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フレッティング疲労試験で負荷する接触面圧の検討

第 3 章 接触中央部におけるフレッティング疲労き裂発生のメカニズム

3.2 ブリッジパッド式フレッティング疲労試験

3.2.4 フレッティング疲労試験で負荷する接触面圧の検討

フレッティング疲労試験で負荷する接触面圧は,油井管ねじ継手の締結完了時の接触面 圧と整合させる必要があるため,油井管ねじ継手の締結をモデル化した弾塑性有限要素法 解析から,実体疲労試験で貫通き裂が発生したピン不完全ねじ底の接触面圧を算出した.

図3-12に油井管ねじ継手の解析モデルを示す.解析モデルは2次元軸対称とし,ボックス 中央の軸方向の並進移動を拘束した.第2章で評価した油井管ねじ継手と同じ構造としたが,

締結時におけるねじ干渉量の影響を考慮するため,3種類のねじ,シールの干渉量の公差の 組合せ(公差最大値のHigh,公差中央値のNominal,公差最小値のLow,すなわちHH,NN,

LL)を評価した.ねじ干渉量は最大(High)で管本体外径の約0.2 %,シール干渉量は最大(High) で管本体外径の約0.4 %の値である.解析モデル作成時に,この干渉量を考慮するため,ピ ンとボックスのねじ部とシール部のメッシュには干渉量分だけ重なりのある部分が存在し ている.ねじテーパの公差はピンとボックスともNominalとした.なお,NN-PNBNを例にと ると,解析モデルの節点数は38,393,要素数は37,068であり,その他のモデルも節点と要素 数は同程度である.解析には汎用ソフトABAQUS/Standard ver.6.17を用いた.

締結の計算では,ABAQUSに内蔵されているPre tension機能[21]を使用した.ピン側のね じ部とシール部の間に寸法可変要素を配置し,この部分の軸方向寸法を解析過程で伸長さ せることによって,上記メッシュの重なりを押し戻し,ねじとシールの干渉量を導入する とともにショルダ面を接触させる.その後,ピンとボックスのねじの荷重面が接触し,軸 方向反力が発生する.個々の節点に発生する軸方向反力,管軸からの径方向位置,摩擦係 数などを用いて油井管ねじ継手の発生トルクを計算し,ねじ継手の締結を模擬することが できる.なお,解析における摩擦係数はゼロとし,発生トルクを計算するポスト処理での みねじ部とシール・ショルダ部に特定の摩擦係数を使用した.

材料特性には,表3-1と同じロットの素材のものとは異なるが,図3-13に示すL80の真応力 -真塑性ひずみ曲線および,ABAQUS内蔵の等方硬化則[21]を使用した.等方硬化則では,

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引張時の降伏点と圧縮時の降伏点が同じになるため,バウシンガー効果等は考慮されてい ない.縦弾性係数は210 GPa,ポアソン比は0.3を用いた.

図3-12 油井管ねじ継手の締結解析の模式図

図3-13 解析に供試したL80の真応力-真塑性ひずみ曲線

図3-14に解析で得た油井管ねじ継手の締結トルク線図を示す.横軸にねじ継手の締結ター ン(1ターン(回転)= ねじ1ピッチ分の軸方向移動量),縦軸に発生トルクをプロットして いる.締結トルク線図では,締結初期においてねじとシールの干渉量が導入される.さら に,締結が進むとショルダ面が接触し始め,トルクが急激に増加する.この,ショルダの 接触が開始する点をショルダリングと呼び,その際の発生トルクをショルダリングトルク

(ST,Shouldering Torque)という.締結ターンが進むとトルクもさらに増加していき,降伏点

に達すると傾きが緩やかになる.一般的に油井管ねじ継手は,操業時の密封性能や強度を 保証する目的で,ショルダリングトルクと降伏トルクの間の所定のトルク値で締結されて

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 200 400 600 800 1000

[]

