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地すべり地形におけるトンネルでの適用

ドキュメント内 Microsoft Word - 1.序論(090222).doc (ページ 118-127)

第 3 章 特殊条件下における補助工法の設計と適用

3.5 特殊地形における補助工法の設計と適用

3.5.3 地すべり地形におけるトンネルでの適用

(1) 概要

山岳トンネル坑口部においては,一般的に地形・地質的に不安定な場合が多く,NATM の支保メンバーである地山のアーチ形成が不十分となりやすい.したがって,坑口付けや 掘削などにより,斜面崩壊,偏土圧の作用,さらには地表面への影響による地すべり等を 誘発し,その対策に難渋したり,結果的に多大な経費を要する場合もある.

近年,補助工法の進歩につれて坑口部の施工条件が厳しくなっていることを反映して,

パイプルーフ工法をはじめとしたアンブレラ工法の採用事例が多くなっている.補助工法 の検討にあたっては坑口部の施工条件,工期,工事費等に関して比較検討を実施した上で 効果的な工法を選定することが重要となる.

ここでは,地すべり地形を呈する坑口部において採用した複合注入式多段フォアパイリング (AGF-HITM)に関して,地形・地質条件に基づき実施した設計・計画について述べるとと もに,施工時に得られた計測結果を分析・評価する事で補助工法の効果と設計の妥当性に 関して検証結果を示す.

(2) 適用トンネルの概要

AGF-HITM(複合注入式多段フォアパイリング,以下HITMと称す)を適用した大崎横田

トンネルは,舞鶴自動車道春日 IC と兵庫県和田山町を結ぶ春日・和田山道路の内,同県 氷上郡氷上町にNATMで施工中の延長L=464mの山岳トンネル工事である.

トンネル周辺の地質は,基盤岩として古生代二畳紀~中生代ジュラ紀のいわゆる丹波層 群の堆積岩類(砂岩・頁岩互層,チャート,緑色岩類)が分布し,その上層に新生代第四 紀の崖錐堆積物が厚く堆積している状況であった.本トンネルの工事始点側である,横田 側坑口部分に関しては,傾斜の緩やかな斜面が続き,地すべり跡地と思われる地形を呈す るとともに,トンネルの軸線に対して,左右の土被りが異なる偏圧地形であった.

事前の地質調査結果(天端水平ボーリング)より坑口から約 60m付近に断層破砕帯(F

-2断層)が確認されており,既設ボーリング孔からは 60㍑/min程度の恒常湧水が観察 されていた.

写真-3.5.2 坑口部施工状況

これらの状況を受けて,排水を主目的とする追加水平ボーリング(L=60m,2本:SL

部分)を実施したが合わせて実施した地質確認状況から破砕帯の傾斜が当初と異なりすべ

り目であることが判明した.

したがって,坑口の施工に際しては,上部斜面への影響を抑制し,地すべり等の誘発を 防止できる補助工法の採用が必要であると判断した.なお,SL 付近の地山劣化も著しく,

地耐力不足も懸念された(写真-3.5.3).

(3) 補助工法の検討

本トンネル坑口部の施工にあたっては,トンネル掘削の影響で地すべりを誘発する事が 懸念されたことから,上部斜面に対してゆるみの影響を極力抑える事のできる切羽安定対 策工(補助工法)の採用が必要であると判断された.

補助工法の検討にあたっては,①すべり対策を兼ねた切羽安定対策,②地耐力確保のた めの脚部補強工,③鏡面の安定対策といった観点からそれぞれ検討を実施した.

1) 切羽安定対策

坑口部切羽安定対策としては,坑外,坑内からの対策に分類できるが, 本トンネルの施 工条件をふまえ

① パイプルーフ工法(坑外)

② 注入式長尺先受け工法

③ ウレタン圧入式フォアポーリング

④ 薬液注入工法

⑤ 垂直縫地工法(坑外)

の5工法を一次選定し,表-3.5.2に示すとおり信頼性,施工性,経済性といった観点か ら比較検討を実施した.比較検討の結果,施工性,経済性といった観点から長尺先受け工 法とウレタン圧入式フォアポーリングを二次選定したが,坑口部では上部斜面への影響を 押さえるための先行変位抑制効果の高い注入式長尺先受け工法を最終的に選定した.

