第5章 舟山布袋木偶戯伝承の現在
第6節 子供の誕生祝い―満月戯―
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嫁入り前の「開面」の儀礼を行うときに花嫁の家で上演される木偶戯を開面戯と呼 ぶ。「開面」とは二本の木綿糸を絞って花嫁の顔の毛を抜き、額や眉を綺麗にする儀 礼である。以前は実際に行われていたが、現在は「開面」の真似事をするだけである。
「開面」が終った後に、開面戯が行われる。
開面戯は昼間に行い、満潮に合わせる必要もない。やり方は願解きと同様である。
一般には一幕、約 2 時間の上演を頼まれるのが多く、演目は猪羊戯の第一部と同様に、
結婚式の場面で終わるのを選ぶ。この一幕が終ると、「彩頭戯」を上演する。「彩頭 戯」の演目は決まりがなく、「扔元宝」の場面を加えるために行うので、財神の出る 場面があれば選択できる。開面戯の「彩頭戯」は「天官賜福」を選ぶのが多い。やり 方は猪羊戯と同様であるが、今度は花嫁が元宝を受け取って、「紅包」を天官に渡す。
開面戯は解放前には、金持ちの家でしか行われていなかったが、現在は普通の家庭 でも行っており、昔より上演が多くなった。
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台133が祭られている。そのため、梁祝廟とも呼ばれる。子授けの願をかけて間もなく したら、嫁は本当に妊娠し、一年後の 2015 年 1 月 29 日に孫が生まれた。応家はこれ が神の加護があったと思ったので、感謝・報告の意味で、木偶戯を奉納することにし た。
満月戯と言うが、今回の場合は実は満二か月で、「双満月」とも言う。双橋のあた りでは、最近は二か月目に満月を行うことが多い。満二か月のほうが嬰児がより丈夫 にさせ、もっと元気な姿を親戚や隣人に見せられるからである。
応家の満月戯は南禅廟と応家の自宅の二か所で行われた。廟での祭祀は応阿旺(嬰 児の祖父)が担当し、木偶戯の上演も廟で行い、頼まれたのは侯家班であった。家で の儀礼は祖母が担当した。儀礼の進行は以下の通りである。
満月の儀礼
(1)儀礼の準備。〔6:00-〕
①「祭神」の供え物や蝋燭、線香、爆竹など を用意。
②母方の祖母が用意した金色の服や帽子、「虎 頭靴(虎の頭を刺繍した手作りの布靴)」、五色 の糸「長命線」などを子供に着せる。舟山では誕 生祝いの時に、母方の祖母が服や飾り、食べ物な どを贈る習慣がある。
(2)「祭神」〔7:10-〕
①祖母は線香をささげる。
②嬰児の母は子供を抱いて拝礼する。
(3)「竈君菩薩(竈神)」参り。〔7:20-〕
祖母は 1 本の線香を手にとって、嬰児の母は子供を抱いて台所の「竈君菩薩」に 拝礼する。
(4)村を回る儀礼。〔7:30-〕
舟山の誕生祝いには、嬰児をつれて、村の大道りに沿って村を回る儀礼がある。男 の子の場合は「尋老婆」(妻を捜す)、女の子の場合は「尋老公」(夫を捜す)とい い、これは嬰児が将来人見知りをしないように行われるという。また、親戚や隣人に 嬰児を披露する意味もある。応家の場合は嬰児の両親、祖母が一緒に行った。この儀 礼が終ったら、嬰児を廟に抱いて行って拝礼する。
133梁山伯と祝英台は中国四大民間伝説の一つ「梁山伯と祝英台」の主人公である。物語は男女の愛情を テーマとし、勉強の好きな娘の祝英台が男装して塾で三年間も学ぶが、同室した梁山伯は娘だと気がつ かず、英台が結婚のため、帰郷した後もすぐに英台の実家を訪ねなかったため、訪ねた時にはすでに結 婚の直前で、梁山伯は失望の余り死んでしまう。英台は婚家へ行く途中、梁山伯の墓に参り、二つに割 れた墓に英台は身を投じ、二人は二羽の蝶になったと伝えられる。梁山伯と祝英台の伝説は民間で広く 伝わり、主人公の梁山伯と祝英台は婚姻や生育を守る神として祭られている。
写真58 嬰児
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(5)「床頭菩薩(床の神)」参り。〔9:00-〕
嬰児を抱いて廟から自宅に帰ると、嬰児の守護神と言われる「床頭菩薩」に参拝す る。「床頭菩薩」は若夫婦の寝室のベッドで祭られている。片付けられたベッドには、
五種類のおかずと五杯の飯の供え物と五膳の箸が置かれている。そして、嬰児が着く と、蝋燭をつけ、線香をささげて拝礼する。
(6)「祭祖」〔10:00-〕
①堂前の「祭天」の供え物を片付けてから、「祭祖」の供え物を並べ、儀礼開始。
