2. 各知財庁・機関のインターネット上の発信
2.4. ドイツ特許商標庁( DPMA )
DPMAのインターネット上の発信は、①年報(Annual reports/ Jahresberichte)、 ②プレスリリ ース(press releases/ Pressemitteilungen)によって行われている。
年報とプレスリリースはともにドイツ語版と英語版が用意されているが、プレスリリースの英 語版は 2016年以降のみで国際的な取組に関する記事も3 件に過ぎない。英語版はドイツ語版 の逐語訳であり内容は同一である。
ドイツ語版のプレスリリースでは、WIPO、JPO及びIPOSに関する記事が複数回掲載されてい る。
DPMAとJPOのバイの取組のうち、実際に行われた会合について紹介した記事(英語版のみ)
は、JPO長官の宗像直子氏とデータ交換に関する新たな合意に署名したことを紹介する1件で あった。
(1) 政策動向や情報発信方針に影響しうる背景
ドイツの知的財産権を所管するのはドイツ特許商標庁(DPMA: Deutsches Patent und Markenamt) である。同庁のウェブサイトによると、DPMAは現代的で目標志向的な組織に生まれ変わるべく
59
、 その目標の一環として「DPMA2020」戦略が2015年の年報の中ではじめて提示されている。
DPMA2020において、知的財産権の審査機関として、革新性と経済の創造性を支援すること、お
よびDPMAが国際的な知財制度における傑出した地位を占めることが謳われている。この目標を達 成するため、「Vision of DPMA2020」が提示されているが、その中で4つの戦略的目標、すなわち、
①効率的な手法で高質なサービスの提供、②顧客との対話および顧客からのフィードバックの取り 入れ、③職員の能力とコミットメントの促進・確保、④欧州および国際的レベルにおける将来を志 向した知財制度への貢献、が掲げられている60。
(2) 調査項目に基づく調査結果
① 「調査対象の知財庁・機関による発信情報を掲載したソースの調査」
DPMAウェブサイトの情報発信は以下の方法によって実施されている。発信言語はドイツの公用 語であるドイツ語と英語で行われている。長官挨拶(Mitteilungen der Präsidentin)がウェブサイト で閲覧できるが(ドイツ語のみ)、国際的な取組に該当する記事はなかったため、本調査の対象に 含めていない。
図表 48 英語ウェブサイトにおけるソース
英語 ドイツ語
①年報(Annual reports/
Jahresberichte)
2017年12月現在で、2006年から2016年 の年報が閲覧できる。2013年から206年の 年 報 で は 、(1)の 国 際 協 力 (International Cooperation)と(2)の出来事(Events)で国際 的な取組について扱われている。
2017年12 月現在で、2006年から2016 年の年報が閲覧できる。2013年から206 年の年報では、(1)の国際協力
(Internationale Kooperation)と(2)の出来 事 (Rückblick) で 国 際 的 な 取 組 に つ い て
扱われている。
② プレスリリース(press releases/
Pressemitteilungen)
2017年12月現在で、2016年から2017年 のプレスリリースが閲覧できる。
2017年12 月現在で、2010年から2017 年のプレスリリースが閲覧できる。
59 DPMA, “ From 2001 to 2017: the DPMA becomes a service provider with a strategy,”
https://www.dpma.de/english/our_office/publications/focus/140_years_patent_office/2001-2017/index.html.
60 DPMA, Annual Report 2015, p.75,
https://www.dpma.de/english/our_office/publications/annual_reports/index.html.
