第6章 ワインツーリズムに関する消費者動向の調査
4 アンケート調査による自由記載内容の分析
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(3)空知地域のワイナリー等訪問での印象
空知地域におけるワイナリー等への訪問での印象に関連し、訪問によってのワインやワ イン生産に対する理解や考え方の変化等に関する5項目の質問に対し、肯定系と否定系の 各2区分の選択肢をもとに回答を求めた。本節第2項に記したとおり、小規模なワイナリ ー等と大規模なヴィンヤードでは、訪問での印象が異なることが、後述する自由記載の内 容から推察されたため、各項目について規模の違いと回答区分に従って、回答者の割合を 比較した結果は図18に示す。
「景観」に関する質問については、規模の違いによらずほぼ同様の傾向を示し、否定か ら肯定へと回答率は増加した。「理解」、「信頼」、「応援」、「愛飲」の各質問に関しては、小 規模ワイナリー等訪問者では「景観」に関する質問と同様の傾向を示した。一方、大規模 ヴィンヤード訪問者に関しては、「理解」、「信頼」、「応援」、「愛飲」の各質問に対する回答 で、最も回答者の割合が高いのは「ややそう思う」という回答であり、小規模ワイナリー 等訪問者の回答傾向とは異なる結果であった。
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図 18 ワイナリー等訪問の印象
(1)分析方法
前記の2つのアンケート調査での自由記載の内容は、テキストマイニング用の統計分析 ソフトIBM SPSS Text Analytics for Survey4.0.1を用いて、分析の基本となる言葉の単 位であるコンセプトの抽出を試みた。その際の言語処理の方法としては、本調査がワイナ リー等訪問者の印象や生産者に対する期待、地域のイメージなどに関する記述内容を検討 するため「感性分析」を採用した。コンセプトの抽出は、IBM SPSS Text Analytics for Surveys 4 Japanese に装備されている辞書により行い、抽出したコンセプトのうち、本 研究において同じ内容を示す持つ用語を、類義語として統合した。
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次に、関連の深い概念をまとめるカテゴリ化を行うにあたっては、はじめに前記の辞書 をもとに内包関係にある用語をまとめる、「言語学的手法にもとづく方法」を採用した。さ らに、もう一つのカテゴリ化の方法である「出現頻度にもとづく方法」を行い、両者の結 果を突き合せ、関連するカテゴリを結合して、それらに適切なカテゴリ名を付与し定義し た。さらに、本研究の目的にそったカテゴリを設定し、前記の2つの方法に「定義された カテゴリにもとづく方法」を組み合わせてカテゴリを作成した。
以上の3つの方法により作成したカテゴリのもとにサブカテゴリを置き、カテゴリ全体 のフレームを組み立てた。そして、これらのプロセスを経て得られたデータを、統計分析 用ソフトIBM SPSS Statistics for SurveyVer.22に移し、コレスポンデンス分析によりカ テゴリ間の関係性を求め図示した。
(2)「ワイン嗜好とツーリズムに関するアンケート」調査による自由記載の分析結果 1)コンセプトの抽出
分析対象(分析単位)としたのは、本章第1節の「ワイン嗜好とツーリズムに関するア ンケート」調査の回答者1,024人のうち、無回答および「分からない、思い浮かばない、
考えたことがない」等の回答を欠損値として除外した623人である。これら分析対象(分 析単位)の自由記載内容について、前述のテキストマイニング用の統計分析ソフトを用い てデータマイニングを行い、テキストマイニングの基本単位となるコンセプトを抽出した。
抽出したコンセプトを確認し、同義語、未抽出、誤認識等についての修正を加え再抽出し、
1,900のコンセプトを抽出した。そのうち出現頻度が高かったコンセプトは、表17のとお
りである。
表17 出現頻度の高かったコンセプト
2)カテゴリの作成
カテゴリは、前項で抽出したコンセプトをもとに、「言語学的手法にもとづく方法」、「出 現頻度にもとづく方法」、「定義されたカテゴリにもとづく方法」を組み合わせて作成した。
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このうちの、「言語学的手法にもとづく方法」では、すべてのコンセプトタイプ1を対象に カテゴリ作成した。その際の設定条件は、サブカテゴリによる階層化は最大5層とし、共 起2なし、作成されるトップカテゴリ数 30、カテゴリあたりの記述子数およびサブカテゴ リ数の最小値は 2 である。また、「出現頻度にもとづく方法」にいては、カテゴリ作成の 設定条件を、カテゴリの記述子生成はコンセプトレベル、最少レコード数は3とした。さ らに、本研究の目的にそってカテゴリの統合を図ることを視野に、以下のカテゴリを定義 し、前述の2つの方法を合わせてカテゴリを作成した。ここで定義したカテゴリは、価格、
