を最小にする
𝛼𝛼
の組を採用する 3.ただし,確率的なシミュレーションの下では,条件がすべて同じであっても異なる結果を出力する.確率的な変動を考慮し,
同一のパラメータの組み合わせで
5
セットのシミュレーションを行い,それぞ れで得られた係数の平均値を𝜷𝜷
として用いる.0.813 �=
∑ exp�𝜇𝜇exp�𝜇𝜇4𝐻𝐻+𝜇𝜇𝑈𝑈4𝑋𝑋𝐻𝐻�ℎ𝐻𝐻+𝜇𝜇𝑈𝑈ℎ𝑋𝑋𝐻𝐻�
ℎ
�
と求められる.すなわち,𝐹𝐹
𝑅𝑅𝑈𝑈(∙)
をU
クラスのリソースの 分布関数とすれば,表5.4 トラッキング効果の実測値 普通科A 普通科 B 職業科 国私立中 0.302 0.520 0.179
公立中 0.124 0.526 0.350
0.136 0.525 0.338
大学A 国立・私立大 専門短大
普通科 A 0.227 0.521 0.252
普通科 B 0.090 0.391 0.520
職業科 0.005 0.308 0.687
0.114 0.414 0.332
コスト
c
に関して,𝐹𝐹
𝑅𝑅𝑈𝑈(𝑐𝑐) = 0.813
が成り立つ.U
クラスのリソースは対数正規分布
𝐿𝐿𝑁𝑁(−0.5, 1)
に従うことを仮定しており,その分布関数はΦ �
log 𝑥𝑥−𝜇𝜇𝜎𝜎�
とあらわされるので,
Φ(logc + 0.5) = 0.813 → c = exp(Φ
−1(0.813) − 0.5) ≒ exp (0.389)
が導 ける(Φ(∙)
は標準正規分布の分布関数).子供の教育費調査および学生生活調 査より,子供を高校に通わせる際にかかる費用は平均して56
万4
千円である.一方,国私立中学校(対公立中学校比較),高等教育ではそれぞれ,84万
4
千 円,189万5
千円である.中学校段階と高等教育段階のコストをモデル上から 算出することはできないため,高校<中学<高等教育の大小関係のみは担保し ながら,中学校,高等教育のコストをそれぞれexp(0.5) , exp(0.6)
と仮定しこれら の値を各学校段階のコストとして採用する 5.続いて,トラッキングに関するパラメータを算出する.表
5.4
は先の分析で推 定されたトラッキング効果を示したものである.4
章で見た数値は,各学校段 階での学校タイプから「非進学」カテゴリを含んだ次の段階の進学先への条件 付き確率であったが,ここでは,進学に範囲を絞った場合の各学校段階への分 布を示している.表5.4(遷移行列)を用いて,学校タイプによるトラッキング
効果をモデル化する.高校段階に関する個人の主観的到達確率𝜋𝜋
𝑖𝑖𝑖𝑖は,𝜋𝜋𝑖𝑖𝑖𝑖=𝐹𝐹𝜀𝜀�𝜏𝜏𝑖𝑖−1− 𝑥𝑥𝑖𝑖� − 𝐹𝐹𝜀𝜀�𝜏𝜏𝑖𝑖− 𝑥𝑥𝑖𝑖�
と表された.ここで,
𝜀𝜀
は標準正規分布に従う確率変数である.いま,社会に公 立中学校と私立中学校の2
タイプの学校があり,それぞれの出身者が異なる学 力分布を持つとする.国私立: 𝑋𝑋1𝑖𝑖~𝑁𝑁(𝑥𝑥̅1,𝜎𝜎1) 118
公立: 𝑋𝑋2𝑖𝑖~𝑁𝑁(𝑥𝑥̅2,𝜎𝜎2)
とする.
