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第5章 舟山布袋木偶戯伝承の現在

第5節 婚礼―猪羊戯、開面戯―

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参拝儀礼終了後、11 時半から寺の食堂で廟会の宴会が行われる。食堂では 10 人一 卓の料理、50 卓が用意された。宴会後、供え物の饅頭1個と乾麺1束を参加者に配っ た。木偶芸人も一緒に食事をした。

木偶戯の上演は午前中、「朱元竜出世」で、明代の最初の皇帝の朱元璋の子供の時 の物語である。その後、参拝儀礼と宴会の後、12 時半から再び上演した。演目は午前 中とは変えて、「薛丁山征西」を演じた。この演目は数年にわたって上演しているも ので、去年の続きの一段を演じた。これは来年の廟会に続くという。上演は 15 時半 まで続いたが、ほとんどの参拝者が帰り、木偶戯を見る人は四五人だけだった。

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具体的なやり方について、2006 年 3 月 6-7 日に冊子島冊子郷双螺村賀家で行われた 猪羊戯を例に紹介する。頼まれた戯班は侯家班である。以下は、橋谷英子らの調査で 撮った映像を整理したものである。

第一部 結婚前夜の予祝〔3 月 6 日夜〕

(1)「猪肝花油羅卜羹」の宴会〔17:00 頃-〕

(2)「祭神」儀礼の支度。〔19:00 頃〕

「全副猪羊」などの供え物、蝋燭と線香などを用意。供え物には丸ごとの豚と羊 を中心にする。(図 4-d、第1章第 2 節参照)

(3)「祭神」開始、木偶戯上演:「馮世恩出考」〔19:30-21:34〕

「鬧場」から終了までの進行は願解きと同様である(本章第 3 節参照)。今回の上 演について、「小搭脚」は次のように語る。

「做了,今日好日戲,小戲文做『馮世恩出考』,做到馮世恩新科狀元,順順利利啊!

做了——」

(訳)

「始まり、今日は好日戯をやりま す、小戯文の演目は「馮世恩出考」

で、主人公の馮世恩が科挙試験で状 元に合格するまでをやります。万事 順調でありますように。では始めま す―」

約 2 時間後、「小搭脚」は再び登 場し、「上半夜落台了啊,下半夜享 先再做。」(前半の上演はおしまい、

後半の「享先」でまた上演します。)

と第一部上演の終了を告げる。

(3)紙銭、「経」を燃やす。

第一部は結婚前夜の予祝で、この部では一回、約 2 時間の上演があり、演目の決ま りはないが、婚礼の場面で終わる演目を選ぶのが多く、ほかに例えば、「竜虎旗」「藍 糸帯」「珠球招親」などがある。上演が終わると、休憩に入り、供え物などはそのま まにして、各自、自宅に戻るなどして仮眠をとる。木偶芸人も主催者の家で休む。

第二部 享先の参拝儀礼〔3 月 7 日朝〕

第二部の実施は一般に、翌日の夜明け前に行うが、満潮に合わせられれば、満潮時 に開始する。これは財と福が満潮のように満ち溢れるという意味である。供え物は前 夜のままで変えない。

(1)着席:①埶事者(左右各 1 人);②主香翁(新郎の父);③新郎;④総管先生

(儀礼の進行係)〔4:22-〕

(2)敲鼓(太鼓を叩く):①鼓初敲;②鼓亜敲;③鼓三敲

写真46 「馮世恩出考」の婚礼の場面

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(3)線香と蝋燭をあげる:①花燭;②線香(3 本を香炉に挿す;4 本を供え物に挿 す;3 本 1 束で 4 束を用意);③鳴鑼発砲、主香翁は 4 束の線香を持って部屋の外で 神を迎える。天に向かって拝礼した後、その 1 束を門の傍に挿して「天香」と呼ぶ。

他の 3 束は外から戻った後に埶事者に渡す。

(4)上香(伴奏がつく):まず左埶事者は 3 束線香を持って外に向かって三礼する。

次に、①初上香;②亜上香;③三上香。3 束の線香をそれぞれ左埶事者→新郎→新郎 の父→右埶事者→新郎の父→香炉に挿す、順送りにする。

(5)敬茶:埶事者 2 人が同時に行う。

(6)初斟酒:埶事者 2 人が同時に行う。

(7)奏楽:1、大吹(奏);2、細吹;3、和吹。

(8)迎神拝礼(主香翁と新郎):拝、昇、拝、昇、拝、昇。(三拝)

(9)木偶戯上演:「天官賜福」(馬場 2011:410-411 頁参照)〔4:30-4:42〕

(10)復位:①上香;②敬茶;③亜斟酒。(4、5、6に同じ)

