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埋立ての遂行により失われる利益(生ずる不利益)

第5章 公有水面埋立法の要件判断の誤り(本件埋立承認の瑕疵)

3 埋立ての遂行により失われる利益(生ずる不利益)

(1) 本件埋立は、全国の在日米軍専用施設の 73.8 パーセントを抱え

る沖縄県内において米軍基地の固定化を招く契機となり、基地負担 について格差や過重負担の固定化に繋がるものである。

また、本件埋立対象地は、自然環境的観点から極めて貴重な価値 を有する地域であって、いったん本件埋立が実施されると現況の自 然への回復がほぼ不可能であり、また、今後本件埋立対象地に普天 間飛行場代替施設が建設された場合、騒音被害の増大は住民の生活 や健康に大きな被害を与えるものである、

(2) 第1章第2及び第2章第2で述べたとおり、沖縄県民は、軍事、

戦争、米軍基地の存在のため、運命を翻弄され、基地負担を押し付 けられてきた。

そして、戦後 70 年を経過した今日においても、第2章第3にお いて述べたとおり、沖縄における米軍基地の存在は、沖縄の振興開 発を進める上で大きな制約となっていることはもとより、その運用 等により周辺住民をはじめ県民生活に様々な影響を与えている。

日本の国土面積のわずか 0.6 パーセントに過ぎない狭い沖縄県に、

在日米軍専用施設面積の約 74 パーセントに及ぶ広大な面積の米軍 基地が存在している。米軍基地は、県土面積の 10 パーセントを占

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め、とりわけ人口や産業が集中する沖縄島においては、約 18 パー セントを米軍基地が占めている。さらに、沖縄周辺には、28か所の 水域と 20 ヵ所の空域が米軍の訓練区域として設定されるなど、陸 地だけでなく海、空の使用も制限されている。

第5章で詳述するとおり、米軍基地には、日本国内法令が適用さ れないものと解釈・運用されており、地方公共団体からすれば、米 軍基地の存在とは、自治権の及ばない地域、存在にほかならず、県 土面積の10 パーセント、沖縄島においては約 18 パーセントにも及 ぶ地域について、自治権が奪われていることになる。

こうした過重な米軍基地の存在は、都市形成や交通体系の整備並 びに産業基盤の整備など地域の振興開発を図る上で大きな障害とな っている。

街の中心地に基地を持つ沖縄島中部の主要都市では、周辺集落間 の交通網が遮断されている。また、基地周辺の住宅・商業地域はゾ ーニングもされないままスプロール化してできたため、住宅等が密 集し、道路整備などが不十分な状況になっている。

また、広大な米軍基地の存在は、県民生活や自然環境に様々な影 響を及ぼしており、とりわけ日常的に発生する航空機騒音による基 地周辺住民の健康への影響や、戦闘機・ヘリコプター等米軍機の墜 落事故及び油脂類・赤土等の流出、実弾演習による山林火災や被弾 事故等、米軍基地に起因する事件・事故等による県民生活及び環境 への影響が問題となっている。

飛行場基地周辺においては、環境省の定める環境基準値を超える 違法な航空機騒音が発生しており、地域住人の日常生活及び健康へ の影響が懸念されている。また、基地周辺の学校では、授業が度々 中断されるなど教育面でも影響が出ている。

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キャンプ・ハンセン演習場では、度重なる実弾演習や、それに伴 う山林火災の発生等により、大切な緑が失われ、山肌がむき出しに なるなど、かけがえのない自然環境が損なわれている。その他、同 演習場では、無数の不発弾が存在し、その処理には莫大な費用と長 い年月を要することが予想される。

米軍航空機関連の事故は、復帰後、平成 24 年 12月末現在で 540 件(うち墜落 43 件)発生している。航空機事故は、一歩間違えば 住民を巻き込む大惨事になりかねないものであり、周辺住民はもと より県民に大きな不安を与えている。

平成 10 年7月にキャンプ・ハンセン内で発生した米海兵隊所属 のUH-1Nヘリコプター墜落事故をはじめ、平成 11 年4月には CH-53Eヘリコプターが北部訓練所の沖合に墜落する事故(乗員 4名死亡)、同年6月にはAV-8ハリアー機が嘉手納飛行場を離陸 後、滑走路に墜落する事故、平成 14 年8月には嘉手納基地所属の F-15C戦闘機が沖縄本島の南約60マイル(約100キロメートル)

の海上に墜落する事故、平成16 年 8月 13日には沖縄国際大学構内 への米海兵隊CH-53Dヘリコプター墜落事故、平成18年1月1 7 日 に は 嘉 手 納 基 地 所 属 の F -15C 戦 闘 機 が嘉 手 納 飛 行 場か ら北 東へ 55 マイルの訓練区域内の海上へ墜落する事故、平成20年 10 月 24 日には嘉手納飛行場のエアロクラブ所属のセスナ機が、名護 市真喜屋の畑地に墜落した事故が発生し、県民に大きな不安と衝撃 を与えた。

その他、米軍人等による刑法犯罪は、沖縄県警察本部の統計によ ると、昭和 47 年の日本復帰から平成 24 年 12 月末までに 5,801 件 にのぼり、そのうち凶悪事件が570 件、粗暴犯が 1,045 件も発生す るなど、県民の生命、生活及び財産に大きな影響を及ぼしている。