True plastic strain, εt,p True stress, σt[MPa]

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おり,これを締結トルク(MuT,Make-up Torque)と呼んでいる.しかし,解析では表面処理 や潤滑剤の影響を考慮していないことや,先ほど述べたように,ポスト処理でのみねじ部 とシール・ショルダ部に特定の摩擦係数を使用して発生トルクを計算しているため,実体 の締結試験と解析におけるトルク値は必ずしも一致するとは限らない.そこで,本研究で は実体の油井管ねじ継手の締結状態を模擬するためのひとつの方法として,下記式(2)のと おり,ショルダリングトルクと,締結トルクの比率を実体試験と解析で同定することを考 えた.

2

実体(Full-scale)の締結試験で得たトルクデータと式(2)を用いることで図3-14のように,解析 における締結トルクMuTは約9,530 N.mとなったため,この時点のピンねじ底の接触面圧を 評価することとした.

図3-14 油井管ねじ継手の締結トルク線図(NN-PNBNの例)

MuTに達した時点(締結完了時点)におけるピンねじ底の接触面圧の分布を図3-15に示す.

解析ではねじ継手の螺旋構造を考慮していないため,そのことが貫通き裂の発生したねじ 底を正確に特定することに影響があることも考えられるが,実体疲労試験で貫通き裂が発 生したねじ底の軸方向位置を参照し,有限要素法解析では三つのねじ底を対象に貫通き裂 の発生が想定されるねじ底として定めた.いずれのねじ底においても接触面圧は接触端部 で最大となっており,一番左側の接触面圧の高いねじ底からフレッティング疲労破壊が生 じる可能性がある.真ん中のねじ底の面圧は比較的低く,右側のねじ底では荷重面側の接 触端部が最大となっていた.また,ねじ干渉量の減少に伴い,接触面圧の値そのものは総 じて低下するが,接触面圧の分布は同様の傾向を示した.

0 5 10

0 10000 20000 30000

Rotation [ / 100 turn]

Generated torque [N.m]

Shouldering Yield point

Yield torque

Shouldering torque Make-up

Make-up torque

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フレッティング疲労試験における接触面圧は箱ばねのひずみゲージ値をもとに負荷され る公称接触面圧であるため,ねじ底の平均接触面圧を求める必要がある.平均接触面圧の 算出結果を表3-3に示す.各干渉量の組合せにおいて,貫通き裂の発生するねじ底,および その近傍のねじ底の平均接触面圧は,最小で約13 MPa,最大で約97 MPaと,タービン翼の ダブテイル締結部の研究[22,23]などで想定されている接触面圧に比べて低くなっていた.こ の結果をもとに,本研究のフレッティング疲労試験で負荷する接触面圧は100 MPa以下とし,

50 MPa,100 MPaの2種類の面圧を評価することとした.

(a)HH-PNBNの接触面圧分布

(b)NN-PNBNの接触面圧分布

図3-15 貫通き裂の発生が想定されるピン不完全ねじ底の締結時の接触面圧分布 0

100 200 300

Contact pressure [MPa]

95 100

105 110

88 90

Radius [mm]

Distance from PIN edge [mm]

0 100 200 300

Contact pressure [MPa]

95 100

105 110

88 90

Radius [mm]

Distance from PIN edge [mm]

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(c)LL-PNBNの接触面圧分布

図3-15 貫通き裂の発生が想定されるピン不完全ねじ底の締結時の接触面圧分布(つづき)

表3-3 ピン不完全ねじ底の平均接触面圧 0

100 200 300

Contact pressure [MPa]

95 100

105 110

88 90

Radius [mm]

Distance from PIN edge [mm]

Left thread root

Center thread root

Right thread root

HH-PNBN 97.11 40.81 49.99

NN-PNBN 75.84 36.13 43.24

LL-PNBN 24.31 13.19 23.66

Configuration

Mean contact pressure [MPa]

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