帰宅困難者対策は、一斉帰宅の抑制、主要駅周辺等における混乱防止、一時滞在施設の確 保、帰宅困難者等への支援、帰宅困難者の搬送等、多岐にわたります。また、多数の死傷者・
避難者が想定される中にあっては、膨大な数の帰宅困難者等への対応は、行政機関による「公 助」だけでは限界があるため、「自助」や「共助」も含めた総合的な対応が不可欠です。
このようなことから、帰宅困難者対策の強化にあたっては、本市だけでなく、国や都県等 の関係自治体、鉄道事業者や駅周辺事業者等の関係機関がそれぞれ実施する取組を充実させ るとともに、平常時から連携・協働して対策を進めていきます。
第1節 帰宅困難者の発生抑制(一斉帰宅の抑制)
帰宅困難者等対策は、まず、帰宅困難者等の発生を抑制することが重要になります。
このため「むやみに移動を開始しない」という基本原則を周知するとともに、事業者等 に対して従業員等の施設内待機やそのための備蓄の推進、家族等との安否確認手段の確 保等を啓発し、帰宅困難者の発生を抑制します。
1 事業者等への啓発
主要駅等周辺の滞留者や帰宅困難者の発生を抑制するため、事業者・学校や市民に対 する啓発を行います。
⑴ 事業者や学校への啓発
帰宅困難者等の発生を抑制するためには、約8割を占める通勤者及び通学者への対 策が最も重要となります。地震発生時に、所属する施設に滞在しているこれらの人達 については、安全に帰宅できるようになるまでの間、当該施設内で待機させることを 啓発します。具体的には、事業所等における従業員等の施設内待機やそのための備蓄 の推進、家族等との安否確認手段の確保など、個人や事業所が取り組むべき基本的事 項を定めた「一斉帰宅抑制の基本方針」を周知します。さらに、この趣旨に賛同を得 られた事業者等については、本市ホームページ等で『「一斉帰宅抑制の基本方針」賛同 事業者』として広く PR するとともに、広報等を通じてより一層の取組の推進を図り ます。
また、共助の観点から、外部の帰宅困難者(来社中の顧客や取引先及び施設周辺に いた帰宅困難者等)の受け入れや、そのために必要な備蓄等(例えば、従業員用に加 えて、10%程度余分に備蓄する)について啓発していきます。
⑵ 市民への啓発
災害時に無理に帰宅しなくて済むように、家族等との連絡手段を確保しておくこと や、徒歩で帰宅せざるを得ない場合に備えて、帰宅経路の確認や徒歩帰宅できる携行 品等について啓発していきます。
<主な携行品>
簡易食品、飲料水 動きやすい服、スニーカー
地図 携帯電話のバッテリー、充電器
携帯ラジオ 懐中電灯
雨具、タオル
総務局
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第 2部
第 第 第 第 帰宅困難 第第 安全確保
一斉帰宅抑制の基本方針
<基本的考え方>
首都直下地震への備えを万全とするためには、「自助」、「共助」、「公助」による総合 的な対応が不可欠です。首都直下地震発生直後においては、救助・救急活動、消火活動、
緊急輸送活動等の応急活動を迅速・円滑に行う必要があります。このため、帰宅困難者 等の発生による混乱を防止するための「むやみに移動を開始しない」という基本原則を 徹底します。
この基本原則を実効あるものとするため、以下の具体的な取組事項に沿って、各企業 等(官公庁や団体も含む。以下同じ。)は一斉帰宅抑制に努めます。
<具体的な取組>
(従業員等の待機・備蓄)
首都直下地震の発生により、首都圏のほとんどの交通機関が運行停止となり、当分の 間復旧の見通しが立たない場合には、事業所建物や事業所周辺の被災状況を確認の上、
従業員等の安全を確保するため、従業員等を一定期間事業所内に留めておくよう努めま す。
