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主名詞の下位分類

ドキュメント内 名詞の内容補充表現 (ページ 39-57)

第 1 章 先行研究

1.2 ドイツ語における名詞の内容補充表現

1.2.2 主名詞の下位分類

本節の冒頭でも述べたように,先行研究には,dass節やzu不定詞句を取る名詞の意味的 分類が見られるのに対して,主文形式従属節や間接的疑問節を取る名詞は,動詞や形容詞 と比べて等閑視されがちなため,ここでは,先行研究に挙げられている名詞を取り上げ,

筆者なりの分類を示していく。

ここでは,「○○を取る名詞」という表現を用いるが,これは「○○を取ることのできる 名詞」という意味で使っているということをあらかじめ断っておきたい。先行研究にも同 様の表現が見られるが,「○○を取る名詞」と言っても,他の表現形式を排除しているわけ ではない。

本節の内訳は,次の通りになる。1.2.2.1でHelbig(1974)に見られる主文形式従属節を 取る名詞の意味的分類,1.2.2.2でLühr(1991)に見られるdass節をとる名詞の意味的分 類 を そ れ ぞ れ 概 観 す る 。1.2.2.3 及 び 1.2.2.4 で は , 名 詞 の ヴ ァ レ ン ツ 辞 典 で あ る Sommerfeldt/Schreiber(1977, 1996)やSitta (1971)に挙げられている,ob節を取る 名詞及び疑問詞を導入詞とした従属節(ここではW節と呼ぶ)を取る名詞を取り上げ,他 の先行研究に見られる,他の表現形式の主名詞の下位分類等を参照し,筆者なりに名詞の 分類を試みる。最後に,1.2.2.5では,Starke(1989a)に見られるzu不定詞句をとる名詞 の意味的分類を概観する。

1.2.2.1 主文形式従属節を取る名詞

主文形式従属節を取る名詞については,筆者が調べた限り,主名詞の下位分類のみを扱 っている研究は見当たらない。同形式に関する考察として最も有用と思われるのは,動詞,

形容詞,名詞を総合的に扱っているHelbig(1974)である。以下,Helbigによる,主文形 式従属節を取る動詞や名詞の意味的な分類を概観する。

Helbig(1974:256-59)は,主文形式従属節を取る動詞を意味的に分類している。また,

動詞の分類に沿って,意味的に対応する名詞や形容詞も挙げ,それらも主文形式従属節を 取ることができるとしている。次に,Helbig (1974)による動詞の分類と,それと共に取り 上げられている名詞の例を挙げる。

1) Verben des Sagens und Mitteilens (発話・伝達を表す動詞)

動詞の例としては,antworten(答える),behaupten(主張する),sagen(言う)など が挙げられている。名詞は,Antwort geben(回答を与える),zum Ausdruck bringen(表 現を行う),Bescheid geben(回答/情報を与える)といった機能動詞構造の一部として挙 げられている。

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2) Verben des Wollens und Hoffens (意志・願望を表す動詞)

動詞の例としては,erwarten(待ち望む),hoffen(望む),wollen(欲する)などが挙 げられている。名詞は,die Aussicht haben(見込みがある),die Erwartung hegen(期 待をかける),sich der Hoffnung hingeben(期待をかける)などの機能動詞構造の一部と して挙げられている。

3) Verben des Veranlassens und Aufforderns (指示・要求を表す動詞)

動詞の例としては,empfehlen(勧める),raten(助言する),warnen(警告する)など が挙げられている。名詞の例としては,Anregung(提案),Aufforderung(要求),Bedenken

(考慮),Befehl(命令),Bitte(頼み),Empfehlung(勧め),Mut(勇気),Rat(助言), Überzeugung(確信),Warnung(警告)が挙げられている。

4) Verben der Wahrnehmung und des Fühlens (知覚・感覚を表す動詞)

動詞の例としては,empfinden(感じる),erkennen(認識する),wahrnehmen(知覚 する)などが挙げられている。名詞の例としては,Ahnung(予感),Eindruck(印象), Empfindung(感覚),Entdeckung(発見),Erfahrung(経験),Erkenntnis(認識),

Feststellung(確定),Gefühl(感じ)が挙げられている。

5) Verben des Denkens und Erkennens (思考・認識を表す動詞)

