第6章 ワインツーリズムに関する消費者動向の調査
2 都市居住者に対する「ワイン嗜好とツーリズムに関するアンケート」調査
「ワイン嗜好とツーリズムに関するアンケート」調査の対象者は、札幌市に居住する成 人514と東京都に居住する成人510人である。そのうち、ワイナリー等訪問希望者と訪問 体験者は各 512 人である。その居住地別の内訳は、札幌市は希望者が 260 人と体験者は 254人、東京都は希望者252人と体験者258人、合計1,024人である。
これらの対象者は、前記の調査会社に登録のある、両地に居住するモニター10,568人を 対象とする予備調査において、地域特産品としてワインに関心があり、生産地の蔵やワイ ナリーへの訪問を希望する、あるいは訪問したことがあると回答した者の中から、両居住 地と訪問体験の有無で、ほぼ均等に配分した。これら1,024人の対象者についての、予備 調査における酒類の飲用と地域資源として酒類への関心の度合いと、両居住地の別でのク ロス集計結果は、表1のとおりである。
表1 酒類飲用習慣と地域特産品としての関心度
χ2(df=4, N=1,024)=10.8 φ=0.10 p=0.03<0.05
この結果から、ワインに関心がありワイナリーへの訪問を希望する、あるいは訪問した ことのある者のなかに、酒類を殆どあるいはあまり飲まない者、地域特産品としての関心 がない者が含まれていることが分かった。また、酒類の飲用習慣と地域特産品としての関 心度について、カイ二乗検定を行ったところ、両居住地によって有意な差が認められた。
このインターネット調査の対象は、前記の調査会社のモニターであり、性別、年代、未 既婚、子どもの数等の基本属性が登録されている。そこで、これらの基本属性と両居住地 との関係をクロス集計し、独立性についての検定を行ったところ、表2から表5のとおり である。その結果、居住地との関係において、未既婚の別では10%未満、性別で5%未満 の有意差が認められた。年代と同居子ども数については、有意差は認められなかった。居 住地と性別の関係では、両居住地ともに女性の比率が男性の比率より高いが、札幌市では
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男性が20.1%であるのに対し、女性は30.1%であり10%の差がある。しかし、男女合わせ
た年代別の回答者は、居住地間での有意差は認められなかった。両居住地とも、40 代と 50 代を合わせると約 30%であり、この年代が回答者全体の約 60%を占めている。また、
居住地と未既婚の関係では、既婚者の率はほぼ等しいが、未婚、離婚、死別の項目での差 異がある。
表2 居住地と性別 表3 居住地と年代
χ2(df=1, N=1,024)=4.3 φ=0.07 p=0.04<0.05 χ2(df=4, N=1,024)=5.5 φ=0.07 p=0.24∴ n.s.
表4 居住地と未既婚 表5 居住地と同居子ども数
χ2(df=3, N=1,024)=7.2 φ=0.08 p=0.07<0.10 χ2(df=4, N=1,024)=1.5 φ=.04 p=0.83 ∴ n.s.
居住地と同居する子どもの数については、有意差は認められず、両居住地ともに約30%
が0人である。これらの結果から、札幌市と東京都の居住地の別に関わることなく、ワイ ナリー等への訪問を希望するあるいは訪問した体験がある消費者は、40代から50代の既 婚者が主体となっている。この比率は、2010(平成22)年国勢調査による人口集中地域の人 口を年代別にみると、40代と50代は前後の30代や60代より人口が少ないのに対し、本 アンケートでは40代と50代が高い値を示している。
(2)ワインに関連する消費行動
次に、ワイン消費に対する考え方や行動に関する調査項目と、両居住地とワイナリーへ の訪問体験の有無との関係についてクロス集計を行い、その結果について独立性の検定を 行った。その結果は表 6から表11のとおりである。ワインへの関心と居住地との関係で は、有意差は認められなかった。一方、訪問体験の有無とワインへの関心については、5%
水準での有意差が認められた。この結果から、ワインへの関心は訪問体験の有無に影響を
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受け、訪問体験のある者の方が長い期間にわたり関心を持っている。特に、ワインに関心 を持ってからの年数21年以上の者が、訪問希望者では91人(8.9%)であったのに対し、
訪問体験者では136人(13.3%)であり、他の年数区分に比較して差が大きい。
ワインへのこだわりと居住地との関係について独立性の検定を行ったところ、5%水準 で有意差が認められ、東京都居住者の方が札幌市居住者より、こだわりが強かった。訪問 体験の有無とワインへのこだわりの関係での、独立性の検定での有意差は10%水準であり、
居住地による違いの方がより、高い確率で有意な結果であった。
また、ワイン購入の目的と居住地との関係についての独立性の検定では、有意差は認め られなかった。この調査項目に関して、訪問体験の有無との関係での独立性の検定結果は、
5%水準での有意差が求められ、訪問体験の有無によりワインと購入する目的に、差異があ ると解釈できる。訪問を希望する者の場合、自分で飲むと回答したもの比率が、訪問体験 者に比べ高い。この結果は、後述する訪問形態に関する質問のなかで、訪問希望者は1人 での訪問を計画している一方、訪問体験者は家族で訪問していることが多いので、複数の 質問と回答間の関連があると思われる。
表6 居住地とワインへの関心 表7 訪問体験とワインへの関心
χ2(df=5, N=1,024)=3.6 φ=.06 p=0.61∴ n.s. χ2(df=5, N=1,024)=17.7 φ=0.12 p=0.00<0.05
表8 居住地とワインへのこだわり 表9 訪問体験とワインへのこだわり
χ2(df=3, N=1,024)=14.4 φ=0.11 p=0.00<0.05 χ2(df=3, N=1,024)=6.8 φ=0.08 p=0.08<0.10
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表10 居住地と購入目的 表11 訪問体験の有無と購入目的
χ2(df=5, N=1,024)=5.7 φ=0.07 p=0.34 ∴ n.s. χ2(df=5, N=1,024)=15.8 φ=0.12 p=0.01<0.05.