また、従業員等が事業所内に待機できるよう、3日分の必要な水、食料、毛布などの 物資の備蓄に努めます。
(大規模な集客施設等での利用者保護)
首都直下地震発生時には、大規模な集客施設やターミナル駅等において、多くの帰宅 困難者等の発生が予想されることに鑑み、市区町村や関係機関等と連携し、事業者等は、
利用者を保護するため、適切な待機や誘導に努めます。
(従業員等を待機させるための環境整備)
従業員等を一定期間事業所内に留めておくことが可能となるよう、事業所建物の耐震 化、家具類の転倒・落下・移動防止、ガラスの飛散防止など、従業員等が事業所内に安 全に待機できる環境整備に努めます。
(事業継続計画等への位置づけ)
BCP(事業継続計画)等において、首都直下地震発生時における従業員等の待機及び 帰宅の方針をあらかじめ定めておき、従業員に周知することに努めます。
(安否確認)
首都直下地震発生時には電話が輻輳することを踏まえ、事業所と従業員間の安否確認 方法をあらかじめ定めるとともに、従業員とその家族間においても、携帯電話災害用伝 言板や災害用伝言ダイヤル171、ソーシャル・ネットワーキング・サービス等の複数の 安否確認手段をあらかじめ確認し、当該手段を利用するよう周知することに努めます。
(訓練)
首都直下地震を想定した訓練を定期的に行い、必要に応じて対策の見直しを行うこと に努めます。
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第2節 主要駅周辺等における混乱防止
地震発生直後は、鉄道機関の運行停止等により、駅や繁華街等に大量の人々が足止め 状態となり、大きな混乱が予測されます。このため、来街者等による混乱を防止するこ とを目的として、関係者の役割を定め、以下のような対策を推進します。
1 平常時からの連携強化
主要駅において、関係者が連携した対策を推進するため、地域、鉄道事業者、バス事業者、
駅周辺事業者、所轄警察署、区役所等を構成員とする協議会等を設立し、災害時におけ る主要駅及び周辺での対応ルールの策定や、情報受伝達マニュアル等の整備、定期的な 防災訓練を実施するなど、平常時からの連携強化を図ります。
2 関係者の役割
⑴ 鉄道事業者の役割
鉄道事業者は、利用者の安全を確保するため、防災資機材や災害備蓄品等の備蓄、
事業継続計画(BCP)等の整備、代替輸送手段の確保等に努めます。
また、事業所防災計画等において、あらかじめ当該施設内での待機に係る案内や安 全な場所への誘導等を定めた利用者の保護に係る計画を策定し、従業員等への周知に 努めます。
⑵ 駅周辺事業者の役割
事業者は、それぞれの組織対応を原則とし、従業員や顧客等の安全を確保するため、
防災資機材や災害備蓄品等の備蓄や、建物の耐震化、家具類の転倒・落下・移動防止など、
従業員等が安全に帰宅できるようになるまでの間、事業所内に待機できる環境整備に 努めます。
なお、大規模な集客施設(※)においては、事業所防災計画等において、あらかじ め利用者の保護(当該施設内での待機に係る案内、安全な場所への案内又は誘導)に 係る計画を策定し、従業員等への周知に努めます。
※ 発災後、利用者全てを施設外に出した場合、大量に帰宅困難者等が発生するおそ れのある施設を想定しています。具体的には、大規模な店舗、映画館、アミューズ メント施設、展示場等です。
⑶ 学校の役割
児童・生徒・学生の安全確保のため、職員や児童・生徒・学生が安全に帰宅できる ようになるまでの間、校舎内に待機できるように、災害備蓄品等の備蓄に努めます
第3節 帰宅困難者の一時避難場所、一時滞在施設