注入式長尺先受け工法としては,これまでAGF工法の採用事例が多く報告されているが,

本トンネルの場合,地質が複雑で岩種的には砂岩・頁岩互層,チャートであり岩塊が硬く 亀裂が多い状態であること,AGF工法は一般的に拡幅を伴うためかえってゆるみを助長す

写真-3.5.3 坑口部全景

る恐れがあったため,無拡幅で地山の変化に応じて打設本数や打設範囲を変更する事が可 能な HITMの採用に至った.

2) 脚部補強対策

水平ボーリングにより,SL付近の地山劣化が確認されており,今回,注入式長尺先受け

工法(HITM)を採用するにあたり,前方地山の荷を受け支保工反力が大きくなる可能性

が高いことに配慮して,地耐力対策として脚部補強工を検討した.

通常の側方施工では,核残しで掘削するため,核(3間(3m)程度)と切羽作業の支 障を考えれば,切羽離れ0.5~1.0D(D:トンネル径)の時間遅れを生じ,図-3.5.11に示 すとおり,脚部補強完了までの先行沈下は免れない.

したがって,本トンネルでは,支保工沈下を極力起こさないように切羽前方に向け先行打 設を実施した.

1 0 0

0 5 0

( 8 5 )

( 4 0 )

-2D -1D 0 1D 2D 3D

端沈下の割合

切 羽 か ら の 距 離 0 . 5 D

切 羽 前 方 切 羽 後 方

図-3.5.11 トンネル掘削による壁面変位の挙動

対策工 ①パイプルーフ工法 ②注入式長尺鋼管先受工法 ③ウレタン圧入式フォアポーリング ④薬液注入工法 ⑤垂直縫地ボルト工法

概要図

上部緩み土圧に対して坑内より 剛性の高いパイプを平行に施工 し,トンネル施工時に支保工で受 けながら掘進する。

坑内より剛性の高い鋼管パイプ

(φ89.1mm L=6.0m)をダブルに 打設し,シェル構造により前方地 山のゆるみを抑える。

坑内より天端付近にL=3m,4m の圧 入ボルトを打設し,ウレタンを注 入することで,ウレタン改良体に よる地山固結改良をする。

坑内より天端付近を中心にセメ ント系の薬液を注入し,地山を固 結改良する。

地表面ボーリングを行い,セメン トミルクを注入した後,縫地ボル ト D32(SD35)を挿入することに より,地山の縫付け,および吊下 げ効果を発揮する。

信頼性

クラウン部崩落,崩壊,地表面沈 下抑制には信頼性が高く,施工実 績も多い。

パイプを支保工で確実に受けて いくため,緩みを抑制し切羽安定 性もよく上部斜面への影響 も抑えられる。

長尺でかつダブルに鋼管を配置 するため,先受け効果が高い。

地山の変位に応じて施工規模を 変更できる。

セメント系の注入材に比べて粒 子が細かく流動性が高いため,注 入の確実性は高いが先行変位は 止められない。

限定された範囲を確実に固結改 良でき改良ゾーンの強度,効果 の確実性も高く実績も多い。

湧水や亀裂の多い地山での逸散 等により,注入の確実性に懸念が あり十分な改良効果が望めない。

均一な地山改良ができれば,切羽 の自立性の向上,クラウン部地山 の崩落,崩壊防止に効果が ある。

すべり土塊を多くもの鉄筋で補 強するものであり,すべりの方向 性に左右されず効果がある。

別途先受け工が必要。

施工性

地質によっては,パイプ間からの 地山の抜け落ち,および余掘りが 懸念される.

