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続いて,階層効果のコーホートごとによる違いを認めるモデルを検討する.

モデル比較の結果を表

3.2,表 3.3

に示し,各モデルを簡単に説明する.M1は 何も変数を投入しない全体での平均である.M2は,3段階のトランジション,

出生年,およびそれらの交互作用項を入れたモデルである.

M3

は,世代の情報 を考慮せずにトランジションにのみ比例制約をかけたものであり,先の

LRPPC

と同一である.

M4

は式

(3.7)

に対応した

PPCC

モデルであり,世代によってす べてのトランジションに共通の効果を持つモデルである.M5 が式(3.8) に対応

68

3.2 モデル比較の結果 (男性)

Model df LogLik contrast p

M1 Constant intercept 1 -2847.0099

M2 Intercept for each transition and cohort 6 -2240.1064 M1 0.000 M3 Partial Proportional constraints (LRPPC) 9 -1980.5795 M2 0.000 M4 Partial Proportional constraints on cohort (PPCC) 10 -1980.4236 M3 0.577 M5 Cohort differentials of proportional constrains for

transition (CDPC) 11 -1979.7992 M4 0.264

M6 Quadratic Cohort effect of proportional constraints (CDPC2) 13 -1979.2975 M5 0.606

3.3 モデル比較(女性)

Model df LogLik contrast p

M1 Constant intercept 1 -3519.2566

M2 Intercept for each transition and cohort 6 -2316.2796 M1 0.000 M3 Partial Proportional constraints (LRPPC) 9 -2060.3666 M2 0.000 M4 Partial Proportional constraints on cohort (PPCC) 10 -2059.7431 M3 0.264 M5 Cohort differentials of proportional constrains for

transition (CDPC) 11 -2058.9344 M4 0.203

M6 Quadratic Cohort effect of proportional constraints (CDPC2) 13 -2041.2602 M5 0.000

3.4 男性の分析結果

PPCC CDPC CDPC2

Coef. Std. Err. Coef. Std. Err. Coef. Std. Err.

Independent Effect

高校 -0.415 (0.184) * -0.191 (0.212) -0.320 (0.166) †

高等教育 -3.394 (0.202) *** -3.459 (0.245) *** -3.503 (0.217) ***

コーホート 0.041 (0.010) *** 0.061 (0.014) *** 0.054 (0.015) ***

コーホート×高等教育 -0.058 (0.008) *** -0.084 (0.018) *** -0.082 (0.019) ***

Multiplicative Effect

高校 1.000 1.000 1.000

高等教育 -0.112 (0.066) † -0.028 (0.085) -0.057 (0.074) コーホート -0.002 (0.003) -0.010 (0.005) * -0.008 (0.005) コーホート×高等教育 0.010 (0.006) 0.009 (0.006) コーホート2

0.000 (0.000)

(コーホート×高等教育)2

0.000 (0.000)

Multiple Component

父教育年数 0.250 (0.018) *** 0.232 (0.018) *** 0.245 (0.017) ***

父職威信スコア 0.028 (0.004) *** 0.026 (0.004) *** 0.027 (0.003) ***

兄弟姉妹数 -0.267 (0.034) *** -0.241 (0.031) *** -0.253 (0.035) ***

N of Transition 4412 4412 4412

N of individual 2593 2593 2593

Log likelihood -1980.4236 -1979.7992 -1979.2975

***: p < 0.001, **: p < 0.01, *: p < 0.05, †; p < 0.1 Estimated by Stata 13.1 "ml" function

69

した

CDPC

で,トランジションごとに独立の世代効果がかかる.

M6

は,コー ホートそれぞれの比例制約に加え,コーホートの

2

乗の制約を加えたもの,す なわち階層効果が世代間で放物線上に変化していることを仮定するモデルであ る.

モデル比較の基準として対数尤度を比較する.まず,男性の場合は,M1から

M3

に至るまではモデルが有意に改善しており,進学に関する階層効果は認めら れる.しかし,階層効果のコーホートトレンドを考慮したモデルは,どれも適 合度が改善していない.

2

乗項を投入したモデル

M6

M3

の間でもほとんどモ デルは改善されておらず,階層効果は戦後世代で非常に安定した構造を持って いることが言える.

一方女性は,対数尤度が

M5

M6

の間で有意に改善している.M3と

M6

で 比較した際もモデルは有意に改善している.女性の階層効果は,学校段階ごと に別個に,2次曲線上のダイナミクスを描いているといえる.

分析結果を表

3.4

3.5

に示す.先に確認したように,男女では階層効果は異 なるトレンドを示している.まず,男性の結果(表

3.4)は,階層効果の世代間

変動を認めないモデルで十分に当てはまりがよいことが示されている.