𝑥𝑥̅
1, 𝑥𝑥̅
2 の全体平均からのかい離が,中学校段階と高校段階を結ぶトラ ッキング効果とみることができる.まず,国私立中学校出身者に関するパラメータから求めていく.表
5.4
から,国私立中学校出身者の普通科
A, B
への進学率はそれぞれ0.302, 0.520
なので,1− 𝐹𝐹𝜀𝜀�𝜏𝜏1− 𝑥𝑥̅1
𝜎𝜎1 �= 0.302 (5.9a)
𝐹𝐹𝜀𝜀�𝜏𝜏1− 𝑥𝑥̅1
𝜎𝜎1 � − 𝐹𝐹𝜀𝜀�𝜏𝜏2− 𝑥𝑥̅1
𝜎𝜎1 �= 0.520 (5.9b)
の連立方程式を解けばよい.これらを
𝑥𝑥̅
1, 𝜎𝜎
1について解くと 𝜎𝜎1= 𝜏𝜏1− 𝜏𝜏2𝐹𝐹𝜀𝜀−1(0.698)− 𝐹𝐹𝜀𝜀−1(0.178) 𝑥𝑥̅1=𝜏𝜏1− 𝜎𝜎1𝐹𝐹𝜀𝜀−1(1−0.302)
となる.能力分布
X
が𝑁𝑁(50,10)
に従うとすれば,周辺度数から𝜏𝜏
1, 𝜏𝜏
2はそれぞれ,𝜏𝜏1=𝐹𝐹𝑋𝑋−1(1−0.14) = 60.8 𝜏𝜏2=𝐹𝐹𝑋𝑋−1(1−0.14−0.52) = 45.87 と算出される.これを用いて
𝜎𝜎1= 𝜏𝜏1− 𝜏𝜏2
𝐹𝐹𝜀𝜀−1(0.698)− 𝐹𝐹𝜀𝜀−1(0.178)= 10.51 𝑥𝑥̅1=𝜏𝜏1− 𝜎𝜎1𝐹𝐹𝜀𝜀−1(0.698) = 55.50
となる.同様に,公立中学校出身者に関しては,能力の標準偏差を
σ
2とし,1− 𝐹𝐹𝜀𝜀�𝜏𝜏1− 𝑥𝑥̅2
𝜎𝜎1 �= 0.124 (5.10a)
𝐹𝐹𝜀𝜀�𝜏𝜏1− 𝑥𝑥̅2
𝜎𝜎2 � − 𝐹𝐹𝜀𝜀�𝜏𝜏2− 𝑥𝑥̅2
𝜎𝜎2 �= 0.526 (5.10b)
を解いて,
𝜎𝜎2= 9.83 𝑥𝑥̅2= 49.62
と算出できる.これらを,進学した中学校による学力分布の変動として採用す る.
𝜃𝜃1=55.50−50
10.51 = 0.524,𝜃𝜃2=49.62−50
9.83 =−0.048
として,中学校のタイプに条件づけられた主観的到達確率
𝜋𝜋(𝑥𝑥
𝑖𝑖)
𝑖𝑖を以下のように 設定する.119
𝜋𝜋(𝑥𝑥𝑖𝑖)𝑖𝑖|1 =𝐹𝐹𝜀𝜀�𝜏𝜏𝑖𝑖−1− 𝑥𝑥𝑖𝑖− 𝜃𝜃1� − 𝐹𝐹𝜀𝜀�𝜏𝜏𝑖𝑖− 𝑥𝑥𝑖𝑖− 𝜃𝜃1� (国私立出身)
𝜋𝜋(𝑥𝑥𝑖𝑖)𝑖𝑖|2=𝐹𝐹𝜀𝜀�𝜏𝜏𝑖𝑖−1− 𝑥𝑥𝑖𝑖− 𝜃𝜃2� − 𝐹𝐹𝜀𝜀�𝜏𝜏𝑖𝑖− 𝑥𝑥𝑖𝑖− 𝜃𝜃2� (公立出身)
高等教育進学時の到達確率にも,同様のロジックで,高校のタイプによって 変動があるとする.高校タイプによって条件づけられた高等教育のタイプへの 主観的到達確率を
𝜆𝜆(𝑥𝑥
𝑖𝑖; 𝑗𝑗)
𝑖𝑖とすると,𝜆𝜆(𝑥𝑥𝑖𝑖;𝑗𝑗)𝑖𝑖 =𝐹𝐹𝜀𝜀�𝜏𝜏𝑖𝑖−1− 𝑥𝑥𝑖𝑖− 𝜓𝜓𝑖𝑖� − 𝐹𝐹𝜀𝜀�𝜏𝜏𝑖𝑖− 𝑥𝑥𝑖𝑖− 𝜓𝜓𝑖𝑖�
と示せる.細かい過程は省略するが,高校段階と同様の方法で算出される
𝜓𝜓
𝑖𝑖の 値を表5.5
にまとめる.表5.5 トラッキングパラメータの計算値 中学→高校 高校→高等教育 𝜃𝜃1= 0.524 σ1= 10.11 𝜓𝜓1= 0.591 𝜙𝜙1= 8.990 𝜃𝜃2=−0.048 σ2= 9.826 𝜓𝜓2=−0.120 𝜙𝜙2= 9.864 𝜓𝜓3=−0.602 𝜙𝜙3= 6.133
