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分類の基準及び概要

ドキュメント内 名詞の内容補充表現 (ページ 72-75)

第 2 章 データ及び研究方法

2.2 分類の基準及び概要

0.2で述べたように,本論文では,先行研究で等閑視されていると見られる主名詞から補 充部への働きに目を向け,また,日本語とドイツ語における名詞の内容補充表現を対照さ せることによって,新しい視点から内容補充表現を捉え,その用いられ方を更に探って行 くことを目標とする。この目標達成のため,本論文では意味の観点から主名詞の分類を行 うが,本論文の分類は,第 1 章で取り上げてきた先行研究の分類と大きくかけ離れたもの ではない。

主名詞の意味的下位分類の他に,第 1 章で見たように,先行研究では,補充部の主名詞 に対する働きに基づいた,寺村(1993)の「ふつうの内容補充」と「相対的内容補充」や 高橋(1979)の「内容付のかかわり」,「特殊化のかかわり」,「具体化のかかわり」などの ような意味論的な分類基準,また,補充部の構造に基づいた寺村(1982)の「内容節」と

「内容句」のような構文論的な分類基準などが見られる。本論文でも,このような意味論 的もしくは構文論的な観点を考慮しないというわけではもちろんない。しかし,それらの 観点を分類の基準とはせず,主名詞から補充部への働きという視点から,内容補充表現の 意味を論じるという本論文の目標に適すると考えられる分類基準を用いることにする。そ れは,主名詞の意味,厳密に言えば,主名詞によって内容に対して付加されると考えられ る意味である。

名詞を意味的に分類する作業は,名詞が膨大な数に上り,その意味も多様であるため容

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易な作業ではない。本論文では,主名詞によって付加されると考えられる意味を手がかか りに,多くの主名詞に共通すると見られる意味を元に名詞を小分けして行く。ここでは分 類基準,すなわち主名詞の意味もしくは主名詞による意味の付加とはどのようなものを指 すのかを述べる。

次に,まず,0.2の(12)で主名詞の「飛行機」や「話」などの意味的な空所の有無を説 明するのに用いた意味の定義を元に,主名詞によって付加される(と本論文で考える)意 味を説明する。下の表(7)に幾つかの名詞とその意味を挙げる。

表(7)

「話」 声を出して言うこと。

「逸話」 人についてのあまり知られていないおもしろい話。

「諺」 古くから言い伝えられてきた,教訓の意味を含んだ短い言葉。

「通報」 情報・ニュースなどを告げ知らせること。

「質問」 分からないところについて聞くこと。

「命令」 あることを行うように言いつけること。

上記の名詞の定義文末にある〈言うこと〉,〈話〉,〈言葉〉,〈知らせること〉,〈聞くこと〉,

〈言いつけること〉から窺えるように,上で挙げた名詞はすべて,言語活動によるものを 指し示しているという点で共通している。名詞の意味分析を更に進め,名詞の意味を比較 すると「話」は,単なる「声を出して言うこと」を意味し,それ以上の意味や特徴を含ま ないのに対して,「逸話」の場合,「あまり知られていない」及び「おもしろい」という特 徴,「諺」の場合,「古くから言い伝えられてきた」,「教訓の意味を含んだ」,「短い」とい った特徴を含意している。同様に「通報」は,「情報・ニュース」,「質問」は,「分からな いところ」,「命令」は,「あることを行う(=行為)」という風に,内容のタイプを示す特 徴を含意していると言える。後者の「通報」,「質問」,「命令」では,更に,目的に関する 情報,すなわち,〈知らせる〉,〈聞く〉,〈言いつける〉も含意している。このように,それ らの名詞は,伝達目的も含意しているという点において,前者の「話」,「逸話」,「諺」と 異なる。これらの名詞より得た情報だけを抽出してまとめると,表(7)は,次のようにな る。

表(7‘)

タイプもしくは種類 伝達目的

「話」 「話」 _____

「逸話」 「あまり知られていない」,「おもしろい」 _____

「諺」 「古くから言い伝えられてきた」「教訓の意

味を含んだ」,「短い」 _____

「通報」 「情報・ニュース」 〈知らせる〉

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「質問」 「分からないところ」 〈聞く〉

「命令」 「あることを行う(=行為)」 〈言いつける〉

上で挙げた名詞を補充部の主名詞とした例を元に,主名詞による意味の付加とは,どう いうものなのかを説明する。

(4) a. 臭いものに蓋をする/した(という)話 b. 臭いものに蓋をする/したという逸話 c. 臭いものに蓋をするという諺

d. 臭いものに蓋をする/したという通報 e. 臭いものに蓋をするか/したかという質問 f. 臭いものに蓋をしろという命令

(4)では,「話」,「逸話」,「諺」,「通報」,「質問」,「命令」という主名詞は同じ内容「臭 いものに蓋をする」による補充を受けているが,それぞれの名詞の意味で異なったレッテ ルを貼ることによって,補充部の「臭いものに蓋をする」という情報の捉え方が違ってく る。更に,「話」,「逸話」,「諺」は内容がどのような特徴のものなのか,すなわちどのよう な話や言葉なのかという種類だけを表しているのに対して,「通報」,「質問」,「命令」は,

内容の種類「ニュース」なり「分からないところ」なり「行うべき行為」なりを表してい る。このように,内容そのものは同じであっても,主名詞の意味によって,内容に対する 理解が異なる。したがって,内容補充表現の全体を捉える際,主名詞によって付加される 意味は重要な手掛かりだと言える。

ただし,上で見たように,一つの名詞によって付加される意味は複数ありうることが多 いので,一つひとつの意味に着目し分類すると,非常に困難な作業になる。そのため,本 論文では,各々の名詞だけが持つ固有の意味はいったん捨象し,多くの名詞に共通する意 味だけに絞って,名詞のグループ分けをすることにする。その多くの名詞に共通する意味 は,表(7)の名詞に関して言えば,前述したように,言語活動によるものを指し示してい るという点である。この内「話」,「逸話」,「諺」に共通するのは内容の種類を表している という点であり,「通報」,「質問」,「命令」に共通するのは伝達目的を表しているという点 である。

こうして,内容に対して主名詞が付加すると考えられる意味を考えてみると,主名詞の 一部には,その内容が言語活動の内容もしくは思考及び心理活動の内容であることが分か る。これら2タイプの主名詞は,第1章で取り上げられた先行研究のほとんどで考察対象 に含められているものである。本論文では,先行研究と同様に,これらのタイプの主名詞 を,それぞれ「言語活動」名詞・「思考・心理」名詞と呼ぶことにする。

「言語活動」名詞及び「思考・心理」名詞を除くと,残る名詞は数が多く,多様な意味

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を表すものである。それらの名詞は,「言語活動」名詞及び「思考・心理」名詞のような共 通する意味を見出しにくい名詞群であり,「その他」の名詞としてまとめて扱うことが相応 しいと考えられるが,このような名詞に見られる何らかの共通の意味を強いて引き出そう とすれば,「ことがら」もしくは「ことがらに関係する要素を表すこと」になるだろう。本 論文では,上述した 2 タイプのいずれとも異なるこのような名詞を「ことがら」名詞と総 称することにする。

以上,本論文の分類に適用する基準や主名詞によって「意味が付加される」という概念 について説明した。次に,分析の観点及び方法について述べる。

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