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補助工法の設計事例

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第 3 章 特殊条件下における補助工法の設計と適用

3.2 補助工法の設計

3.2.2 補助工法の設計事例

(1) 天端安定対策の設計例

天端部の安定対策に関しては,坑口部や破砕帯等の土被りの小さい部分において前方地山のゆ るみ防止といった観点から,トンネル施工の標準設備であるトンネルジャンボにより施工できる AGF工法に代表される長尺鋼管フォアパイリングの採用事例が多くなっている.

AGF工法の設計手法に関しては,図-3.2.1,図-3.2.2に示すように,現状では施工実績に裏付 けされた効果に基づいて提案3)された「標準設計パターンによる方法」が最も実務的である.

しかしながら,本来は,設計条件を考慮した上で簡易計算や数値解析により仕様を計算するこ とが望ましいと考えられる.

一方,地山条件や制約条件によっては,標準パターンを採用できない場合もあり,表-3.2.1に 示すように実績に基づく設計の他に計算に基づく設計事例も増えている.

計算による設計手法としては,①村山の方法(極限解析),②計算図表による方法,③骨組構造 解析(パイプルーフ的計算,弾性支承上梁),④FEM解析,⑤大変形差分法などがあり,これら の設計手法の適用に関する研究が進められている.

表-3.2.2に設計計算手法の概要についてまとめた.

表-3.2.1 AGF 工法の設計手法(概要)3)

図-3.2.1 AGF 設計パターン(地山のゆるみ防止用)3)

要検討 13.4kgf/m 11.9kgf/m 44.1kgf/m,10

図-3.2.2 AGF 設計パターン(天端崩落防止用)3)

要検討 13.4kgf/m 11.9kgf/m 44.1kgf/m

表-3.2.2 設計計算手法の概要3)

(2) 鏡面の安定対策の概要と設計例 1) 鏡面の安定対策の概要

鏡面安定対策としては,核残し,鏡吹付けコンクリート,鏡ボルトおよび注入工法等がある.

地山条件および鏡面の大きさや形状とその安定性(自立時間)には密接な関連があり,掘削断 面を小さくすることで安定性が向上することから,部分的に掘削して早期に吹き付けコンクリー トを施工する(分割掘削)事により鏡面の安定を確保することも重要である.

一方,自立性の乏しい地山では,鏡吹付けコンクリートや鏡ボルト等の補助工法を併用して大 きな断面で施工する方が施工性の向上により合理的となる場合もあるため,地山条件,立地条件,

施工性等を総合的に判断して検討する事が重要である.

以下に各工法について概要を示す.

①鏡吹付けコンクリート

図-3.2.3に示すとおり,掘削直後の鏡面に厚さ3cm~10cm程度の吹付けコンクリートを施工 し,鏡面の自立を助け切羽安定を図るものである.

掘削直後に鏡吹付けコンクリートを施工することで,初期の崩壊防止と緩みの抑制により,鏡 面の安定性が向上する.なお,長尺フォアパイリングの施工時や掘削作業を休止するような場合 には,切羽の劣化を防止する目的で鏡吹付けコンクリートを施工する.

②鏡ボルト(長尺鏡ボルト)

鏡ボルトは図-3.2.4に示すように,一打設長5m未満の短尺のものと5m以上の長尺のものが ある.鏡ボルトの目的は,鏡の一部または全面にボルト等を打設して,鏡面の安定や鏡の押し出 しを抑制することで沈下抑制効果を図るものである.また,地山条件によっては,切羽補強効果 を高めるために注入式ボルトが用いられる場合もある.

一般的には,鏡吹付けコンクリートと併用することで効果の向上を図る.

鏡ボルトの施工長さに関しては,従来は短尺のボルトが用いられていたが,長尺フォアパイリ ングの施工実績が増加するとともに,施工性に配慮して長尺鏡ボルトの施工実績が増加してきた.

