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付加体地山におけるトンネルでの適用

ドキュメント内 Microsoft Word - 1.序論(090222).doc (ページ 97-108)

第 3 章 特殊条件下における補助工法の設計と適用

3.4 特殊地山における補助工法の設計と適用

3.4.3 付加体地山におけるトンネルでの適用

(2) 坑口部施工方法の検討

Ⅰ期線とⅡ期線との間には小沢が発達して集水地形となっている.この場所では,Ⅰ期線工事 の施工記録によれば,湧水量が非常に多く,長距離の水抜きボーリング(300~500m)を実施し ていた.さらに,湧水による局所的な地山崩壊も発生しており,Ⅱ期線工事においても同様の地 質状況が想定されるため,慎重に施工する必要があった.本トンネルを安全かつ経済的に施工す るためには,切羽観察・計測結果による慎重な施工とともに厳重な計測管理及び適切な補助工法 の選定が必要であり,設計においては図-3.4.8に示すとおり,補助工法として長尺鋼管フォアパ イリング(AGF-P)が計画されていた.本トンネルにおける施工上の問題点は大きく分類する と,①坑口部,破砕帯における未固結部分での切羽の安定(天端・鏡面),②坑口部上部斜面の安 定,③トンネル湧水の発生と支保の施工といった事項が想定され,適切な対策工を選定,施工す ることでトンネルの安定を確保するとともに,安全かつ経済的な施工が望まれた.事前の情報か ら図-3.4.9に示すように,終点側坑口部の地質構造を推定し,トンネル掘削時に地山のグラウン ドアーチが形成しにくいため,先行ゆるみ及び天端の安定性確保が重要であると考えた.Ⅰ期線 工事でも天端崩落が頻発して発生していることから,本トンネルでも同様の現象が生じる可能性 があり,トンネル掘削が断層・破砕帯を貫くため,脆弱な未固結地山でも効果を期待できる工法 の選定が必要であった.

図-3.4.8 終点側坑口部の問題点と対策工

二畳 紀 ~ チャ ー ト 記 号 地 質年 代 地 質 名

砂   岩

石炭 紀 Ch

粘板 岩 Sl ジュラ 紀

盛    土 崖錐 堆積 物

B

S s d t

斜面崩 壊対 策 天端安 定対 策

(5 0.0m)

その 他対 策

フォア パイリング 注入式 長尺鋼 管

(38.0m) 2.0

鏡面安 定対 策

(82.0m) (51.0m)

脚部沈 下対 策

水抜 き ボー リン グ

(増吹付け ・増ロッ ク・支保 工のラン ク アップ ) 注入式フォアポーリング(L=3.0m)

湧水 対 策

レッグパイル

(130.0m) (50.3m)

補助

坑 門

注入式フォアポーリング(L=3.0 m)

鏡面吹 付け・ 鏡ボル ト 法面 補 強

400

DL=300 450

350 推 定 断 層

地 層 境 界 線

STA690+90

注 入式 長尺鋼 管 フォアパイリング

F-b 2.2~2.4

0.8 ~1.0

STA.691+0.7 GH = 313.20 m No.4 dep = 50.00 m

4.2~4.4

Sl

Sl

2.6~2.8 ch(Sl)

Sl

c h

No.2 No. 5

STA.690+9 7 GH = 315.50 m STA.689+59.6,L 8

GH = 392.27 m dep = m

dep = 10.00 m

測     点 設 計支 保パターン

688 690

689 691

設計補 助工 法

18 本

DⅠ -i

鏡面 崩 壊

NT 799本 DⅡ -i

DⅢ a

[終点 部坑 口支保 工沈下対策 45本 ] L=2.5~3.0m N=10枚 197 本

地    質

148本(自穿孔 )

水抜き ボー リングL=500m 水抜 きボー リングL=300m

H-100m L=5.0m n=4本

・滴水程 度の湧 水

270本

87 本 設 計

フォアパイ(L=3.0m) 支 保 パターン

施 工

ロックボルト(L=4.0m)

(L=4.0m)

DⅠ -i CⅡ -1

CⅡ

W 19100kg DⅠ -i

坑 門 CⅡ DⅢ a

C Ⅱ

DⅠ -b-1-B DⅠ-b -1-B DⅢa-1-B CⅡ -b-B

227本 突 発 型 CⅡ -a-B

PU 本 DⅠ -b-B

チャ ー ト

角 礫 粘板 岩

明 か り 湧水 の種 類

切羽 状 況

チャ ー ト

[天端 崩落対策 ] チャ ー ト (粘 板岩混 )

74 本 71 本

[上 半補強 ] 686本

(L=3.0m) モルタル式フォアパイ

(パターン) ウレタン注入 式

チャ ー ト

増ロック・ 吹付 け 鏡ボ ル ト

ボーリング

[天 端崩落 対策 ]

・鏡 面崩 壊

・ 200㍑/minの集 中湧 水

ロックボルト

チャー ト ・粘 板岩互 層

軽量 鋼矢 板 坑 内

(明かり )

・天端崩 落約15~ 30m3

29 本

L=4.0m 10枚

L=6.0m(自 穿孔 )

水 抜 き

n=62本 6m3の天 端崩 壊

L=52.0m F

区間① 区間④

区間③ 区間② 区間⑤

区間⑥

(3) 補助工法の選定

補助工法の選定にあたっては,前述の地形・地質状況およびⅠ期線施工結果を考慮して,本ト ンネル終点側坑口部における施工条件を考慮した上で,採用可能であると考えられる天端安定対 策として以下の工法を一次選定した.

