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4.2. 授業

ディクトグロス

今日は「ディクトグロス」(dictogloss)の実習をします。ディク トグロスは、一定の量の外国語文を理解した後で、それを外国語 で再生してみるトレーニングです。はじめに教科書の翻訳練習を します。以下が私が用意した翻訳文です。これから簡単に解説し

ていきますから、皆さんは自分の翻訳と比較して、訂正したりメ モを書き込んだりしてください。

理論言語学と応用言語学を区別する境界線は、「純粋科学」と

「応用科学」の間、すなわち知識そのものの追究と現実の問題の 解決の間に引くことができる。歴史的に見れば、このような区別 は自然科学の分野で行われてきたが、社会科学や人文科学の分野 ではあまり行われなかった。そこでは(このように区別について)

繰り返し疑問が呈されてきたからである。

私たちが応用言語学に認めたそれぞれの特徴を分析し、次にこ の研究分野(応用言語学)の概念的な範囲を見よう。

a) 応用言語学は科学的研究である:研究を遂行するための方法

や道具の存在が科学としての性格を与える。

b) 応用言語学は理論的活動分野と実践的活動分野の間の媒介 である:言語学、心理言語学、社会言語学、教育学で増加する知 識の原理を現実の諸問題の解決のために応用する。

c) 応用言語学は学際的分野である:研究対象とする諸問題が 多層的・多面的性格をもつために他分野の研究成果を採用するこ とが不可欠である。

d) 応用言語学は言語使用が呈する諸問題の解決を目指す:研 究対象とする問題全体および個別の問題はそれぞれ言語の構成 要素を共有している。

(…)

これで、教科書の意味の解釈を終わります。それでは、(1)初め に、今読んだばかりの文章がディクトグロスによってどれだけ再 生できるかを試してみましょう。本来ならばスペイン語で再生し なければなりませんが、そのための十分な練習の時間がありませ

ん。ここでは外国語の記憶の問題を扱わず、内容の記憶再生だけ を扱いますので、日本語でやってみましょう。隣の人とペアにな って、教科書やノートを見ないで、相手の人に話してあげてくだ さい。相手の人は教科書やノートを見て、どれくらい再生できて いるか評価してあげてください。その結果を自分のレポートに書 いて、感想や意見も載せてください。

(…)

(2) 次に、少し練習をしたいと思います。リハーサルをしまし ょう。それではこれから5分間でペアまたは一人で日本語の文章 を読み、発表の準備をしてください。

(…)

もう一度ペアになって、今練習したばかりの文章がディクトグ ロスによってどれだけ再生できるかを試してみましょう。その結 果を自分のレポートに書いて、感想や意見も載せてください。

(…)

(3) さて、私が教室を回ったとき、皆さんの中に練習中図を書 いていた人が数人ありました。その一人にお願いして、黒板にそ れを写してもらいましょう。

理論言語学 <区別> 応用言語学 純粋科学 <区別> 応用科学

知識そのものの追究 <区別> 現実の問題の解決

<区別>歴史的に:

○自然科学 ×社会科学・人文科学

応用言語学:

 科学的研究る

 理論的活動分野と実践的活動分野の間の媒介

 学際的分野

 言語使用が呈する諸問題の解決

皆さんも黒板を参考にして、自分なりの図式化を試みてくださ い。最後に、もう一度ペアになって、今練習したばかりの文章が ディクトグロスによってどれだけ再生できるかを試してみまし ょう。その結果を自分のレポートに書いて、感想や意見も載せて ください。

結果はいかがでしたか?私の予想では、それぞれの効果がずい ぶん違ったのではないかと思います。その結果は、私から後で皆 さんにレポートします。

私はよく複雑な言語現象を簡単な図式にまとめることにして います。スペイン語文法で一番習得が困難な点は何でしょうか。

いろいろな人に聞いてみると、スペイン語の動詞の活用形が一番 難しいそうです。私もそう思います。今日は、個々の活用形の問 題に入らないで、動詞活用の全体がどのような図式にまとめるこ とができるかを考えてみましょう。

私たちははじめに現在形を勉強します。

現在 como

次が過去です。過去形は現在形の左に置きましょう。時間は、

ちょうど歴史の年表のように、左から右に進むものとします。

過去 現在

comía como

次は完了形ですが、これは現在にも過去にもありますから、線 を下に延ばして、現在にとっての現在完了形と過去にとっての過 去完了形を、それぞれ次のように書いてみます。

それぞれの時制には未来形がありますね。未来形は奥の方向へ 伸びる線で示しましょう。

このように、スペイン語の全動詞体系は過去に向かう線と未来 に向かう線と完了に向かう線で示されます。過去の印はia です。

未来の印は不定詞語尾のrです。そして完了の印はHABER+過去 分詞です。

動詞の時制の名称は、それぞれの形をよく示しています。たと えば、現在完了は現在+完了 (HABER + 過去分詞)なので、haber の現在形+過去分詞で作られます。過去完了は過去(ía)+完了

(HABER + 過去分詞)なので、había comidoになります。未来完了

は未来(r)+完了 (HABER + 過去分詞)なので、habré comidoにな ります。そして、この立体形の後ろ側に隠れている過去未来完了 は、過去(ía)+未来(r)+完了 (HABER + 過去分詞)なので、habría

comidoになります。

さて、もう一つの過去形、点過去は、この図式に入らないで、

独自の位置にあります。特殊な位置にあるので、活用形も非常に 特殊です(comí, comiste, …)14

14 初級の学習者が最初につまづくのが、直説法現在不規則形と点

接続法は未来も点過去もないので、次の4つだけです。