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6. 変化の仕組みを詳しく見る

6.2. 授業

前回の授業では、動詞の活用などの変化形式の導き方にWP, IA, IPという方法があることをお話しました。皆さんのレポートによ ると、WP や IA はよくわかるのだけれど、IP がいまいち理解で きない、ということでした。そこで、今日は IP に集中してその 方法を説明いたします。少し複雑なので、ゆっくりとやりたいと 思いますが、もしわからないことや質問があれば、いつでもいい ですから手を挙げてください。

pensar と contar

スペイン語の動詞活用で IP が効果的な部分の1つとして語根 母音変化があげられます。たとえば、pensarとcontarの活用は次

のようになります。ここでは活用形全部を書いている余裕がない ので、直説法現在、接続法現在、直説法点過去だけにしておきま しょう。

主語 直説法現在 接続法現在 直説法点過去

Yo piens-o piens-e pens-é

Tú piens-as piens-es pens-aste

Él piens-a piens-e pens-ó

Nosotros pens-amos pens-emos pens-amos Vosotros pens-áis pens-éis pens-asteis Ellos pien-san piens-en pens-aron contar

主語 直説法現在 接続法現在 直説法点過去

Yo cuent-o cuent-e cont-é

Tú cuent-as cuent-es cont-aste

Él cuent-a cuent-e cont-ó

Nosotros conta-mos cont-emos cont-amos Vosotros contá-is cont-éis cont-asteis Ellos cuent-an cuent-en cont-aron

これらの動詞については、前回の授業で説明しましたように、

次の規則が適用されます。

強勢の規則(1): e → ie / [強勢]

強勢の規則(2): o → ue / [強勢]

斜線(/)の右が規則が適用される条件を示しています。これは、

強勢があるところでe が ie となったり、oが ue となったりする ことを示しています。

スペイン語は、基本的に動詞や名詞・形容詞が変化してもの強 勢の位置は変わりません。変化するのは、基本的に直説法と接続 法の現在形だけです。Yo, Tú, Él, Ellosのところで語根に強勢があ り、それ以外は語尾に強勢があります。その語根に強勢があると きに、「強勢の規則」が適用されます。点過去では強勢は語根に 移動しませんから、ieとなったり、ueとなったりすることはあり ません。

このようなタイプの動詞は他にもたくさんあります。たとえば entender, costar, moverなどがあります。

pedir

次はpedirの活用形です。

主語 直説法現在 接続法現在 直説法点過去

Yo pid-o pid-a ped-í

Tú pid-es pid-as ped-iste

Él pid-e pid-a pid-ió

Nosotros ped-imos pid-amos ped-imos Vosotros ped-ís pid-áis ped-isteis

Ellos pid-en pid-an pid-ieron

語根の母音が e になるときと、i になるときがあります。皆さ んはどのようにして覚えましたか?覚え方は、個人によって違う と思いますが、ここでは、この変化の仕組みを調べてみたいと思 います。語根母音がiになるのは、次の規則が働くときです。

語尾iの規則(1): e → i / [語尾が単母音i以外]

ちょっとわかいにくいかもしれません。この規則を覚えるとき

は pedir という不定詞を見つめてください。語尾に単母音の i が

ありますね。これがあるときは語根は e になります。ところが、

このeがiになるのは、語尾が単母音i以外ではじまるときです。

たとえば、pid-oは語尾の母音はoですから、単母音iではないの で、語根はiになります。pid-es, pid-e, pid-enも同じように、語尾 の最初の母音が単母音i ではないので、語根は i になります。語 根と語尾のどちらかに単母音iが出てくる、と考えてもいいです。

接続法現在、直説法点過去についてもチェックしてみてください。

この規則についてはi ... iという同じ母音の連続を嫌って、e ... i となっていると思ってもよいでしょう。ここで、接続詞 y → e という規則を思い出してください。español e inglésとなりますね。

これがpedirと同じようにe ... iとなっています。

このルールはすべての活用形にあてはまります。たとえば、線

過去が pedía となるのは語尾に単母音 i があるから、現在分詞が

pidiendo となるのは、語尾が単母音の i でないから、という理由

になります。

sentir

次にsentirの活用形を見ましょう。

主語 直説法現在 接続法現在 直説法点過去

Yo sient-o sient-a sent-í

Tú sient-es sient-as sent-iste

Él sient-e sient-a sint-ió

Nosotros sent-imos sint-amos sent-imos Vosotros sent-ís sint-áis sent-isteis Ellos sient-en sient-an sint-ieron

ここでは、さっき見た「強勢の規則(1)」と「語尾 i の規則(1)」 が適用されます。強勢があるところでは語根母音はieとなり、そ れ以外では、語尾に単母音のiがあるときに eとなり、それ以外 ではiとなります。直説法現在のYo siento, Tú sientes, Él siente,