37
② 「国際的な取組に関する情報(文章等)の調査」
1) 年報
2017年12月現在、英語とドイツ語のいずれの年報も2006年から2016年までが閲覧可能で、(1) の国際協力(International Cooperation/ Internationale Kooperation)と(2)の出来事(Events/ Rückblick) の項目で国際的な取組が扱われている。
年報で記載されている内容は、PPH試行プログラムや二国間協力深化に関するMOU合意、WIPO やEPO、テゲルンゼーグループ(Tegernsee Group)での協力状況が多く、また、ドイツはEPO加 盟国であることから、欧州単一効特許や統一特許裁判所協定に関連する記事も見られる。
また、年報は、国名や知財庁名を章や節等の見出しにする構成となっていない。
2) プレスリリース
プレスリリースは英語とドイツ語が用意されているものの、英語版は 2016 年以降のみとなって いる(ドイツ語版は2010年から)。英語版はドイツ語版の逐語訳であり内容に違いがないため、以 下、ドイツ語の記事のみを扱う。
2013年以降68件のプレスリリースが公表されており、うち国際的な取組に関するものは21件で ある(ドイツ語)。
図表 49 国際的な取組に関する記事件数
英語 ドイツ語
2013年 0 7
2014年 0 7
2015年 0 4
2016年 1 1
2017年 2 2
5年間合計 3 21
出所:DPMAウェブサイトより作成
図表 50国際的な取組に関する記事件数
出所:DPMAウェブサイトより作成
バイの国際的な取組に関する記事に登場する国および機関は以下のとおりである(英語・ドイツ 語共通)。
7 7
4
1
2
0 0 0
1
2
0 1 2 3 4 5 6 7 8
2013 2014 2015 2016 2017
ドイツ語 英語
38
欧州:EPO、英国、オーストリア、フィンランド
北米:米国、カナダ
中南米: ブラジル
オセアニア:
中東: なし
アジア:日本、中国(SIPO)、韓国、シンガポール
アフリカ:なし
国際機関・その他:なし
マルチの国際的な取組に関する記事に登場する機関は、WIPOである。
図表 51 記事の単語数に関する情報
英語
最大文字数 1010
最小文字数 167
中央値 420
出所:DPMAウェブサイトより作成
③ 「調査対象の知財庁・機関からみた海外知財庁・機関等の位置づけの比較調査」
以下の表は、ニュースにおける国際的な取組(バイ)に関する発信状況(海外知財庁が登場する 記事件数)を示している。2016年にはバイの取組に関する記事はない。
ドイツ語版の5年間合計では、韓国、シンガポール、中国(SIPO)、ブラジル、日本、WIPO、そ の他として英国、オーストリア、フィンランドとの取組に関する記事がみられる。ドイツ語版での 記事の件数はWIPOが4件で、日本が3件、シンガポールが2件で、残りは1件ずつである。
39
図表 52 二国間(バイ)に関する情報における海外知財庁・機関等名が登場する記事件数(プレス リリース)
2017年 2016年 2015年 2014年 2013年 5年間合計
米国(USPTO) 現地語 0 0 0 0 0 0
英語 0 0 0 0 0 0
欧州(EPO)
現地語 0 0 0 0 0 0
英語 0 0 0 0 0 0
欧州(EUIPO、 OHIM)
現地語 0 0 0 0 0 0
英語 0 0 0 0 0 0
ロシア(Russia) 現地語 0 0 0 0 0 0
英語 0 0 0 0 0
カナダ(CIPO) 現地語 1 0 0 0 0 1
英語 1 0 0 0 0 1
オーストラリア
(IP Australia)
現地語 0 0 0 0 0 0
英語 0 0 0 0 0 0 韓国(KIPO)
現地語 0 0 0 1 0 1
英語 0 0 0 0 0 0
台湾(TIPO) 現地語 0 0 0 0 0 0
英語 0 0 0 0 0 0
シンガポール
(IPOS)
現地語 0 0 0 1 1 2
英語 0 0 0 0 0 0
タイ(DIP)
現地語 0 0 0 0 0 0
英語 0 0 0 0 0 0 インドネシア
(DGIP)
現地語 0 0 0 0 0 0
英語 0 0 0 0 0 0
マレーシア
(MyIPO)
現地語 0 0 0 0 0 0
英語 0 0 0 0 0 0
インド
(CGPDTM)
現地語 0 0 0 0 0 0
英語 0 0 0 0 0 0
中国(SIPO) 現地語 0 0 0 1 0 1
英語 0 0 0 0 0 0
ブラジル(INPI) 現地語 1 0 1 0 0 2
英語 1 0 0 0 0 1
GCC 現地語 0 0 0 0 0 0
英語 0 0 0 0 0 0
アフリカ(OAPI)
現地語 0 0 0 0 0 0
英語 0 0 0 0 0 0 アフリカ
(ARIPO)
現地語 0 0 0 0 0 0
英語 0 0 0 0 0 0