掘削時に前回施工のボルトが十分に地山に残って有効に作用するよう残長をできるだけ多くと れるようにラップ長を設定することが望ましい.

鏡吹付けコンクリート

図-3.2.3 鏡吹付けコンクリートの施工例2)

また,鏡ボルトは掘削により撤去することとなるため,切羽補強効果を確保でき,掘削時に切 断が容易なグラスファイバー補強プラスチックボルト,連結式鋼管膨張型ボルトや分離回収の容 易なスリット式鋼管等が用いられている.

③注入工法

切羽安定としての注入工法には図-3.2.5に示すように,セメントミルク等の非溶液や水ガラス 系の溶液等の地盤改良材を地盤中に注入し,地盤の透水性を抑えてトンネル内への湧水量を減少 させるものと,亀裂が発達し崩壊を起こしやすい地山において地盤の安定化をはかる目的で使用 される場合がある.

注入工法の採用にあたっては,断層破砕帯等の対象区間長や地下水位置等をよく調査したうえ で目的にあった注入材料,施工法を選定することが重要である.

図-3.2.4 鏡ボルトの施工例2) b)長尺鏡ボルト

a)短尺鏡ボルト

① 地表注入

L-L断面 C-C断面

② 切羽注入

L-L断面 C-C断面

③後向注入

凡例    :注入対象域   :注入孔と菅口元   :注入孔の横断配置

L-L断面 C-C断面

2) 鏡面の安定対策の設計例

坑口部の補助工法として長尺鋼管フォアパイリングの1つであるAGF-HITM(複合注入式多 段フォアパイリング)を採用したケースにおける鏡ボルトの設計事例を以下に示す.

長尺鋼管フォアパイリングン採用により,トンネル掘削上部斜面への影響は抑制されるものと 考えられるが,切羽面に関しては地質的に脆弱であるため自立が損なわれてすべり崩壊を生じる ことが懸念される.ここで,トンネル切羽軸方向の先行支保に関する簡易計算法については,確 立されたものはないが切羽前方の土塊が崩壊するすべりを想定し,このすべりに対して鏡ボルト の引張で抵抗するものと考えた.なお,ボルトの引き抜きに対する安全率を 1.5 とし,ボルトの 本数および定着長を設定した.検討条件を表-3.2.3に示す.

検討条件

トンネル掘削半径 R=6.95m(+0.8m:先受け鋼管の平均離隔)

地山の単位体積重量 γ=2.0t/m3 地山のすべり想定角 φ=45°

鏡ボルト径 D=29mm

削孔径 φ=50mm

ボルトの許容荷重 Td=18t

充填材の付着強度 τf=8kgf/cm2(風化岩)

ボルトと充填材の付着強度 τa=8kgf/cm2(グランドアンカー設計・施工基準)

1)打設間隔の検討

(a)滑動力の算定

① の面積:0.8×6.95=5.6㎡

② の面積:(6.95×6.95)/2=24.2㎡

①+②

A=5.6+24.2m=29.8㎡

ここで,単位体積重量γ=2.0t/m3,単位奥行きを1.0mとすると 滑動力はWsin45°=29.8×2.0×sin45°=42.1t/m

S . L 45°

2m2m2m0.95m

6.95m

鏡ボルト L=9m

1.1m0.5m 0.8m

HITM管 L=12m

45°

0.8m

鏡ボ ル ト HITM管

6.95m

図-3.2.6 長尺鏡ボルトの配置 表-3.2.3 検討条件

(b)抵抗力の算定

すべり土塊をボルトの引張で抵抗すると考えれば,

W=Td×nとなる.

ここでTd=18t,W=42.1t/mであるから必要ボルト本数は,

18 2.34 42.1 Td

W = =

n=

このときすべり面積はA=(6.95+0.8)×1.0=7.75㎡ したがって,打設密度は

= = ㎡

n 3.3 2.34 7.75 A

ここでこれまでの施工事例を参考にすれば1~4 ㎡/1本であることをふまえて考えれば,本 トンネルでは 4 ㎡/1本(2.0m×2.0mピッチ)とする.

