第 2 章 特殊条件下における地山評価手法の提案と適用
2.4 現場における地山評価事例
2.4.7 逆解析による周辺地山安定性評価
計測工Aにより測定される変位量は,天端沈下は天端位置の沈下量(絶対変位)を示し,
内空変位は測点間の相対変位量として評価されるものであるが,NATM では,周辺地山の アーチアクション自体を支保の一部と考えているため,周辺地山全体の安定性に対する評価 が重要となる.
以上のことから,本トンネルで得られた計測工Aの変位量(各収束値)をもとに逆解析を 用いて周辺地山の安定性を検証した.
なお,検討は終点側坑口部 No.141+2.0とトンネル中間部No.129+2.0の2断面において 実施した.
(1) 坑口検討断面 1(No.141+2.0)
検討断面1としては坑口部の偏圧地形で土被りの小さい部分にあたり,計測結果のまとめ でも述べたとおり,変位量自体は注意レベルⅠから注意レベルⅡの範囲であったが,変位の モードとしては,天端沈下が卓越したひしゃげモードとなっていた.
図-2.4.13 に検討に用いたモデルを示し,図-2.4.14に上半掘削完了時点のトンネル周辺 のひずみ分布を示した.結果としては天端部に比べ側壁部のせん断ひずみが大きく,左右ア ンバランスな分布を示す.また,事前調査結果から想定した地山限界ひずみ(1.53%)を超 えている領域は左右足元ふまえにみられ最大せん断ひずみの最大値は 2.28%となった.し かし,局所的であり,一般的に隅角部は構造上応力が集中しやすいこと,この領域は下半掘 削時には取り除かれる部分であり,トンネルの安定上影響は小さく,特に問題がないと判断 した.
図-2.4.12 天端沈下量の分布
さらに,下半掘削時の安定性を評価する目的で,上半施工時に得られた周辺地山のひずみ 状態のもとで,下半掘削時の予測解析を実施した.図-2.4.15に下半掘削完了時のトンネル 周辺のひずみ分布を示す.下半掘削に伴い,上半脚部の応力集中が解消されるものの,上半 同様,下半左右の脚部に局所的に限界ひずみを越える領域が発生し,最大せん断ひずみは 2.41%であった.当該検討断面はインバートによる断面閉合が実施される区間であり,イン バートの施工によりトンネルの長期的な安定は確保されると判断した.
(2) トンネル中間部検討断面 2(No.129+2.0)
検討断面2としては,トンネル中間部,土被りが十分確保され,計測工Aの結果からも理 想的な変位モード(等方変位)が観測された部分である.
図-2.4.16にトンネル周辺のひずみ分布を示す.坑口部の検討断面と比較すると,壁面か らひずみがトンネル周辺に同心円状に分布している.下半脚部付近では形状に伴う応力集中 の影響はみられるものの,最大せん断ひずみは 0.68%と小さく,事前調査結果から想定さ れた限界ひずみ(0.54%)内で収まっており,その領域も限定されている.さらに,トンネ ル底盤付近には大きなひずみは発生しておらず,CⅡパターン(インバート無し)において
図-2.4.13 逆解析検討モデル
(No.141+2.0)
図-2.4.15 逆解析計算結果(下半掘削完了時)
図-2.4.14 逆解析計算結果
(上半掘削完了時)
も長期安定性は確保されるものと判断された.なお,当該検討箇所は,補助ベンチ付き全断 面掘削工法での施工となっているため,入力変位に関しては,弾性特性曲線を用いて,時間 遅れ分の変位補正を実施している.
図-2.4.16 逆解析計算結果(上・下半掘削完了時)