かつ低排出ガス認定車を使用しなく ても手軽に利益を出せるようになると思わせるように、1日の省エネルギー行動とそれ を1年間続けたときの二酸化炭素排出削減量[46]を示した上で、「排出許容枠に余裕が できるので自動車の利用を控えてみてはどうか」という内容を記述した。
(5) まず、第一段落では、ペルソナと折り合いを図るべく、ペルソナが持つ不公平感で ある「自分の世帯に要介護者がいないから排出許容枠が追加されない」ということを 認める記述をした。
次に、第二段落以降では、要介護者が在住している世帯の厳しさを認識させるよう に、「要介護者が在住している世帯は一般の世帯と比較して制約がある」と言う内容を 記述した。