(c)必要定着長の設計

1) 充填材と鏡ボルトの必要定着長Laの検討 ボルト引き抜き耐力(ネジ部) Td=18t

ボルト見かけ周長 U=πD=3.14×0.029 =0.091m

許容付着応力度 τa=8kgf/cm2=80tf/㎡

したがって,必要定着長 Lsaは安全率をFs=1.0として 80 2.34

0.091 17 Ta

U

L Td = =

×

= × m

2) 地山と充填材との必要定着長Laの設計 引き抜き荷重 Td=18t

削孔径 Da=0.05m

地山と充填材の間の周面摩擦抵抗は安全率をFs=1.5として

2.15m

80 0.05 3.14

1.5 18 f

Da Fs

La Td = =

τ

= π

×

×

×

×

×

×

以上の検討結果より定着材とケーブルボルトの必要定着長Lsaの方が必要定着長が長くなるた め,L=2.34≒2.5mを採用する.

したがって,鏡ボルトのラップ長は2.5m必要となり,ボルトの最小長さは

(6.95-2.0)+2.5=7.45m必要となる

ここで自穿孔鏡ボルト長は定尺ものが3mであることから,1打設長を3本継ぎの9mと設定 した.図-3.2.7に鏡ボルト配置図を示した.

(3) 脚部の安定対策の概要と設計例 1) 脚部の安定対策の概要

脚部の安定対策は鋼製支保工脚部の支持地盤の地耐力が不足し,脚部沈下および沈下に伴う地 山の緩みを生じてトンネルの安定を損なうことがないように行われるものである.

具体的には,脚部の支持面積を拡大するウィングリブ付き支保工,脚部下向きに打設するレッ グボルト,レッグパイル,脚部の地盤改良(ジェットグラウト,注入),および吹付けコンクリー トによる上半仮インバートの施工がある.

以下に各工法の概略を示す.

①ウィングリブ付き支保工

ウィングリブ付き支保工は,上半盤の支持力不足対策として支保工脚部の支持面積を拡大する ものであり,表-3.2.4に示すように,ウィングの形状によって伊式,仏式等に分類され,一般的 には伊式が採用されてきた.近年では,支保工からの荷重伝達やウィング部掘削時の応力集中の 関連から,仏式の採用例も増加している.さらに,施工時の状況(計測結果等)にあわせて変更 可能な脱着型やパイプ式のものも実績が増大してきた.採用にあたっては,地山条件や湧水状況,

トンネルの断面形状,吹付けコンクリートの施工方法および他の脚部補強対策との併用等を十分 考慮してウィングの形状を検討する必要がある.

詳細に関しては,参考文献 4)に示した脚部補強工技術資料(三訂版),ジェオフロンテ研究会,

2004年11月を参照されたい.

6 0 ° 6 0 °

1300

L= 1 2 0 0 0 , 4 7 本 長 尺 鏡 ボ ル ト

L = 9 m , 1 3 本

21 43 65 87 1 09 121 1 1 41 3 1 61 5 1 81 7 2 01 9 2 1 2 322 2 4 2 62 5 282 7 3 02 9 3 23 1 3 433 3 63 5 3 83 7 4 03 9 4 24 1 4 44 3 4 5 4 74 6

S . L .

6700250

1 2

3

4 5

6 7

8

9 1 0

1 1 1 2

1 3

10002@2000=4000

2 5 5 6 5 7 3 6 5 7 3 2 5 5

L = 6 0 0 0 , 8 本

AG F - H I T M

AG F - H I T M

3 0 0 3 0 0

図-3.2.7 鏡ボルト配置例

ドキュメント内 Microsoft Word - 1.序論(090222).doc (ページ 67-80)