JPO(日本)
現地語 1 0 1 1 0 3
英語 1 0 0 0 0 1
WIPO 現地語 0 0 1 1 2 4
英語 0 0 0 0 0 0
その他合計 現地語 0 0 0 1 2 3
英語 0 0 0 0 0 0
出所:DPMAウェブサイトより作成。
40
図表 53 二国間(バイ)に関する情報における海外知財庁・機関等名が登場する記事件数(プレス リリース)
出所:DPMAウェブサイトより作成。
④ 「調査対象の知財庁・機関からみた海外知財庁・機関等の位置づけの推移調査」
上記の図表 53をもとにプレスリリースにおけるDPMAからみた海外知財庁・機関等の位置付け の推移をみると、(3)で挙げた海外知財庁・機関の中で2013年にWIPOとの取組に関する記事が1 年のうちに2件ある以外は、いずれの知財庁・機関についても1年間に1件である。5年間のプレ スリリースの記事件数が少ないため、位置付けの推移を判断することは困難であるが、WIPOは2013 年から2015年にかけて毎年1ないし2件、日本との取組については2014年、2015年、2017年に 記事が掲載されている。
⑤ 「国際的な取組に関する情報(写真等)からの上記③,④の位置づけの調査」
2013年から2017年のドイツ語版のプレスリリースで、国際的な取組に関する記事のうち写真が 掲載されていたのは9件であった。
バイの取組に関する写真掲載記事では、以下の国・地域が挙げられていた。
欧州:EPO、英国、オーストリア、フィンランド
北米:米国、カナダ
中南米: ブラジル
オセアニア:
中東: なし
アジア:韓国、シンガポール
アフリカ:なし
国際機関・その他:なし
プレスリリースで、マルチの取組に関する写真掲載記事はない。
基本的に写真は1記事に1枚である。2017年10月4日の記事
61
には2枚の写真が掲載されてい るが、1機関に充てられる写真は1枚(日本およびブラジル)となっている。ただし、同記事には
61 DPMA, “Generalversammlung der Weltorganisation für geistiges Eigentum: Deutsches Patent- und Markenamt (DPMA) besiegelt engere Kooperation mit Japan,” Oktober 4, 2017,
https://www.dpma.de/service/presse/pressemitteilungen/20171004.html.
0 1 2 3 4 5
2013年 2014年 2015年 2016年 2017年
41
カナダとの会合についても言及されているが、カナダとの写真は掲載されていない。同記事はドイ ツ語版と英語版があるが、掲載写真は同一である。
9件中、日本、シンガポール、ブラジルはそれぞれ写真掲載記事が2件ずつ確認できる。写真は、
署名時、握手、集合写真がほとんどであり、複数の国の知財庁・機関が一つの写真の中に同時に登 場することはない(すべて二か国の写真のみ)
62
。
⑥ 「国際的な取組(マルチ)に関する情報に関する調査」
図表 54はプレスリリースにおけるマルチの国際的な取組に関する記事件数を示している。ほと んどがWIPOに関するものであり、その記事のほとんどはWIPOが制定した国際知的所有権の日を 記念したイベント開催を扱ったもので、毎年掲載されている。
図表 54 プレスリリースにおける国際的な取組(マルチ)に関する記事件数
WIPO EU その他
2013年 2 1 0
2014年 1 0 0
2015年 1 0 2
2016年 1 0 0
2017年 2 0 0
5年間合計 7 1 2
出所:DPMAウェブサイトより作成
図表 55 プレスリリースにおける国際的な取組(マルチ)に関する記事件数
出所:DPMAウェブサイトより作成
⑦ 「国際的な取組(バイ)に関する情報に関する比較調査」
1) 国際的な取組(バイ)に関する情報
図表 56は、プレスリリースにおける連携形態別のバイの国際的な取組を扱った記事件数を示し
62 2014年7月22日のプレスリリースには、中国、フィンランド、日本、オーストリア、韓国、シンガポール、英国、
米国の弁理士を交えたパネルディスカッションの写真があるが、知財庁の写真ではないため、本報告書では割愛する。
DPMA, “ Internationales Nutzerseminar zum Patent Prosecution Highway im Deutschen Patent- und Markenamt (DPMA) in München,” Juli 22, 2014,
https://www.dpma.de/service/presse/pressemitteilungen/archiv/2014/20140722.html.
0 1 2 3 4
WIPO EU その他
2013 2014 2015 2016 2017