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45 当初予定の

第5節 小括

本章では、国有鉄道時代における鉄道事故の発生件数の推移を分析し、事故の発生傾向 を概観的に把握した。

運転事故や列車事故について、鉄道職員の取扱い誤りに起因する責任事故の推移に注目 し、減少傾向が顕著に認められる五つの時期を抽出した。そして、これらの時期において 取り組まれた安全性向上のための施策を分析し、四つの要因にまとめた。そのうち、「技術 的な改良」が全ての時期において取り組まれたが、なかには ATS のように古くから国有鉄 道で試験・開発が行われてきたものの、民鉄の方が早期にあるいは保安度の高いものが導 入されたケースも少なくない。これらが鉄道職員の取扱い誤り抑止にどの程度有効であっ たかどうかは今後の検討課題であるが、現在も引き続き発生している鉄道社員の取扱い誤 りを減少させていくための対策を考えていく上で、参考になるものと考えられる。

一方で、安全の向上を図っていくには、鉄道の運行を担っている現場従業員の安全に関 する意識の在り方も重要である。

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例えば、桜木町駅列車火災事故や六軒駅列車衝突事故、三河島駅列車衝突事故といった 重大事故の発生は鉄道職員の真摯な反省を呼び起こし、それは日常の業務遂行における鉄 道職員の意識や姿勢の変化をうながし、安全性の向上に大きく寄与したと考えられる。

重大事故の発生傾向については、保安装置の整備等により件数、死傷者数ともに年々減 少傾向にあるが、1 件あたりの死傷者数は以前に比べ増加しているのが確認された。また、

1897 年度から 1986 年度の 90 年間を四つの時代(①~④)に、そのうち④の昭和時代後期 を更に五つの時期に区分し、比較的発生件数の多い七項目の発生傾向及びその推移を分析 した。項目毎にピーク時期は異なるが、分割・民営化直前である④-5 では、全ての項目に おいて減少傾向にあった。また、減少傾向が確認された④-5 の時期においても、発生原因 の多くが鉄道職員の取扱い誤りで占められている「乗務員関係」や「駅職員関係」の発生 割合が高く、それは数年に 1 度の頻度で繰り返して発生していることが分かった。

以上のことは、鉄道社員の取扱い誤り件数が減少傾向にある現在においても、重大事故 は起こりうるものと認識し、事故の再発防止に向けた継続的な努力が必要であることを示 している。

鉄道事故の再発防止のためには、「誰が悪いのか」ではなく、「どうすれば人間のエラー を減少させ、事故を防ぐことができるのか」という観点に立つことが何よりも重要である。

人間が引き起こしたエラーを決して個人の不注意やタルミのせいと決めつけるのではなく、

エラーを引き起こすことになった背景要因を突き止め、その要素を改善し、エラーをバッ クアップする仕組みを設けてやることこそが肝心である(133)

本研究によって、国有鉄道時代に発生した重大事故、及びその後に採られた安全対策の 全体が概観できた。これをベースに、国有鉄道時代に発生した鉄道職員の取扱い誤りに起 因した事故を、ヒューマンファクター的視点に基づき個々に分析し、事故発生に至る諸要 因をさらに踏み込んで解明し、事故後に採られた対策の適否を検証していくことが次の課 題となる。

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[注]

(1) 佐々木冨泰・網谷りょういち(1992 年)『事故の鉄道史』日本経済評論社。

(2) 佐々木冨泰・網谷りょういち(1995 年)『続・事故の鉄道史』日本経済評論社。

(3) 久保田博(2000 年)『鉄道重大事故の歴史』グランプリ出版。

(4) 山之内秀一郎(2005 年)『なぜ起こる鉄道事故』朝日文庫。

(5) 川津賢(2008 年)「日本の鉄道事故史と安全・安定輸送への変遷」『東京交通短期 大学・研究紀要』第 14 号、49~63 頁。

(6) 国土交通省鉄道局安全対策室長(2011 年)「鉄道事故等報告規則等の事務取扱い について」。鉄道事業者は、鉄道事業法第 19 条により、列車衝突事故、列車脱線事故、

列車火災事故などの運転事故や死者等が発生した運転事故、旅客列車であれば 30 分以 上の遅延を生じさせた輸送障害について、速やかに地方運輸局長へ報告する義務を負 っている。

(7) 鎌田朝則(1958 年)『運転事故と過失責任』教育文化社、157 頁~158 頁、161 頁か ら転載。国有鉄道運転事故報告規程(1958 年 3 月 13 日総裁達第 113 号)第 3 条 2 項。

同規程第 4 条 23 項では、以下に例示する死傷は事故(重大事故)に該当しないとし ている。

(イ)車扉にはさまれ、または車内での転倒(激動によるものを除く)により生じた もの

(ロ)列車または車両を避けた際の転倒により生じたもの

(ハ)列車からの投棄物により生じたもの

(ニ)保守に関する作業に従事中または詰所と作業現場との往復中に、列車または車 両の運転に関係なく生じたもの

(ホ)機関区、電車区、客貨車区等における検査または修繕のため、車両の小移動に 伴って生じたもの

(ヘ)転車台の取扱に伴って生じたもの

(8) 準重大事故とは、国有鉄道運転事故報告規程(1958 年 3 月 13 日総裁達第 113 号)