5.4.3 BGM
パラメータここまでに,BGMパラメータの
𝛢𝛢
を除くすべてのパラメータを仮定または現 実データより示した.これでシミュレーションを実装することができる.𝛢𝛢 = � . 9 . 1 0 . 6 . 3 . 1 . 4 . 4 . 2 �
として,
1
セット試行の合併データから,出身階層と教育段階2
に関するクロ ス集計表を作成すると,表5.6
のようになる.表5.6 シミュレーションの結果例 大学1 大学2 大学3 非進学 合計 高校1 257 62 76 5 400
(64.3%) (15.5%) (19.0%) (1.3%) (100.0%) 高校2 227 67 61 345 700 (32.4%) (9.6%) (8.7%) (49.3%) (100.0%) 高校3 116 16 32 736 900 (12.9%) (1.8%) (3.6%) (81.8%) (100.0%)
合計 600 145 169 1086 2000
(30.0%) (7.3%) (8.5%) (54.3%) (100.0%)
ここから算出される対数オッズ比は,各クラス/学校段階ごとの対数オッズ 比(
𝛽𝛽
)は以下の通りである.表5.7 シミュレーションの評価例
𝛽𝛽 𝜇𝜇 𝛽𝛽 − 𝜇𝜇 (𝛽𝛽 − 𝜇𝜇)2
Uクラス/Sク ラス
1 -4.358 -2.074 -2.284 5.218 2 -4.157 -3.683 -0.474 0.224 3 -4.454 -5.787 1.333 1.777
Wクラス/Sク
ラス
1 -5.787 -2.684 -3.103 9.630 2 -6.346 -2.112 -4.234 17.930 3 -5.857 -1.853 -4.004 16.030
120
合計 50.809
実データから得られる値(
𝜇𝜇
)とは,かなりの差が見られる.この差を縮めるた めに,α
を変化させていく.さて,𝛼𝛼
の値をさまざまに変化させ,5セットの結 果から得られる係数から,式(5.8
)を計算していった結果が図5.4
である 6. 横軸はシミュレーションの回数であるが,5
セットごとに𝛼𝛼
を設定しなおしてい るので,時系列データとしてのつながりはないことに注意する.本シミュレー ションで得られた乖離度ℒ
の最小値は,𝛢𝛢
∗= � . 87 . 11 . 02 . 80 . 03 . 17
. 34 . 45 . 21 � (5.11)
のもとで,係数の組合せは,表
5.8
のようになった.係数の乖離の
2
乗和はℒ
∗= 11.493
となった.推定に使った6
つの係数が漸近 的に正規分布に従うと仮定すれば,ℒ
の値は自由度6
のχ2
乗分布にしたがう.1 − χ
62(ℒ) = 0.104
であり,棄却域に入っていないことから,この値が現実の値と大きくかい離していないといってよいだろう.
