第 3 章 排出許容枠の分配方法の変更による FIT-PCA の不公平感低減策の提案FIT-PCAの不公平感低減策の提案
3.2 分配方法案で対象とする不公平感
前節を踏まえると、本研究で配慮する不公平感は、地域間の寒暖差による不公平感 と公共交通機関の発達差による不公平感、要介護者在住による不公平感の3つである と判断した。これら3つのみを対象としたのは、FIT-PCAの3つの原則のうちの1つ である「簡素さ」を維持するためである。FIT-PCAが全日本在住者を対象としている からといって、それぞれの不公平感を低減しようとすると、制度が複雑になってしま う。よって、既存研究[3][12]からわかっている、より多くの人が是正要求した3つの不 公平感のみを対象とすることにした。
なお、既存研究におけるFIT-PCAの社会受容性に関するインターネットアンケート 調査では、地域間の寒暖差、公共交通機関の発達差の次に不公平是正要求が多かった ものとして、世帯の人数が多い方が二酸化炭素排出量の一人あたりの負担が少なくて すむことから、世帯の人数が少ない方が不公平であるという世帯人員数の差を確認し ているが、本研究ではこれを対象としないことにした。この理由は、世帯人員数の差 を配慮することは、家庭部門における二酸化炭素排出量の増加を促進することになる ためである。家庭部門のエネルギー消費量は、「世帯当たり消費量×世帯数」で表すこ とができる[9]。現在の日本では、世帯当たり消費量は家庭用機器の大型化や多様化に よって、世帯数は単独世代や夫婦のみの世代が増えている[25]ことによってエネルギー 消費量は年々増加している現状がある。つまり、仮に世帯人員数が少数の世帯に対し、
FIT-PCAにおいてより不利益を被るからといって補助策を設けてしまうと、さらなる
世帯人員数の減少と世帯数の増加に拍車をかけ、それに伴いエネルギー消費量の増加 を抑えることができなくなると思われる。また、世帯人員数の差を考慮に入れないこ とで、世帯人員数の増加が促進され、少子化問題や独居老人問題、そして孤独死問題 などの社会問題を解決することができると考えられる。以上から、世帯人員数の差に
よる不公平感に関しては低減策を設けないことにした。
以下では、本研究が扱う3つの不公平感の概要、それらに対する低減策を述べる。
3.2.1 地域間の寒暖差による不公平感の概要
最も多くの人が是正要求したものとして、寒冷地方在住者は温暖地方在住者よりも 二酸化炭素排出量が多くなってしまうため、全国一律の排出許容枠を配布することは 不公平に感じるというものである。このことを不公平に思う理由は、図3.1のように、
寒冷地方在住者は冬期に灯油などを利用した暖房器具を頻繁に使用しなければ、その 寒さから生死に関わる問題につながると考えられるからである。そのため、寒冷地方 在住者に対し、暖房器具の使用を限度を超えて抑えるよう促すことは不公平につなが ると考えられる。
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図 3.1: 地域間の寒暖差のイメージ
3.2.2 公共交通機関の発達差による不公平感の概要
2番目に多くの人が是正要求したものとして、公共交通機関が発達していない地域在 住者は発達している地域在住者よりも二酸化炭素排出量が多くなってしまうため、全 国一律の排出許容枠を配布することは不公平だというものがある。このことを不公平 に思う理由は、図3.2のように、公共交通機関が発達していない地域在住者は、移動手 段として自動車に頼らざるを得ず、自動車を使用しないと日用品購入などの日常生活 に支障をきたすことが考えられるからである。つまり、一般に同じ距離だけ移動する 場合、自動車を使用する方が公共交通機関よりも多くの二酸化炭素を排出する。その ため、公共交通機関が発達していない地域在住者に対して、ガソリンや軽油の消費量 を限度を超えて抑えるよう促すことは不公平につながると考えられる。
3.2.3 要介護者在住による不公平感の概要
先述のように、FIT-PCAの心理・行動の変容に関する研究[12]で実施したケースス タディの実験協力者に対し、実験終了後にインタビューを行ったところ、上記の2つ の不公平感と同程度の割合の人が「自宅に要介護者が在住している」ことに対して是 正要求していることを確認できた。これは、自宅に要介護者が在住している世帯の場 合、その世帯の二酸化炭素排出量が要介護者が在住していない世帯に比べて多くなる ため、全国一律の許容枠を配布することは不公平だというものである。このことを不 公平に思う理由は、図3.3のように、自宅に要介護者が在住している世帯は、その度合 によって多少の違いはあるものの、要介護者本人はもちろん、彼らの生活を手助けす る人がより多くの時間を家の中で過ごすことになると考えられるからである。そのた め、自宅に要介護者が在住している人に対して、要介護者が在住していない世帯と同 じ許容枠を配布することは不公平につながると考えられる。
図 3.2: 公共交通機関の発達差のイメージ ᐙ䛛䜙ฟ䜙䜜䛺䛔䛧䚸䛾ே
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図 3.3: 要介護者在住による不公平感のイメージ