ます。接続法現在も同じことです。Yo sienta, Tú sientas, Él sienta, Ellos sientan となります。直説法現在Nosotros sentimos, Vosotros

sentísでは、語尾に単母音のiがあるから語根はeになります。一

方、接続法現在Nosotros sintamos, Vosotros sintáisでは、語尾が単 母音のiでないから語根にiが現れています。

dormir

最後に、dormirの活用を見ましょう。

主語 直説法現在 接続法現在 直説法点過去

Yo duerm-o duerm-a dorm-í

Tú duerm-es duerm-as dorm-iste

Él duerm-e duerm-a durm-ió

Nosotros dorm-imos durm-amos dorm-imos Vosotros dorm-ís durm-áis dorm-isteis Ellos duerm-en duerm-an durm-ieron

ここでは、はじめにcontarと同じように強勢の規則(2)が適用さ れます。直説法現在の Yo duermo, Tú duermes, Él duerme, Ellos

duermenでは強勢が語根にあるので、語根が二重母音になってい

ます。接続法現在も同じです。Yo duerma, Tú duermas, Él duerma, Ellos duerman..

それと、もう一つ、次の規則が適用されます。

語尾iの規則(2): o → u / [語尾が単母音i以外]

これはpedirやsentirのときに見た「語尾iの規則(1)」とよく似 ていますが、語根母音のoがuに変化するところが違います。こ の規則が適用されるのは次のケースです。接続法現在 Nosotros

durmamos, Vosotros durmáisでは、語尾が単母音のiでないから語

根に i が現れています。一方、直説法現在 Nosotros dormimos,

Vosotros dormísでは、語尾に単母音のiがあるから語根はoのま

まです。

まとめ

これで、スペイン語の活用変化がすべてそろいましたので、全 体を次の表でまとめてみましょう。

不定詞 直現1単 強勢規則 語尾 i の規 則

不定詞語尾

(1) pensar pienso ○ × ar, er

(2) contar cuento ○ × ar, er

(3) pedir pido × ○ ir

(4) sentir siento ○ ○ ir

(5) dormir duermo ○ ○ ir

このように語根母音変化の活用タイプは(1)から(5)までの 5 種 類です。それぞれ、代表としてpensar, contar, pedir, sentir, dormir をあげました。それぞれの直現1単の形をしっかり押さえておき ましょう。次の列は「強勢規則」の適用を示します。○が適用さ れるタイプ、×が適用されないタイプを示します。次の「語尾 i の規則」も同じです。

最後の列の「不定詞語尾」はこれまでの説明にはありませんで した。スペイン語のすべての語根母音変化動詞を調べてみると、

pensarタイプの動詞と contarタイプの動詞は ar動詞または er動

詞に限られていることがわかりました。また、pedir, sentir, dormir のタイプの動詞はir動詞に限られています。

さて、この表をよく理解しておけば、どのような語根母音変化 動詞のどのような活用形でも自由に変化させることができると 思います。たとえば、convertirの現在分詞の形を考えてみましょ

か。正解はconvirtiendoです。convertirの直現1単はconviertoで

すから、sentir タイプです。ここから正解にたどり着くまでに 2

つの道があります。1つは、sentirの現在分詞を知っている人は、

sintiendoという形に合わせて、convirtiendoという形を作ることで

しょう。もう 1 つの道は、iendo という現在分詞の語尾に注目し て、ieは単母音iでないから語根はiになる、という「語尾iの規 則」を適用する方法です。もし、sentir の活用形も忘れてしまっ たときは、この規則を思い出してください。

動詞の活用形はあまり規則などを意識しないでWPで覚えてし まえれば理想的です。あまり規則ばかりを先に意識すると、実際 の運用では間に合わないこともあります。一方、それぞれの活用 形には言語のシステムとして存在していると仮定できるような 規則が働いているのかも知れません。そのような規則を背景知識 として持っていてもよいでしょう。もし、語形に迷ったら、その ときに今回一緒に考えた規則を思い出してください。

質問:語尾iの規則はir動詞だけに適用されるのですね。

回答:とてもよい観察です。語尾 i の規則の条件は活用語尾に i が現れることですから、まさに、ir動詞だけに適用されるのです。

逆に、語尾i の規則は ar動詞と er 動詞には関係しません。ir 動 詞の特殊性に注意してください。

質問:動詞の不定詞と直説法現在1人称単数がわかれば、どのタ イプに属することが完全にわかるのですね。

回答:その通りです。そして直説法現在1人称単数の形がわかれ ば、そこに語根母音変化が起きていなければ規則変化であること もわかります。さらに特殊な活用形も直説法現在1人称単数の形 に現れていますから、これはとても重要な形です。私は「直現 1 単」と呼んで、とくに重要視しています。

質問:活用タイプの中に、jugarのケースがないのですが…

回答:jugarはcontarに準じます。u → ueとなります。その条件

はcontarのときに適用される強勢の規則(2)と同じです。また、ar

動詞なのでcontarとほとんど同じです。jugarはこの動詞だけの語 根母音変化をするので、タイプにはならないのです。contarを参 考にして活用させてください。

それでは、数行でよいですから今日の授業のレポートを書いて ください。授業はこれで終わりです。