① パイプルーフ工法

② 長尺鋼管フォアパイリング

③ ウレタン注入式フォアポーリング

④ 薬液注入工法

⑤ 垂直縫地ボルト工法

これらの工法に関して,表-3.4.1に示すとおり「施工性」,「信頼性」,「経済性」といった観点 から,比較検討を実施した結果,上部斜面への影響を極力小さく抑えるために,先行ゆるみの抑 制効果の高い長尺鋼管フォアパイリングを選定した.

また,先受け工法の選定にあたっては,土被りや先行緩み範囲の大きさにより先受け効果が異 なるため注意する必要がある.すなわち,図-3.4.10 に示すとおり,先受け長さが短いと前方の 緩みを押さえきれずに先行変位を生じることとなるため,上部斜面への影響は免れない.

したがって,坑口部において上部斜面及び地すべり土塊に影響を与えないように先行緩みを押 さえるためには,長尺(L=5.0m以上)の採用が必要であると判断した.

なお,長尺鋼管フォアパイリング工法としては,表-3.4.2に示すとおり,緩みの発生を最小限 とするため,無拡幅工法であり,打設角度が小さく多段打設が可能なAGF-HITMを採用した.

図-3.4.9 終点側坑口部の地質構造の推定

凡例

N E

W S チャート

劣化したチャート 緑色岩 砂岩 泥質基質 破砕帯 終点側坑口部(STA.690+90)

硬いチャート[あるいは緑色岩や砂岩]のブロックやスラブ 破砕されてサイコロ状

割れ目」や亀裂の間には、多量の地下水を滞水

Ⅰ期線で遭遇していない地層

STA.689+40~STA.689+20 低速度帯(2.0km/s) 低速度帯(2.0km/s) STA.690+50~STA.689+20 区間に分布

主に泥質基質部[粘板岩]が破砕したシャーゾーン

NW~SE 方向の走向 北傾斜

STA.689+60L8

No.5 斜めボーリング(EL=392m,L=100m)

Scale 10m

10m 10m

図-3.4.10 先受け長さと支保反力の関係4)

対策工 ①パイプルーフ工法 ②長尺鋼管フォアパイリング ③ウレタン圧入式フォアポーリング ④薬液注入工法 ⑤垂直縫地ボルト工法

概要図

上部緩み土圧に対して坑内より 剛性の高いパイプを平行に施工 し,トンネル施工時に支保工で受 けながら掘進する。

坑内より剛性の高い鋼管パイプ

(φ114.3mm L=12.0m)をダブル に打設し,シェル構造により前方 地山のゆるみを抑える。

坑内より天端付近に L=3m,4m の圧 入ボルトを打設し,ウレタンを注 入することで,ウレタン改良体に よる地山固結改良をする。

坑内より天端付近を中心にセメ ント系の薬液を注入し,地山を固 結改良する。

地表面ボーリングを行い,セメン トミルクを注入した後,縫地ボル ト D32(SD35)を挿入することに より,地山の縫付け,および吊下 げ効果を発揮する。

信頼性

クラウン部崩落,崩壊,地表面沈 下抑制には信頼性が高く,施工実 績も多い。

パイプを支保工で確実に受けて いくため,緩みを抑制し切羽安定 性もよく上部斜面への影響 も抑えられる。

長尺でかつダブルに鋼管を配置 するため,先受け効果が高い。

地山の変位に応じて施工規模を 変更できる。

セメント系の注入材に比べて粒 子が細かく流動性が高いため,注 入の確実性は高いが先行変位は 止められない。

限定された範囲を確実に固結改 良でき改良ゾーンの強度,効果 の確実性も高く実績も多い。

湧水や亀裂の多い地山での逸散 等により,注入の確実性に懸念が あり十分な改良効果が望めない。

均一な地山改良ができれば,切羽 の自立性の向上,クラウン部地山 の崩落,崩壊防止に効果が ある。

すべり土塊を多くもの鉄筋で補 強するものであり,すべりの方向 性に左右されず効果がある。

別途先受け工が必要。

施工性

地質によっては,パイプ間からの 地山の抜け落ち,および余掘りが 懸念される.