表5.8 パラメータの最尤値と評価
𝛽𝛽 𝜇𝜇 𝛽𝛽 − 𝜇𝜇 (𝛽𝛽 − 𝜇𝜇)2 Uクラス/Sクラス
1 -3.467 -2.074 -1.393 1.941 2 -3.357 -3.683 0.326 0.106 3 -3.065 -5.787 2.722 7.411
Wクラス/Sクラス
1 -1.565 -2.684 1.119 1.251 2 -1.446 -2.112 0.666 0.444 3 -1.270 -1.853 0.583 0.339
合計 11.493
Estimated by R 3.1.1 vglm function in “VGAM” package
最尤解として採用されたパラメータ
𝛢𝛢
について考察してみよう.まず目に付く のは𝛼𝛼
31= 0.34
である.これは,𝛽𝛽
21= 𝛽𝛽
31= 0.35
よりも小さい.𝛼𝛼
21= 0.80
はこ れらよりも大きいことから,教育段階2
で進学を選択してタイプ1
かタイプ2
の教育達成を得ることはS
クラス出身者の地位達成にとって有利にはたらくが,タイプ
3
では逆に不利になってしまう.S
クラス出身者にとって,高等教育進 学はリスクを伴う選択である.一方,
W
クラスに関してはどうか.𝛼𝛼
31+ 𝛼𝛼
32= 0.79
は,𝛾𝛾
1+ 𝛾𝛾
2= 0.73
より大きいが
𝛽𝛽
31+ 𝛽𝛽
32= 0.80
よりもわずかに小さい.Wクラスに関しても,教育段階2
への進学は,リスクを伴う選択肢であることがいえる 7.これらのパラメータ をすべて用いて,階級ごとの期待利得の関係を示すと図5.5
,5.6
のようになる.図
5.5
は公立中学校出身者に関する期待利得であり,見方は前章の図2.6,2.10
121
図5.4シミュレーションによるχ2 値の出力
122
と同じである.これを見ると,両階級ともに,能力から導かれる高校進学の期 待利得は,得られる学力分布の上では常に進学しない場合より大きな利得とな る.得られた推定値からは,高等教育の進学は,どのような結果になったとし ても中学校卒で教育を終えるよりも地位達成の下降移動のリスクが少なくなる
図5.5 最適パラメータによる進学意思決定グラフ(高校)
図5.6 最適パラメータによる進学意思決定グラフ(高等教育)
123
ためである.この関係からわかることは,相対リスク回避メカニズムのみに基 づいて教育意思決定を行うとき,S,W クラス共に高校には進学することが常に 合理的となり,高校非進学は発生しない.中学校・高校間の移行で歩留まり率 が厳密に
1
にならないのは,リソースの差,および構造化されていない誤差の 成分に依存するということである.一方図
5.6
は,高校のタイプごとの,高等教育進学の期待利得を示したもの である.高等教育進学の期待利得は,高校のタイプによって異なるため,一つ の階級につき3
つの曲線と3
つの直線が表示される.Sクラスに対しては,高校
Type1
に進学した場合,高等教育も常に進学することが合理的となる.Type2,
3
については,進学しないことが合理的になる領域も存在する.高校のタイプ はより上位の高校ほど,進学せずに労働市場に参入した場合の下降リスクが大 きくなるような設定になっており,さらに𝛢𝛢
の推定結果がα
31< 𝛽𝛽
21となっている ことから,高校段階で中位,下位に配分されてしまった場合,(トラッキング効 果も加わり)進学しないことが合理的になる層が存在する.W
クラスに関して も類似の傾向が読み取れるが,S
クラスとは違い,Type2
の高校に進学した際も,常に高等教育の進学が合理的な選択となる.グラフを見てわかるように,
Type3
の進学者に関して言えば,進学が合理的になる水準は,S
クラスのそれの方がW
クラスのそれよりも小さい.一方Type2
に関してはW
クラスの方が小さい.合理的選択のみが進学の基準であるならば,高等教育機会の進学率は,