M3

から

M6

までの

4

つのモデルで推定された階層効果の変動をプロットしたのが図

3.4

である.有意な改善を示してはいないがコーホートの変化を認めるモデルを検 討してみると,M4(PPCC),M5(CDPC),M6(CDPC2)のいずれにおいて

LRPPC PPCC

CDPC CDPC2

3.4 階層効果の変動(男性)

70

も,高等教育段階(

のプロット)の傾きはほぼ水平であり,安定した傾向を示 している.高校段階に関しては,概して減少傾向,すなわち平等化の傾向を示 している.

M5

M6

ともに,

1965

年以降生まれ(

1980

年代以降に高校に進学し た世代)世代には高等教育段階よりも階層効果は小さくなっており,階層効果 逓減現象の崩壊の兆候が見て取れる.ただし,これらの結果は,

M3

と比べて予 測の改善にはなっていないため積極的な解釈はせず,男性の進学率格差は,戦 後一貫した階層効果逓減構造を保ちながら推移しているといってよい.

続いて女性に関する結果である.女性の結果は表

3.5

および図

3.5

で確認する.

女性に関する階層効果は世代間で変動を認めるモデルにおいて当てはまりが改 善されている.図

3.5

から高校進学に関する階層間格差の変動をみると,M5

(CDPC)モデルでは,1960年代生まれを境に階層効果の大小関係が逆転して いる.これは,男性に関する

CDPC

モデルと同等である.2次曲線状の変化を

認めた

CDPC2

の結果からは,高校は

1960

年代頃に階層間格差のピークを迎え,

その後減少に向かっていることが読み取れる.高等教育段階は,CDPCにて安 定的な推移が読み取れる(表

3.5

における

Multiplicative Effect

のコーホート係数 とコーホート

×

高等教育係数がほとんど打ち消しあう数値になっていることか

3.5 女性の分析結果

PPCC CDPC CDPC2

Coef. Std. Err. Coef. Std. Err. Coef. Std. Err.

Independent Effect

高校 -0.182 (0.162) 0.203 (0.188) -1.018 (0.167) ***

高等教育 -4.075 (0.227) *** -4.136 (0.210) *** -4.305 (0.294) ***

コーホート 0.100 (0.010) *** 0.130 (0.016) *** 0.074 (0.013) ***

コーホート×高等教育 -0.061 (0.010) *** -0.101 (0.021) *** -0.058 (0.023) *

Multiplicative Effect

高校 1.000 ―― 1.000 ――

1.000 ――

高等教育 -0.162 (0.075) * -0.028 (0.075) -0.263 (0.067) ***

コーホート -0.004 (0.003) -0.016 (0.006) ** -0.006 (0.003) † コーホート×高等教育 0.014 (0.007) * 0.007 (0.005) コーホート2

-0.001 (0.000) ***

(コーホート×高等教育)2

0.000 (0.000) *

Multiple Component

父教育年数 0.258 (0.019) *** 0.225 (0.017) *** 0.329 (0.023) ***

父職威信スコア 0.028 (0.003) *** 0.024 (0.003) *** 0.035 (0.003) ***

兄弟姉妹数 -0.172 (0.027) *** -0.144 (0.025) *** -0.174 (0.029) ***

N of Transition 5218 5218 5218

N of individual 3134 3134 3134

Log likelihood -2059.7431 -2058.9344 -2041.2602

***: p < 0.001, **: p < 0.01, *: p < 0.05, †: p < 0.1 Estimated by Stata 13.1 "ml" function

71

らもわかる).

CDPC2

を見ると,

1960

年代後半をピークに,その後減少に転じ ている.ただし減少の仕方は高校段階と比べると緩やかである.

これらの結果と過去の研究との整合性についてまとめると以下のようになる.

まず,Treiman and Yamaguchi (1993) が

SSM75

年を用いて示した明確な階層効 果逓減は

1955

年生まれまで世代の男性に関するものである.出身家庭背景とし て投入した変数に違いはあるが,その世代までにおける父親の教育や職業に関 する階層効果逓減,そしてその安定構造は,本モデルでも支持されている.こ れまでの研究で言及されなかったより若い世代に関して言えば,特に女性に関 して高校段階で平等化の傾向が見られる.荒牧(2007)が指摘した階層効果逓 減構造の崩れは,高校段階の平等化によって起こっていたものであることが指 摘できる.荒牧(2007)は,10 年刻みの世代間比較によって,近年の階層効果 逓減構造の崩壊を示唆していたが,大局的に見れば,男性に関しては安定,女 性に関しては高校の開放というようにまとめられる.