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5.5 アンケートの考察
5.5.1 改案 FIT-PCA と原案 FIT-PCA における簡素・効果・公平・
支持の比較に関する考察
本アンケートの結果から、原案のFIT-PCAよりも改案のFIT-PCAの方が人々が簡 素で二酸化炭素が効果的に減るとみなされると同時に、人々の不公平感を低減し、公 平感を高めることができているとがわかった。また、支持も改案のFIT-PCAの方が高 かった。
特に、「簡素」においては、本研究が想定していたものと逆の結果が得られた。本研
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図 5.29: ペルソナ法により作成した説明による不公平感低減率(地域での排出許容枠
の差)
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図5.30: ペルソナ法により作成した説明による不公平感低減率(要介護者への追加枠)
究が提案した改案のFIT-PCAは、地域間の寒暖差、公共交通機関の発達差、要介護者 の在住による世帯差の様々な条件に応じて、対象者それぞれの排出許容枠の配布量を 変更した制度である。一方で、原案の FIT-PCA は、単に、対象者誰もが均等な排出 許容枠を与えられる制度である。つまり、原案の FIT-PCAの方が単純であるために 分かりやすい制度であると考えられるはずである。しかしながら、本アンケートから は全く逆の結果が得られている。この理由には、FIT-PCAの意味するところの「簡素 さ」と制度対象者の思う「簡素さ」にずれが生じている可能性が考えられる。表面上 の制度の概要が単純なために理解しやすいことが、簡素であると捉えられるのではな く、たとえ、表面上の制度の概要が複雑であっても、それに至るまでの制度の指針が、
より明確であるということこそが、簡素であると捉えられる要因になる可能性が十分 にあると考えられる。
しかしながら、制度の指針がいくら明確だからといって、その指針が制度対象者の持 つ公平性とずれていれば、その制度が、そのまま簡素であると認識されるのかは疑問が 残る。このような疑問が生じたのは、制度対象者の持つ公平性と、制度に内包される公 平性の近似度に応じて、その制度が簡素であるかどうかが決まるという考え方からで ある。改案のFIT-PCAに内包される公平性は必要性であった。つまり、本アンケート の多くの回答者が持つ公平性は、必要性に近いものであるからこそ、改案のFIT-PCA に親近感を覚えるとともに、その理解が促進され、より制度の仕組みがわかりやすい
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図 5.31: ペルソナ法により作成した説明による不公平感低減率(ガソリン・軽油の追
加枠)
と認識されたのではないかと考えられる。
これは、北海道・北東北グループが改案のFIT-PCAの方をより簡素であると答えて いることにも関係していると思われる。この地域は、気候条件から見ると、生活に支 障をきたさないよう、日本国内で最も補助されなければならない地域である。つまり、
そのような厳しい条件で暮らしてきた北海道・北東北在住者にとって、普段の生活を 送る中で自然と、「必要性」という公平性が内包されたのではないかと考えられる。だ からこそ、他の気候区分と比較して、改案のFIT-PCAの方をより簡素であると答えた のだと推測できる。
「効果」においても、同様の理由が考えられる。本アンケートでは、改案のFIT-PCA
と原案のFIT-PCAのどちらを制度として施行したとしても、家庭からの二酸化炭素排
出量を同じ程度削減できると但し書きをしていた。それにもかかわらず、改案の FIT-PCAの方がより効果的に二酸化炭素を減らすことができると対象者が思ったのは、先 述したように改案のFIT-PCAに内包される公平性とアンケート回答者の公平性が似 通っており、その公平性の実現に至るまでの取り決めに納得がいっているからである と考えられる。
そして、本研究が焦点を当てた「公平」においても、公平基準として必要性を持っ ている回答者にとっては、改案のFIT-PCAの公平性とのずれがなく、それゆえ改案の
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図5.32: ペルソナ法を使用していない一般的な説明による不公平感低減率(ガソリン・
軽油の追加枠)
FIT-PCAに対しては、不公平感が発生しなかったことが考えられる。よって、より多 くの回答者が改案のFIT-PCAを公平だと答えたと推測できる。
また、この公平に関して、不公平感タイプ別から見ると、過少評価的不公平感の持ち 主が他の不公平感タイプと比較して、改案のFIT-PCAより原案のFIT-PCAを公平と みなす傾向にあることがわかった。この理由としては、過少評価的不公平感の持ち主 の特徴が考えられる。4章で触れたように、過少評価的不公平感の持ち主は福祉政策の 充実に対し反対し、「ただ乗り」する人に対し不公平に思うのが特徴である。つまり、
改案のFIT-PCAの「必要な人に必要な分だけ与える」という指針を、「ただ乗り」で
あるとみなした可能性が高い。以上の考えから、他の不公平感タイプと比較して、改
案のFIT-PCAを不公平であるとみなしたと考えられる。
さらに、スピアマンの順位相関検定より、公平と支持の相関が最も強いことから、回 答者は、公平だと思ったものを支持する傾向にあると言える。よって、より多くの回 答者が改案のFIT-PCAを支持したいと答えたと推測できる。
以上より、改案のFIT-PCAの方が原案のFIT-PCAよりも人々の不公平感を低減で きていることと、より高い支持を得ることができたのは、必要性の観点から不公平感 を低減するという改案のFIT-PCAの公平性とアンケート回答者の持つ公平性が近いも のであるからだと考えられる。
5.5.2 改案における二酸化炭素の排出量・排出許容枠計算による利益
者と負担者に関する考察
適合度検定の結果、その他の気候区分と比較して、北海道・北東北グループの利益者 の度数が多いことがわかった。この理由は、配布される排出許容枠が多いことも1つで あるが、その他の気候区分と比較して、北海道・北東北在住者の環境意識がより高く、
その意識が省エネルギー活動にあらわれているという考え方もできる。今後は、各気 候区分の環境に対する意識の違いと改案のFIT-PCAにおける利益者との関係性を明ら かにし、関連性があるのであれば環境意識の低い気候区分、あるいは都道府県単位ま で落とし込んで環境意識を高めるような教育や説明、情報提示が必要であると考えら れる。