第 3 条第 3 項において、5 人以上の死傷者が生じたもの、10 両以上の脱線事故があっ たもの、仮眠、飲酒等、事故の原因が特に悪質であるもの、火薬類、危険品または機 関車のボイラの爆発等、事故の原因が特に重大と認められるものに該当するものは準 重大事故と定義されている。準重大事故は、鉄道運転事故報告規程(1947 年 7 月 1

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日達第 348 号)の制定により新たに設けられた(同上規程 158 頁)。

(9) 日本国有鉄道(1958 年)『鉄道技術発達史 日本国有鉄道編』第 5 篤 運転、150 頁。

(10) 日本国有鉄道(1969 年)『日本国有鉄道百年史』第1巻、709 頁、719 頁。

(11) 日本国有鉄道(1971 年 a)『日本国有鉄道百年史』 第 3 巻、511 頁。

(12) 運転保安研究会(1981 年)『鉄道の運転と安全のしくみ-運転保安ハンドブック』

日本鉄道運転協会、27 頁。

(13) 統計庁ホームページ「第 29 章災害・事故」http://www.stat.go.jp/data/chouki/

29exp.html(2013 年 11 月 18 日アクセス)。

(14) 日本国有鉄道(1971 年 b)『日本国有鉄道百年史』 第 8 巻、501 頁~505 頁。

(15) 運転保安研究会、前掲書、32 頁。1947 年度の改正では、制限速度が時速 110 キロ まで引き上げられた(実際に時速 110 キロ走行が開始されたのは 1958 年に入ってか らである)。

(16) 鉄道省年報や鉄道院年報には、「(鉄道)事故ノ重大ナルモノ」(1922 年以降は、「運 転事故ノ重大ナルモノ」)としてその年度に起こった事故のうち比較的被害の大きか ったものが具体的に記載されている。1922 年以降では、年報に記載された事故と重 大事故とが一致しているのに対し、1921 年以前では重大事故以外のものも数多く年 報に記載されている。また、日本国有鉄道『日本国有鉄道百年史』第8巻、526 頁~

527 頁に記載の図表において、1923 年 3 月に鉄道省運輸局運輸課発行の「国有鉄道重 大運転事故記録(1872 年度~1921 年度)」が引用されていたことを勘案し、重大事故 は 1922 年度に定義されたものと推定される。

(17) 日本国有鉄道(1958 年)『鉄道技術発達史 日本国有鉄道編』第5篤 運転、175 頁。

(18) 日本国有鉄道監査委員会「日本国有鉄道監査報告書」1967 年度、131 頁。

(19) 山之内秀一郎、前掲書、227 頁~228 頁。

(20) 日本国有鉄道(1969 年)、前掲書、709 頁、719 頁。

(21) 山之内秀一郎、前掲書、92 頁。

(22) 日本国有鉄道(1969 年)、前掲書、432 頁。

(23) 山之内秀一郎、前掲書、92 頁~93 頁。

(24) 日本国有鉄道運転局保安課「運転事故報告基準規程」1984 年 7 月、第 6 条の 2。責

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任事故とは、鉄道職員の取扱誤りにより生じた運転事故、運転阻害及び死傷をいい、

その区分は以下のとおりとされている。

(1) 責任事故 A

責任事故のうち次のいずれかに該当するもの ア 運転事故となったもの

イ 事故により人の死傷を生じたもの ウ 物の損傷の損害額が 50 万円以上のもの エ 輸送の障害

(ア) 列車の運休を生じたもの

(イ) 列車に 30 分以上の遅延を生じたもの オ 飲酒などの原因が悪質なもの

カ その他重要なもの

(2) 責任事故 B

責任事故のうち責任事故 A 以外のもの

(25) 日本国有鉄道(1969 年)、前掲書、710 頁。

(26) 運転保安研究会、前掲書、18 頁。

(27) 日本国有鉄道(1969 年)、前掲書、710 頁。

(28) 日本国有鉄道(1971 年 a)、前掲書、117 頁~120 頁。

(29) 日本国有鉄道(1958 年)、前掲書、73 頁。江崎昭(1998 年)『輸送の安全からみた 鉄道史』グランプリ出版、160 頁~161 頁。 イギリスで開発された円板式自動閉そく 信号機が、1904 年に甲武鉄道へ導入された。この装置は、装置の前面窓に円板で閉 そく状態を表示するものであり、円板は「線路開通」(白色地)、「列車あり」(赤色地)、

「定位」(白色地と赤色地)の3位置で構成されている。ただし、円板に太陽が直射 した場合や円板表面に降雪が付着した場合は、信号確認が困難となる不便さがあった。

その後の鉄道国有化にともない本装置は国有鉄道へ引き継がれたが、大正期には京 浜線で導入実績のある F 型腕木式自動信号機への取替えが行われるようになった。

(30) 日本国有鉄道(1972 年 a)『日本国有鉄道百年史 』第6巻、425 頁。

(31) 原田勝正(1965 年)「鉄道敷設法の前提」『日本歴史』第 208 号、38 頁、40 頁。

(32) 原田勝正・青木栄一(1973 年)『日本の鉄道-100 年の歩みから』三省堂、98 頁~99 頁。