FAX 0584-89-5545 (代)
写真 1. 会社玄関の「暖簾」
その後、小径微細加工を目指して、さらに細かい穴をあけられるマシンを導入し、付加 価値の高い部門にシフトすることで、高収益の企業体質を確立した。
2.ダイニチの ものづくり 技術
深穴加工を手がけているうちに,精密部品加工の仕事も増え、相乗効果で複合加工機の需 要が増した。取引先は医療機器、航空機、原子力、バイオ関連、ロボット、情報産業と分 野が広がり、今では 660 社となった。このような顧客の拡大は、ダイニチ自身の積極的な 営業活動と同時に、最近ではホームページを見ての依頼や顧客の口コミが中心になってき ている。
下村社長は「機械が営業マン」と考え、不況下でも積極的な設備投資を行ってきた。機 械加工の専門家を宣言し、「どんな小さな注文」にも応じられるようにした。同社の究極の 技術は、細い穴づくり。直径 0.02mmの超細穴から、32 ミリまで、部品外側の加工も含め て、1 台の機械で複合加工をする技術である。そして複合加工機により、1 台で加工するた めに、短納期・低コストを実現している。つまり、(株)ダイニチの ものづくり 技術は、
ここに集約されるものである。
このように、材料費があまりかからない小物に仕事を絞っているため、受注量が少なく ても多めに製造しておき、顧客の急な需要にも応じられる。「仕事は多いほどよい」のでは なく、「少ないからよい」と考えた。このようにニッチな受注を獲得する中で、価格競争と は無縁に顧客を確保し続けることができる。
また小さな部品の加工をするようになってから、会社規模を大きくするだけが目的では ないと考えるようになった。立てた目標が「小さくても良い会社」。つまり、加工する部品 が小さくなればなるほど、工場は広く使える。部品を加工する機械も小さくて済むので、
工場には余裕が生まれ、受注量を増やしても工場は拡張しなくてもよいということである。
てもらえるか」と思い悩み、箱に入れて送った。これが学校の就職担当の先生の目に留ま り、会社案内をよく見てくれるようになったという。
同社では新しい事務所づくりにも取り組んでいる。加工機を事務所内に設置し、今まで にない「人とマシンとの融合」と快適なオフィス空間の創造を目指している。
また海外からインターンも積極的に受け入れている。今後、国際化社会に対応して英語 版ホームページも作成し、世界からの注文に対応できるようにしている。このように、同 社の微小径の穴加工への追求への挑戦はこれからも続くのである。
2.1 ダイニチの深穴加工技術[2]
(1) 微細深穴加工技術
穴加工は、現代の先端産業を支える共通基礎技術として、ますます重要となってきてい る。小径で深穴加工は特に難しく、設計者も加工不能と考え図面化されない状態である。
穴加工は部品を加工する工程の中で最も多い工程であり、全加工の 3 分の 1 ほどを占める と言われている。とくに最近では難削材の増加や、製品の精密化、軽薄短小化による微小 径穴加工の増加といった問題も出てきており、ダイニチの深穴加工部品は、航空機、医療 機器、バイオ、産業ロボット、繊維機械、原子力発電、精密金型、工作機械、塗装等各種 の流体用特殊ノズル、光通信分野等あらゆる産業に利用されている。
微細加工として、直径 0.02 ミリの超細穴から、太いものは直径約 32 ミリまで、 部品外 側の加工も含めて、一台の機械で複合加工が可能。従って、何台もの機械を使う方法に比 べ、低コストで、短納期を実現している。
写真2.0.05mmの穴あけ 写真3.0.5mmの穴あけ
径 長さ
φ0.02mm〜φ0.1mm φ0.1mm〜φ0.3mm φ0.3mm〜φ1.2mm φ1.0mm〜φ4.0mm
工具(ドリル)があれば、
径の 150 倍まで深穴加工が 可能
φ1.5mm〜φ4.0mm φ1.5:100×2=200mm φ4.0mm〜φ32mm φ32:1,000×2=2,000mm
(2)複合加工技術
これまで不可能とされてきた様々な加工技術を可能にすることで、複雑で小さな 部品や、
特殊な構造の完成品をつくり出した。それらは、全く新しい機械を誕生させ、脳外科とい う私たちの思いもかけなかった分野で貢献している。 繊細なテクノロジーによって、多様 化する時代のニーズに応える新たなものづくりが、ダイニチの技術により実現した。
写真4.0.05mmのドリル 写真5.高精度高速小径微細加工機
写真6.深穴加工機
深穴加工技術として、直径が
0.1
ミリなら 深さ約2.5
ミリまで、直径が32