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そして、第2章第4で述べたとおり、圧倒的な県民世論は、本件 埋立に反対をしている。

今日、新たに恒久的な海兵隊航空基地を建設することは、県民の 意思に反して、この 70 年余に及ぶ基地負担、格差を、さらに将来 にわたって固定化することにほかならない。

(3) 第4章第1で述べたとおり、本件埋立対象地は、豊かで貴重な自 然生態系をなし、希少生物等の生息地として、極めて高い自然環境 価値を有する地域である。また、美しい眺望と静謐さを兼ね備え、

良好な大気環境、水環境に恵まれ、この良好な環境はリゾート事業 にとっても高い価値を有するものである。

そして、第4章第3及び第4で述べるとおり、本件埋立を遂行す ることは、辺野古周辺の生態系、海域生物(ウミガメ)、サンゴ類、

海草海草、ジュゴンに重大な悪影響を与えるものであり、また、埋 立土砂による外来種の侵入が強く懸念され、航空機騒音・低周波に よる被害を住民に生じさせることが予想されるものである。

4 1号要件の利益衡量について

辺野古が唯一との国の判断が不当であるのは前述のとおりであって、

国は普天間飛行場の危険性を除去するために他の移設先の検討又は普 天間飛行場自体の閉鎖を直ちに行うべきである。

とすれば、1号要件の比較衡量において、普天間飛行場の危険性の 除去を考慮要素とすること自体が誤りである。

加えて、埋め立てにより得られる利益というのは、施設を建設する ことにより得られる利益であって、本件の場合の利益は普天間飛行場 に配備されている輸送ヘリ部隊が持つ抑止力に限られるはずである。

そして、それが県外に移設した場合に在日米軍の抑止力を低下させる ものではないことは既に述べたとおりである。

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いずれにしても、審査請求人・執行停止申立人の主張は、利益衡量

の要素とするべきでないものを要素とし、また、考慮する要素につい てもその価値を過大に評価しており、失当である。

5 1号要件に係る考慮要素の選択や判断過程の合理性の欠如

申立人(審査請求者)は、執行停止申立書において、「前知事の判断 に不合理な点はなく、裁量権の逸脱・濫用は認められない」としてい るが、以下のとおり、1号要件(「埋立ての必要性」を含む。)の判断 に係る考慮要素の選択や判断の過程は合理性を欠いていたものである。

(1) 「埋立ての必要性」

「埋立ての必要性 」(審査基準 においては「埋立ての必要性」及 び法第4条第 1 項第 1 号の「周辺の土地利用の現況からみて不釣り 合いな土地利 用となっていないか 」「埋 立ての規模及び位置 が適切 か」)について具体的・実質的な審査を行った形跡がみとめられない こと、抑止力論等についての沖縄県と防衛省との間の2次にわたる 質疑応答についても「埋立ての必要性」についての本件審査の対象 としていないことなど、審査の実態は「埋立必要理由書」の記載の 形式的な確認にとどまっておりその内容の合理性・妥当性等につい て検討を行っていないものと判断される。

「埋立ての必要性」の審査については、①本件審査結果において、

「普天間飛行場移設の必要性」から直ちに本件埋立対象地(辺野古 地区)での「埋立ての必要性」(審査基準においては、「埋立ての必 要性」、「周辺の土地利用の現況からみて不釣り合いな土地利用とな っていないか」、「埋立ての規模及び位置が適切か」)があるとした点 に論理の飛躍(審査の欠落)があること、②「本件埋立必要理由書」

で説明している本件埋立対象地についての「埋立ての必要性」につ いては、重大な疑念があり「埋立ての必要性」が存在すると認定す

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ることは困難であること、③その審査の実態においても具体的審査 がなされていないことなどの点から、考慮要素の選択や判断の過程 は合理性を欠いていたものである。

(2) 自然環境及び生活環境等

2号要件に関して後述するとおり、環境影響評価手続における免 許権者等で示された問題点に対応できていないこと、定量評価をし ておらず、明らかに誤った記載があり、その他記載に丁寧さ、慎重 さを欠くといった問題点があることから、環境保全措置が問題の現 況及び影響を的確に把握し、これに対する措置が適正に講じられて いるとは言い難く、かつその程度も十分とは認めがたいこと、とい った問題点がある。また、環境影響評価手続での問題や、環境保全 措置については事後的に、「必要に応じて専門家の指導・助言を得て 必要な措置を講じる。」との意見表明だけで、当該環境保全措置の全 てが適正かつ十分と認められないこと等種々の問題がある。

自然環境及び生活環境等に悪影響が生じることについては、平成 24年3月 27 日付「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響 評価書に対する意見」(土海第 1317 号 農港第 1581 号)(以下、「知 事意見」という。)において「名護市辺野古沿岸全域を事業実施区域 とする当該事業は、環境の保全上重大な問題があると考える。また、

当該評価書で示された環境保全措置等では、事業実施区域周辺の生 活環境及び自然環境の保全を図ることは不可能である」とされてい たものであり、また、本件埋立承認の約1か月前に提出された平成 25 年 11 月 29 日付「公有水面埋立承認申請書に関する意見につい て(回答)」(環政第 1033 号)(以下、「環境生活部長意見」という。)

においては「当該事業の承認申請書に示された環境保全措置等では 不明な点があり、事業実施区域周辺域の生活環境及び自然環境の保