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ブリッジパッド式フレッティング疲労試験

第 4 章 表面処理および潤滑剤がフレッティング疲労強度に及ぼす影響

4.3 ブリッジパッド式フレッティング疲労試験

図4-5に本章で使用した疲労試験機を示す.第3章で実施した偏心カム式の試験(図4-5(a))

に加え,コイルを内蔵した電磁加振機による繰返し振動によって板ばねとレバーを介して 試験片に繰返し曲げモーメントを負荷する試験機(図4-5(b))も実験に用いた.以下,この 試験方式を動電式と呼ぶ.

(a)偏心カム式試験機

(b)動電式試験機

図4-5 本章で使用した疲労試験機の構造

95 4.3.2 フレッティング疲労試験の試験評価部

図4-6にフレッティング疲労試験の試験評価部を示す.フレッティング疲労試験の評価部 は偏心カム式,動電式とも,試験片の両側から押付け治具を用いてコの字型の接触片を2個 押付けた状態で試験片に繰返し曲げモーメントを負荷し,試験片の接触面にき裂を発生さ せるブリッジパッド式で共通している.

図4-6 フレッティング疲労試験の試験評価部

図4-7に試験片と接触片の形状と寸法を示す.これらは,第3章と同じ形状とした.試験片 と接触片は同じロットのパイプからパイプの軸方向に沿って切り出し,試験片および接触 片の軸方向の向きはパイプの軸方向と合わせた.ただし,円周方向と軸方向については任 意の位置から採取しているため,それらの位置が機械的性質に及ぼす影響がもしあっても 考慮していない.

図4-7 フレッティング疲労試験に供試した試験片と接触片の形状・寸法(単位:mm)

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まず,試験片の評価部と接触片脚部の表面は全て精密研磨機を用いて鏡面仕上げをした.

次いで,鏡面仕上げされた接触片脚部にリン酸マンガン,銅めっきの2種類の表面処理を施 した.試験片は鏡面仕上げのままとした.接触片にのみ表面処理を施したのは,接触片が 実体疲労試験におけるボックスねじ山頂面に相当するためである.

リン酸マンガンは,市販の薬剤を用い,処理液浴内の酸比,全酸比,遊離酸度が既定の 値に収まるように制御し,処理を行った.銅めっきには,硫酸銅五水和物と硫酸で構成さ れるめっき浴を用い,油井管ねじ継手に適用されるめっき膜厚に近い10~20 μmを狙って処 理した.リン酸マンガン処理,および銅めっき処理後に接触片の評価面のすべり方向の形 状をレーザー顕微鏡で測定したので,その結果の一例を図4-8に示す.図4-8(c)のように,リ ン酸マンガン処理をした場合は,すべり方向の高低差が最大で25 μm程度あり,全体的に表 面が粗くなっていた.一方で,銅めっき処理の場合は,接触片脚部の端部に電流が集中す るため端部の盛り上がりが顕著になる傾向が予想されたが,すべり方向で5 μm程度の高低 差であった.一方で,接触片の脚部中央近傍は比較的高低差は少なくなっていた.銅めっ きの膜厚については処理前後の接触片の重量差から概算し,10 μm程度となっていた.

図4-8 表面処理後の接触片の表面プロファイルの測定結果の一例

試験の公称応力振幅を算出するための公称ひずみは,試験片評価部の端部から7 mmの位 置に貼りつけたひずみゲージによって測定した.また,試験片におけるき裂の発生箇所を 限定するため,図4-6のようにポリアミドフィルムを片側の接触面間に挟み込み,当該部分 における摩耗を防止した.これによりフレッティング疲労き裂の発生をもう一方の接触面 に限定できる.

試験片に負荷する接触面圧は,図4-6のとおり,箱型ばねに貼りつけたひずみゲージが所 定の面圧に相当するひずみになるようボルト締めすることで調節した.本章の試験で負荷

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する接触面圧は50 MPaとした.試験中の試験片と接触片の相対すべり量は,第3章と同じ,

小型変位計を用いて測定した.