ミリなら最大 2メートルの深穴をあけることができる。こ れは、NCガンドリルと呼ぶ高性能マシンと、それを使いこなす職人の手技が、深穴を短時 間で、しかも低コストでの製品化を実現させ た。
表
1.加工可能な
穴径と穴長さ の関係ダイニチの ものづくり 技術を集約した、加工可能な
穴径と穴長さ の関係は表
1
に示す通りである。
(3)多様な素材に対応
チタン
ステンレス
アルミ
銅
黄銅
鉄
素材は、硬くて加工が極めて難しいとされるチタン、ステンレスをはじめ、鉄、銅、黄 銅、鋳物など、加工する金属の材質を問わない。TTG(手業グループ)の協力工場により、
板金、溶接、表面処理、熱処理から一部組み立てまで、 どのように難しいオーダーにも、
確実に応える、 しっかりした体制を形成している。
写真7.複合加工製品
今まで複数の機械でやっていた加工を、
棒材から完成品まで一台で対応できるの が特徴。背面加工能力を要し高精度加工が 可能。(従来困難であった長くて細いシャ フトを得意とする)
写真8.a 複合加工機(部分) 写真8.b 複合加工機(全体)
1. 短納期対応 2. 少 量か ら多量生
産まで対応 3. 精密部品に適合
(4)生産設備
主要生産設備を表 2 に示す。このように、微細深穴加工技術、精密加工の複合技術に関 する設備と、精密測定器が中心である。
下村社長によれば、「不況時にも積極的に設備投資を行うともに、日本に 1〜2 台程度の 装置でも、付属設備を購入し、自社しか製作できないような技術の導入を心がけている」
とのお話であった。
現在、工場内は複合工作機械が並び、操作しているのは熟練の職人ではなく最高齢でも 35 歳の若手社員で行われている。「あえて既成概念の無い若い社員を採用することで難しい 加工技術にも挑戦でき、そこから新たな技術が生まれている」と下村社長は述べている。
設備名 台数 型番など
高精度真円度測定機 1 ロンコム60H
マシニングセンター横 1 60Hオークマ
マシニングセンター立(3軸NC用ケーブル付 2 5VEオークマ
シェーピングセンター 1 M-V50C-F三菱
NC旋盤 1 LB-15オークマ
高精度高速小径微細加工機 1 MEGA
小型精密NC複合旋盤E32 4 φ32まで 小型精密NC複合旋盤M20 1 φ20まで
NCガンドリルマシン 4 φ2〜φ32
特殊小径深穴加工機 8 φ0.02〜φ4
ガンドリルマシン 1 φ3〜φ20
旋盤4尺 1 4シャク イトウ
旋盤6尺 1 6シャク ワシノ
卓上旋盤 2
直立ボール盤 2 KRD-510キラ
ラジアルボール盤 2 TRD-950Fトーア
卓上ボール盤(ベンチドリル) 5 KDS-250 他 横中ぐり盤(テーブル型・プレーナー型) 1 80Pノムラ 横フライス盤#2〜3未満 1 #2 エンシュウ 立フライト盤(タレット型・生産フライス) 3 #2,#3 カンサイ
平面研削盤 1 セイミツPSGS63A
ホーニングマシン 9 φ2〜φ20
帯のこ盤(バンドソー) 1 高速 アマダ
カットオフマシン(メタルソー) 1 高速
全自動切断機 1 VG100A
ガス溶接機 1
表
2.主要設備一覧
2.2 ダイニチの ものづくり 技術を使った製品例
以上述べてきたように、少量生産でも高付加価値商品を生み出せば良いと考えるもので、
『人のやらないことをやる会社』になれば必ず受注は来ると信じて更なる挑戦が始まり、
深穴加工用のロングドリルが使えるガンドリルマシンの導入などを行うことで他社にはで きない独創・独自技術を開発し複合加工と微細深穴加工へと特化していった。
そののち、取引先の相乗効果で微細加工や複合加工とは無縁と思われていた分野からの 依頼も多くなり、複合加工機が活躍できる精密部品の複合加工へと広がっていった。医療 機器分野では、脳外科手術や耳鼻科手術に使われる超音波手術機、自動車関連では、自動 車の燃料性能向上につながる無段変速機(CVT)の基軸部品である金属製ベルトの連結部分 の破損実験に 0.02mm 穴あけ技術が使われた。また、コピー機やファックスのローラーゴム を作るための金型に使用するパイプで、パイプ内の穴を円筒状にすることにより紙の偏り を防ぐことができ、微細な歪みや傷で不具合が起きるため高い精度が要求されるが、深穴 加工の高度化も行っている。
ここでは、以下に示す「超音波手術器 ソルテック‑Ⅳ 」と 5 本指自在の 人間型ロボ ットハンド について説明する。
(1)
超音波手術器 ソルテック‑Ⅳ
写真9.超音波手術器 ソルテック‐Ⅳ (全体)