亀裂の多い地山やクラッキー な地山では掘削が困難となる。

拡幅が不要で牽引方式によるた め施工が確実。

特別な機械を必要としない。

掘削サイクルに取り込める。

特別な機械を必要としない。

地表からの作業は可能であるが,

削孔延長が長くなる。坑内の施工 の場合,掘削サイクルには取り込 めない。

施工ヤードが斜面となり,工事用 進入道路及び足場が必要となる。

斜面作業となり施工性に劣る。

経済性

パイプルーフ推進用の架台が必 要となる。

延長が長くなると大口径の パイプ施工となり割高となる。

4m毎に打設本数や範囲を変更 でき,ウレタン系とセメント 系の複合注入により経済的。

注入範囲は薬液注入工法に比べ て少なくて済むが,材料が高 価で経済的には不利。

注入範囲が広範囲となり注入量 も多くなることから経済性は 劣る。

斜面上の施工では費用がかかる。

トンネル掘削時に先受工の併用 が必要。

工期

トンネル掘削に先立ち施工を完 了させる必要があるため,

工期に大きく影響する。

鋼管打設は4m毎の打設となる が多少時間がかかる。

掘削サイクルに取り込めるため,

工期的に若干の遅れが出る 程度である。

注入作業に時間がかかり掘削サ イクルに取り込めない。

事前に施工できるため掘削サイ クルには影響を及ぼさない。

総合

評価 △ ◎ ○ × △

×

×

×

S.L.

120゜

CL パイプルーフ

S.L.

120゜

CL

注入式フォアポーリング

S.L.

CL 薬液注入

S.L.

CL 垂直縫地

S.L.

120゜

長 尺 ウ レ タン 先 受 け 工 法 ( H I T M 工 法 )

表-3.5.2 坑口部補助工法比較検討表

凡例

◎:かなり有効,効果的

○:効果が期待できる

△:効果が少ない

×:効果が期待できない,

3) 鏡面の安定対策

坑口付けに際しては,トンネル周辺の法面を急勾配 1:0.5 で掘削するため,法面吹付け 及びロックボルトによる補強を実施して施工した.また,亀裂の傾斜が坑口に向かってす べり目であることから,鏡面が不安定になることが考えられたため鏡吹付および鏡ボルト による鏡面の安定対策ついて検討した.

鏡ボルトに関しては,近年トンネルの大断面化,偏平化や坑口条件が厳しくなってきた こ と を 受 け て 長 尺 鏡 ボ ル ト の 採 用 事 例 が 増 え て お り , 今 回 切 羽 安 定 対 策 と し て AGF-

HITM を採用することもあり,施工サイクルや定着の確実性に着目して L=9mの長尺鏡 ボルトを採用した.なお,長尺鏡ボルトの材料に関しては,トンネル掘削時の切断作業の 安全性,地山状況を考慮して自穿孔タイプのファイバーボルトを採用した.断面内のボル ト配置についてはこれまでの実績を参考にして図-3.5.12 に示すように,打設ピッチを2 mと設定し,1本/4㎡とした.

6 0 ° 6 0 °

1300

L= 1 2 0 0 0 , 4 7 本 長 尺 鏡 ボ ル ト

L = 9 m , 1 3 本

1 2 3 54 76 98 1 11 0 1 312 1 51 4 1 71 6 1 91 8 2 12 0 2 32 2 2 4 262 5 2 827 3 02 9 3 23 1 3 433 3 63 5 3 83 7 4 03 9 4 24 1 4 44 3 4 5 4 6 4 7

S . L .

6700250

1 2 3

4 5 6 7 8

9 1 0 1 1 1 2 1 3

10002@2000=4000

2 5 5 6 5 7 3 6 5 7 3 2 5 5

L = 6 0 0 0 , 8 本

AG F - H I T M

AG F - H I T M

30 0 3 0 0

S . L 45°

2m2m2m0.95m

6.95m

鏡ボルト L=9m

1.1m

0.5m 0.8m

HITM管 L=12m

図-3.5.12 鏡ボルト配置図

ドキュメント内 Microsoft Word - 1.序論(090222).doc (ページ 118-127)