区長は、地震により多くの滞留者の発生が予測される主要駅等を中心に、滞留者の安 全の確保と災害関連情報を提供するための一時避難場所及び一時滞在施設を指定します。
⑴ 対象施設等
内容・条件等 対象施設
都心部における帰宅困難者の 一時避難場所
昼間人口の特に多い横浜・関 内周辺において、滞留者によ る混乱防止を図るため、一時 的に避難させる公園等の施設
1 横浜公園 2 沢渡中央公園 3 岡野公園
4 みなとみらい21地区 帰宅困難者の一時滞在施設 帰宅が可能になるまで待機す
る場所がない帰宅困難者を一 時的に受け入れ、休憩場所の ほか、可能な範囲でトイレ、
水道水、情報の提供等を実施 する施設
防災計画「資料編」参照
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第 第 第 第 帰宅困難 第第 安全確保
⑵ 措置事項等
区災害対策本部及び市災害対策本部帰宅困難者対策チームが、警察その他関係機関 と連携して、避難誘導や混乱防止などの対応にあたるとともに、①災害関連情報の提 供 ②臨時電話の設置 ③水缶、保存用ビスケット等の配布、などを行う。
該当施設 所管区局
主な対応 情報 臨時電話 水缶・保存用
ビスケット 毛布(アルミブ ランケット)
① 横浜公園 環境創造局 ○ ○ ○ ×
② 沢渡中央公園 神奈川区 ○ ○ ○ ×
③ 岡野公園 環境創造局 ○ ○ × ×
④ 一時滞在施設 ― ○ ― ○ ○
第4節 帰宅困難者への支援
来街者等が帰宅困難者となった時に備えて、安全の確保と災害関連情報等を提供する ための「帰宅困難者一時滞在施設」の指定を行っています。本市施設や国の施設を選定し、
主要駅や観光地周辺等では、民間施設や商業施設の協力を得て、平成25 年1月末現在で 149施設を指定しており、更に、必要に応じて、区災害対策本部長は公共施設等を一時滞 在施設として開設します。
なお、災害時には、県に対し、県有施設の一部の利用を要請します。
1 一時滞在施設の開設・運営
パシフィコ横浜及び横浜アリーナ以外の一時滞在施設は、災害発生日の翌朝まで施設 管理者が開設・運営を行います。具体的には、帰宅困難者を一時的に受け入れ、休憩場 所のほか、可能な範囲でトイレ、水道水、情報の提供等を実施します。
2 翌朝以降の一時滞在施設の確保
一時滞在施設の運営は災害発生日の翌朝までを原則としていますが、直下型地震等の 発生による、鉄道機関の運休の長期化も想定されます。このような場合、長距離の徒歩 帰宅が困難な要援護者や遠方からの観光客等については、翌朝以降の収容施設が必要と なります。
そのため、必要に応じて、延長して開設する一時滞在施設もしくは補充的避難場所を 利用します。施設の選定にあたっては、運営人員の確保や物資の搬送といった行政側の 負担と、避難者側の移動等の負担を考慮し、区災害対策本部と市災害対策本部帰宅困難 者対策チームで調整します。施設数の目安は、2日目(発災翌日)は各区に1施設程度、
3日目以降は市全体でパシフィコ横浜及び横浜アリーナの2施設とし、帰宅困難者を集 約します。
3 帰宅困難者用の物資の備蓄
被害想定に基づき、帰宅困難者用に、水、食料、アルミブランケット、トイレパック を備蓄しています。これらを受入れ想定人数に応じて一時滞在施設や市営地下鉄の2路 線以上が乗り入れている市内の駅に備蓄しているほか、パシフィコ横浜・横浜アリーナ・
関内駅・戸塚駅周辺の備蓄庫や区役所、消防出張所等に分散備蓄することで、迅速な配 布を図ります。
4 帰宅困難者一時滞在施設検索システム(一時滞在NAVI)
災害発生時に、どの一時滞在施設で受け入れ可能かなどの情報を、スマートフォンや 携帯電話等で検索できる「帰宅困難者一時滞在施設検索システム」を整備しています。