亀裂の多い地山やクラッキー な地山では掘削が困難となる。

拡幅が不要で牽引方式によるた め施工が確実。

特別な機械を必要としない。

掘削サイクルに取り込める。

特別な機械を必要としない。

地表からの作業は可能であるが,

削孔延長が長くなる。坑内の施工 の場合,掘削サイクルには取り込 めない。

施工ヤードが斜面となり,工事用 進入道路及び足場が必要となる。

斜面作業となり施工性に劣る。

経済性

パイプルーフ推進用の架台が必 要となる。

延長が長くなると大口径の パイプ施工となり割高となる。

9m毎に打設本数や範囲を変更で き,ウレタン系とセメント 系の複合注入により経済的。

注入範囲は薬液注入工法に比べ て少なくて済むが,材料が高 価で経済的には不利。

注入範囲が広範囲となり注入量 も多くなることから経済性は 劣る。

斜面上の施工では費用がかかる。

トンネル掘削時に先受工の併用 が必要。

工期

トンネル掘削に先立ち施工を完 了させる必要があるため,

工期に大きく影響する。

鋼管打設は 9m毎の打設となるが 多少時間がかかる。

掘削サイクルに取り込めるため,

工期的に若干の遅れが出る 程度である。

注入作業に時間がかかり掘削サ イクルに取り込めない。

事前に施工できるため掘削サイ クルには影響を及ぼさない。

総合

評価 ×

×

×

×

S.L.

120゜

CL パイプルーフ

S.L.

120゜

注入式フォアポーリング

S.L.

薬液注入

S.L.

垂直縫地

S.L.

120゜

長 尺 ウ レ タ ン 先 受 け 工 法 ( H IT M 工 法 )長尺鋼管フォアパイリング(AGF-HITM)

表-3.4.1 補助工法比較検討表

施工時の設計の修正に関しては,図-3.4.11 に示すとおり,切羽評価点,切羽前方探査結果及 び計測結果に基づくトンネル地山評価システムを参考に,支保パターンの選定や追加対策の検討,

支保低減の検討を実施するという方針で施工管理を行った.

AGFHITM AGFP

・坑内より剛性の高いパイプ(L=10m,φ=89.1~

114.3mm)を30~60cmピッチ/断面,5m~9m

で施工し支保工で受けながら掘進する。

・パイプ内より地山へウレタン系とセメント系の複 合注入を行い,パイプ間の改良を図る。(湧水箇所 ではウレタン系注入材)

・坑内より剛性の高いパイプ(L=12.5m,φ=114.3mm)を45cm ピッチ/断面程度で施工し,支保工で受けながら掘進する。

・パイプ内より地山へウレタン系の注入を行いパイプ管の改良 を図る。

・トンネルの拡幅は行わない。

ビット ロストビット方式 拡幅ビット方式(ロストビット方式)

打設方法 前方打撃で牽引方式のため,ロッドによる先端部塩 ビ管の損傷はほとんどない。

後方打撃方式のため打撃により曲がり鋼管の破損が考えられ る。(ロストビット方式の場合は

HITMと同様)

鋼管の

接続 ネジ加工,カップラー式 ネジ加工(ネジ込み)

改良範囲 いずれの範囲でも2段以上の鋼管で支持する多段

方式 いずれの範囲においても1本の鋼管で支持する。

長 所

・ウレタン系とセメント系の複合注入により限定さ れた範囲を確実に改良できアーチ形成が可能とな る。

・パイプを支保工で確実に受けるため沈下及び地す べり抑制効果が高い。

・トンネルジャンボにより施工でき,無拡幅のため 新たな設備を必要とせず,工期も比較的短い。

・施工ピッチが短かいため切羽の変化に応じて範囲 の変更が可能で経済的。

・ウレタン系を使用するため,限定された範囲を確実に改良で きアーチ形成が可能。

・トンネルジャンボにより施工でき,無拡幅のため新たな設備 を必要とせず,工期も比較的短い。

短 所

・ロストビットにより削孔を行うが,玉石等大きな 礫があるとジャーミングが発生する。

・鋼管先端ではラッパ状となり,鋼管間および鋼管 より下の地山の肌落ちが懸念される。(鋼管配置で 対応可)

・拡幅ビットによる掘削を行うが,砂礫層やクラッキーな地山 ではジャーミングにより穿孔不能となる。

・拡幅はしないが鋼管の間に地山を挟むため,地山条件によっ てはAGFに比べ沈下を発生する懸念がある。

・先打ちとなるため地山の変化に対応しにくい。

施工性 ・鋼管径が小径化できるので施工性は良く,ビット の選択も不要。

・HITMに比べ鋼管径が大きく施工延長も長いため施工性は 劣る。

・地山によりビットの選択が可能。

信頼性 多段となり支持効果は高くなる。 ・崖錐等では支保効果が小さい。

・鋼管のジョイントが弱点となる。

表-3.4.2 AGF-P と AGF-HITM の比較

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