(11)拝礼(主香翁と新郎):拝、昇、跪。左、右埶事者がそれぞれ祝詞を 1 回読ん だ後に、再び興、拝、平身、暫退。

(12)木偶戯上演:「十子図」(馬場 2011:411-413 頁参照)〔4:47-5:01〕

(13)再復位:①上香;②敬茶;③満斟酒。(4、5、6に同様)

(14)辞神拝礼(主香翁と新郎):拝、昇、拝、昇、拝、昇。礼が終って退場。

(15)木偶戯上演:「売子救母」(馬場 2011、414-420 頁参照)〔5:04-5:18〕

途中(5:15)、財神が出て「扔元宝」(元宝を投げる)の場面が加わる「扔元宝」

というのは、芝居に出てきた天官(福、禄、寿)が元宝を投げ、新郎がそれを受け取 る場面である。新郎は人民元を赤い紙に包んだ祝儀を天官に渡す。この祝儀は木偶芸 人のものとなる。「扔元宝」の場面が加わった演目は「彩頭戯」とも呼ばれる。

(16)復位、神に感謝礼拝:拝、昇、拝、昇、拝、昇。礼が終って退場。

(17)鳴鑼発砲、新郎は外に出て神を送る。

(18)供え物をそれぞれ少し取って、豚の耳も少し切りとり、屋根に投げる。

(19)供え物をすべて下げて、紙銭、「経」、残りの線香を燃やす。

第二部では「享先」の中心になる儀礼があり、約1時間半かかる。木偶戯の上演と 儀礼は三回ずつ交替で行う。木偶戯の演目は約 15 分の短編を三つ選ぶのが普通であ る。儀礼は総管先生と呼ばれる儀礼の進行係によって進められる。儀礼を行う時に、

木偶芸人は伴奏役を担当する。各戯班は定番の演目を持っている。途中には「扔元宝」

の場面も必ず加える。

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写真 47 猪羊戯上演の場面 写真 48 「享先」の儀礼担当者名簿

写真 49 埶事者敬茶 写真 50 主香翁と新郎の拝礼 写真51 豚の耳を切り取り

写真 52 「天官賜福」に登場する天官(福、禄、

寿)

写真 53 財神が出て「扔元宝」(元宝を投げる)

場面

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写真54 新郎が元宝をを受け取る場面 写真 55 新郎は祝儀を天官に渡す場面

(写真 47-51 瀬田充子撮影 2006 年 3 月 7 日、写真 52-55 橋谷英子の映像による)

第三部 「全堂羹飯」〔5:22-〕

第三部は二部に続き、「全堂羹飯」を行う。「全堂羹飯」は普通の「做羹飯」と同 様に亡くなった先祖のために行うが、供え物は普段の倍になり、箸や碗なども倍用意 される。その時、約 15 分、科挙合格、婚礼の場面で終わる木偶戯を上演し、一連の 儀礼は終わる。

(1)祭祖のための新しい供え物(天を祭るための供え物の豚、羊はかたづける)、

線香、蝋燭などを用意。(図 5-b、第1章第 2 節参照)

(2)木偶戯上演:「周文彬出考」(16 分)〔5:40-5:57〕

芝居が終ると、「小搭脚」が登場し、「小戯文落台,順順利利発大財。」(小戯文 は終わります、万事順調、商売繁盛。)と上演の終了を告げる。

(3)拝礼、爆竹、紙銭、「経」、残りの線香を燃やす。

「全堂羹飯」が終った後に、下げた丸ごとの豚と羊を解体し、一番よい部位は、花 嫁の家に運ぶように籠にいれ、花嫁を迎える準備を始める。(この時の羊は肉屋から 借りたものだったので、そのまま返却した)

写真 56 上演の終了を告げる「小搭脚」 写真 57 丸ごとの豚を解体

(写真 56-57 橋谷英子の映像による)

2 開面戯

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嫁入り前の「開面」の儀礼を行うときに花嫁の家で上演される木偶戯を開面戯と呼 ぶ。「開面」とは二本の木綿糸を絞って花嫁の顔の毛を抜き、額や眉を綺麗にする儀 礼である。以前は実際に行われていたが、現在は「開面」の真似事をするだけである。

「開面」が終った後に、開面戯が行われる。

開面戯は昼間に行い、満潮に合わせる必要もない。やり方は願解きと同様である。

一般には一幕、約 2 時間の上演を頼まれるのが多く、演目は猪羊戯の第一部と同様に、

結婚式の場面で終わるのを選ぶ。この一幕が終ると、「彩頭戯」を上演する。「彩頭 戯」の演目は決まりがなく、「扔元宝」の場面を加えるために行うので、財神の出る 場面があれば選択できる。開面戯の「彩頭戯」は「天官賜福」を選ぶのが多い。やり 方は猪羊戯と同様であるが、今度は花嫁が元宝を受け取って、「紅包」を天官に渡す。

開面戯は解放前には、金持ちの家でしか行われていなかったが、現在は普通の家庭 でも行っており、昔より上演が多くなった。