動詞の例としては,denken(考える),glauben(信じる),verstehen(理解する)など が挙げられている。名詞の例としては,Angst(恐れ),Annahme(仮定),Argument(論 拠),Beschuldigung(非難),Einsicht(洞察/認識),Furcht(恐怖),Gedanke(考え), Gewißheit(確信), Glaube(信念),Meinung(意見),Möglichkeit(可能性),Nachweis

(証明),Überlegung(思慮),Voraussetzung(前提)が挙げられている。

Helbig(1974:256-259)は,上のような分類を示し,主文形式従属節を取る名詞などに 共通する意味的特徴として,上に挙げられているすべての名詞などに続く主文形式従属節 が,狭義もしくは広義のindirekte Rede(間接話法)(の内容)に相当することを挙げてい る。1)と3)の一部の名詞などは狭義の間接話法によって行われる伝達を意味するのに 対して,その他の名詞は,間接話法の意味の有無に拘わらず,発話され得ると考えられる ことから,広義の間接話法によって行われる伝達を意味するとしている。更に,次のよう に述べている。

„Die Verben können der indirekten Rede im weiteren Sinne zugeordnet werden, weil ein Verb des Sagens zwar in der Oberflächenstruktur nicht erscheint (das ist nur bei der indirekten

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Rede im engeren Sinne der Fall), wohl aber in einer zugrunde liegenden Struktur angenommen werden kann ( d. h., es kann

jeweils ein sagte er hinzugedacht werden).“

「これらの動詞を広義の間接話法と考えることができるのは,発話動詞 が表層構造で現れない(現われるのが狭義の間接話法の場合のみ)が,

深層構造では,それが基底で想定され得る(すなわち,そのつどsagte er

〈彼が言った〉があると考えられる)からである。」

(Helbig1974:257,和訳は筆者。)

このように,Helbig(1974)は,発話の意味が読み取れないような動詞や名詞の場合で も,次の(80)のように,表現されているsagte er 〈彼が言った〉があると想定すること で,広義の間接話法によって行われる伝達を意味すると見なすことができるとしている。

(80) Er hat die Hoffnung, (sagte er) sie wird (werde) die Prüfung bestehen.

(彼は(と彼は言った)彼女が試験に受かることを願っている。

最後に,上の1)と2)に挙げられている名詞について一点指摘しておく。Helbig(1974)

は3)以降の名詞と異なり,これらのタイプの名詞を単独では挙げておらず,機能動詞構 造の一部として挙げているが,そのようにした理由の説明は見られない。しかしながら,

これらの名詞は,機能動詞構造から離れて単独でも用いられ得るという点を指摘しておか なくてはならない。以下に,収集したデータよりHoffnungの用例を示す。

(81) Alle Hoffnung, sie werde sich alles noch einmal überlegen, fiel in sich zusammen.

Der Verbrecher

(彼女がすべてをもう一回考え直すだろうという期待は,完全に崩れた。)

(81)において示されるように,Hoffnungはzusammenfallenと結び付くような機能動詞 構造でなくても,主文形式従属節を取ることができる。

以上,Helbig(1974)による主文形式従属節を取る名詞の下位分類を概観した。続け

て,dass節を取る名詞の下位分類を行ったLühr(1991)の記述を取り上げる。

1.2.2.2 dass節を取る名詞 ―Lühr(1991)―

ここでは,Lühr(1991)に見られる,dass節を取る名詞の意味的分類を概観する。Lühr

(1991)は,主名詞を述語動詞あるいは形容詞で書き換えられるかどうかということを一 次的な基準として,名詞を大きく二つに分けている。その上で,書き換えの不可能な名詞

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について,書き換え可能な名詞の意味に類似するものがあるかどうかということを二次的 な分類基準として更に二種類に分けている。このようにして計 3 つのグループが立てられ る。それぞれをグループⅠ,グループⅡ,グループⅢと呼ぶ,次の図(4)にまとめておく。

図(4) dassを取る名詞

書き換え可能なタイプ 書き換え不可能なタイプ

意味的類似性あり 意味的類似性なし

グループⅠ グループⅡ グループⅢ

主名詞を述語動詞あるいは形容詞で書き換えられるかどうかという分類基準を,Lühr

(1991)がグループⅠの代表としている名詞Eingeständnisとそれに対応するとされる動 詞の(sich) eingestehenの例を用いて説明する。

(82) a. Doch haben sich die Politiker offenbar erst jetzt zu dem Eingeständnis durchringen können, daß der Westen in dieser Angelegenheit versagt hat.