価値、価格・安価、価格・高価、関係、関連、コト、支援、主体性、食、体験、地域、統 合、場所、否定、文化、モノ、理解の18カテゴリである。
これら3つの方法を用いて作成されたカテゴリは、表18に示すとおりである。また、
ここに示したカテゴリには、表19に示す複数のサブカテゴリを含んでいる。
表18 作成されたカテゴリ
表19 作成されたサブカテゴリ
1 品詞を指している。
2 ある単語に対して、特定の単語の出現可能性が高いことを指している。
176 3)コレスポンデンス分析
作成したカテゴリ間の関係性を確認するためコレスポンデンス分析を行い、その結果を 知覚マップで表したものが図19と図20である。なお、次元得点3を大きく超えたものは、
外れ値として扱った。図19は、ワイナリー等訪問希望者307人の自由記載内容に関する、
また図20は、ワイナリー等訪問経験者316人の自由記載内容に関する知覚マップである。
コレスポンデンス分析では、回答者とカテゴリをキーワードとして分析を行っているた め、多数意見が原点(0,0)付近に位置し、少数意見は周辺部になる。図19では、次元1 と次元2の何れにおいても、-2~+2の範囲にほとんどのカテゴリが入っているが、それ ぞれはやや分散した位置関係にあり、この範囲から外れているものは価値、支援、ワイナ リー、期待の4つのキーワードである。ワイン、モノ、人、ブドウは近い位置にあり、こ れらのカテゴリ間の関係が強いことが示唆されている。また、その位置が原点(0,0)付近 であることから、ワイン原料や製品、生産者に対する関心を持つ者が多いことが分かる。
ワイナリーは原点から離れた位置にあるが、支援と近い位置にあり、少数ではあるが両者 の関連が窺える。
本研究では農村と都市における相互理解を阻むものとして、生産と消費の乖離を課題と してあげている。そのことを見る1つの根拠として、訪問希望者に関するマップである図 19における価値と価格に着目すると、両者が位置する象限は異なっており、かつ離れた位 置関係にある。つまり、ワイナリー等の訪問希望者では、価値と価格を関連付けて捉えら れてはいないが、価格に対し関心を示す者は少なくない。
一方、図 20 では両次元ともに-2~+2 の範囲に殆どのキーワードが入っており、前者 に比べ原点(0,0)付近に集中する傾向がある。-2~+2 の範囲から外れているものは期 待、コト、主体性、価格、理解である。図 19 に比べ、ブドウ、ワイン、ワイナリー、など のワイン生産に関連するキーワードと、訪問、人、地域、振興、関係、支援、産地などの 地域に関連するキーワード、さらに、食、文化、などの文化的なことに関するキーワード が多数あり、ほぼ重なり合う位置関係にある。このマップの位置関係から、ワイン生産に 関すること、地域に関すること、文化的なことが関連づけて捉えられていると解釈できる。
また価値と価格については、同じ象限で比較的近い位置にあり、両者の関係が関連づけら れていることが示唆される。
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図 19 コレスポンデンス分析結果(訪問希望者)
図 20 コレスポンデンス分析結果(訪問体験者)
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(3)「空知地域のワイナリー・ヴィンヤード来訪者アンケート」調査による 自由記載の分析結果
1)コンセプトの抽出
分析対象(分析単位)としたのは、前述のとおり空知地域の調査で回答を得た 71 人で ある。これら分析対象の自由記載内容を、前述のテキストマイニング用の統計分析ソフト を用いて、インターネット調査と同様の方法でデータマイニングを行い、693のコンセプ トを抽出した。その結果は、表20のとおりである。
表20 出現頻度の高かったコンセプト
2)カテゴリの作成
前項で抽出した693のコンセプトをもとに、前節第2項と同様に「言語学的手法にもと づく方法」、「出現頻度にもとづく方法」、「定義されたカテゴリにもとづく方法」を組み合 わせて作成した。3つの方法によるカテゴリ作成の際の設定条件についても同様とした。
これら3つの方法を用いて作成されたカテゴリは、表21に示すとおりである。また、
ここに示したカテゴリには、表22に示す複数のサブカテゴリを含んでいる。
表21 作成されたカテゴリ