表4-4に試験片と接触片の表面処理,潤滑の組合せの内訳を示す.試験片と接触片間には,

実際の油井管ねじ継手で使用され,API規格に準拠する潤滑剤Bestolife 304ST [21]を0.1 g塗 布した.潤滑剤の種類が,前節の実体疲労試験と異なるのは,上記実体疲労試験実施後に Shell type 3を用いた試験の需要がなくなり,潤滑剤の在庫がなくなったためである.しかし,

潤滑剤の主成分はAPI規格で規定されているため,潤滑剤の製品の違いにより疲労特性に影 響があったとしても実用上は考慮することができない.

リン酸マンガンの影響を評価する試験は偏心カム式試験機で,銅めっきの影響を評価す る試験は動電式試験機で実施した.試験周波数は偏心カム式では15 Hz,動電式では20 Hz とし,応力比はR = -1の両振り,室温は潤滑剤の粘性が変化しないよう20 ℃とし,大気中 で試験を実施した.繰返し数が107回に達しても試験片が破断しない場合,その応力振幅の 最大値を疲労限度とした.

疲労寿命の定義については,偏心カム式試験は第3章と同様に,応力振幅が試験開始時の 値より15 %低下した時点とした.一方,動電式試験では公称応力測定用のひずみゲージの 出力値を用いたフィードバック制御をしている.試験中に試験片にき裂が発生し進展する と平均ひずみが圧縮側(負の値)になるため,ひずみゲージの出力値が目標値の-105 %以下 となった場合に,試験を自動で停止させるように設定し,この時点を疲労寿命と定義した.

このように偏心カム式試験と動電式試験における疲労寿命の定義が異なるものの,いずれ の試験も破断時のき裂深さは試験片肉厚の半分程度(約6 mm)となることを確認している ため,疲労寿命は両試験で同様と扱えるとみなした.

表4-4 フレッティング疲労試験における表面処理と潤滑剤の条件

Condition Surface treatment Lubricant grease Marks Applied fatigue tester 1 None None Non-manganese, Non-lubricant Eccentric cam tester

Electro dynamic tester 2 None Bestolife 304ST Non-manganese, Lubricant Eccentric cam tester 3 Manganese phosphate None Manganese, Non-lubricant Eccentric cam tester 4 Manganese phosphate Bestolife 304ST Manganese, Lubricant Eccentric cam tester 5 Copper plating None Copper, Non-lubricant Electro dynamic tester 6 Copper plating Bestolife 304ST Copper, Lubricant Electro dynamic tester

98 4.3.3 材料

試験片と接触片の材料はAPI規格[15]の油井管材料L80とし,フレッティング疲労試験片お よび接触片と同ロットのパイプから切出した試験片で,引張試験と硬度測定を行った.引 張試験片,硬度測定用の試験材はともにパイプの肉厚からパイプ軸方向に沿って,切り出 した.円周方向と軸方向の採取位置は任意のため,それらが機械的性質に及ぼす影響はあ るとしても考慮はしていない.試験で得られたL80の機械的性質およびビッカース硬度を表 4-5に示す.第3章および上記の実体疲労試験で用いたものとは,パイプのロットが異なるた め,機械的性質と硬さも異なる.化学成分の規格値[15]を表4-6に示す.また,図4-9に示し たL80のミクロ組織は焼戻しマルテンサイトである.

表4-5 L80の機械的性質とビッカース硬度 0.2% proof

stress [MPa]

Ultimate tensile strength

[MPa]

Elongation [%]

Reduction of area [%]

Vickers hardness, Hv

653 722 25.6 75.8 237

表4-6 L80の化学成分の規格値(max. %)

C Si Mn P Cr Mo

0.43 0.45 1.90 0.03 - -

図4-9 L80のミクロ組織

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4.4 フレッティング疲労試験による表面処理と潤滑剤の影響の評価