b. Die Politiker haben sich eingestanden, daß der Westen in dieser Angelegenheit versagt hat, … (Lühr 1991:423)

(しかし,政治家は,西洋がこの問題において失敗したことを認めた。)

(82)において示されるように,名詞 Eingeständnisを含む(82)a は,それに対応する と考えられる動詞(sich) eingestehenを含む(82)bのような文に書き換えることができる。

グループⅠのような書き換えが効かないが,書き換え可能な名詞の意味に類似するもの があるというグループⅡを,Lühr(1991:430)は次の例を用いて示している。

(83) Natürlich besteht die Ansicht, daß aus der Invasion der kauffreudigen Ostdeutschen Konsequenzen hätten gezogen werden müssen, zu Recht.17

(もちろん,買い物の好きな東ドイツ人による侵略に対して責任を取らなければならな かっただろうという見解があり,それはもっともだ。)

Lühr(1991:430)

17 原文では,84)のKonsequenz/Folgeと同様に,AnsichtMeinungが併記されていない。

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(84) Die Politiker hatten einen anderen Kandidaten vorgeschoben. Sie hatten jedoch die Konsequenz/Folge, daß dann der erste Kandidat mit der anderen Partei zusammengehen würde, nicht bedacht. Lühr(1991:430)

(その政治家たちは別の候補者を勧めた。しかし,彼らは,最初の候補者が別の政党に 入党するという結果を考えていなかった。)

Lühr(1991)は,(83)におけるグループⅡの名詞AnsichtをグループⅠの名詞Meinung に置き替えられるとしている。(84)も同様で,グループⅡの名詞Konsequenzは,グルー プⅠの名詞Folgeに置き替えられるとされている。

Lühr(1991)は,更に,個々の語が持つ意味に着目して名詞を分類している。3つのグ ループのうち,まず,グループⅠとグループⅡの下位分類から見ていく。

Lühr(1991)は,グループⅠとグループⅡの名詞を,それぞれ sprachliche Handlung

(言語活動)の名詞,innere Zustände und Prozesse(内的な状態やプロセス)を表す名詞,

die Beziehungen zwischen Sachverhalten(事柄の間の関係)を示す名詞という3つのタ

イプに分けている。それぞれのタイプをタイプA,タイプB,タイプCと呼ぶ。18

Lühr(1991:424-29)は,タイプAの名詞はその多くがsprachliche Handlung(発話行 為)を表すと指摘し,dass 節などを取る述語動詞の下位分類を,当該の語が発話行為を表 すか否かに即して行うことを勧めるStarke(1984:337ff.)の見解に同意を示したうえで,

タイプAの名詞を,さらにAbstrakta allgemeiner Bedeutung(一般的意味を表す抽象名 詞),Auffordern und Verbieten(要求や禁令)を表す名詞,Hatein Sprecher oder haben mehrere Sprecher sich auf ein bestimmtes Verhalten festgelegt …(一人もしくは複数の 話し手がある種の行動を確約すれば・・・)というように,拘束の意味を表す名詞,eine

Reaktion auf Vorausgehendes(先行した出来事への反応)を表す名詞という4つのタイプ

に分けている。

タイプBの名詞は,… ein Sprecher eine Sachverhaltsbeschreibung unterschiedlich

bewertet(話し手が事柄に対して異なった評価をする)というように,送り手による評価

の意味を表す名詞と,Wahrnehmungen(知覚),Gefühle(感情),Erkenntnisse(認識)

などを表す名詞の 2 種類に分類されている。なお,前者の送り手による評価を表す名詞に 関してLühr(1991:427)は脚注で “Der Sachverhalt kann als wahr, wahrscheinlich, erwünscht, erwartet oder rein gefühlsmäßig bewertet werden.(事柄は,真実,蓋然性の あるもの,望まれるものとしてか,純粋に感情的に評価され得る)”と述べ,事柄の評価と 捉えにくいと考えられるGlaube(信仰),Hoffnung(希望)のような名詞を挙げている。

次の表(1)に,先述した3つのタイプの下位分類をまとめる。

18 Lühr1991)は,それぞれのタイプをタイプⅠ,タイプⅡ,タイプⅢと呼んでいるが,ここでは混乱を避けるため,

A, B, Cとする。

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