次に、ワインの購入先とワイン選択のポイントに関する質問における、居住地と訪問体 験の有無との関係は図1から図4のとおりである。この2つの質問は複数回答(3つまで)
としており、購入先に関する質問に対する回答総数は、札幌市居住者では 1,130、東京都 居住者では1,120である。また、選択のポイントに関する質問に対する回答総数は、札幌 市居住者は1,430、東京都居住者は1,436である。
購入先としてあげられたのは、札幌市居住者では、①スーパー、②酒販店、③コンビニ の順であった。一方、東京都居住者では、①スーパー、②酒販店、③百貨店であった。両 居住地による購入先の違いは、コンビニで購入している札幌市居住者が、東京都居住者に 比べ多いことである。札幌市居住者のうちの36.2%が、購入先の1つとしてコンビニをあ げているのに対し、東京都居住者は有効回答者の13.3%であった。また、訪問体験の有無 と購入先との関係では、訪問体験者に比べ、コンビニを選択した訪問希望者が多い。なお、
コンビニを選択した訪問希望者150名の内訳は、札幌市が106人、東京都が44人であり、
札幌市に居住する回答者が 70.6%を占める。購入先としてワイナリーを選択した者にも、
訪問希望者と訪問体験者の回答割合に差があり、訪問希望者48名のうち、札幌市は28人 で東京都が20人、訪問体験者104人のうち、札幌市は53人で東京都が51人である。
ワイン選択のポイントは、札幌市居住者の回答は多い順に①嗜好(甘い・辛い等)、②タ イプ(赤・白等)、③価格であった。東京都在住者では、この順位が①タイプ、②嗜好、③ 価格となっている。その他の選択肢のなかでは、札幌市居住者に比べ、ブドウ品種をあげ たものが東京都居住者に多かった。また、訪問体験の有無とワイン選択のポイントとの関 係では、訪問希望者は①タイプ、②嗜好であった。一方、訪問体験者では①嗜好、②タイ プの順であり、違いが認められる。また、居住地別、訪問体験の有無別のいずれにおいて も、選択の3番目のポイントとして価格をあげている。
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図1 居住地とワインの購入先
図2 訪問体験の有無とワインの購入先
図3 居住地とワイン選択のポイント
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図4 訪問体験の有無とワイン選択のポイント
(3)ワイナリーへの訪問行動
ここでは、ワイナリーに関する情報源、訪問希望あるいは訪問の理由等に関連する調査 項目についての結果を示す。本節1項と2項の「調査回答者の基本属性」と「ワインの関 する消費行動」についての結果から、居住地の別よりワイナリーへの訪問体験の有無によ る相異が認められたので、訪問体験の有無の別での集計を基本とし、その結果を検証する。
ワイナリーへの訪問を希望するようになった情報源に関する回答の集計結果は、図5の とおりである。回答数に上限を設定していないこの質問に関しては、訪問希望者512人の 回答総数は986、訪問体験者512人の回答総数は1,095であった。訪問希望者と訪問体験 者ともに、情報源としてインターネットをあげた者が最も多く、インターネットは有力な 情報源である。訪問希望者と訪問体験者の別では、訪問希望者では2番目がテレビ、3番 目が雑誌と続く。これに対して、訪問体験者では雑誌とテレビがほぼ同数であり、次いで 4 番目が知人の紹介であり、人を介した情報がワイナリー等への訪問行動につながってい ると推察される。
訪問のきっかけと目的に関する質問は、訪問希望者512人と訪問体験者512人に対して、
前者を対象とした「ドライブでの立寄り」の項目を、後者に対しては計画段階であること を考慮し、「近くに行く機会があるので立寄り」としたほかは、同じ質問内容で行った。居 住地間での違いが認められたのは、訪問体験の有無にかかわらず東京都居住者で、「知人の 勧め」が多かったことと、札幌市居住の体験者でドライブでの立寄りが多かったことであ る。その他の項目については、居住地間で顕著な違いが認められなかった。訪問体験の有 無をもとに集計した結果を図6に示す。
なお、訪問希望者512人の回答総数は1,489、訪問体験者512人の回答総数は1,256で