(図 5-a、第1章第 2 節参照)
②庭で宴会のテーブルを設置。
(7)「満月」の祝宴。〔11:00-〕
木偶芸人も参加。
南禅廟
(1)儀礼の準備。〔7:20-〕
①南禅廟に木偶戯舞台を設置。
②神の前に置く元宝卓に、供え物 や蝋燭、線香、爆竹などを用意。
(2)「祭神」。〔8:00-〕
①嬰児の祖父は線香をささげる。
②爆竹を鳴らすと共に、木偶戯後 台からの銅鑼と太鼓を叩く音が響い て、木偶戯の「閙場」が始まり、嬰児 の到来を待つ。
(3)嬰児が到着、神への拝礼。〔8:
10-〕
①嬰児を落ち着かせるために、後 台の「閙場」はしばらく休憩。
②嬰児の拝礼を開始。祖母はそれ ぞれの神の前に跪いて、嬰児の両手を 合わせて、その健康と将来の大成を願 う。
参拝の儀礼が終った後、嬰児は家 に戻り、木偶戯の上演が始まる。
(4)木偶戯開演。〔8:20-〕
開演前に、祖母は嫁が今年公務員の
写真59 木偶戯の舞台(2015 年 3 月 29 日撮影)
写真60 李世民が生れた場面
(2015 年 3 月 29 日撮影)
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試験に合格したことも神に伝えてほしいと侯雅飛に頼んだ。侯雅飛は「小搭脚」の最 初の言葉に、上演の主な理由や祝福の言葉、演目のほかに、祖母が頼んだことも入れ た。今回の上演について、「小搭脚」は次のように語る。
「做了——格順順利利啊,今日堂(這裡)南禪廟弟子應××老婆格當初辰光去考公務 員去,菩薩搭其保佑底,菩薩搭其竭力底,格麼自己呢也努力,格公務員搭其考進了,
格現在呢兩夫妻交關好講,恩恩愛愛早生貴子,生個令郎公子,格雙喜臨門了。菩薩保 佑,今日來做台天皇戲,戲文呢阿拉做『唐王李世民』,格總之講來生個皇帝。菩薩保 佑該弟子身體健康,夫妻恩愛,白頭到老,生出底小寶寶聰明伶俐,節節高歩歩昇讀書 啊,慢慢較也撥其考名牌大學。格現在該戲文『唐王李世民』撥其做起來啊,格撥其工 作順利,心想事成,貴人提拔,節節高歩歩昇啊,格生意興隆,屋裡廂大人也身體健康,
一年四季保太平,順順利利發大財,做了啊,做了——」
(訳)
「始まり始まり――今日はここ南禅廟の弟子の応××(応阿旺の息子、嬰児の父)の 妻が公務員受験の時、神の加護と自らの努力により、みごと合格した。今この夫婦は 仲睦まじく息子も誕生した。二つのめでたいことがこの家に訪れた。神様の加護をお 願いして、今日の演目は『唐王李世民』で、皇帝の誕生を演じます。神様の加護をお 願いして、この弟子の健康や夫妻円満、その息子が聡明で、将来よい大学に合格する ことなどお願いします。では、今日演じる木偶戯の『唐王李世民』を始めましょう。
これからこの一家はすべて仕事は順調、弟子の両親の健康と一年の平安、万事順調を 祈ります。始まり――」
今回演じる「唐王李世民出世」は唐の皇 帝である李世民の出生の物語で、木偶戯の 上演には李世民の出産の場面も演じた。侯 雅飛によれば、満月戯には吉兆の場面とし て妊婦の陣痛と嬰児の産声が必ず演じる という。
(5)木偶戯上演と儀礼終了。〔10:30〕
芝居が終る時に、「小搭脚」は再び登場 し、「格『唐王李世民』小戯文落台,順順 利利発大財」(小戯文の「唐王李世民」は 終わりです、万事順調、商売繁盛を祈りま す)と上演の終了を告げる。
応阿旺は最後に拝礼をして、願解きなど と同様に、外て爆竹を鳴らした。次に、正 殿の前に紙銭の「金箔」や「経」、残り の線香を燃やして、供え物を片付けた。
最後に、供え物を三輪車で自宅に運んで、
木偶芸人は舞台を片付けて、応家で行う満月戯の祝宴に参加する。
写真 61 紙銭の「金箔」や「経」、残りの線 香を燃やす場面
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11 時頃、木偶芸人が応家に着いた ときには、満月の儀礼はすべて終わっ ている。儀礼のための供え物なども片 付けられて、祝宴の場が用意された。
庭には、臨時に大きな竈が設置されて、
料理人(1 人)と「幇付」と呼ばれる 手伝い人(3,4 人)が祝宴の料理を 用意していた。応家の場合は祝宴後、
木偶戯の上演はなかったが、侯雅飛に よれば、午前の上演に続け午後にも上 演する依頼も多いという。
食後、応家は芸人に上演料と各人 2
箱のタバコを渡し、祝いに来た客には菓子、卵 2 個、約 250 グラムの砂糖1包、乾麺 1 束を入れた袋を配った。